スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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祝、1万ヒット!
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【挿絵表示】


※今回から挿絵のイラスト情報とかは捕捉は
後書きにまとめて書くことにして前書きはすっきりさせることにしました。


098.「……賭けよう」

バコンッ!

 

猛烈な勢いと共に目の前を通り過ぎた剛腕が、

街灯をへし折り遠くへと吹き飛ばす。

 

「ちっ……」

 

辛うじて避けたが……

直撃していれば体を砕かれていただろう。

接近戦は危険だと判断した彼女は

近くの崩れた瓦礫を蹴って後ろに大きく跳ぶ。

 

「――!」

 

けれど相手はそれを逃がしはしない。

瓦礫ごと吹き飛ばしながら追いすがってくる。

 

ダダダダダッ!

 

彼女は後ろにさらに跳び、

牽制とばかりに手にした双機銃を連射した。

150半ばの身長に華奢な体格の彼女には

「L&K14コンバット」という2丁の銃は少し大きい。

薄い迷彩柄にガトリングのような連装銃口。

持ち手の前のフォトンカートリッジの部分が

黄色く光っているのが特徴的だ。

ガンナーである彼女は空中であっても、

綺麗に姿勢を保ち、

見事一発も外すことなく対象に当てた。

二丁のガトリングから放たれる弾丸の雨は

厚い鉄板であっても貫くほどの威力がある……のだが、

 

「……堅い」

 

だというのに堅い皮膚にいとも容易く弾かれていた。

例え強固な壁に向けて撃っても削れるというのに、

こんな経験はさすがに初めてである。

けれど全くの無意味というわけではない。

L&K14コンバットは特殊弾を放つツインマシンガンであり、

実弾に近い発射音なのは、

この銃は高密度のフォトンの弾丸を放つからだ。

標準の弾丸よりも強い「衝撃」を与える。

さすがの規格外の堅牢な相手であっても

少しくらいは足を止めるくらいの効果はあった。

 

少し距離をあけた彼女は

空中で体をクルリと一回転させてから

放置された車の上に着地する。

戦いが始まって10数分、

ここで初めてお互いの姿をしっかりと確認できた。

 

ツインマシンガンを手に戦うガンナー、

彼女の名前はアリスという。

露出した肩や膝にある特徴的な肌の模様や

青い右目と赤い左目からもわかるように、

種族はデューマン。

種族特有の角は小さくて

よく目を凝らさなければ見えなかった。

灰色の髪を少し雑に切り揃えている、

エターナルFレイヤーという髪型に、

ホルタ―ネックのキャミソートと

短いハーフパンツというラフな

「アクティブキャミ/F」という服装に加え、

腰に巻いた白いチェックのシャツが

どこかボーイッシュな印象を与える。

これで笑顔でも振りまいて街中を歩いていれば、

モデルか何かとでも勘違いされそうだが、

浮かべる表情は感情の起伏が薄く無表情だ。

ツインマシンガンを構えながら相手を

見つめる様はどこか殺し屋を思わせる。

 

「ふん……」

 

対するのは2メートルは越すであろう

巨大な人型の「何か」。

人型といえど断じてアークスなどではない。

棘のような鋭角的なフォルムに

全身を覆うのは紫色の見るからに堅そうな皮膚。

所々ダーカー特有の赤い光が

ラインとなり浮かび上がっており、

角映えた赤い瞳は獲物を狙う

肉食獣のごとく爛々と輝いている。

ダーカーのようだが明らかにダーカーを超えた存在。

もしこの場に、アークス……

その中でも六芒均衡クラスの人間がいれば

すぐにその正体がわかっただろう。

 

――ダークファルス

 

そう、【巨躯】の本体ともいえる

「ヒューナル」と呼ばれている人類の敵だ。

 

「……むん!」

 

ヒューナルは眼にも止まらぬ速度で

一気に距離を詰めてくる。

アリスはすかさず跳び

 

「バレットスコール!」

 

空中で体を反転させ

にある先ほどまで自分が立っていた車に連射する。

 

ドガンッ!

 

すると中に残っていた燃料に引火して

激しく爆発した。

接近していたヒューナルは爆発に巻き込まれるが……

 

「ぬるい……ぬるいぞ!」

 

爆発の衝撃をもろともせず

燃え盛る火炎の中を悠々と動き、

車の残骸を思い切り蹴り上げる。

 

「……くっ!」

 

すかさずにアリスは空中を蹴る。

何もない空間を蹴る、というのは傍から見れば

非常に不可思議な光景に見えるかもしれない。

だがガンナーというクラスは、

フォトンの足底から放つことで「キック」し、

それで空中で姿勢を変更することを得意とする。

空中戦の覇者、それがガンナーという存在。

 

だが今回は相手が悪い。

横に跳んで残骸は避けたものの……

 

シュンッ!

 

少しだけ掠ってしまい、空中で姿勢を崩す。

その隙を逃すヒューナルではない。

強靭な脚力ですかさず空中のアリスを追撃する。

同じ高さまで一瞬で跳びあがり

蹴りをしようとしてくるが

 

「エアリアルシューティング!」

 

アリスの方が早く蹴りを放ち、

ヒューナルの体を蹴って更に高く跳びあがった。

 

「……!」

 

そして上にあった信号灯に手をかけ、

そこを軸にクルリと器用に回転して更に上に跳びあがる。

 

「エルダーリベリオン!」

 

高い上空……安全圏から

強烈な弾丸で応酬する。

空中でも防備になった

ヒューナルに弾丸が降り注いだ。

 

「ふんっ!」

 

だがヒューナルは煩わしそうに腕を一振りするだけで

そこから放たれた赤い衝撃波が

フォトンの弾丸を消し飛ばす。

 

「……くっ」

 

アリスは埒があかないとばかりに、

街灯を器用に跳び渡りながら逃げる。

 

「……!」

 

それをヒューナルは追いかける姿は

まるで獲物を狙う肉食獣のよう。

アリスが立っていた街灯をなぎ倒しながら進み、

街灯がへし折れる音が市街地に響きわたった。

 

アリスはその若い見た目とは裏腹に

ベテランのアークスである。

タイマンにおいては大型のダーカーですら

対等に渡り合う実力を持つ彼女ではあったが、

今回はさすがに相手が悪すぎた。

 

今までの敵とはあまりにも桁が違いすぎる。

それでもこうして一対一で戦い、

なんとか凌いでいるのはさすがと言わざる得ない。

 

「……!」

 

脇腹を押さえる。

服に印刷された金色のサソリのエンブレム、

そこが血で滲んでいた。

先ほど掠った残骸でできた傷だ。

すぐにどうにかなる傷ではないが、

それでも体力を消耗するのは間違いない。

あまり感情を表に出さない彼女も、

少しではあるが焦りが顔に出ていた。

 

「……?」

 

その時、レーダーに反応がある。

それはアークスの反応だった。

こちらに近づいてきている……。

アリスは思案する。

数がいれば良い、

という相手ではないのだ。

下手に助けを求めれば被害を増やすだけかもしれない。

 

だが……

 

「……賭けよう」

 

一類の希望を、

そのアークスたちに託して駆けだした。




新たなゲストキャラが登場早々に苦戦しておりますが、
この世界ではダークファルスに対抗できるのは
ろくぼーけっこークラスでないと相当苦しい、という設定です。
イメージとしては防衛線に出てくる
二つ名ブーストスーパーヒューナル、
AISすら軽く壊すという常にあの状態思ってください。

表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
EP1が終わり、EP1.5は EP2との間の時間軸となります。

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なおイラストとか挿絵書いてくれる人は万年募集中です。

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