【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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昨日は投稿できませんでした。足釣ったまま寝てしまった(←どういう状況)




第三十二話  工作員、艦娘の怒り。②

昼になり、赤城に言われた通りその時いるメンバーに俺の暗殺を目論んだ動きが報告されたと連絡を入れると食堂内で殺気が沸いた。

今にもその殺気で人を殺せるのではないかという勢い。ピリピリと張り詰めた空気に俺は飲まれていた。

ここまで怒るとは思えなかったのだ。そしてその空気の中、赤城が話し出した。

 

「提督。私にこの件を任せてはくれないでしょうか?」

 

そう言ったのだ。

この件を任せる。その意味として、当事者である俺がどうこういう訳では無く、赤城がどうにかするというのだ。

 

「任せるって、俺は警備部との連携も考えていたんだが?」

 

「門兵詰所で私がテレビを見たことは知ってるじゃないですか。あそこの隊長とは何度か話したこともありますし、あの隊長なら人間でも私は信用できると思います。」

 

そう言ったので俺は黙って頷くと、赤城が声を挙げた。

 

「この件に関して私、一航戦 赤城が指揮を執りますっ!!指揮の元、艦娘は迅速に行動されたしっ!!呼び出す艦娘は集合っ!比叡さん、時雨さん、夕立さん、朝潮さんっ!!」

 

そう赤城が呼び出すと、目にも留まらぬ速さで赤城の前に呼ばれた4人が姿を現した。

 

「比叡さんを旗艦とする『番犬艦隊』を編成、常に艤装を身体に纏い、提督の護衛に尽力して下さい。」

 

「「「「了解!(っぽい!)」」」」

 

と、早速対策が出された。

赤城の呼び出した比叡、時雨、夕立、朝潮はウチの艦隊司令部でよく犬っぽいと言われている艦娘だ。比叡は金剛にじゃれつく姿と、『待てっ!』というと待つ仕草から。時雨と夕立は時雨は何故か分からないが夕立はその犬っぽい髪型からだろう。朝潮は提督である俺に対する従順な姿勢からだろう。

取りあえずこの艦隊名を付けた赤城に言いたい。実に合ってる。

 

「空母の艦娘は私と共に彩雲、零戦で鎮守府上空を24時間体制で哨戒します!その他の艦娘は3人1組で警備艦隊を結成。名簿が出来次第、警備部と連携を取って鎮守府内巡回です!番犬艦隊同様、哨戒・巡回中は艤装を身に纏う事。」

 

その一声で食堂内がざわつき始め、警備艦隊が結成されていく。どうやら皆、バランスを考えての編成みたいだった。全体的に艦種が偏らない様な編成になっていく。

警備艦隊はものの10分で組終わり、それぞれの旗艦が赤城に報告していく。

 

「全員決まりましたね。では警備部の方には私が話を付けますので、警備艦隊は待機、空母の艦娘は2人ずつ哨戒任務をお願いします。」

 

といった感じに、流れるように決まっていった。

この間、俺は何をすればいいのか悩んでいたが、結局番犬艦隊の連中に囲まれたままだった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

昼食後、俺は赤城の指揮で始まった工作員に対する警戒を鑑みて燃料とボーキサイトが多く手に入る遠征艦隊を組んでいた。

因みに、日ごろから遠征艦隊に組まれている軽巡・駆逐の艦娘は遠征がある事を悟っていたのか、警備艦隊の編成には加わっていない。その代り、ひっ切りなしに遠征任務に出ると意気込んでいた。特に球磨。

今は執務室に戻り、赤城と番犬艦隊の連中に囲まれている。執務は午前で終わっていたので、手持無沙汰になっており、取りあえず本を読んでいた。

逐一報告が入るのかと思っていたが、そういう訳では無いらしく、哨戒の空母の艦娘の艦載機が交代毎に状況報告に飛んでくるだけみたいだった。あと赤城は昼食を終えると早々に門兵詰所に赴いていた。そしてすぐに連携を取り付けたそうな。

 

「司令、工作員って塀の向こう側をウロウロしていたんですか?」

 

唐突に比叡が訊いてきた。

 

「そうみたいだ。何度も来てウロウロしていたと。」

 

「それは侵入するための偵察なのでしょうか?だとしたらその工作員、諜報部とか言う割に結構間抜けですね。」

 

そう比叡は言った。俺には間抜けな意味が判らなかったが、他の番犬艦隊の夕立や時雨、朝潮は分かった様で頷いている。

 

「確かに間抜けだね。僕だったらスパイとか使うけどな......。」

 

そう時雨が言った。スパイを使う。諜報員を送り込むという事だ。もしスパイだったとしたら外の不審人物はフェイクで、本命は既に鎮守府内に入っている事になる。

一瞬、その場の空気が張り詰めた。

 

「そもそも人間が私たちの提督さんをこんな風にしか用意できないのが悪いっぽい。必死に頑張らせておいて、いざ提督さんが着任すると都合が悪いって言って暗殺とか......意味わからないわ。」

 

「そうですね。私たち艦娘の扱いが最悪なのは前からでしたが、ここまで酷いと私たちが蜂起するとか考えないんでしょうか?」

 

続けて夕立と比叡もそう言った。2人のいう事は最もだった。自らが指揮する訳では無く、別の世界の人間を徴用して艦娘の前には姿を現せないようにして危険な戦地に赴かせて、自分らは艦娘が回収してくる資源と妖精が開発した食糧生産プラントで肥える。艦娘が知るこの世界の人間のすべてだった。

 

「取りあえず4人で俺を囲むのをやめてくれ。」

 

そう言って俺が溜息を吐いた。

これまでの会話は俺の周りの4方を番犬艦隊が囲んだ形で会話がされていた。俺を中心に会話をするのは、話に入っていない俺からしたら結構苦痛だ。それに俺も一応人間なんだよね。今までツッコまなかったけど。

 

「いえ!こうでもしないと意味がありませんので。」

 

そう言って朝潮は身長が足りないのか、ピョンピョン跳ねてそう言った。

 

「そうか?」

 

俺は首を傾げつつ、取りあえずやめるように言った。

それからも本当に番犬艦隊は俺と行動を共にした。移動する道すがら金剛と鈴谷にすれ違う度に、なんか視線を感じたが俺は気にせず移動をしていた。

歩いている道中、ひっきりなしに聞こえるのは哨戒中の彩雲だ。実物スケールではなく、何だか縮小されている。飛び去っていく艦載機は1秒につき4機。結構な頻度だ。

それと鎮守府の外では警備艦隊だろうか、艤装を身に纏って外を歩いている。というか、警備をしている。門兵詰所も総動員しているのか、詰所の入り口に必ず人が立っているが、今日は立っていない。

それと移動中の建物内はとてつもない殺気で充満していた。どうやら待機中の警備艦隊がその雰囲気を醸し出している様だ。それを考えると番犬艦隊はまだいい空気なのだろう。夕立はさっきから鼻歌歌いながら歩いている。

 

「そういえばどこに行くのかしら?」

 

そう言って鼻歌を途中で切り上げた夕立は唐突に聞いてきた。

 

「屋上だよ。確かめたい事があるんだ。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

屋上には五十鈴に案内されて以来来てなかったが、今日は久しぶりに来てみた。どうやら自由に出入りできるように、出入り口にはかぎが掛かってなかった。

五十鈴の時もそうだが、すんなり入れて内心かなり驚いている。

 

「外の風は気持ちいな。」

 

俺はそう呟いて、吹き付ける潮風を浴びた。

いつもそうだが、午前中に執務をして残りは執務ではない事をやっているから基本的に執務室と食堂、私室しか行っていないのだ。せっかく五十鈴に案内してもらっても、それ以来行ってないところがたくさんある。この屋上もそうだった。

 

「ですね。私やお姉様、妹たちもよく来てますよ?」

 

「夕立はあんまりかな......。」

 

「僕も......。」

 

「私は初めてきました。」

 

4人多種多様な反応をしてくれたが、俺はそれにはお構いなしに風に当たっている。暑過ぎない日差しに、寒すぎない風。とても愛称が良く、さわやかな気分に段々なっていった。

 

「さて、戻るか。」

 

俺は十分に風に当たると、そう言って4人を連れて再び室内に戻って行った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

昼の後は屋上に行った以外、いつも通り過ごし、既に夕食の時間になっていた。

俺が4人と赤城で来ると、いつも和気藹々としている食堂には重苦しい雰囲気が流れていた。

赤城曰く『収穫なし』とのこと。一刻も早く捕まえたい様子だった。だが、この夕食後も警備は24時間体制で行うとのことなので、この後も警備艦隊が何個か出て行くようだった。ちなみに空母は夜間飛行が難しいらしく、やらないと赤城から聞いていた。

夕食はいつもなら誰かと話しながら食べているが、今日はどうやら未菜そんな気分じゃないらしい。凄く静かに食べている。俺もいつもよりかなり早く食べ終わってしまったのですぐに執務室に帰った。正直、こんな空気の食堂に居たくないと感じていたからだ。

執務室に帰ると、番犬艦隊のメンバーが全員交代で見張りをするとのことだったので、羽織れるものを貸して俺はすぐに寝る事にした。いつもより早い就寝だった。

 




番犬艦隊結成です。
このネタは前々から用意していたので、やっと使えたって感じです。メンツに違和感がある方がいるかもしれませんが、あれは作者の偏見で決まった艦隊ですのであしからず。

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