【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百七十二話  熊野と鈴谷のカレー

 

 今日の秘書艦は熊野だ。特段何がある訳ではない。強いて言うなら鈴谷が拗ねただけ。

 

「おはようございます。」

 

「おはよう。」

 

 今日は温かいということだったが、やはり朝が早い。部屋が冷えていた。

 

「時間が時間だし、食堂に行くか。」

 

「えぇ。」

 

 そんな感じで俺と熊野は食堂に向かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 熊野は見せた覚えのない書類の内容を知っていることが多い。なんでだろうかといつも思うのだが、ついにその答えを教えてくれた。

 

「執務室の棚に大本営から届く書類は纏めてるじゃないですの。時たま訪れた時にそれを見てますわ。」

 

 ということらしい。確かに秘書艦が大本営からの書類(※新瑞が黙って入れてるホントは大本営以外にまで出るはずではない書類を入れてる)をファイリングをしているが、中が見えない様に冊子になって入ってるはずなのだ。それに見ることを俺は禁止までとは言わないが、あまり見るなと言ってあるのだ。

 

「はぁ......見てるのか。」

 

「えぇ。」

 

 そんな爆弾発言をしているのは食堂。朝食を食べながらの話だった。勿論、近くには他の艦娘も居る。

 

「見てれば見えてくることもあるんですのよ?その書類が提督の視点から見たものと艦娘が見たものとでは違って見える事だってありますわ。」

 

「そうかもしれないが、俺はあまり見るなと言っていたよな?」

 

「知ってますわ。」

 

 そう応える熊野は澄まし顔で朝食を食べている。

 

「まぁいい......。」

 

 そう俺も朝食を食べていく。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺は今日の執務で使う、事務棟から熊野が持ってきた書類を見て読むと熊野に見せた。それは俺が見るなと言っていた書類だ。

 

「なんですの?」

 

「いいから見てみろ。知ってる話ではあるだろう?」

 

 俺が熊野に見せた書類の内容は大本営が大きく動くということだった。何をどうするかなんて書いてはないが、面倒事になるのを示唆した文だ。

 

「成る程。大本営が何かをするということですわね。」

 

「あぁ。だが、何をするとは書かれてない。」

 

「気になりますわ。」

 

「俺もだ。」

 

 俺はそう言いつつも執務に手をつける。その書類を幾ら読んでいたって分かる訳が無いのだ。具体的な表現が結構無い文章だからだろう。全て抽象的で分かり辛い。

多分、熊野も同じ感想を持っただろう。なんのことだかわからないが、何かをしようとしていてそれが面倒事になるということだけがわかるのだ。

 

「この数ページに渡る書類なのに分かる情報が少なすぎますわ。」

 

「同感だ。」

 

「ここまでぼかす必要があったのではなくて?」

 

 そう熊野は考えながらそれを机に置くと、自分の秘書艦としての執務を始めた。俺も熊野も気になるところだが、執務優先だ。幾ら1時間ばかしで終わるとはいえ、最優先だからな。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 執務の後、大本営から送られてくる書類を纏めてあるファイルを手当たり次第探してみたが、結局わからなかった。

情報が少なすぎる。ただそれだけだった。

そこまでして考えても仕方が無いので、俺と熊野は別のことをすることにした。それは色々あったこれまででも、忘れることのない事だ。俺のために動き、やってはいけないことにも手を出してまでしていたあの事だ。

 

「昼まで時間があるのであの話をしましょう。」

 

「いいぞ。」

 

 こうやって始まったのだが、熊野から話がポコポコと生まれてくる。

 

「最初に、この前の作戦のことですわ。何なんですの、あの『提督も乗艦させろー』とか、訳が分かりませんわ。」

 

「それは何度も説明しただろう?」

 

「納得いきませんの。大体、合同作戦と謳ってましたがこちらが攻撃して盾になる事を想定したものでしたわよね?」

 

「そうだな。楔型陣形で米艦隊は楔型中央部だったな。」

 

「それですわ。自国の海岸線の開放のための作戦ですのに、自分の国の艦隊が出ないなんて......あろうことかその時の陣形の先頭は横須賀鎮守府だったそうですわね。」

 

「そう聞いたな。」

 

 熊野はソファーに座ってそう話すが、腕を組みながら怒っている。

 

「あちらの要求をそのまま飲んだ政府と大本営は分かってないのですわ。知っているはずですわよね?提督のことは。」

 

「勿論だ。」

 

「なら尚更、納得が行きませんわ!」

 

 そう言いながら熊野は紅茶を飲んだ。落ち着くためだろう。

ティーカップを置いた熊野は落ち着いたのか、話題を変えた。

 

「まぁ、事は済んだ事です。もう何を言っても変わりませんわ。」

 

「あぁ。」

 

「それと、最近になって戦争終結も現実味を帯びてきましたけど、本当にどうするんですの?」

 

 そう熊野は訊いてきた。今後の事なんて正直考えてすら無い。

目の前のことで精一杯という訳ではないが、熊野の言うほど現実味は出ていない。まだ中部・南方海域があるのだ。それも手がついてない。この前の『FF』作戦でもしかしたら中部海域の艦隊に手を出していたのかもしれないが、分かるわけがない。もう撤退してしまったし、海域の情報なんて知らないからだ。

 

「何にも考えてない。まだ海域が残ってるだろう?」

 

「それはそうですけど......。」

 

 熊野が食い下がってきた。

 

「その時はその時だ。最善の判断ができればの話だけどな。」

 

 そう言って俺は紅茶を啜る。

 

「ううぅぅ......もうっ!提督はどうしてそこまで自分のことを考えないの?」

 

「考えてるさ。海域を攻略して、終戦させる。そのことを。」

 

 そうは熊野に言ってはいるけど、本当は考えている。と言っても起きることといえばひとつしかない。

一番ありえるのは俺たちを排斥することだ。これまでは黙っていたが、終戦すれば艦娘は脅威でしか無いからだ。それ以外に何があるのかと聞かれても、答えられない。ぶっちゃけ、それ以外無い。

 

「当面はそうですわね。」

 

「そうだ。だからまだ考えなくていい。中部海域でも攻略した後くらいに考えればいいさ。今から出来ることなんてそんなないからな。」

 

 そう言って俺はティーカップを持って立ち上がる。片付けるのだ。

 時計を見ると、もうそろそろ正午。これから昼食になる。食堂に移動しなければならない。

 

「さーて、行くぞー。もうこの話はおしまいだ。」

 

「はいはい。すぐ行きますわ。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 食堂に入って、席に座っているとすぐに俺の片方の席が埋まる。

誰が入るのかというと、勿論、鈴谷だ。

 

「ちぃーす!」

 

 そう言って横に座ってくる。

 

「鈴谷。」

 

「ん?なーに?」

 

 俺はニコニコして座っている鈴谷に話しかけてあることを言った。

 

「今日は何カレー?」

 

「カレー!」

 

「答えになってないんだけど。」

 

「カレーはカレーだよ?」

 

「具は何か乗せるのか?」

 

 そう聞くと鈴谷は考えて答える。

 

「うーん......。何も乗せないよ?」

 

「マジ?」

 

「マジ。」

 

 俺はそれを聞いてなんだかカレー好きな鈴谷が可哀想に思えてきた。

 

「カレーばかり食べてて正直、飽きるときあるだろう?」

 

「そうだねー......あるといえばあるかな。でもカレーだからねぇ。」

 

「そういう時はトッピングだよ。」

 

「トッピング?」

 

「例えば、カレーに目玉焼きを乗せたりするんだ。」

 

「ほぉー!!」

 

 俺は色々とトッピングを上げていく。カツやチーズみたいに有名ドコロからネギなんかのあまり聞かないものまで俺は鈴谷に教えた。

 

「美味しそうじゃん!」

 

「美味しぞ。俺はオムレツ乗せてオムカレーとかやってたり......した......。」

 

 そう言いかけた瞬間、俺はなんだか不味いと思った。それもその筈。鈴谷が眼の色を変えたのだ。

 

「オムレツっ!?オムカレー美味しそうっ!!」

 

「あーそのー。」

 

「提督!」

 

「何だ?」

 

「作ってっ!!」

 

「嫌だ。」

 

 俺はそう言って自分の食べ進める。そんな俺に作れコールをする鈴谷を無視しながら俺は昼食を終わらせた。

 ちなみにこの俺と鈴谷のやりとりを聞いていた艦娘たちも眼の色を変えていたことを執務室に帰った時に熊野から聞いたのだが、どういう意味で変えていたのかさっぱりだった。

 





 今日のは色々立て込んでてスッカスカな内容です。疲れていたというのもあるんですけどね。
 カレーのトッピングの話は書き出したらきりが無いので適当なところで切らせてもらってます。以外と皆さんの知らないトッピングもあるんですよね。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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