【ネタ】アホの子ルイズちゃん   作:花極四季

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最早ルイズちゃんはアホの子ではなくなってきている気がする。


第八話

こんばんわ、ルイズです。

前回のあらすじ。山道通ってたら襲われた。作為めいたものを感じたので野盗を拷問した。

そういえば誰にも話してなかったけど、野盗からは何も聞けなかったよ。

まぁ、口を開かずともこちらの情報が筒抜けな可能性を隠せていないんですけど。プギャー。

ともあれ、夜遅くにラ・ロシェールに到着した私達は速攻で宿を取ることに。

眠くて仕方ないんだけど、何故かワルドと同部屋になったせいで、彼のお話に付き合う羽目に。

さて、夜はこれからだ。頑張ろう。

 

 

 

「で、何を話すつもりなのかしら?」

 

「そうカッカしないでくれ。久しぶりの再開なんだ、今日を逃せばしばらくこうして二人きりで話すこともままならないだろうしな」

 

「………仕方ないわね」

 

任務に支障が出たら賠償請求でもしよう。

 

「すまないな。ず、先程の野盗の件だが―――」

 

「それなら、口は割らなかったわよ」

 

「ふむ。まぁ、仮に口を割ろうともなかろうと、少しでも情報が漏れないように彼らを始末しに動いているだろうがな」

 

「金で動くような輩に、最初から機密保持なんて期待していないでしょうしね」

 

「可哀想だとは思うが、そこまで面倒見切れん。彼らの命より重要な任務があるからな」

 

その重要な任務って、恋文届けなんですけどね。

王女の恋文>傭兵の命って図式が平気で成り立つ辺り、本当世知辛いというか、世界って腐ってるなぁと。

アンが即位したらまじで干渉しようかな、政治に。

そうしないとこの国終わるでーまじで。

 

「………ルイズ。君なら勘づいていると思うが、野盗をけしかけた組織は―――」

 

「今、アルビオンと戦争中の組織かしら」

 

「レコン・キスタだよ。少なくとも、このタイミングで干渉してくるとしたらそれしか有り得ないだろう。同時に、僕達の密命も奴らにバレていると考えてもいいだろうな」

 

「スパイ、か。ぶっちゃけこのタイミングでスパイ疑惑あるのって貴方ぐらいよね。戦力としても信頼度からしても適任だし」

 

「はは………。確かに彼らの聖地奪還という目的は僕の理念とも一致しているけど、あんなぽっと出の組織に身を置くほど愚かじゃないよ。それに、裏切ったなんてカリン様にバレたら、彼女自ら極刑に赴くだろうしね。そうなった時点でレコン・キスタは終わりだよ」

 

「確かにね。あの人が本気になったら国一個丸ごと使って相打ちレベルだし」

 

「ともあれ、僕がスパイではないことは証明できたかな?」

 

「出来たかはともかく、あのしごきを受けて反抗しようと思う人がいたら尊敬するわね。真似はしたくないけど。―――そういうことだから、安心していいわよサイト」

 

ガタッ、と扉が動く音が響く。

最初からわかってたっつーの。

こちとら幼少時代にどこぞと知らぬ森にナイフ一本渡されて放置された経験があるんだっての。

獣に劣る気配遮断でバレないと思うたか。

 

「使い魔君は君を心配していただけなんだから、そう構えなくともいいだろうに」

 

「私、コソコソしている人って嫌いなの」

 

ガタッ、と再び扉が動く音。

今度は音だけでなく、部屋に入ってきた。

 

「はは、一本取られたな使い魔君」

 

「………うっせーやい。元はといえば、アンタがあからさまに怪しいのがいけないんだろうが」

 

「これは手厳しいな。そう思われても仕方がない立場だから、反論はできないね」

 

はっはっは、と高らかに笑うワルド。

ほんと、髭のせいで損しているわね。若い嫁さん欲しくないのかしら。

 

「あ、あとひとつ言わせてもらうけど―――こうして再び君と膝を交えて語り合って分かった。君はもう、僕にとって妹のような感覚でしか接することができなくなっていたよ。昔は本気で惚れていた筈なんだけどなぁ」

 

「若さ故の衝動って奴でしょうね。まぁ、ロリコン認定されなくて良かったと思えばいいんじゃない?」

 

「そうだな。むしろ年の近い使い魔君とが君にはお似合いだよ」

 

「サイトは私の使い魔よ。それ以上でも、それ以下でもないわ」

 

どさり、と音がした方向に振り向くと、サイトが倒れていた。

 

「はは、前途多難だな、使い魔君」

 

訳がわからないわね。

取り敢えず、サイトをワルドに運ばせて私は勝手に眠りについた。

 

 

 

 

翌朝。

なーんか騒がしいなと思って音の出所を辿っていたら、サイトとワルドが剣を交えていた。

 

「なにしてんの」

 

「ああ、おはようルイズ。今朝使い魔君に、俺を鍛えてほしいと頼まれたんだ。どうせ船が出るまでには時間があるし、肩慣らしに丁度いいと思ってね」

 

「ふぅん………」

 

この使い魔は、私が任務だからってトレーニングを自粛しようと誓っていることを尻目に、そういうことをしますか。へーほー。

 

「それにしても、流石君に才能があると言わしめたことはあって、剣技じゃ敵いそうもない。とはいえ、本分は魔法だから気にしてないけどね」

 

「そうね。そういえばサイトは対魔法戦の経験が圧倒的に不足しているし、ここで身体に嫌と言うほど刻んでおけばいいんじゃないかしら」

 

「任務に支障が出ない程度にはそうさせてもらうつもりだよ。こんな機会、そうはないだろうしね。………にしても、不機嫌そうだけどどうしたんだい?」

 

「べっつにー」

 

あーあー、はやく船でないかなー。

暇だから散歩してこよーっと。

 

「って、あれは―――」

 

散歩に出てしばらく経ち、見覚えのある後ろ姿を発見する。

 

「ミス・ロングビル。どうしたんですか、こんなところで」

 

「ミス・ヴァリエール!無事でしたか」

 

「どうしたんです、そんなに驚いて」

 

「驚いたというか、私は貴方を捜していたんですよ。学院長に様子を見てきて欲しいと」

 

わーお。どれだけの人数にこの機密漏れてんじゃい。

 

「それにしても、その様子では夜通しで来たんじゃないんですか?私達の宿泊している宿がありますので、そちらで休息を取られたら如何でしょう」

 

「そうですね、お言葉に甘えさせていただきましょう」

 

うーん、どんどん大所帯になっていくなぁ。どこぞの国民的RPGも真っ青だね。

 

「おかえりルイズ―――って、ロングビル先生じゃないか」

 

戻ると、サイトが出迎えてくれた。

ミス・ロングビルがいることに驚きを隠せない様子。まぁ、わからなくもない。

 

「さっき会ったのよ」

 

「学院長に様子を見てこいと仰せつかったもので、先程ここに着いたばかりなんです」

 

「というわけで寝床に案内するから、手続きよろしく」

 

「あ、あぁ………」

 

サイトが戸惑いながらもチェックインを済ませるのを確認し、二階に案内する。

 

「では、おやすみなさいミス・ロングビル」

 

「ええ、おやすみなさい」

 

よし、一仕事終わった。けど、また暇になった。

禁を破って訓練してもいいんだけど、疲労が残って支障が出るのもやだなー。

なんてことをごろごろしながら考えている内に、日は沈んでいた。パネェ。

それにしても、なーんか騒がしいような。

外を覗いてみると、なんか無骨ででかいゴーレムがいました。

あ、なんか拳降りかかってきた。

 

「建物ごと潰す気でしょうけれど、相手が悪かったわね」

 

即座に肩部へ向けて爆発魔法を当てる。

全破壊には至らなかったが、関節部分を欠損したゴーレムのパンチは制御を失い、宿屋ではなく地面を砕く。

その隙に一階に下りる。

 

「ルイズか、この騒ぎでようやく覚醒とはね」

 

一階には、カウンターを遮蔽物に隠れているワルド達がいた。

 

「一体何があったっていうのよ」

 

「どうやらレコン・キスタの襲撃らしい。巨大なゴーレムを操るメイジとメイジ対策をした傭兵に囲まれている」

 

「随分大胆な行動に出たわね」

 

「アルビオンからもそう遠い距離ではないからね。レコン・キスタ側が現在有利な以上、この辺りも奴らの目が光っていたとしても不思議ではない」

 

「足止めされている内に相手は戦力をかき集めていたってことね。ま、相手側に運は向いているようだけど―――」

 

「運だけじゃ私達を止めることはできない、そうよね?」

 

キュルケの言葉に全員が頷く。

ここにいる者達は皆が実力者であり、戦いというものを理解している。

ミス・ロングビルはわからないけど、彼女とてトライアングルメイジの端くれ。戦力としては申し分ない。

 

「それにしても、あんなゴーレムを召還できるようなメイジがレコン・キスタにいたとはね。もしかして、あれが土くれのフーケなのかな?」

 

「………いえ、それはないでしょう。フーケはあくまで義賊として貴族の宝を盗んでいたのであって、こんな傭兵紛いのことをする人物ではない筈。そうでなければ、その方面でもフーケの話題が上がっていても不思議ではありませんしね」

 

ミス・ロングビルの言い分はもっともだった。

それにしても、熱の入った弁だったけど、因縁でもあるのかな。

 

「じゃあ、あれはせいぜい模倣犯というところか。土くれのフーケの名も最近聞かないし、名を利用してレコン・キスタに入ったのだろう」

 

「………よし、決めた」

 

「何がだ、ルイズ」

 

「あの偽物のフーケを本物にでっちあげよう」

 

「「「「「は?」」」」」

 

タバサ以外がはもる。

 

「今のところフーケはローブを纏い人相が不明。つまりフーケがフーケ足る証拠は誰にも証明できないわけで、だったら類似した悪党にフーケの罪をかぶせてしまえば、私達はお金が入るしみんなはフーケが捕まって安心だしで、みんな幸せ」

 

「―――いやいやいや、実際にあのゴーレム使いがフーケじゃないとしたら、フーケの脅威を取り除いてはいないじゃないか。そんな嘘が広まるのは色々マズイんじゃないか?」

 

「―――いえ、そうでもありません。フーケは良くも悪くも名が知られ過ぎています。フーケの偽物が捕まったと本物が知れば、これを期に一度身を潜めるかもしれません。それに、あれが本物であろうと偽物であろうと、害悪になる要素が消えることは誰にとっても益になる筈です」

 

そーそー、ミス・ロングビルの言うとおりだってばよ。

 

「ふむ………まぁ、捕まえるかはともかく、彼らを制圧しないことにはそれもままならないけど。君達、何か作戦があるかい?」

 

「じゃあ、俺が囮になるよ」

 

サイトがそんな提案をしてきた。

 

「待て使い魔君、それは危険すぎる。正確な敵の数もわかっていないんだぞ」

 

「別に考え無しってわけじゃないさ。俺はこの中で唯一魔法を使えない生粋の剣士だ。戦力としては見られていない可能性はある。だからこそ、俺の囮は活きるんだ」

 

「どういうことなの?ダーリン」

 

「俺がこの状況下で大立ち回りを演じれば、嫌でも俺に注目が集まる。ただの剣士が無数の傭兵を前に無双しているなんて非現実的な光景を前にするってのは、メイジが同じことするよりも意味があることなんだよ」

 

「なるほどね。じゃあ、それで行きましょうか」

 

「ルイズ、君は―――」

 

「はいはい。言いたいことはわかるけど、いつまでもここで話していたらゴーレムの餌食になるわよ?」

 

キュルケがワルドの発言に割り込む。

それにしても、傭兵達の牽制ばかりでフーケは何かしてくる様子はないなぁ。ご都合主義って奴?

 

「そうだな。彼の頑張りに報いる為にも、とっとと済ませてしまおう」

 

皆が杖を手に、頷く。

さて、私達を嘗めたこと、後悔させてあげるわ。

 

 

 

 

結論から言って、楽勝でした。

フーケまでもがサイトを注目してくれたおかげで、一斉攻撃でゴーレムを塵も残さず粉☆砕したところで、諦め悪くフライで逃げようとしたので、投石で後頭部に一発。

魔法使え?ははは、ぬかしおる。

その後、フーケと傭兵共々憲兵に突き出して終わり。

これをアンに後日報告すれば、報酬がっぽがっぽやでぇ。

まぁ、使う機会ないんですけど。

 

「しかし、宿にかなり被害を与えてしまったな」

 

「私達のせいと言われたらそれまでだけど、私達からすれば悪いのはレコン・キスタだしね。事情は説明できないけど、知ってさえいれば宿の人達も納得してくれると信じましょう」

 

「そうだな。せめて修繕代を当てていただけるよう、姫殿下に取りなしてもらわなければ。それが関係ない彼らへのせめてもの償いになるだろう」

 

「いっそのこと、綺麗に改築してあげたらいいかもね」

 

ともあれ、寝る分にはなんの問題もなかったので、私達は変わりなく宿で夜を明かした。

 

 

 

※余談1

 

後日、ラ・ロシェールの宿は貴族も納得させる豪華な仕上がりに改築され、しかし値段は前より少し高め程度のリーズナブルさを発揮したことにより、大人気の宿になったのはまた別の話。

 

※余談2

 

宿を襲った奴らを倒したという噂が広まったのか、船に乗った際船員によくしてもらった。

やっぱり、いいことするのは気持ちいいね。

 




どこかの感想ではワルドは三下ネタキャラに降格とか書いてた気がしたけど、何故か優遇キャラになっていた。
これも原作乖離の一環だね。こうなったらとことんテンプレ展開から逃げようかな。

偽フーケはロングビルの言うとおり模倣犯です。
そして、偽フーケが捕まったことによりロングビルは後顧の憂いなくこれからを過ごすことができるという、救済オチ。

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