【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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最近、初期の頻度からだいぶ落ちましたね。
暇がないという言い訳でもしておきましょうか。

今後かなり更新が遅れると思います。


第二十八話  他の鎮守府は

 

金剛と榛名が報告を終えて出て行ったあと、時雨が俺に声を掛けた。

 

「ねぇ提督。演習見に行かない?」

 

「ん?どうしてだ?」

 

「丁度今日の演習は五十鈴がやってるんだろう?五十鈴は水雷戦隊で旗艦を良く任されているからね。戦場以外の目線で見てみたいんだ。」

 

俺は時雨の提案に乗り、演習を見に行くことにした。

因みに演習は鎮守府の安全海域で演習弾でやっている。被弾した箇所にはペンキが付き、妖精が被害状況を報告することで艤装の動きを制限していくらしい。

この説明は演習を見に行く道中に時雨から訊いた事だった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

演習場というか、海に俺と時雨は来ている。

沖の方で演習をしている様だが、俺には砲撃音しか耳に入ってこない。時折爆発音が聞こえるのだが、それはきっと砲撃が被弾した音なのだろう。

 

「そう言えば提督って艤装に乗るのは初めてかい?」

 

時雨はボケーっと外を眺めていたかと思うと俺にそう言った。

今、時雨は艦内の妖精にあちこち指示を出している。と、言っても操舵と監視員だけらしいが。

 

「いいや。赤城の艤装に乗ったことある。」

 

「赤城か......。」

 

俺がそう言うと時雨は遠い目をした。赤城という言葉に反応したかのような様子に俺は違和感を持ったが、気にせずに外を眺めた。

そうすると、時雨が話し出した。

 

「提督は僕をキス島に改造できるまで出撃させてただろう?あの時、一回だけ僕が大破した事があるんだ。」

 

そう言った時雨の目はいつもと同じ方向を見ている。

 

「艤装が炎上して、妖精が消火活動やしている間に僕は一酸化炭素中毒になって気を失ったんだ。」

 

「......。」

 

俺は黙って聞いている。

 

「気が付くと炎上していた僕の艤装は長門が曳航していて僕は赤城の膝の上で寝てたよ。あれからどうしたのかと聞くと僕が気を失った直後に敵の陣形が崩れたから長門が突撃したんだって聴かされた。」

 

時雨はさっきまで見ていた方向から俺の方に顔を向けた。

 

「ウチの鎮守府で古参最強って言われているんだよ。長門と赤城は。扶桑や山城もそうだけどね。」

 

そう言って時雨はクスッと笑った。だがすぐに真面目な顔に戻った。

 

「僕も古参なんだ。4人の背中を追っていくつもりさ。戦闘では僕を護衛艦にして欲しい。近づく敵を蹴散らしてやる。」

 

そう言った時雨の目には明らかにさっきまでとは違う力が込められていた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

演習場に着くと、2艦隊がそれぞれ砲撃し合い、乱戦になっていた。

陸奥が砲門をすべて使ってあらゆる方向に砲撃している。高雄と熊野は最大船速なのか、すごい波を立てながら縦横無尽に駆け回っている。

その中、異様な速度で航行しているのが五十鈴だ。

砲撃はしていない様だが、魚雷は撃っているみたいだ。五十鈴が通った後で相手艦が大きな水柱を上げたのだ。

その後方で航空戦を繰り広げている赤城と祥鳳は護衛もなしに善戦している。

戦場を目の当たりにして、何も思わない訳が無い。だが、何も言えない。もしこれが深海棲艦との戦闘だったなら、炎上している艦は今頃轟沈しているのだろう。

一際大きな破裂音がしたかと思うと、祥鳳の艤装、飛行甲板に砲弾が吸い込まれるのが見えた。どうやら弾薬庫に被弾したみたいだった。艤装はすごい勢いで炎上して居るかのような忙しない動きをしている。

これが実戦だったら祥鳳は既に轟沈している事だろう。そう感じた。

 

「祥鳳が轟沈判定が出たみたいだ。」

 

そう時雨が言った。どうやら本当にそれだけの被害が出た様だった。

 

「戦局は大丈夫だよ。陸奥は提督のたたき上げで今では古参組と同じくらいの練度だ。」

 

時雨はそう言った。

ちなみに俺と時雨は遠目から見ているが、甲板から見ていた。やる事のない妖精も一緒になって見ている。

 

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ーーー

 

 

演習が終わるころに時雨と俺は戻っていた。

時雨が満足したと言ったからだ。どうやら勉強ができた様だった。

そのまま時間が過ぎ、夕食時は俺と時雨は戦術について話していた。そんな感じに今日も終わると思っていたが違った。

時雨が俺に唐突にノートを差し出した。そのノートは酒保で売ってるものだ。

 

「ん?」

 

「これにはね、他の鎮守府の様子が書かれてるんだ。あくまで僕が見てきたところだけだけどね。」

 

そう言って時雨は差し出したノートを開いて見せた。

そこには日にちと所属、編成が書かれており、使ってきた装備なども書かれている。そしてその直下にはずっと続く文章。読むと演習で訪れた鎮守府に関する事が書かれていた。

 

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ーーー

 

 

9月15日 第112艦隊司令部 第一艦隊

 

金剛(旗艦)、比叡、神通、夕立、赤城、祥鳳

 

41cm連装砲4基、零式水偵12機、21号対空電探、14cm単装砲2基、四連装魚雷、12.7cm連装砲、三連装魚雷、零戦21型、九七艦攻、九九艦爆。

 

鎮守府はこちらとあまり変わらないが、外壁などに落書きが目立つ。敷地内で大規模な暴動が起きた形跡有。門兵、職務怠慢。

棟入り口には木刀を所持した艦娘数人が常に立っている状態。

演習艦隊の艦娘の表情に違和感。

埠頭に潜水艦の艤装が停泊。尚、損傷している。大破状態。

駆逐艦と軽巡洋艦の艦娘の目の下にクマを確認。連日連夜の遠征任務と思われる。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺が読んだのはそこまでだった。

途中で読む気が失せてしまった。何故時雨がこれを記録していたのかはさておき、この様な状況の鎮守府が普通みたいだった。さっき読むのを切り上げる前にペラペラと数ページ捲ってみてみたが、どこも同じことが書かれている。

 

「許せないよ、僕は。」

 

そう言った時雨は俺の開いていたノートに視線を落とした。

 

「提督の居た世界で僕たちの世界はゲームだったんでしょ?」

 

「......そうだ。」

 

唐突にそんな事を時雨が言った。

 

「この現実を見てほしい訳じゃない。改善してもらったところで僕らの、艦娘の扱いに関しては何も変わらないからね。だけど、ゲームだったとしても酷いと思うんだ。提督は途中で読むのをやめてたけど、埠頭で大破した潜水艦を見たって書いた後に出撃しているところも見ているんだ。入渠させられずにね。」

 

そう言った時雨の目には怒りと言うより、悲しみの感情が溢れているように見えた。

 

「このページを書いたのはね、提督が着任するって噂を聞いた4日後だった。そんな他の鎮守府を見てみて僕はその時『提督が着任してなくても、僕らは他の鎮守府に比べたら幸せなんじゃないか』って思ったんだ。」

 

そう言って時雨は俺の手の上にあるノートを数ページ開いた。

 

「ここのページに記録したのは、提督が2ヵ月以上、指令書が送られてこなかった鎮守府だよ。」

 

そう言ってトントンと指を刺した。

 

「見に行ったけどかなり酷かった。建物はボロボロ、外壁もボロボロで、門兵は居ない。だけど艦娘は居るんだ。どうやら提督の着任が止まってしまうと色々な物が鎮守府に入ってこなくなってしまった様で、敷地内の炉端に僕と同じ駆逐艦が栄養失調で倒れてたよ。それに重巡から上の大型艦は全員で釣竿を下げて魚釣ってた。食べるものが無いって言って。」

 

そう言って時雨は隣のページを指差した。そこのページは他のページと違って書かれている事が少ない。

 

「たまたま通りかかった鎮守府だけど、ここの鎮守府は提督が半年以上命令書を送らなかったらしくて、艦娘が全員餓死したところよ。最期まで残った艦娘は艤装で自分を撃って自殺したみたいだけどね。最後は人間によって死体は回収されて清掃がされたんだ。」

 

そう言った時雨は俺の手の上からノートを拾い上げた。

 

「これが僕の見てきた他の鎮守府。不確かな情報だけど、提督みたいに提督が着任した鎮守府は無いみたいだ。」

 

そう言って時雨は俺の横の席から立ち上がった。

ちなみに今の会話は食堂でしてました。周りの艦娘は引き気味な艦娘もいるが、他の艦娘たちは眉をひそめていた。

 





他の鎮守府の話です。
といってもブラックのところですが。放置されたアカウントの事も書かせていただきました。因みに作者の想像ですのであしからず。

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