スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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やっとタイトルがチーム名だってことが書けました。
花の名前を冠するチームはやはり、花言葉って大事ですよね。
どんなゲームでもチーム名、ギルド名というのは想いを込めるもの。
そのチームに相応しい名前、
また名前に相応しいチームでありたいですよね。



【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
1日1回ちまちまと連載していこうと思います。
(場合により不定期)


009.「スノーフレーク」

「ウェズ=バレントス、レシア=エルシア。

 チームを設立したい……ですか?」

 

アークス補佐官のコフィーは怪訝な顔をする。

 

「ああ、設立に条件はないはずだよな」

 

ウェズが突然言い出した言葉に考え込む。

新米アークスがチームに入団したいから紹介してほしい、

とは割と頻繁に頼まれることだ。

しかし大体は取り次ぐまでもなく門前扱いを受ける。

実力のあるチームは当然ながら危険な任務を請け負うことが多い。

だから半端モノを受け入れても面倒を見れないのだ。

 

新米で伸びるタイプのアークスは

断られた後、同じ実力の仲間とクエストを重ねて実力をつけ、

それで改めて中堅どころのチームに入れてもらう。

長く活躍するアークスに多いパターンともいえる。

 

勿論色んなケースがあるが、

新人アークスが2人でチームを作りたいと言い出したのは初めてだった。

 

「勿論……設立は可能、ではありますが……」

 

どういう経緯でその考えに至ったのか。

それは確かに気になるが……

 

(悪くない……のでしょうか)

 

新米アークスに必要なのは、

きちんと成長にあわせたステップアップだ。

しかし補佐官たちがアークス全ての成長度合いを

きちんと把握できているとは言い辛い。

それに対してチームに対してならば依頼を出すことも多く、

またチームマスターから報告を聞けば

チーム内のアークスのことを確認しやすくもある。

 

「わかりました。チーム設立の手続きをしましょう」

 

喜ぶ二人の顔を見て、咳払いを一つ。

 

「ただしいくつか制限を決めさせて頂きます」

 

「制限ってなんだよ?」

 

「そうです、あなたがたはまだ未熟なのですから。

 まずチームとしての使える機能は一部のみとします。

 これはチーム活動で実績をあげれば順次開放していきましょう」

 

「その、具体的には何ができるんでしょうか?」

 

問いかけるレシアにコフィーは2本指を立てる。

 

「一つはチームオーダーを受理できます。

 チームに対しての依頼であり個人には回さない依頼が多いです。

 まずはこちらで実績を重ねてください。

 もう一つはチームメンバーの募集。

 あなたたちのチームにとって適材のアークスがいれば

 私からも紹介をさせて頂きます」

 

「それはわかった。

 いくつかってことはまだ制限があるんだよな?」

 

「はい、もう一つはチーム専属の補佐官を

 こちらから用意させて頂きます」

 

ウェズが「どういうことだ?」とレシアに問いかけると、

彼女も首を振った。

 

「コフィーさん。専属で補佐官を用意するというのは

 制限という表現にあわないような気がしますけれど」

 

「そうですね、それがベテランの補佐官であれば」

 

彼女は「コホン」と咳払いをする。

 

「これは依頼でもあります。

 私達補佐官にも研修生……

 未熟な子をあなたがたのチームで実地研修をさせてもらいたいのです。

 チーム業務はしかり、クエストでのオペレーターも担当させます」

 

「研修生……なんですか」

 

「いやそれでも専属のオペレーターがつくのは

 俺たちにとっもてありがたいんじゃねーの?」

 

確かに新人アークスに対して専属でつく補佐官、それが卵だとしても、

まだまだ左も右もわからない二人にとってはメリットしかない話だった。

 

実はこれは研修、という名目ではあるが、

二人が危険なことをしないように見守れるという

コフィーなりの配慮も含んだことなのであった。

新人オペレーターは何事も慎重になる傾向が多く、

いざとなった時にはストッパーとして期待できる。

 

「ご納得頂ければ、チームを設立します」

 

「ああ、頼むぜコフィーさん」

 

「お願いします」

 

「ではウェズ=バレントスとレシア=エルシア。

 両名が所属するチームを今ここに設立します」

 

頭を下げる二人にコフィーは手続きをしようとしたが

「あっ」とクールな彼女にしては珍しく本当に素の声が出た。

 

「そういえばチーム名をまだ聞いていませんでした」

 

「へ?」

 

「え?」

 

きょとんすると二人に、彼女は眉をひそめて

 

「……まさか、決めてなかったのですか?」

 

「「……」」

 

二人は沈黙する。

 

「はあ……まずはチーム名を決めてからまた来てください」

 

カウンターの奥に戻ろうとするコフィーを慌ててウェズは引き留める。

 

「コフィーさん、たんま! ちょっと待ってくれ!」

 

何かアイディアはないかと考えて、

「そうだ!」と閃いたらしく端末を見せた。

 

「これに映っている花の名前、何か知ってねーか?」

 

「……花? 突然何を言い出すんですか」

 

そう言いつつ端末を覗きこんで、しばらく考えていたが

 

「惑星ナベリウスの植物ですか。

 スズラン……いや少し違いますねスノードロップ……」

 

彼女は手元の端末を叩いて画像を解析し、その名前を告げた。

 

「スノーフレーク」

 

コフィーは何度か見比べて頷く。

 

「ナベリウスの植物だから厳密には違うかもしれませんが、

 恐らくはスノーフレークに近い植物でしょう」

 

「それだ!」

 

ウェズは叫んだ。

 

「俺たちのチーム名は『スノーフレーク』。

 これで行くぜ!」

 

彼は振り返りレシアに「いい名前だろ?」と満面の笑みを浮かべる。

 

「良い響きですから、私も賛成ですけど……

 一体何を見せたんですか? それにどんな花なのか気になります」

 

「ああ、これを思い出してさ」

 

彼女にも端末に保存された画像データーを見せる。

 

そこには一面に咲く白い花。

細長い葉っぱが生い茂り、

その先にはお洒落なランプのような小さい花が咲いている。

自己主張が強い花ではないけれど、

風にそゆぐその花々はどこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

「え……ちょっと!」

 

そしてその花に囲まれて気持ちよさそうに寝息を立てているのは……

 

「あの時の写真、まだ残していたんですか!?」

 

出会った時のレシアだった。

 

「ああ、いい顔で寝てるだろ?」

 

「あなたって人は最低です!

 今すぐ消してください! 端末渡してください!」

 

「いーじゃねーかよ。

 スノーフレークの花が映った写真がこれしかないんだから……

 ってこら、やめろ、しがみつくな叩くな!」

 

「せっかく見直したと思ったのに、ホントデリカシーないんですから!」

 

ぎゃーぎゃー叫ぶ二人に、コフィーは溜息をつく。

そしてさっそくチームの登録作業にとりかかる。

ウェズ=バレントス、レシア=エルシア。

二人が運営していくチームはどんな形になって行くのか。

 

(それにしてもスノーフレーク……ですか)

 

彼女は調べた端末を改めて見る。

 

 

スノーフレーク。

花言葉は「純粋」「純潔」「汚れなき心」

ウェズが意識したことではない偶然だろうけれど。

 

(チーム名に込める意味としては良いですね)

 

そして最後の意味は

 

 

――皆をひきつける魅力

 

 


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