【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第五十九話  新戦術①

瑞鳳の願いである滑走路建設も完了し、工廠にあった隼と疾風、富嶽が次々と滑走路横の格納庫に収納されているのを俺は見ていた。

牽引車に引かれながら工廠から途切れる事のない飛行機の線は1時間も途切れる事のなかった。

 

「提督。いよいよですね。」

 

俺の横でそう言ったのは、今日の秘書艦の瑞鳳。滑走路建設完了と航空隊配備、初陣という事で提案者である瑞鳳に秘書艦が譲られた。

 

「あぁ。だがまずは試運転が必要だ。」

 

俺と瑞鳳は執務室の窓から見ながらそんな事を話していた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺というイレギュラーの存在がもたらす影響というものが次々と発覚していた。まずは未確認兵器の誕生。深海棲艦の戦闘パターンの変化が目立ったが、最近発覚したことがあった。

これまで艦隊上限が6隻、連合艦隊が12隻と決まっており、連合艦隊に関しては特定の海域でしか使用できなかった。だが、出撃する艦の総数の上限が無くなっていた。自由な編成が可能になったという事だ。

それも兼ねた編成表が朝の掲示板に貼られていた出撃編成表で艦娘にも知られた。

今日の出撃艦隊は長門旗艦とする特務艦隊。傘下。陸奥、高雄、愛宕、摩耶、鳥海、川内、神通、那珂、夕張、吹雪、白雪、雪風、島風、白露、時雨、村雨、夕立、赤城、加賀、蒼龍、飛龍。計22隻の大艦隊だ。

 

「提督より、本作戦の説明を賜る。」

 

そうかしこまった口調で長門はそう言った。

俺は高くはない壇上に上がり、1列で横に並ぶ艦娘たちの顔を見た後、その後ろに並ぶ今回の編成に加えられなかった艦娘の顔を見た。全員期待と不安で一杯だという表情をしている。

 

「本作戦について説明する。」

 

「本作戦の第一目標は海域の解放ではない。皆も知っているだろうが、建設が完了した滑走路の優位性を証明するための作戦だ。」

 

「特務艦隊は計22隻という大艦隊でありながら本隊ではない。本隊は高高度を編隊飛行する大型戦術爆撃機 富嶽である。」

 

「出撃地は北方海域、キス島。これまで我々を手古摺らせてきた海域だ。本来ならば小型高速艦での隠密奇襲作戦が常套だが、今回は無理やり突破を試みる。」

 

「特務艦隊は空母を囲む輪形陣にて海域に侵入。敵航空勢力を殲滅。その後、深海棲艦を富嶽で爆撃する。」

 

「富嶽は通常の彗星の爆弾搭載量の40機分に相当する。上空を飛ぶ富嶽爆撃隊は230機。彗星9200機分の爆弾を抱えて飛んでもらう。」

 

「特務艦隊の任務は富嶽爆撃隊の露払いだ!空母は雷電改、紫電改二、彩雲に艦載機を載せ換えておけ!」

 

その場の空気は凍り付いていた。

俺の口から伝えられた作戦内容。特に大艦隊が本隊でなく、上空を飛ぶ爆撃隊が本隊であるという事。上空の爆撃隊は彗星9200機分の爆弾を積んでおり、鎮守府に所属する空母が全て彗星に載せ換えても足りない数だ。

 

「この作戦が叶えば、安定した戦いが期待できる!心してかかれ!」

 

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俺と瑞鳳の頭上を爆撃隊、230機が飛び立っていった。

轟音を響かせて上空に上がっていく様子には俺と瑞鳳は圧倒された。

 

「作戦......叶うといいですね。」

 

そう言った瑞鳳は段々と小さくなっていく富嶽に手を振った。

その一方で俺は少し頭を抱えていた。

 

「何で......こんなに食うんだよ。」

 

俺の目線の先には資材消費量が書かれた紙。油と弾薬が半分以上持っていかれた。

 

「恐ろしすぎる......。」

 

俺は項垂れた。これから再び、資源温存を中心とした運営を覚悟した瞬間だった。

 

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特務艦隊旗艦 長門は自分の艤装の司令部から海を見ていた。

長門らが出撃してから数時間後に本隊である爆撃隊が来るのだ。

 

「爆撃機による海上絨毯爆撃。効果があって貰わねば意味がない。」

 

そう長門は呟いて空を仰いだ。これから爆撃隊が通るであろう空はとても透き通っていた。

 

「これなら早くこの戦争も終わる。提督の身の安全も内部だけに集中すれば良くなる......。提督......。提督の事、鎮守府、仲間、全てを守って終戦を迎えたい。」

 

長門は一息ついて指示を飛ばした。

 

『爆撃隊直掩隊は直ちに発艦せよ!』

 

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ーーー

 

 

海域解放に駆り出される艦娘たちが一気にいなくなった鎮守府内はとても静かだった。遠征艦隊は相変わらずひっきりなしに資源を運んでいるのでいつも見掛けないが、今日は特段と静かだった。

いつも外から聞こえてくる楽し気な笑い声も、訓練をする艦娘たちの声も、演習で発砲する艦砲の砲声も何一つ聞こえなかった。

 

「静かだな......。」

 

俺は既に終わらせた執務の後、瑞鳳が提出しに事務室に行ってる間、埠頭を見ていた。埠頭にはもしもの為の金剛型姉妹と妙高型姉妹、五十鈴と北上、瑞鶴、飛鷹、隼鷹の艤装が停泊していた。

 

「おっ......また甲板でティータイムしているな。今度は俺も後で混ぜてもらおうか。」

 

停泊している金剛の艤装の甲板でティータイムが開かれていた。ちなみに今回の参加者は金剛、比叡、榛名、霧島、五十鈴、夕張、北上だ。瑞鶴と飛鷹、隼鷹は一応やる事があるようで参加していない。

何をしているかというと、特務艦隊の近くまで爆撃隊が接近するまでの護衛をしている紫電改二の管制だ。念のためという事で頼んでおいたことだ。

 

「......爆撃隊が特務艦隊の上空を通過するまで2時間。そろそろ海上では交戦しているころだろうか。」

 

俺はそんな事を呟きながら瑞鳳の帰りを待っていた。

 




いよいよ実戦投入です。
どれ程効果があるかは次回にご期待下さい。この話の投稿から1日以内には投稿するつもりです。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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