【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

54 / 209
第五十話  運動会②

湧き上がる運動場で、選手紹介が行われていた。

 

『艦娘チーム。第一走者、川内。第二走者、那珂。第三走者、神通。という順で金剛、比叡、榛名、霧島、鈴谷、熊野、瑞鶴が出場します!続いて、門兵チーム。門兵チームは日々門を守り、鎮守府を、守ってくれる人たちです!』

 

そう大淀のアナウンスが入ると会場は盛り上がった。

 

『最初は200×10リレーです!第一走者は位置に着いて下さい。』

 

そういって始まる三本勝負は激しい戦いの始まりだった。

リレーでは双方接戦を繰り返し、抜いては抜かれをしていた。結局はアンカーになった時、瑞鶴が思いのほかに走るのが早く、その勝負は艦娘チームの勝利になった。

 

『続いて、200m走です。艦娘チーム。瑞鶴、夕立、島風です。門兵チームは南門の門兵さんと巡回の門兵さん、警備担当の門兵さんです。』

 

アナウンスで選手がトラックに入り、手を振る。黄色い声援が飛び交う中、200m走は始まった。こちらは艦娘チームと門兵チームでそれぞれ1人ずつ走り、3回戦うものだ。

1回目の鉄砲の合図で走り出し、トラックを走って回る。とてもいい勝負だ。それを後の2回とも行い、結局門兵チームが勝った。どうやら直前にリレーに出た瑞鶴はまだ息が戻っていなかったので本来のスピードを出せなかった様だ。

 

『最後に、綱引きです。それぞれ10名が綱を引いて、制限時間内にどこまで引けるかの勝負です。』

 

最後の種目になり、応援も激しいものに変わった。綱引きには力自慢の艦娘が出る様だ。長門、陸奥、金剛、比叡、榛名、霧島、赤城、加賀、蒼龍、飛龍。

俺はてっきり大きい艤装を持っているから力があるとかそう言うのは関係なく、単純に経験との事。門兵も強者ばかりを出してきたようで、相当気合が入っている。

 

『よーい、はじめ!』

 

最後の開始の合図はどうやら大淀だったらしく、その合図で双方が綱を引き始めた。門兵は力の限り引っ張っているが、艦娘たちは何か作戦があるようだ。よく観察していると、姿勢を一定にして低くし、同じ息で綱を引いていた。綱を引くたびに、門兵側の綱は徐々に引かれて行き、時間になるころには艦娘の方は長くなっていた。つまり艦娘の勝利という事だ。

湧き上がる歓声に俺は耳を思わず塞いでしまったが、その光景が俺に思い出も思い起こさせていた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

食堂では打ち上げもとい、お疲れ会が開かれ、出場した艦娘全員と門兵を招待してのご飯が始まった。

全員ヘトヘトになりながらも、話に花を咲かせ、楽しそうにしている。

 

「やってよかった......。」

 

俺は今日の夕飯であるカレーをすくいつつ呟いた。

今日見た艦娘たちの笑顔は間違いなく、女の子だった。艦娘は深海棲艦だと罵られ、兵器だと言われ続けてきた存在だがこんなにも女の子らしいところがあったのだ。俺も日々それは生活する中で垣間見ていたが、ここまで直接的に感じたことは無かった。

 

「お疲れ様でした、提督。」

 

そう言って俺の横に大淀が座った。

彼女はずっとアナウンスで話しっぱなしでのどが痛いのか声を抑え気味で俺に話しかけてきた。

 

「お疲れ、大淀。」

 

そう言うと俺は楽しそうに話を盛り上げる艦娘たちの方に視線をやった。

 

「私は今回の運動会をやってよかったと思います。提督が着任されてからもかなり笑顔は増えましたが、今日のは無邪気な笑顔でした。海を、戦いを忘れた女の子の顔。そういう風に見えたんです。」

 

そう言った大淀はカレーを口に運んだ。

 

「俺もだ。提案してよかったよ。みんなが楽しんでくれたのならな。」

 

俺は食べ終わった皿をよけると肘をついて眺めた。

 

「そうですか。......皆と笑っていられる今が、私は凄く幸せです。一昔前までは鎮守府で戦い食べて寝るだけの生活をしてきてました。ですが、今はとても日々が楽しいです。鎮守府で起こる楽しい話、日に日に発展を続ける施設、新しい仲間が増えていく瞬間、皆が無事に帰ってくるのを見守る海辺......。日々はとても楽しいものになりました。」

 

そう言ってスプーンを置いた大淀は俺の方を向いた。

 

「それも全て提督が着任して下さったお蔭です。ありがとうございます。」

 

そう言って深々と大淀は頭を下げた。

 

「......俺はこれが当たり前だと思うぞ。」

 

そう言って不意に手を大淀の頭に乗せた。

 

「俺は皆に死を強要する存在でもある反面、誰一人失いたくないと考えている。何があろうとだ。そしてここにいる以上、楽しく生活して欲しいんだ。」

 

そう言って大淀の頭を撫でた。

 

「色々と制限は掛けさせてもらっているが、それでも人間の兵士レベルだ。それよりも緩いかもしれない。だが、艦娘である以上に女の子だろう?」

 

そう言って俺は大淀の頭から手を放してトレーを持って立あがった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

夜の鎮守府はいつもより早く静かになった。どうやら皆疲れてしまったみたいで、夕飯を食べるなりその場で寝てしまった艦娘も居る程だ。

俺はそんな鎮守府を散歩し、埠頭で空を見上げていた。最近ふとここに来ることが多くなった俺は何でここに引き寄せられるかも分からないまま、ただ空を見上げた。

空を覆い尽くすほどの星の数々は俺が居た世界からは考えられない程、綺麗に見える。

 

「......少し寒いな。」

 

俺はそう思い、部屋に帰る事にした。

 




最近内容が薄くなりつつあることに焦りを感じております。まぁ時間がないからあまり長く考えられないってのが原因なんですがねw
運動会もこれで終わりです。因みにこれを書いたのは最近、そういう事を作者がやったからです。やって帰る頃に筋肉痛が来て翌日もダメでしたね......。ですが楽しかったので良しです。

ご意見ご感想お待ちしてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。