オーバーロード ~王と共に最後まで~ 〈凍結〉   作:能都

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第10話

 

 

 組合にある会議室の様な一室に招かれていた。木のテーブルを囲む様にして椅子が置かれており、まるで面接の様に座っていた。

 

「僕はンフィーレア・バレアレ、この町で薬師をしています。」

 

 金プレートの冒険者達を返り討ちにして、いざ読めない文字という現実を見ようと思っていたらいきなり渡りに船、仕事が転がり込んできた。

 

「知っての通りですが、私はモモンです。よろしくお願いします。」

 

「アロンだ、こっちは私の師匠のクラナだ。それで、今回はどんな依頼を?」

 

 軽く会釈をしながら自己紹介を済ませ、本題に入る。

 

「はい、僕はこれから近場の森まで行く予定なんですが、御存じのように森は危険な場所です。それで、僕の警護及び出来ればその森での薬草採集に協力してほしいんです。」

 

「警護、ですか…」

 

 警護任務というと少し厄介ではある。モンスターを狩るだけなら特に問題無いだろう。だが、これが誰かを守りながらと話は変わってくる。モモさんと師匠もそうだが、私はタンク系のスキルを保有していない。

 

 だが、不安もあるが下手に断って警護任務も出来ないと振れ回られたりしたら今後の私達の評判にも関わる。断るという選択肢は残っていなかった。

 

「いいんじゃないか、断る理由も無いだろう。」

 

「…そうだな。ではバレアレさん、その依頼お受けしましょう。」

 

「ありがとうございます。それと、僕の事はンフィーレアと呼んでいただいて結構ですから。報酬は規定の金額をお支払いします。」

 

「えぇ、それで構いません。」

 

 仕事を受ける事は決まった。だが、気になる点が一つ残っていた。

 

「ンフィーレア殿、一つ聞きたい事がある。何故私達なのだ?私達は昨日この町に来た。知り合いも居なければ友人もいない。言ってしまえば無名な私達を何故?」

 

 はっきり言っておかしい。私達がこの町に来たのは昨日だ。しかも昨日は宿屋に入った後市場を三人で散策しただけで名を売る様な事はしてない。それなのに彼は無数にいる冒険者の中から私達を名指しで指名してきた。無名で、駆け出しである私達を。

 

「実は、宿屋の一件を聞いたんですよ。」

 

「宿屋の一件?」

 

「えぇ、昨日お店に来た人から上のランクの冒険者をふっとばしたって聞いたんですよ。それに、先程のクラナさんの戦いを見ていましたのでとてもお強いなと思ったんです。今まで雇っていた方はエ・ランテルを出てしまわれたので、新しい方を探していたんですよ。」

 

「なるほど…」

 

 名をあげるという事に関してだけは、あの馬鹿共が早速役に立ってくれたという事か。

 

「それに、銅プレートの方ならお安いと思って。」

 

 確かに、実力は確かで雇う金が安いなら誰だってそっちを選ぶ。

 

「それで、今後の予定はどうするのですか?」

 

「えっと、まずはカルネ村まで赴き、そこに滞在拠点を設け、森に向かうといういつものパターンになります。採集出来た薬草の量によりますが、最長で三日です。」

 

「分かりました。こちらは特に問題無いです。今後も御贔屓にしてもらえるよう、全力を尽くしましょう。」

 

「よろしくお願いします。では準備を整えて出発しましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 エ・ランテルより東北に位置するカルネ村へその日の昼ごろ出立した。カルネ村へ向かう為のルートは二つあるのだが、今回はモンスターとの遭遇率が高い方のルートを選択した。

 

 ンフィーレアの話では、この辺りに出るモンスターはゴブリンやオーガなどが主体で、森の中に入らない限りはそこまで強いモンスターは出てこないらしい。ゴブリンやオーガは最大で50レベル程のもユグドラシルには存在したが、はっきり言ってこの世界の強さの基準で考えればそれ程のレベルのモンスターが普通に徘徊していたら今頃人類は滅亡しているだろう。

 

 話し合った結果、モモさんの実戦経験を積む為にもこちらのルートを選ぶ事になった。万が一の時は師匠にゴブリン達全部焼き尽くしてもらえば何とかなるだろう。

 

「ンフィーレアさんは魔法が使えるんですか?」

 

「はい、僕は第二位階魔法まで使えますよ。けど、僕のおばあちゃんは第三位階まで使えるんですよ。」

 

「ほぅ、それは凄いですね。もう少し詳しく聞かせて貰えますか?」

 

 先頭に私と師匠、馬車にはンフィーレア、その右側にモモさんという隊列も何もない状態で街道をすすんでいた。まぁ正直この辺一帯は平原で見晴らしもいいので、モンスターが現れればすぐに分かるので問題はないだろう。

 

 後ろではモモさんがンフィーレア相手に情報収集に勤しんでいる。この辺りはいつも通り丸投げになってしまうのだが仕方が無い。適材適所と諦めて一応周囲の警戒にあたる。

 

「なるほど、『電撃(ライトニング)』まで使用できるのですか。おばあさんは何かタレントを持っていらっしゃるのですか?」

 

「いえ、おばあちゃんは持っていませんよ。」

 

「ん?その言い方だとンフィーレアさんは何かタレントをお持ちなんですか?」

 

 『生まれながらの異能(タレント)』こちらの世界の人間が稀に生まれながらに持っている特殊な力の事だ。おおよそ200人に1人の割合で持っており、存在自体は珍しくないのだが、その力は強力な物から弱いものまで様々にあるらしい。

 

 陽光聖典のニグンから得た情報では、彼自身タレント持ちで『自身が召喚したモンスターを強化する』というものらしい。ただし、例えば「魔法の威力が増す」というタレントを持っていても魔法を使いこなす才能が無ければ意味が無いように、素質や能力とタレントが常にかみ合うとは限らない様だ。そういう意味では彼はかなり恵まれた存在だったのだろう。

 

「あ、えぇ。僕のタレントは『あらゆるマジックアイテムを使用可能』というものです。スクロールの使用制限がなかったり、人間以外の種族でしか使えない道具とかも使えるので結構便利なんですよ。」

 

「…そうですか。」

 

「なぁ、アロン。」

 

「分かってます師匠。これはちょっと注意が必要ですね。」

 

 小声で話し掛けてくる師匠に同意を示す。彼の話が本当ならそのタレントはかなりチート臭い。言ってしまえば彼ならばギルド武器やワールドアイテムなどの使用に特殊な条件があるものでも使えてしまうと言う事だ。

 

(そんなタレントもあるのか。武技といいこっちの世界は色々と注意する事が多そうだ。)

 

 その後もモモさんの情報収集は続き、町にいる有名な人間やタレント持ち、魔法や武技、周辺国家の情報などを集め、私と師匠はする事がなく一先ず周囲を警戒するという名目で景色を眺めながら歩みを進めた。

 

 だが、そんな平和な光景は4人の闖入者によって緊迫したものに変わった。

 

「おい、前方。誰か来るぞ。」

 

 師匠の一言で4人に緊張が走る。馬車が止まりンフィーレアと話していたモモさんも前にやってくる。確かに前方の方から武装した4人の男達がこちらに走ってくる。かなり焦っている様子で時折後ろを気にしながら全速力で向かってくる。彼らの後ろに目をやると、そこには。

 

「ゴブリン。それにオーガか。」

 

 小さな子供ぐらいの身長をした潰れた顔に平べったい鼻をつけ、大きく裂けた口が特徴的なゴブリン。粗い皮を鎧代わりに着用し、片手に木で作った棍棒を持ち、もう片方の手にスモールシールドを所持している。数にして20匹。

 

 そして、数が少ない巨大な生き物。身長は二メートルから三メートル程あり、顎を大きく突き出した顔をしており、巨木を思わせる長い腕は地面につきそうなくらい長く、木をそのまま使った様なクラブを持っているオーガ。こちらの数は10匹。

 

 向こうから走ってくる4人もこちらを確認した様で、手を振りながら大声を上げる。

 

「逃げて下さい!」

 

 服装からして冒険者だろう、彼らの胸元に光るプレートは銀。声をあげたバンデッド・アーマーを着用した金髪碧眼の戦士風の男が息を荒くしながらこちらに駆け寄って来た。

 

「申し訳ありません、我々では手に負えなくて。ここは引きましょう。」

 

 彼がこちらに提案をしてくる。が、ここから逃げるとなると荷物になる馬車は捨てる事になる。馬車がなければ今回の目的は果たせなくなり、結果今回の依頼は失敗となってしまう。

 

「おい逃げるんなら急ごうぜ!もうそこまで来てる!」

 

「くそっ!私が『要塞』を使ってオーガを抑えます。ルクルットはオーガをブロック!ダインとニニャはゴブリンを!皆さんはその隙に逃げて下さい!」

 

 今から逃げたのでは間に合わないと判断したリーダーらしき男が剣と盾を抜き放ち指示を飛ばす。彼らは命がけで私達を逃がすつもりの様だ。

 

 モモさんに目配せをしながら頷き返す。考えは同じなようだ。

 

「その必要は無い。行くぞ、アロン。クラナはンフィーレアさんを守れ。」

 

「了解。」

 

「分かった、任せておけ。」

 

 彼らを追い越す様にゆっくりと歩いていく。だがその背に声がかけられる。

 

「たった二人であの数は無理です!我々も戦います!」

 

 そう言ってくる男の目は真剣そのものだ。先程の言動といい、こちらを真剣に心配しているのだろう。まぁ考えてみれば彼らはシルバー。カッパーである私達を守ろうとするのは当然ではある。

 

「分かった。ならオーガは受け持つ。ゴブリンは任せよう。」

 

 返答を待つ事無くモモさんと共に剣を抜き放つ。大きく大きく弧を描くようにゆっくりと三本の剣がその姿を現す。

 

 モモさんが握りしめた150センチを超える剣は、戦闘の道具というよりは芸術品としての価値の方が高そうな武器だった。刀身に掘られた溝には二匹の蛇の様な紋様が彫り込まれている。

 

英雄の持つ武器

 

 そんな言葉が似合うだろうその剣をモモさんは両手にそれぞれ握りしめる。

 

 それに対して私の煙の特大剣は、大きな黒い板を思わせる形状をしておりその刀身には微かに紋様が描かれているが、煙が付着した様な凹凸のある刀身をしている所為で殆どなんの紋様なのかは分からない。そんな煙の特大剣を両手で握りしめる。

 

 モモさんは感触を確かめるように楽々と振り回して構える。その姿は戦士職の私から見ても堂々としていた。私はそのまま両手で持った剣を肩に担ぐ。

 

「貴方達は…何という…」

 

 リーダーらしき男の呟きが聞こえてくる。それは憧れや、畏れが入り混じっていた。私達の姿をみたゴブリン達は、その姿に恐れをなしたのであろう。動かしていた足を鈍らせ、私達をさける様にして私達の後ろを目指す。

 

「っ!オーガはあの二人に任せる。私が前に出て戦うのでニニャは防御魔法を私に。その後はダインとルクルットと殲滅優先で戦ってくれ。あの二人の背中は俺達が守るぞ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「良い連携だ。まぁ、昔の我々程では無いがな。」

 

「比べる対象が少し悪くないか?まぁあれなら任せても問題なさそうだな。」

 

 モモさんの賞賛には同意するが、比べる相手が私たちじゃ少し可哀想だ。そんな事を考えているとオーガとの距離が迫り、その手に持ったクラブを振り上げる。

 

 私とモモさんが同時に踏み込む。その動きは疾風だった。特大剣を使っているとはいえこちらは戦士職。流石に速度で負ける事はないがそれに迫ってくる速度でモモさんは剣を振る。

 

 白銀と漆黒の輝きを残し、空間を絶つが如く放たれた一撃はそれぞれの目の前に迫ったオーガに吸い込まれる。地響きを起こしながら地面に叩きつけられた私の剣。それはオーガだったものの血と肉を滴らせながら振り上げられる。目の前にいたオーガは縦に真ん中の部分が綺麗に無くなり、そのまま左右に倒れていく。横を見ればモモさんはすでに次のオーガへ向かっていた。そして、棒立ちになっていたオーガの上半身がズルリと動き、血を噴き出す半身を残して地面に落ちる。

 

 戦闘はすでに始まっているというのに、敵も味方も動きを止める。

 

「…すげぇ。」

 

 誰かが漏らした小さな言葉。それが耳に入る程戦場は静まり返っていた。

 

「…信じられない。ミスリルどころかオリハルコン…いや、まさかアダマンタイト!?」

 

 絶句するような光景にオーガ達が怯えた表情で後ろに下がる。その距離を詰めるようにモモさんが一歩前にでる。

 

「どうした?かかってこないのか?」

 

 静かな声が戦場に広がる。カルネ村の時も思ったが、こういう演技をする時のモモさんは本当にハマっている。能力や風貌も相まって滅茶苦茶カッコいい。相手からしてみれば恐怖でしかないだろうが。

 

「そういってやるな、怖くてこちらにこれないのだろう。なら、こちらから行ってやらないとな。」

 

 お互いに重装とは思えない速度でオーガ達に迫る。

 

「ウォオオオ!」

 

 それぞれのオーガが悲鳴とも雄たけびともとれる声をあげ、迫りくる私達に対して手に持つクラブを構える。私の剣を受け止めるべく構えられたクラブをそのまま圧し折りそのままオーガの腹に突き刺さる。重量を乗せた渾身の突き出しはオーガの巨体を容易く吹き飛ばす。後ろにいたオーガにぶつかりそのまま二匹とももつれるように倒れた。そこまで歩み寄り、そのまま大きく剣を振り上げる。

 

「ォオオ!」

 

 命乞いともとれるオーガの声を掻き消す様に剣を振り下ろす。剣は二匹のオーガの体を引き裂きながら進み地面に突き刺さる。

 

 そうしている間にもモモさんはオーガを横一文字に一刀両断していた。

 

 半数の仲間が一瞬で殺されたオーガ達は、完全に意気消沈していた。逃げる事も出来る筈だ。だが、あいつらは理解しているのだろう。背を向けた瞬間切り捨てられる、と。

 

「まぁどうしようと結果は変わらないんだがな。」

 

 一体のオーガに肉薄し、そのまま横に剣を振るう。それは肉と骨を粉々に砕き、まるでダルマ落としの様にそこの肉だけ横に吹き飛んでいく。そのまま次のオーガに移り、上段から振り下ろした剣は始めに殺したオーガ同様に体を左右に体を裂く。

 

 最後に残ったオーガには、もはや考える事は出来なかった。クラブを投げ捨て今だ戦っているゴブリンを置いて逃げ出す。それを切り捨てようと踏み込むが、後ろから飛んできたグレードソードによってオーガの頭は貫かれ絶命していった。

 

「5匹目だ、どうやら引き分けの様だな。」

 

 後ろを振り向けばグレートソードを地面に突き立てた若干誇った様な感じのモモさんがいた。

 

「この程度の敵なら力任せに振るだけでも勝てるさ。上手い相手じゃそれじゃあ勝てないぞ。それこそ、両手に持った武器を上手く使わないとな。」

 

「そうだな、勉強になる。さて、後は向こうか。」

 

 若干馬車と離れてしまったが、ゴブリンの方も粗方片付いていた。4人の連携はかなり経験を積んだもので、数に劣っている事を上手く補っている。それに加えて師匠の呪術による支援がある。20匹いたゴブリンもすでに10匹以上死んでいる。

 

「ニゲル!ニゲルゾ!」

 

 オーガが全員やられたのが分かるとすぐにゴブリン達は撤退し始めた。4人はそれを防ごうと動くが、間に合わない。

 

「師匠。」

 

 声を掛けると師匠は大きく跳躍し、逃げようとするゴブリン達の前に立ちふさがる。炎を宿した手を振り上げて、そのまま地面を叩く。すると辺りから一斉に火柱が噴きあがりゴブリン達を焼きつくす。火柱が納まる頃には、すべてのゴブリンが動かなくなっていた。

 

「本当に申し訳ありません!」

 

 ゴブリン達の襲撃を殲滅した後、四人は傷の手当てもせずにこちらに謝罪してきた。

 

「お気になさらず、あの数では撤退するのは当然でしょう。逆にお礼を言わせてもらいたい。皆さんのお陰でンフィーレアさんを守り切る事が出来ました。ありがとうございます。」

 

 謝罪に対して感謝の意を述べるモモさん。確かに私達だけでも守り切れたかもしれないが、彼らが協力してくれて守り切ったのは事実だ。

 

 モモさんが感謝の言葉に対して驚愕の表情に変わる四人。互いに顔を合わせ何かを確認する四人。だが、全員が首を振ると疑問を投げかけてくる。

 

「貴方の様な冒険者を聞いたことがありません。お名前をお聞きしても?」

 

「私の名はモモン。そしてこっちが仲間のアロン、そしてクラナです。」

 

 モモさんの紹介に私は手を軽く上げ、師匠は頭をすこし下げて応える。

 

「私はぺテル。ぺテル・モークです。この『漆黒の剣』のリーダーをやっています。こっちがレンジャーのルクルット。そしてマジックキャスターのニニャ。そしてドルイドのダインです。」

 

 タンクをやっていた金髪碧眼の男、ぺテルが自己紹介を始める。

 

「さて、積もる話はあるが色々とやる事があるだろう。まずはぺテル殿とルクルット殿の手当てだな。」

 

 その後彼らが護衛対象のンフィーレアに驚いたり、倒したゴブリン達をそのままにして移動しようとして慌てて止められ、倒したモンスターの一部を切り取り組合に提出するとそれに見合った報酬が得られる事を知り、手分けしてゴブリン達の耳を切り取ったりしているうちに結構時間が経ってしまい、漆黒の剣の四人と共に野営の準備に入った。

 

 

 

 

 

 

「モモンさん達、もしかして嫌いな物でも入っていましたか?」

 

「いえ、気になさらないで下さい。ちょっと私達の宗教上の理由でしてね。命を奪った日の食事は4人以上では取ってはいけないというのがありまして。」

 

「変わった教えを信じられているのだな、モモン氏達は。とはいえ世界は広い、そういった教えもあろう。」

 

 焚火を囲みながら皆で食事を取っていたのだが、モモさんはご飯を食べれないので少し苦しいがこんな理由を通した。モモさんが食べれないのにこの場で私が食べるのはちょっと気まずいし、師匠も自分の主が食べないのに配下が食べれる訳無いのでこうなった。

 

「まぁそういう事だ。私達は後で食べるので気にせず食べてくれ。」

 

 案外すんなり受け入れられて少し拍子抜けな気はしなくもないが結果オーライだろう。

 

「そういえば、先程から気になっていたんですけどクラナさん。確か今朝組合の前でゴールドのチームを相手に圧勝してましたよね。」

 

「あぁ、そうだ。あいつらが難癖をつけて来たからな。」

 

 ぺテルはどうやら朝の一件を見ていた様だ。

 

「やっぱりそうでしたか。服装が似ていたのでそうじゃないかと思ってたんです。」

 

「なぁなぁクラナちゃん一回でいいから顔見せてくれよ。」

 

 師匠の隣に座っていたルクルットが少しずつ近づいてくる。困った様な顔でこっちを見てくる師匠。するとモモさんが。

 

「まぁ、一度顔をお見せしておきましょうか。今後も何かと付き合いがあるかもしれませんし。」

 

「そうか、分かった。」

 

 モモさんの一言で、師匠はフードを外す。焚火に照らされた師匠の顔は妖しい美しさだった。それに続くように私とモモさんも兜を外す。若干の驚きの声が聞こえてくる。

 

「クラナさんは違うみたいですが、お二人は黒髪黒目。確か南方の方にお二人の顔立ちが一般的な国があると聞いたことがあります。」

 

「ええ。かなり遠方から来たんですよ。」

 

 モモさんが魔法で作った外見もかなり整った顔立ちをしている。始めはリアルの顔を作ったそうだが、

 

「アーロンさんがイケメンフェイスなのに私だけリアルの冴えない顔って不公平じゃないですか。」

 

 と考え直したらしい。

 

「私達二人とも異邦人なのであまり顔を出さないんですよ。厄介事に巻き込まれるかもしれないですから。まぁ今のところクラナの美しさに目が眩んだ連中の方が多い「一目惚れです!付き合って下さい!」…」

 

「「「「…」」」」

 

(…あぁ、ここにも馬鹿が居た)

 

 座っている師匠に対して片膝を付き左手を胸に当て右手を差し出しながら告白するルクルット。その真っ直ぐな所は評価しよう、だが師匠は私のだ。

 

「すまないな。今はそういう事は考えてないのだ。」

 

 すぐさま断る師匠。だがルクルットは落ち込む事なくすぐさま次に移る。

 

「では、お友達から始めて下さい。」

 

「まぁ、それくらいなら構わないさ。」

 

「ありがとうございます!」

 

 歓喜の声をあげるルクルット。まぁ悪い奴ではないのだろう、モモさんと漆黒の剣の面々が苦笑いをしている。

 

「うちの仲間がご迷惑を。」

 

「いえいえ。賑やかな方の様ですね。」

 

「レンジャーとしては優秀なんですが…」

 

 困ったものですと肩をすくめるぺテル。まぁ仕事をちゃんとこなすのであればそこまで問題でもないだろう。

 

「あぁそういえばぺテルさん、報酬のお話なんですが。」

 

「え?報酬ですか?」

 

「はい、私としては先程討伐したゴブリンとオーガ、これを半分づつに分けようと考えているのですが如何でしょう?」

 

「ちょっと待って下さい!確かに私達もゴブリンを倒しました。ですがオーガを倒したのは全てモモンさん達です。私達は倒したゴブリン達の分で充分ですから。」

 

 驚いた表情で反対してくるぺテル。モモさんは一瞬考えると言葉を発する。

 

「…では、こうしましょう。私達は皆さんも知っての通りこの辺りの常識についてかなり疎いです。なので、皆さんは我々に色々な事を教えてもらえませんか?この辺りの事や、魔法の事、有名なタレント持ちの方の情報などなんでもいいんです。オーガの分はその代金という事で。」

 

「…なるほど、分かりました。私達でお答えできる事なら何でも話しましょう。」

 

「私としては今後も皆さんとは長い付き合っていきたいと思ってます。これから宜しくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします!」

 

 座ったままだがお互いに深く礼をする。そうして、その後は漆黒の剣の名前の由来を聞いたり、ニニャが町では有名なタレント持ちだという事を知ったりと、色々と話しているうちに料理が冷めてしまった。

 


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