オーバーロード ~王と共に最後まで~ 〈凍結〉   作:能都

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ドラゴンズドグマオンライン始まりましたね


ワールド移動しようとしたら出来なくてinも出来なくなりました…


追記:指摘のあった箇所と誤字を修正しました。


第2話

「そういえば素のアーロンさんとこんなに話したのは始めてかもしれませんね。いつも騎士風の話し方でしたし。」

 

「…あ、え~と…ごほん…忘れて貰えると助かる。」

 

 女性だという事を隠すために始めたロールプレイだったが、動揺したり感情が昂ったりするとどうにも素が出てしまう事が、現役時代も何度かあった。だが、普段の騎士のイメージからかモモさんを含めて殆どのギルメンにはバレる事は無かったが、餡ころもっちもちさん、ぶくぶく茶釜さん、やまいこさんの女性メンバーには何故かバレていた。3人曰く、「女ならすぐにわかる。」らしい。なんでだろう。

 

「ふふっ、今日ぐらいはいいじゃないですか。私しかいませんし。」

 

「いや、今日は騎士アーロンにとっても最後の日。だからこそ最後までアーロンを演じるとしよう。」

 

 片膝を着き右の拳を左手で包み頭を下げる。

 

「さぁ王よ、命令を。」

 

「そうですね…付き従え、我が騎士よ。」

 

「はっ!」

 

 そうして扉の方へ向かうモモさんに、私は壁に飾られていた一本の杖を指差す。

 

「王よ。お忘れ物だぞ。」

 

「…スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン…でもいいんでしょうか、勝手に持ち出して。これは皆で作った…」

 

  そうこれはアインズ・ウール・ゴウンの輝かしい時代の結晶とも言えるギルド武器。モモさんが迷うのも当然だ。でも…

 

「だが…持ってみたいだろ?」

 

「そりゃ、まぁ…ギルマスって言っても実質連絡係でしたし。最後ぐらいギルマスという権力を使ってみたいとは思いますけど。」

 

「なら問題ないな。今ここに居るのは私だけ、賛成二人で満場一致だ。心おきなく持てるな。」

 

 ユグドラシルに表情を反映する機能があるなら多分モモさんは苦笑してるだろう。

 

「いつもの多数決ですか?二人でやる多数決って…でも、そうですね。今日くらいいいですよね。」

 

 それから手を伸ばし、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掴み取る。スタッフから立ちあがるドス黒いオーラ。時折それは人の苦悶の表情を象っていた。

 

「行こうか、ギルドの証よ。いや…我がギルドの証よ。」

 

 

 

 

 円卓を出た二人は玉座の間に移動してた。二人の後ろには執事のセバスと六人の戦闘メイド、プレアデスが列を成して続いていた。

 

「その刀、いつ見ても凄いですよね。確か「アーロンの妖刀」でしたっけ?確かあのワールドアイテム使って作ったんでしたよね。」

 

「正確には普通に作った後にワールドアイテムで強化したんだがな。けどまぁあの一件のお陰でここに入れた様なものだし。どちらにしても後悔はしてないぞ。」

 

 今から2年前、レベルも100になりアーロンの防具と妖刀を作った私だったが、全然満足出来ては居なかった。なぜならそう、腹切りが出来ないのだ。正確には出来る。ただ自分の腹に妖刀を突き立てればいいだけなのだから。だが自分の攻撃で自分を傷つける事は出来ないし、ダクソの様にエンチャントも付かない。これじゃあ駄目だと思った私は、とあるアイテムを探しに出た。

 

永劫の蛇の指輪《ウロボロス》

 

端的に言ってしまえばユグドラシルの製作会社&運営に依頼してお願いを聞いてもらう物である。そのお願いには殆ど制限が無いのがこのアイテムのぶっ飛んでいる所である。

だがそれは以外にもすぐに手に入った。

 

 サービス開始から何度か使われていたウロボロスだったが、誰も入手方を公開していなくて、まさに雲を掴む様な話だった。とりあえず名前から蛇か竜に関係するモンスターかクエストだろうと踏んで、ワールド内を彷徨っていたが、それはすぐに手に入った。ある日森の中を探索していると、足元に自分の尻尾を噛んで輪になっている蛇のモンスターが現れた。名前は設定されていないのか空欄で、レベルも0だった。まさかとは思いそのモンスターを妖刀で小突くと、HPバーは0になり、名前の無い指輪がドロップした。

 

 町に戻った私は知り合いのマジックキャスターに鑑定を依頼した。すると鑑定されて現れたのはウロボロスだった。

 

どうやって手に入れた!? いくら払えばいい!?

 

怒涛のごとく詰め寄ってくる知り合いを押しのけセーフエリアの宿屋に入り、アイテムを使用。簡単な説明文の後に、要望を書く欄が現れそこに。

 

「アーロンの妖刀に腹切りのスキルを付けて欲しい」

 

とかなり大雑把に書きなぐり送信した。しばらくして具体的な回答を要求されたのでモーションに攻撃力アップのエンチャ、腹切り後の妖刀のエフェクトなど細かい部分の要望を書きそれから1週間後。運営からの完了のメールと共にアーロンの妖刀が完成した。

エンチャントの効果は武器の攻撃力が若干上がるぐらいかなと思っていたが、運営はから届いたメールは、

 

「ワールドアイテム使って武器を強化するのであれば誰もが欲しがるぐらいの強武器じゃなければならない」

 

というもので、エンチャントの効果は武器の攻撃力を1.5倍にし使用者の物理攻撃力・素早さを3割上昇させるというものだった。しかも腹切りを使った際に消費するHPは2割。さらに効果は重複するというまさにバランスブレイクな代物に変わっていた。

 

 嬉しい誤算もあったが、自身の運の良さで念願の腹切りを手に入れ、inしては腹を切るというシュールなユグドラシル生活を送っていた。

 

 だが、すぐに問題が発生した。アーロンの妖刀を作り上げてからというものPK集団に襲われるようになったのだ。だが、考えれば当たり前であった。ワールドアイテムの中でも上位のウロボロスを持っているかもしれない。それを使って莫大な金貨、あるいは超レアなアイテムを得たかもしれない。異業種というのも相まって、PK集団に目をつけられてしまったのだ。

 

 執拗に追い回される毎日。恐らく情報を漏らしたであろう知り合いには連絡が取れず、それこそゲーム引退まで考えた。

 

 そんな時にアインズ・ウール・ゴウンに誘ってくれたのがモモさんだった。

 

「加入した後にやった弐式炎雷さんとの模擬戦の時は驚きましたよ。いきなり自分の腹に刀突き立てるんですもの。」

 

「ははっ。そんな事もあったな。」

 

 そんな昔話をしてるうちに玉座の間に到着した。

 

「「おおぉ……」」

 

 二人してそんな言葉を呟いていた。ナザリックの最重要箇所であるここは他の部屋に比べても圧倒的な存在感を放っていた。

 

「久しぶりに来たが…いつ見ても凄いな…」

 

「私も入るのは久しぶりですが、何度来ても感動しますね。」

 

 そうして、前を歩くモモさんの右の少し後ろを着いて行き玉座まで行く。そこでセバスとプレアデスを待機させる。そしてその玉座のそばに控える様に立っている一人の美女がこちらを向く。

 

「アルベドか…いつ見てもキレイだな~。はぁ…私もこういうものを作る才能があったらな~…ゴホン あればいいなといつも思うんだが。」

 

「いや、そんな事無いですよ。アーロンの作ったNPCもかっこいんじゃないですか。」

 

「あれは前にも言ったがとあるゲームのNPCをそのまま使っているだけだぞ。見た目も設定も。」

 

「そうですけど。そんな事言ったら私のNPCなんて…いえ何でもないです。」

 

 そう言ったモモさんは目に見えて落ち込んでいる。なんだろう、何か気に障る事をいってしまったんだろうか。

 

「そ、そういえばアルベドってどんな設定だったんだか覚えてないな。」

 

「そうですね。まだ時間もありますし見てみますか。」

 

 コンソールを操作して、アルベドの設定を開くとそこには膨大な量の文字が綴られていた。

 

「…タブラさん設定魔でしたね。」

 

「流石にここまでってなると少し引くな。…ってこれ最後の文章。」

 

「えっと『ちなみにビッチである』…確かギャップ萌えでもありましたね。」

 

 流石にこれは二人ともドン引きであった。

 

「うーむ…」

 

 悩む素振りを見せるモモさん。多分このビッチの部分を変えるかどうかを悩んでいるんだろう。アルベドは一応ナザリック全NPCの統括。つまりNPCの頂点である。それがビッチというのに抵抗を覚えるのだろう。

 

「王の好きにすればいい。何をしても咎める者は居ないさ。」

 

 そうして、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使ってビッチ設定を消したが。

 

「なにか別の設定でも書き込んでおきますか…『モモンガを愛している』、とか?」

 

「うわぁ…」

 

「…やめます。」

 

「いや、王がそう書きたいなら「やめますっ!」…」

 

「そんな目で見ないで下さいよ。じゃあこうしましょう!『アーロンを愛している』っと「ちょ、まってっ!」はい設定完了です。」

 

 してやったりといった感じでこちらを見てくるモモさん。

 

「別にいいじゃないですか。こんな美人に好かれるなんて男として自慢できますよ?」

 

「いや、私は男じゃ…男として好かれると言うが、意図的にそうなるようにしておいて自慢していたらただの最低な男だろ…そんな奴は騎士ではない!」

 

「ふふっ。それもそうですね。」

 

 そんな事を話しているうちに時刻は23時55分。後5分でこの世界は終わってしまう。

 

「もうそろそろですね…」

 

「そう…だな…」

 

「アーロンさん最後まで残って貰って本当に有難うございました。最後に話せて、本当に楽しかったです。」

 

「何を言うか、王に付き従うのは騎士の定め。自分は当たり前の事をしたまで。それにこちらも楽しかった。」

 

 そして、皆のサインの書かれた旗を順に見ていく。

 

「俺、たっちみー、死獣天朱雀、餡ころもっちもち、ヘロヘロ、ペロロンチーノ……

そしてアーロンさん。」

 

 40人の仲間全員の名前を上げ終わる。

 

「楽し、かったなぁ…」

 

 モモさんのその呟きは、心に突き刺さった。そうだ、楽しかったんだ。給料の半分を課金した事も多々あった。毎日inしては皆顔を合わせて、ダンジョンに潜ったり、PKKの計画を立てたり、毎日が輝いていた。

 

 だがそれが終わってしまう。自分の悲しみなんてモモさんに比べれば些細なものだろう。彼は皆が戻ると信じ続け、今日までここに残ったのだから。モモさんのスタッフを握りしめる力が強くなる。

 

 仕方がないのだ。この世界では最強に近い二人も現実ではただの社会人。終わりを止める事なんて出来はしない。だから幻想を捨てて現実を受け入れるしかないのだ。

 

 若干の沈黙の後、モモさんは溜め息をつく。

 

「明日は四時起きなんですよ。落ちたらすぐに寝ないと。」

 

 悲壮感が漂う中、そんな事を言ってくるモモさん。いつまでもここには居られない。だからこそ現実を見ようとしてるんだろう。

 

「大変だな。うちはホワイトだからな、毎日7時までぐっすりだよ。」

 

「羨ましすぎですよ。」

 

 なんてことはない、普通の会話だ。だがこんな事を話せる日はもう来ない。

 

23:59:45、46、47

 

「それじゃあ、アーロンさん。またいつか、どこかで。」

 

「あぁ。またいつか、必ずどこかで…じゃあねモモさん。」

 

23:59:55、56、57

 

 目を閉じて最後の時を待つ…

 

 

 

 

だがいつまで待っても最後は訪れなかった。

 

 

 

 

「…ん?」

 

「…あれ?」

 

 目を開けてみるとそこは今だ玉座の間だった。すぐに横に顔を向けるとこちらを凝視するモモさんが居る。

 

「…どういう事だ?」

 

「サーバーダウンが延期になったとかかな?」

 

 思わず素で話してしまったが、気にしてる場合ではない。ともかく現状を確認しようとコンソールを使おうとするが。

 

「コンソールが…出ないない…えっ?どういう事?」

 

 モモさんの方も確認して見るが同様にコンソールが浮かび上がる事は無かった。

 

「何が、起こってるの?」

 

「……どういう事だっ!」

 

 玉座から立ちあがりながら大きく口を開け声を発するモモさん。うん?…大きく口を開け?

 

「モモさん、口が動いてる「あぁっ!私の愛しきお方アーロン様っ!よくぞご帰還してくださいましたっ!」るよぉぉ…お?」

 

 始めて聞く女性の声。声の発した方を見ると今にも泣きついてきそうな顔をした、絶世の美女、NPCのアルベドの姿だった。

 




DLC攻略後のシフムービー見ると泣きそうになります

何でシフ生存ルートないんだ(号泣)


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