IS -錬鉄の女騎士-   作:skyfish

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この物語の上でどうしてもシャルロットとのかみ合わせできずずっと悩んでいました。最近になってこうだったらどうだ? を思いついたのでそれを投稿してみたいと思います。



それではどうぞ


第11話「忍び寄る悪意」

「――――――以上で報告を終わります」

「そうか。ご苦労だった」

 

誰もいない薄暗い部屋の中。そこで携帯を片手に電話している人物がいる。世界で二番目にISを動かした男子、シャルル・デュノアだ。

 

「対象と接触したばかりだがまずは上々だ。今は彼との関係を優先してくれ」

「分かりました。それではこれで…」

 

シャルルは電話している相手に報告することを伝え電話を切ろうとする。が

 

「シャルロット」

 

声が聞こえてシャルルは切ろうとした携帯を耳に当てる。

 

「なんでしょうか? 社長」

 

感情の籠ってない声でシャルルは電話越しの相手―――自分が所属する企業デュノア社社長に返事を返す。社長は「はぁ」と深く溜め息をした後、シャルル……否、シャルロット・デュノアに言った。

 

「あまり無理はするな」

「……分かりました。それでは盗聴の危険もありますので失礼します」

 

それだけを言い彼女は電話を切った。表情は先ほどと変わらないがその目には確かな強さが宿っていた。

 

「大丈夫だよ、お父さん。私が選んだことなんだから」

 

シャルロットは携帯を置き自身の顔をパンッパンッ! と叩いた後部屋から出る。それは誰から見てもいつもの爽やかな顔をしたシャルル・デュノアだった。

 

 

 

 

ガチャン と受話器を置いたあと「はぁ…」と再び深い溜め息をフランス大企業の一角、デュノア社社長、アルフォンス・デュノアは吐いていた。そこに秘書と思われる人物がやってくる。

 

「お嬢様からお電話ですか? お水になります」

「ああ、そうだ。すまないね」

 

水を受け取りすぐにそれを飲みほしてしまう。少しは落ち着いたかと思うが彼の顔は先とあまり変わっていなかった。

 

デュノア社は今、存続の危機にさらされている。フランス政府からの最後通告であと1年以内に第3世代を形にできなければ資格を剥奪される。なんとしてもそれだけは避けなくてはならない。だが未だに我が社は第3世代の試作機どころかそのプロトタイプでさえ形になっていない。そんな時に世界中に知れ渡ったあのニュース。世界初めてISを動かした男の存在。彼のデータさえあれば研究に大きな前進が期待できるのは世界中のIS開発研究所がそう思った。無論我々デュノア社も例外ではない。そんな折に彼女が私に提案してきたのだ。

 

「シャルロットお嬢様が言いましたのよね……『私が情報を盗んでくる』と」

「今思い出しても自分が許せない。あの時のあの子の考えに内心喜んでいた自分がね」

 

アルフォンスは頭を抱える。最初反対していたが彼女の決意に自分が先に降参していた。その後は皆が知っているとおりである。シャルロット・デュノアはシャルル・デュノアと名前を変え性別を偽り、IS学園に入学させた。あとは織斑一夏のデータを取るだけでいいのだが最大の問題が存在する。それはブリュンヒルデ(世界最強)と天災。そのなかでも天災に嗅ぎ着かれたらデュノア社はもとよりシャルロットの身も危ない。

 

「正直に言うと、あの子がデータを盗む前になんとか我々で解決しなくてはならない。性別を偽ったことも問題だがまだあの子は犯罪に手を染めていないんだ」

 

確かにシャルロットが織斑一夏のデータを持ちかえれば何とかなるが彼女は犯罪者となる。それだけは何としても避けたい。

 

「なんとか打開策を考えねば……」

 

頭を抱えながら呟く彼は自身の娘の身を案じていた。

 

 

 

 

 

 

同じように暗い部屋の中。岸波白野は自分の部屋でパソコンを使っていた。彼女は今ドイツの軍ネットワークにハッキングをしている。理由はラウラについて。彼女の織斑先生に対する執着を疑問に思い始めたのだ。そして彼女のデータを見つけたのだが書いてあったのは彼女の所属や身体的能力など必要最低限のものだけだった。彼女の家族などの経歴が見つからない。おかしい。変に思った私はハッキングを続けていた。そしてセキュリティが高い場所にハッキングをして、ある項目を見つける。

 

「遺伝子強化試験体……?」

 

よく分からない言葉で疑問に思いそれを開いた。そこにラウラ・ボーデヴィッヒの名前を見つける。

 

「これは………」

 

その中身を見て言葉を失った。

 

肉体的・精神的にも優れた存在にするように遺伝子を調整し試験管内で受精。それから体術、剣術、射撃技術、あらゆる兵器の扱い方を学ぶ…。そこには彼女が人としてではなく1つの兵器として生み出されたことが書かれていた。ただ軍に都合のいい人形として。

 

「そっか………だから私」

 

ラウラとラニが重ねて見えたのか。やっと理解した。彼女も作られた人間。それが2人の共通点だった。だが作られた理由としてはラウラのほうが質が悪い。

 

「優秀な軍人を育てるんじゃなく、優秀な軍人をゼロから創り上げる………ダンさんがこれを知ったらなんて言うのかな」

 

ふと誇り高き老兵のことを思い出す。1人の軍人として、また神に祈りをささげていた彼からしてみれば冒涜以外の何物でもないのだろう。しかし私はこれがいけないことだと分かっていても否定はできなかった。少なくともこの計画のおかげでラウラが生まれて、出会うことになったから。

 

「ISの登場後、ISとの適合性向上のために行われたヴォーダン・オージェの不適合により左目が金色に変色、能力を制御しきれず以降の訓練では全て基準以下の成績となってしまう。後日、IS教官として赴任してきたチフユ・オリムラの指導により部隊最強の座に再度上り詰めた………なるほどね」

 

落ちこぼれ状態だったラウラをドイツ精鋭IS部隊隊長にまで登らせた織斑先生に憧れ、崇拝の対象にするのはこのためかとようやく分かった。

 

一通り読み終えた私はパソコンを閉じた。そして第5アリーナへと向かう。そこは全学年の寮から一番離れており早い時間から生徒が消えてくる。時刻はもう5時を回りすでに帰りの準備に移っているころだろう。だから誰もいなくなるのは好都合だ。この前ロビンフッドの宝具『顔のない王』を投影してそれなりの疲労を感じたが成功した。だから他のものもできるかどうかの確認を行うためだ。だがその前に中華剣とイスラムの剣が残っている。まずはそれを終わらしてからだ。

 

部屋を出てからふと周囲を確認する。この前にみたいな視線は存在しない。

 

(また追いかけられたらいろいろと面倒だな)

(一つ確認するがマスター。あの女性について何も調べなくていいのかね?)

(ああ。調べる必要ないよアーチャー。あの人、この学校の生徒会長だから)

(生徒会長……だと?)

 

彼女のことを知らないアーチャーに白野は軽く説明した。

 

更識楯無

IS学園の生徒会長。聞いた話では自由国籍権を持ち今はロシアの国家代表だ。

 

だから余計に分からなくなる。何故彼女が私のことを追ってきた理由を。

 

(もしかして、無銘が関係しているのかな?)

(かもしれないな)

 

考えられない話ではなかった。他者から見れば無銘は正体無銘のISだ。その存在が知られればたくさんの組織から狙われる。だからその情報収集をしているのだろうか?

 

(とりあえず用心しておこう)

 

すでに寮を出てアリーナに繋がる道を歩きながら思う白野だったが、少しだけ足を止めかけまた歩き始めた。

 

(思った矢先にか………いやでもこれって)

 

あの時と同じように視線を感じる。でもなんか、この前とは少し違うような感じがする。なんといえばいいのか。雰囲気がこの前とは違うのだ。もし同じ人なら前よりも警戒し緊張感を感じるのだが今そんなものを全く感じない。監視されているというより、見つめられている?

 

(どうする、マスター?)

(う~ん……とりあえずほっといてもいいんじゃないかな)

 

これといって何かしてくるというような気は感じないし大丈夫だろうと判断して白野はアリーナへと向かった。

 

 

 

白野から少し離れた場所から誰かが彼女のことを見ていた。その人物は昨日白野を追っていた人物に似ていたが、メガネをかけ、どこか物静かな顔をしている。

 

「………よし。ばれてない」

 

呟きながら彼女…更識簪は白野との距離を保ちながら追っていた。なぜ彼女がこんなことをしているのか? それはこの前彼女の姉、更識楯無とその付き人、布仏 虚が話していたことが少しばかり気になったからだ。

 

 

『お嬢様。今までどちらに?』

『いや~。実は例のあの子が気になって後をつけたはいいんだけど逃げられちゃってね~』

『ちょっと待ってください。お嬢様のストーキングから逃れられたのですか? その生徒は』

『ちょっと! その変なネーミングはやめなさい。せめてスパイスキルと言いなさい』

『そうですか………失礼します』

『あれ? なんで襟首を掴むのかしら?』

『私情で仕事をさぼり、挙句の果てには失敗したなんて笑い話にもなりません。たまったお仕事、今すぐやってもらいます』

『え~……。明日じゃだめ?』

『聞く耳持ちません。それではついてきてください』

『ついてくるっていうか私引きずられているよね!?』

 

 

『あ~~………』と全く同情を誘えない声を出しながらお姉ちゃんは連れて行かれた。それを見ていた私だがそれよりも話の内容が気になった。対暗部専門暗部「更識家」当主であるお姉ちゃんの尾行を振り切った人物がだれなのか知りたくなった。そして彼女のことを知り軽く調べもした。だから、彼女の経歴からお姉ちゃんの尾行を振り切るくらいの実力の持ち主とは思えなかった。しかし、そんな明らかに普通の女の子がお姉ちゃんを出し抜いたという結果がある。

 

そして今、私…更識簪は岸波白野のことを彼女が気づかないように見ている。ただの興味で始めたこの行為が、まさか自分とはまったく関係ないことに巻き込まれるとは今の彼女は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

暗い部屋の中。空中投影されたディスプレイを見ている女性が1人。ISの開発者。篠ノ之束だ。

 

「岸波白野か~。なんて呼ぼう?」

 

束が造りIS学園に向かわせたゴーレムⅠを破壊した人物。岸波白野の情報を見ていた。だが、よくよく調べてみるとおかしなことが多かった。戸籍はある。家族構成は何年も前に彼女を残して他界しているとあるがよく調べると明らかに改竄された形跡があるのだ。この束さんが1日かけてやっとわかったほどだ。常人はもとよりプロのハッカーでも見つけるのは難しいだろう。また、彼女の経歴もそうだった。記録には彼女が住む土地で生まれてから中学校までの記録が書かれているが小学校までの記録が改竄されていた。

 

中学より前の記録すべてが偽り。それまでのことが全く分からない。何もないところから現れたようにも見えなくない。さらにそれを周りの人間は“当たり前”のように偽りの記録の彼女との関係を取っている。まるでそうであるかのように“上書き”されたように感じるのだ。

 

「ま。いまはそんなことよりこっちだね」

 

束は画面を切り替える。そこにはシャルル・デュノアの写真が載っていた。

 

「いっくんのデータを盗むなんて、随分とふざけたことするよね」

 

束は写真のシャルルを睨み付ける。その目は怒りというよりも相手を見下すような上目使いだった。

 

「雑草は若い芽のうちに取ったほうが良いって言うし、そんなやつには消えてもらわないとね」

 

狂気に満ちた顔で束は新たな画面を開く。そこには彼女が作っている完成間近のISが映し出されている。

 

 

 

そのISの名称には『ゴーレムⅡ』と書かれていた。

 

 

 




私もたくさんのIS二次小説読みますが多くが社長クズ設定なんですよね(原作がそうですから)

ここではそんなに悪い人ではない設定です。原作設定を変えてしまいIS信者の皆様申し訳ありません

ゴーレムⅠ&ⅢがありますがなぜⅡがいないのか? 疑問に思い勝手に出すことにしました。

それとアンケートありがとうございます

6月3日0200時時点でのpixiv&ハーメルン合わせての結果です。

1 いいよ! じゃんじゃんやって!    16票
2 いいけど制限つきで          20票
3 だめ! 絶対!             0票
4 どれか一つの作品にして         1票
5 その他                 4票

となりました。今後の参考にさせていただきます。 



最後まで読んでいただきありがとうございます

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