マイ「艦これ」「みほ2ん」(第2部)   作:しろっこ

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季節は、お盆前。地元に着任している司令は、お墓参りに絡んで艦娘たちの故郷について想いを馳せた。すると秘書艦が急に妙なことを言い出す。


第1話<艦娘の故郷>(改2)

「艦娘って、帰省するのか?」

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第1話 <艦娘の故郷>(改2)

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 美保鎮守府の朝。私は執務室に居た。

「今朝も良い天気になったな」

 

 書類を置いて事務作業を中断した私は軽く腕を伸ばす。それから立ち上がって執務室から美保湾を望んだ。開け放った窓からは緩い風が流れ込んでいる。

 

 昨日は、まさかの港湾内での激戦。鎮守府の全員が徹夜だった。それでも敵を撃退したから良かった。

 

 結果的には呉や神戸、舞鶴の作戦参謀たちも巻き込んでしまった。そんな彼らも昨日のうちに全員無事に所属の鎮守府へ送り出した。

 

 個人的には舞鶴との間にあった誤解が解けて良かった。

 

ついでに彼と北上との確執も

「……まあ、解決されたのかな?」

 

 私は苦笑した。

 

「そういえば、あいつの」

 私は頭に手をやって思い出す。彼の兄……軍で医師をやっているという人物が気になった。問題児なのだろうか? 

 

「まあ良いや。それは追々調べていこう」

私は頭を振った。せっかく良い気分なのに面倒なことは御免だ。

 

「さて……と」

私は再び机に戻る。

 

 実にバタバタした数日間だった。挙句に戦闘か……。

それでも昨日のドンパチ分の軍令部に出す報告書は秘書艦の祥高さんと一緒に突貫工事で片付けて昨日のうちに提出した。その後は特に軍部からも内容への物言いは付いていない。だから今朝は気分的にもホッとしているのだ。

 

 今朝から埠頭では重機の音が響く。昨夜攻撃されて破壊した南埠頭を修理しているのだ。美保鎮守府で特定契約している地元の土建業者が入って工事をしている。一部は昨日から早速入って貰った。埠頭さえ元に戻れば直ぐにでも艦隊運用が再開出来るわけだ。

 

 そもそも昨日みたいに港湾内で戦闘を、おっ始めたら施設だけでなく艦艇にも多少の被害が出ていたはずだ。でも艦娘は本人たちが鎮守府内で逃げ回れば何とかなる。実際、昨日の艦娘への被害は皆無だった。

 

「そうか艦娘には、そういう利点もあるんだ」

 私は自分で納得した。そう思うとなぜか得意そうな、あの青年将校の顔が思い出された。艦娘は不思議な存在だな。

 

 一昨日の彼とのやり取りにも、しっかり応対してくれた祥高さん。彼女は、さっきから戦闘やら、その後の艦娘の着任処理の調整で鎮守府内を走り回っている。

 

 本当にタフな秘書艦だと思う。それでいて文句も言わない。彼女は、どちらかといえば寡黙なタイプだ。こういう部下は指揮官としては助かる。

 

 私は机の上を見た。そこには祥高さんが置いた『南埠頭修繕工事計画書』というファイルがある。計画によれば今週中には埠頭の基本工事が完了する。

 

「一週間……」

 私は壁の暦を見た。気が付けば8月だ。時の流れは速い。お盆を前にして美保も若干は気温が下がってきた。朝晩も涼しい風が吹く。

 

 実は私の母親には美保への着任のことは手紙で伝えてある。軍隊の司令職といえば世間的にも認められる立場だ。だから多分、喜んでくれたことだろう。

 

「しかし実は艦娘の司令でした……なんてね」

 私は苦笑した。この説明は実際に面倒そうだ。そもそも艦娘という存在が、まだ世間的に、あまり認知されていない。機密までは行かないが、海軍省もまだ積極的に一般国民に宣伝はしていない。「知る人ぞ知る」といったところか。

 

 まあ艦娘は置いておいても、母親は私が地元に戻って来ていることは知っていても、こちらの細かい状況は分かり難いだろう。

 そういえば私の父も空軍の操縦士だったが、今思えば彼も謎が多かった。やはり軍事機密か?

 

「まあ軍人なんて、そんなものだ」

 私は自分に言い聞かせるように呟いた。だいたい艦娘自体が謎めいているからな。

 

 ちょっと集中が途切れた私は、ボーっと壁の暦を見ていた。

「あ、よく見たら来週は、もうお盆か……墓参の季節だな」

 

 私も実家の墓参なんて、もう何年もご無沙汰だ。帰省もロクにしなかったから。でも、せっかく地元に着任しているんだ。今年くらいは墓参り行くべきかな?

 

……そこで、ふと思った。

「艦娘は、お盆に帰省とか、するのか?」

 

 いやそれ以前に、艦娘の素性や生い立ちについては、まったく知らない。そもそも艦娘は普通の人間じゃないから分かるはずも無いか。

 

「戻りました」

 秘書艦の祥高さんが書類の束を抱えて執務室に帰ってきた。私は今の疑問を彼女に尋ねてみた。

 

「戻って早々変な質問だけど……艦娘って帰省するのか?」

 書類を整理していた彼女は、その手を止めると一瞬、考えた。

 

「帰省という概念が当てはまるか分かりませんけど……強いて言えば海軍工廠とか造船工場でしょうか?」

「あ、そうか」

納得したような、良く分からないような。

 

「もっとも休暇に自分の造船所とか生まれ故郷へ足を向ける艦娘は、ほとんどいないでしょうね」

彼女は苦笑する。

 

「やっぱりそうなんだ」

 彼女らは生まれた時点で既に一人前だ。人間的な幼少時代とか親戚や血縁すらない。だから「故郷」という郷愁も湧かないか。

 

「ただ……」

祥高さんが続ける。

 

「出生地よりも自分たちを鍛えてくれた戦場や鎮守府、同じ部隊内での艦娘同士の共通の戦歴そのものが彼女たちの心の故郷となり得ますね」

 祥高さんは淡々と続けた。それって、まさに「軍人」そのものだな。やはり彼女たちは生まれながらにして戦うべき宿命を背負っているのか。フム、妙に納得した。

 

「で……司令は帰省されますか?」

 いきなり祥高さんに切り返されて、こっちがビックリした。

 

「あ、いやぁ……」

 何故か頭に手をやってシドロモドロになってる私。

 

 彼女は続ける。

「内規では私たち艦娘と違って司令は疲労回復のため休暇も認められています」

 

……それは、まるで辞典を読んでいるみたいな言い方だな。

 

「居場所の確認と……常に通信可能な環境下であれば日数をまとめて休暇取得することも可能です」

「え……」

 直ぐに、あの駆逐艦の寛代を連れまわした自分の姿が想像できた。

 

「いや私の地元は直ぐそばだ。改めて、そこまでする必要もないだろう」

(だいたい、あんな小さな子を連れて地元をウロウロしたら、どこで誰に見られるか分からない)

 

 私は妄想を膨らませた。地元の知り合いに出くわして「お嬢様ですか?」 ……なんて聞かれた日にゃ、どう応えるんだ? 恥ずかしい。いちいち説明するのも億劫(おっくう)だ。

 

 だが祥高さん、いきなりカットインしてくる。

「司令が否定されても現在のお立場上、護衛艦を必ず一人以上、随伴して頂きます」

 

「え?」

思わず妙な声が出た……何か、話が勝手に進んでいないか?

 

「えーっと、護衛艦必須?」

頭が付いて来ない。私は妄想の世界から強引に現実に引き戻された感覚だ。

 

「そうなると、祥高さんとか大淀さん以外の?」

今度はキリッとした二人を引き連れる光景が妄想された。やめてくれ。

 

(どうせなら、ちょっとボーっとした艦娘が良いな)

そう思ったら彼女が追撃してくる。

 

「ご安心下さい。私たちが地上で行動する時は艤装が装着出来ません。ですから原則的に護衛役には駆逐艦以上、軽巡級以下の艦娘が同伴します」

 どんどん、話が進む。あれあれ? 

(祥高さん、もうあなた作戦参謀になったら良いよ)

 

「軽巡以下で強い娘……」

嫌な予感しかしない。天龍とか龍田さんだと別の意味で輪をかけて、ややこしくなりそうだ。堪らず私は立ち上がると再び美保湾を見た。大山が綺麗だ。

 

 私が窓の外を見ながら一人で悶々していると名簿を見ていた祥高さんが顔を上げた。

「司令、夕立がお勧めです」

 

「へ? ……夕立ぃ?」

 居たんだ、そんな艦娘。あれ? どっかで聞いたことはある。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。

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