マイ「艦これ」「みほ2ん」(第2部)   作:しろっこ

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水路に落ちた司令が気づくと捕虜の姿が無かった。だが追撃部隊が敵を追い詰める。しかし司令はある決断をした。


第43話<決断>(改)

 

(あの深海棲艦までやられてしまわないか?)

 

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マイ「艦これ」みほ2ん」

 第43話 <決断>(改)

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 気を失っていたのは数分だろうか?

 

「司令っ、しっかり!」

この声は日向か? そういえば目の前で橋が破壊されたことを思い出した。

 

「はっ」

……我に帰った。

 

「気付かれましたか?」

青空をバックに私を覗きこんでいる日向の『どアップ』だ。その向こうの空を瑞雲が旋回している。

 

 全てがドライな日向に、ここまで接近されると、ちょっとビックリするが……いや、それどころではない。

 

私は直ぐに上体を起こそうとするが……

 

「ん? 冷たい」

ああ、そうか。ここは水路の中か。

 

私の思いを察したように彼女も頷いて淡々と説明する。

「司令、ここは水路です。何とか足は届くかも知れませんが」

 

「済まない日向」

と言いながら私は彼女に支えられて上体を水路の中で起こす。

 

何とか立ち上がるが

「イタタ……」

 

全身打撲か。ハンドルで額を打ったような感触……おでこがズキズキする。

 

 見渡すとコンクリートの土手……ここは確かに水路だな。口の中がしょっぱい。

 

 日向が身体を密着させて私を支えてくれる。彼女の場合、不思議と変な気は起きないのだが……やや筋肉質な身体ながら、やはり柔らかい感じ……女性なんだなと思わせた。

 

彼女は言う。

「司令、お体は?」

 

「ああ、まぁ中身は検査しないと分からないが、今のところ打撲程度で済んでいる感じだな」

 

「……良かった、です」

意外な言葉。彼女自身あまり使わない単語だろう。

 

 一瞬、二人の間に気恥ずかしい空気が流れた。

 

その空気を払うように私は言う。

「そうだ、あの捕虜は?」

 

 次の瞬間、私の背後で突然大きな音がした。

 

「え?」

振り返ると巨大な水柱が上がっていた。

 

見ると艦娘が……第六駆逐隊が何かを追っている。

「潜水艦か?」

 

指揮を取っているのは神通さんか。

 

日向は改めて敬礼をした。

「報告致します。軍用車が水路に落下直後、司令は頭部を強打され意識を失われました。私は直ぐに救出を試みましたが……」

 

また背後で水柱が上がる。

「逃がさないわよ!」

 

恐らく瑞雲だろう。機銃掃射の音も聞こえた。日向は報告を続ける。

「落下直後、恐らく至近距離からの魚雷が土手に着弾。激しい水柱と水圧の中で私は司令を確保。その間に敵の特殊部隊及び潜水艦数隻が捕虜を強奪しました」

 

「なに?」

確かに周りを見ると私たちしか居ない。やはり捕虜を狙っていたか。

 

「ビンゴー!」

背後で、また水柱。今度は火柱も立った。敵の潜水艦か特殊潜航艇に攻撃が命中したらしい。

 

「このままいくと……」

私は慌てて口をつぐんだ。

(あの深海棲艦(大井・仮)までやられてしまわないか?)

 

私の思いを察知したらしい日向は急に私の手を取った。

「司令……」

 

相変わらず淡々としているが、その眼差しは何かを懇願するように真剣だった。

「捕虜、あいつは敵です!」

 

彼女には私の気持ちが分かる反面、艦娘として許せない想いもあるだろう。

 

「司令の意図に反するようで申し訳ありません……が艦娘たちの想いは皆、同じはずです!」

もともと口数が少ない彼女だが絞り出すように訴える。

 

「しかし……」

私は何とか返したが日向は構わず続ける。

 

「この作戦は秘書艦が直接指示を出されています。でも……でも」

急に声のトーンが下がる。

 

かなり押さえているとはいえ、ここまで感情的になる日向は初めてだ。それでも私には、あの深海棲艦が気になるのだ。

 

「あの子は……」

私もようやく声が出た。

 

「沈めるべきではない」

その言葉に何かが外れたようになった日向の表情が変わった。

 

 私は一瞬『しまった』と思った。いわゆる『地雷を踏んだ』という奴だ。

そのとき初めて目の前の艦娘から殺気を感じたのだ。それが日向だと、なおさら緊張感が漂う。

 

「司令!」

思い詰めたような彼女。

 

「……」

私は何も返せない。

 

次の瞬間、彼女が私に抱きついてきた。

「あ……」

 

 変な話、私は死を覚悟した。丸腰とはいえ相手は艦娘だ。その腕力があれば、この場で私を絞め殺すくらい容易(たやす)いだろう。

 

 だが、私は絞め殺されなかった。

彼女はホンの少し丸みを帯びた身体で呟くように言った。

 

「司令が撤回命令を出されるなら私も咎(とが)めません……」

私の胸で、ふっと寂しそうな目をした日向。私はドキッとした。

 

 やはり心の底では反抗するのか? ……本来、指揮官には絶対従順であるはずの艦娘だが生真面目な日向らしい一途さがあるな。

 

 もちろん艦娘たちが敵を憎む気持ちも理解は出来る。これは戦争だ。最前線で戦う艦娘にとってはキレイごとではない。

 

相手は武力行使をしてきている。それに対して全力で立ち向かう艦娘たちが間違っているのではない。

 

敵は敵、まして個人的な思い込みによる同情は無用だ。むしろ可笑しいのは私の方だろう。

 

「追い詰めたよ!」

どうも指揮をしている神通さんよりも第六駆逐隊の方が目が血走っているようだ。

 

だが私は決断した。彼女の両肩に手を添えて改めてその顔を見ながら諭すように言った。

「日向、済まない。あいつは……見逃せ」

 

「……」

とても哀しそうな目をした日向は、一瞬ためらった後に敬礼をした。

 

「了解」

そして彼女は淡々と美保鎮守府司令部に通信を始めた。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。

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