【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第三十三話  工作員、艦娘の怒り。③

 

赤城指揮の下の航空哨戒と合同警備が始まって一週間が経っていた。

これまでの鎮守府侵入者は無し。不審人物はいつもの男のみ。至って平和だった。

それまではずっと比叡と夕立、時雨、朝潮と過ごし、寝るときも俺の寝室で寝ていた。

それに関しては一部の艦娘から抗議があったようだが、赤城が一蹴したそうな。いつもの赤城でない事に俺は戸惑いを感じつつも護衛の下で執務をしていた。

執務に関しては最低限の遠征のみしか行っていないので、いつもすぐ終わるくらいしかない執務も一段と早く終わる。たとえるなら学校から課される宿題のプリント一枚的な奴だ。

執務を始めてものの30分でその日の執務が終わるのだ。

 

「あー、暇だ。」

 

そんな事を呟いたのは、午前11時。いつもこれくらいに執務が終わるというのに、ここ一週間は2時間前に終わっている。

本を読むのにも飽きてきていて、手持無沙汰なのだ。

そうしていると、執務室にゾロゾロと工廠の妖精が入ってきた。何事かと身構えたが、どうやら彼女らも仕事が無くて暇だという事だ。いつもなら建造や開発などをした後、工廠を綺麗にする事で結構な時間を使っていたから、最近していない建造や開発によって汚れる事無く、暇すぎたので磨いたらしい。今日、それすらも終わってしまったらしい。本当に暇だとのこと。

俺はある事を考えていた。艦娘の待遇改善。鎮守府から出ずとも娯楽が楽しめる施設を作るのはどうだろうかと考えた。

この課題は話題には出さなかったが、日ごろから俺が考えていたことだ。いつもなら色々としていて結局提案せずじまいなので、丁度良かった。

 

「施設を作る事は出来るか?」

 

「えぇ、もちろん!」

 

俺はそう元気よく答えた妖精に何を頼もうかと考え出した。食べもを買える場所。最初に思い付いたのはそれだった。

以前、蒼龍が早朝に腹を空かせて俺の部屋に来ていたのを思い出したのだ。この鎮守府では食堂で出るご飯以外は手に入らないらしい。嗜好品なんて以ての外だそうだ。

だが、新築しても仕方ない。酒保を増設して置くものを増やしてもらう事にしよう、そう思い至った。

 

「じゃあ、酒保の拡張を頼む。」

 

「どれくらいの広さに?」

 

「取りあえず倍だ。」

 

「了解っ!行くよっ!!」

 

俺が妖精に頼むと、相当暇だったのか今すぐ始めるらしい。早々に部屋を出て行ってしまった。

 

「提督。」

 

その姿を見送った後、時雨が話しかけてきた。

 

「どうして酒保を拡張するんだい?」

 

凄く素朴な質問を俺にしてきた。時雨はどうやらあの酒保で満足しているらしいが、俺からしてみたら小さい店もいいところだった。手に入るのはタオルと下着くらいだったから(※一度行って恥かいた)拡張したいのは俺の願望でもあった。

 

「買えるものを増やすんだ。今はタオルと下着しか売ってないだろう?そこに食料品を増やそうと思うんだ。」

 

そう言うと時雨はふーんとだけ言って、さっきまで読んでいた俺の貸した本に目線を戻してしまった。

ちなみに番犬艦隊のメンバーは思い思いに過ごしている。それでも俺の護衛はやっているが。

比叡は戦術指南書の戦艦に関する物、夕立と時雨は俺の貸した本、朝潮は俺の前で正座している。何故正座しているのか聞いたが、よくわからない回答しか返ってこなかったので俺も気にしない事にした。

はたから見たら相当カオスな状況だが、俺はもう見慣れた。これが一週間続いたからな。

それにしても比叡が戦術指南書を読んでいる姿は笑える。そういう者には疎いと思っていたからだ。

 

「ん?何ですか、司令?」

 

俺の視線に気づいたのか、比叡が本から顔を外して俺を見たが俺は何でもないと言ってすぐに視線を戻させた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

こんな事をして俺は執務室に居たが、外では色々な事があったらしい。報告では、陸軍兵站隊の輸送トラックは今まで顔パスで入れたそうだが、今回の事で警備がかなり厳重になり、艦娘と門兵による身体検査と物資確認が行われるようになったらし。最初の補給トラックの運転手は心底驚いた表情をしていたらしい。

それと上空を飛んでいる哨戒機の数が尋常じゃなく、3日前に衝突事故があったと報告書が入っていた。誰の艦載機かは知らないが、問題にはならなかった。

更に、鎮守府敷地内の巡回が4個警備艦隊だったのが今では倍の8個警備艦隊が巡回しているそうだ。その数では回り切れないと赤城は言ったらしいのだが、そこまで密な警戒がしたいとのことだったのげ許したらしい。

と、様々な事が起きていたと言うのを赤城から聞いている。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

昼過ぎに突然、赤城が血相変えて執務室に入ってきた。

 

「番犬は臨戦態勢に移行して下さいっ!提督っ!」

 

どうやら侵入者が居るらしい。

さっきまで各々の過ごし方をしていたが、すぐに俺の周りを囲んだ。

 

「提督と番犬は避難場所に移動して下さいっ!」

 

そう言うと赤城は走り去った。走る後ろ姿で、あれが見えそうになったがそれは黙っておく。

さっき赤城の言った避難場所とは鳳翔のところだ。

侵入者があった場合、埠頭に停泊している鳳翔に乗り込むことが決まっていた。いつの間にか決まり、俺はそれに従っているだけだが。

 

「司令っ!行きますよ!全艦、輪形陣っ!」

 

そう比叡は言って俺の腕を引いて走り出した。これから俺たちは鳳翔の元へ向かう。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

埠頭では鳳翔が待っており、俺と番犬艦隊のメンバーはすぐに乗り込んだ。

この先、どうするかは聞いていないが、どうやら籠城という形らしい。

入り口は全て閉鎖するとさっき鳳翔から説明があった。いつも穏やかな表情をしているが、今日はどこか違和感のある笑顔だった。

俺は気にも留めずに鳳翔の後を追った。

鳳翔に籠城して数時間が経った頃、赤城から侵入者の確保が知らされた。それはどうやら斥候だったらしいが、脅威度的には其処まで高くないので鎮守府の幽閉施設に収容される事になったと後あとから報告を受けた。

結局、鳳翔に籠城して出てきたのは夜を回っていて、俺はこれがあと何回も続くのかと思うとうんざりしてならなかった。

 





今日は思ったほど、書けてませんでしたね。
このシリーズはもうそろそろ終わらせるつもりなので。いつまで続くのやら......。

ちなみに番犬艦隊を番犬とまで訳すようになってしまったのは悪気はないです。

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