【ネタ】アホの子ルイズちゃん   作:花極四季

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テンプレ展開ってみんな飽き飽きしているのかな?


第七話

あーたーらしーいーあーさがーきーたー。ルイズです。

アンに死刑宣告されて一夜が明けた。

ギーシュも死刑の延長線に付き合うハメになったけど、自業自得だね。仕方ないね。

まぁ、別に戦争に直接武力介入する訳でもないし、生き延びるのに徹すれば問題ないでしょう。

ぶっちゃけ、戦わないのに戦地に赴くなんてつまらない。

だからといって無謀な行動をするほど莫迦でもない。

帰ってからサイトに相手してもらえればいいし、気にしてなんかないんだからねっ。

さて、今日も一日頑張ろう。

 

 

 

「おお、ルイズじゃないか!」

 

サイト達と共に移動用の馬の調整をしていると、突如上空からグリフォンに跨り現れたのは、まさかのワルドだった。

夢で出てきたばかりということもあり、この展開にはものすごーく悪意しか感じられない。

でもそこは淑女の嗜み。ポーカーフェイスでワルドに接する。

 

「久しぶりね、ワルド」

 

「ああ。最後に会った時と何ら変わった様子はなさそうだね―――っと!」

 

瞬間、ワルドは腰に下げたレイピアを抜き、私の心の臓目がけて突きを繰り出す。

私は右腕でレイピアの軌道を逸らしつつ懐に潜り込み、掌底を叩き込む。

しかし、事前に唱えていたのであろうエアシールドに阻まれる。

その程度は予測済み。これは対ワルド戦のテンプレートのひとつでしかない。

エアシールドを蹴り、爆発魔法を散らしながら後方に下がる。

そして仕切り直しになる。

 

「実力の方も、そこまで衰えてはいないらしい」

 

「そこまでとは随分ね。ワルドの方こそ髭まで生やして、肉体の方も老化が進んだのではなくて?」

 

こんな軽口のやり取りも久しぶりだ。

身体を動かしたお陰で、夢の不快感は失せていた。

 

「君との任務遂行なら、達成は確実だろう。期待している」

 

「せいぜい足を引っ張らないで頂戴」

 

拳と拳を突き合わせ、軽口を叩く。

振り向くと、サイトがぽかん口を開けてこちらを見ていた。

 

「どうしたの?」

 

「いや………俺の中のイメージが異常な速度で瓦解していってるだけだから、気にしないでくれ」

 

………?何だかよくわからないけど、取り敢えず言われたとおり気にしないでおく。

 

「ワルド、紹介するわ。彼は私の使い魔であるサイト・ヒラガ。剣術の才能を持った平民よ」

 

「ほう、君が………。僕はジャン・ジャック・フランシス・ド・ ワルド。ワルドでいい。それにしてもルイズに才能があると評価されるなんて中々ないことだぞ。誇りに思いたまえ」

 

そう言ってバシバシとサイトの背中を叩く。

 

「アンタ、俺がルイズの使い魔だって驚かないんだな」

 

「君もルイズの使い魔なら分かっていると思うが、彼女は何をやらかしても納得できる破天荒さを持ち合わせているからな。サモン・サーヴァントをすると風の噂で聞いた時は、始祖ブリミルの使い魔辺りでも召還しても不思議ではないだろうなと真面目に思っていたからね」

 

「………なんていうか、婚約者に向ける態度じゃない気がするんだけど」

 

「ルイズから聞いたのかい?いや、婚約者というのは語弊があるな、候補って奴だよ。何せ彼女の母親に勝たなければ成立しない関係だからね。かく言う僕も、昔から好敵手のような関係を続けていたのと、何年も離ればなれだったこともあり、昔に比べて愛情は薄れてきているな。どちらかと言えば、対等な仲間ないしは妹へ向ける感情が近いかな」

 

「………へぇ」

 

初対面から険悪になることはなかったらしく、これなら道中も問題なくやっていけそうだ。

二人がよろしくしている間に、ハブられているギーシュの下へ近寄る。

 

「ねぇ、姫様が来た際にワルドは側近として側にいたの?」

 

「あ、ああ。閃光のワルドと言えば、トリステインでも有名な風のスクウェアメイジだしね。とはいえ、本人を見たのは初めてだったから、君との接触でイメージが合致したんだけど」

 

つまり、私の夢はワルドと出会う予兆のようなものだったのだろう。

ぶっちゃけ嬉しくないけど、予兆の方がね。

好敵手との出会いという意味では、悪くはない。

だけど、今みたいに拳で語り合う余裕はもうないだろう。

 

「ともかく、そろそろ出陣しよう。この場に長く留まり、下手に注目を集めでもしたら敵わんからな」

 

「アンタがグリフォンでこっち来た時点でアウトだと思うんだ、私」

 

「………出陣する!」

 

コイツ、スルーしやがった。

 

 

 

 

私とサイトは同じ馬に跨り、険しい山道を闊歩している。

目指すのは浮遊大陸アルビオンに至るための船が止まる港町、ラ・ロシェール。

急ぎの旅だけどそれでも一日以上は掛かる道。

本来なら使い魔であるサイトが馬の手綱を握るべきなのだけれど、馬に慣れていないサイトに操らせるのは非効率的なので、私の後ろで大人しくさせている。

最初は同じ馬に乗るのを何故か頑なに抗議していたが、主を護る立場の従者が傍を離れるのは下策なので、こちらも頑なに却下させていただいた。

私の腰に手を回さないと振り落とされるというのに、どうにも未だにおっかなびっくりな手付きで腕との間に隙間が出来ている。

一体何でこんな非効率的な行動を取るんだろう。

 

「なぁ、ルイズ」

 

「何かしら」

 

「お前の母ちゃんって、どんな人なんだ?」

 

いきなり口火を切ったかと思えば、まさかの母親の話題である。

 

「そうねぇ………。とにかく強い人ね。肉体的にも、精神的にも。風のスクウェアメイジで、成り立てとはいえ同じ系統魔法とランクであるワルドとは雲泥の差の実力を持ち、若かりし頃に数々の功績を立て、トリステインでは名を知らぬ者はいない程の有名人よ」

 

「へぇ、娘としては母ちゃんにどんな印象を持ってるんだ?」

 

「一言で言えば、教育ママって奴かしら。幼い頃からとにかく私を強くしようとスパルタ教育を強いられてきたわ。私には姉が二人いるんだけど、その二人がものの見事にインドア派だったり病弱だったりしたせいで、私がお母様の鬱憤を担う羽目になったのよ。今でこそ感謝しているけれど、初めの頃は苦痛だったわ」

 

「ルイズが系統魔法を使えないことに関して、何か言われたことは?」

 

「ないわ。あの人は良くも悪くも実直だったから、他人と違ったりした程度で実の娘を否定するような真似はしなかったわ。元々使えるものはなんでも使え、って主義はお母様譲りの精神だし、事あるごとに『ヴァリエールはトリステインにて最強』って口にする程、自分の強さに対して誇りを持っているストイックな人だもの。寧ろ杖先が魔法発動範囲に限定されない爆発魔法は、お母様にとって寧ろ嬉しかったんじゃないかしら」

 

「何そのヒ○シ様みたいな母ちゃん」

 

そんな他愛のない話をしていると、経験で培った感覚が不穏な空気を感じ取る。

 

「サイト、来るわよ」

 

途端、崖上から降り注ぐ無数の矢。

私は馬から素早く降り、危険な矢のみを爆発魔法で迎撃する。

サイトは馬に乗ったまま器用に矢をデルフで叩き落とす。

 

「うわぁ、何だね一体!?」

 

情けない声を上げるギーシュに、冷静にそんな無防備なギーシュを護るワルド。

 

「恐らく野盗か何かだろう。対メイジ武装をしている辺り、私達がここを通ることを予測されていた………?」

 

「地の利を制しているのも偶然とは思えないし、有り得ない話ではないわね」

 

「まぁ、何であれこのままにしておく訳にはいくまい。ルイズ、頼めるかい?」

 

「任されたわ」

 

私は爆発魔法で野盗達の足下を内部爆破する。

すると、魔法が発動したことに気付かない野盗達は、崩れゆく地面に対処できずにこちらに向かって転がり落ちてくる。

その反動で残らず野盗は気絶。なんともあっけない幕引きである。

 

「おいルイズ!崖が崩れてこっちまで危ない目に遭うだろ!」

 

「きちんと最小限の被害に留めるように調整しているわよ。まぁ、たまにずれるけど」

 

「いや、さらっと問題発言するなよ」

 

あーあーきこえなーい。

 

「ルイズ、彼らは物盗りだの一点張りだが、信じるかね?」

 

「愚問ねワルド。あんな計画性ある犯行を前にして、そんな世迷い言信じる訳ないでしょう?と、言うわけでヴァリエール式拷問術で洗いざらい吐かせてくるわ」

 

「あ、ああ。加減してやってくれよ、こっちの精神衛生上にもよろしくないんだから」

 

「善処するわ」

 

さーて、お楽しみのごーもんターイム。

 

 

 

………見せられないよ!

 

 

 

「あー、すっきりした」

 

野盗への拷問が終わり、みんなの下へ戻る。

そこでは、ワルドがひくついた笑みを、サイトとギーシュは互いを抱きかかえブルブルと震えている。

きちんと見えないところでやったけど、悲鳴は少し漏れていたらしい。やっちゃったぜ。

 

「ねぇサイト」

 

「ひっ―――」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

あー駄目だこれ。

現役軍人でも引くレベルのをやった私もいけないんだけど、つい熱が入っちゃって。てへ。

 

「おーい、ルイズー!」

 

反省していると、バサバサという音と共にシルフィードが舞い降りてくる。

そこにはキュルケとパジャマ姿のタバサが乗っていた。

 

「ワルド、これって隠密任務よね?」

 

「あんな悲鳴まき散らしておいて、今更じゃないか?」

 

「ですよねー」

 

だが、私は謝らない。

必要な作業だったんだし、怒られる謂われはないもんねーだ。

 

「ちょっと、無視しないでよ」

 

「ああ、忘れてた」

 

「忘れてたって………せっかく心配だから後を付けてきたのにその言いぐさはなに?」

 

「頼んでませんしおすし」

 

「おすしって何よ………じゃなくて、これはどういう状況なのかしら?」

 

キュルケの猜疑心溢れる視線から逃げ、ワルドに目配せする。

長年の付き合いから、視線での意思疎通も可能となっているのだ!

その結果だけど、言い逃れははぐらかしは通用しないと判断したようなので、差し支えない程度で吐くことにする。

 

「あれよ、密命って奴よ」

 

「密命、ねぇ。そういえばそこの彼はアンリエッタ姫の傍にいたお髭の渋い方じゃない。成る程、あながち嘘は言っていなさそうね」

 

「と言うわけで、お帰り下さい。貴方の出る幕はなくってよ」

 

「今更にも程があるわよ。出る幕がないとのたまう前に、密命を隠し通す努力をしなさいよ」

 

「はい、おっしゃるとおりでございます」

 

返す言葉もない。

とはいえ、半分以上は派手に登場したワルドのせいなんだけどね。

 

「だが、危険が付きまとうことは事実だ。関係ない人間は関わったところで何の得もないどころか、命を落とす危険性さえあるのだから」

 

「その命を落とすかもしれない場所に赴く友人を前に、おめおめ帰るとでも?」

 

「自分の命に比べたら可愛いものではないかね?」

 

「なら貴方の代役を務めてあげましょうか?そんな臆病な思考に帰結する貴方なんかよりは功績は挙げられる自信はあってよ」

 

なんか喧嘩腰な雰囲気。

ここで断ってもついてくるのは明白でしょうに。

 

「どーどー。もうここまで来たら追い返す方が問題よ」

 

「それはそうだが、これは密命だぞ?こんな大所帯で隠密行動なんて、聞いたことがない」

 

「それなら四人での隠密も変わらない気がするんだけど」

 

「そうよそうよ」

 

「そうだそうだ」

 

「何故僕が悪者扱いなんだ………。というかサイト君、何故便乗してくる」

 

「いや、なんとなく」

 

「くっ、ともかくこれ以上時間は掛けていられない。君達、くれぐれも邪魔をしないようにしてくれたまえよ」

 

なんやかんやで、これでひとまず落ち着いた。

こんなんでやっていけるのかなぁ、と思わずにはいられないルイズです。




取り敢えずここで区切り。
次は船に乗れたらいいな。

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