【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百六十九話  『FF』作戦⑧

 

 回頭してからアルフォンシーノ群島に引き上げるまでに接敵することは無かった。途中、米機動部隊の生き残りがそのままロサンゼルスの軍港に入るというのでついでに送り届けると、見に来ていた兵士たちは唖然としていた。無理も無いだろう。

ジョン・F・ケネディがいなくなっているからだ。生き残っていたのは巡洋艦2隻と駆逐艦3隻。巡洋艦の臨時旗艦の将校が言うには『これでも生き残ったほうなのではないか。我々は運がいい。』と言っていた。だがそんな事はお構いなしに末端の兵である、兵士たちは不安を募らせていること間違いなしだった。

 勿論、送り届けるということで送り届けたのだが、その際にこちらの艦隊も見られていた。

こちらの日本皇国派遣艦隊は傷は負っているものの、轟沈は無し。違和感と同時に疑問に思うことがあっただろう。明らかにこちらに向けている視線が好奇心ではなかったのだ。

俺たちは補給の必要が無かったので沖から見ていたが、心の何処かで嫌だと感じていたに違いない。

 そんな中、俺は2回目に接敵した未確認深海棲艦のことを考えていた。

最後まで未確認深海棲艦は駆逐艦ほどのサイズってのは米機動部隊の方から偵察情報として入っていたから間違いないと思われる。

 

「悔しいですね......。」

 

 赤城はそんなことを言いながら灰色の空を眺めていた。

 

「2回目の戦闘か?」

 

「えぇ。こちらは未確認深海棲艦との交戦経験がありますからね。一度遭った時、その場で撃破したいものです。」

 

「そうだな。しかも今回のは、多分だがアレを倒しきれたら良かったのかもしれない。」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。」

 

 そう言うものの、やはりイレギュラーが気になる。

どうして戦闘中ではないのに米機動部隊は潜水艦による攻撃を受けたのだろうか。イレギュラーである以上、なにか理由があるはずなのだ。

俺は頭を回して考える。そんな中、出てきた仮説は『同一鎮守府ではない艦隊による連合艦隊を編成していた』ことだ。

だが正直に言えばどの鎮守府所属かなんて見ただけで分かる訳ではない。所属鎮守府が艤装に書かれていない、艤装にIFFがある訳でもない。ならこの仮説はどうなのだろうか。

同一ではない艦隊による連合艦隊編成ではないとすれば、問題は米機動部隊にあるだろう。

こちらの横須賀派遣艦隊にはイレギュラーになりえる要因が無いと見てもいい。なら、米軍だ。一番最初に挙げれるのはハープーンだろうか。だが、現代艦による攻撃で、妖精との関わりが無いことを鑑みると、それはまずない。

なら何なのだろうか。

 盲点など自分で分かるはずもない。アルフォンシーノ群島に到着してからも答えは分からない。ずっと連合艦隊編成と米軍を疑っていたが一体何が原因でイレギュラーを起こしてしまったのだろうか。

 考えている間、赤城がこんなことを言っていた。

 

『今回の作戦で私たちが戦った深海棲艦はどこの海域のでしょうか?』

 

 言葉そのものの意味で捉える事は出来る。だが『どこの海域』という言葉に引っかかっていた。

『どこの海域』。考えてみれば確かにそうだ。西海岸ギリギリまで海を奪っていた深海棲艦は『どこの海域』の深海棲艦なのだろうか。俺もそんなに詳しく覚えている訳では無い上に、調べていたとしてもせいぜい北方海域までだった。それに、調べていたのもこちらの世界に来る前だから8~9ヶ月かそれよりもっとだ。今、日本皇国の季節は梅雨前くらいだそうだ。俺が来たのはお盆を過ぎ、まだ蒸し暑い頃。だったら多分合っているだろう。8~9ヶ月も昔の記憶なんて覚えてない。インパクトがあったものは勿論覚えているが、些細な事なんて覚えていなかった。

 

(未確認深海棲艦は何なんだ?駆逐棲姫じゃないのか?)

 

 海域のことは頭になくても特殊な深海棲艦の出没地なら覚えているのだ。それに特徴だ。

今回、俺に未確認深海棲艦が駆逐棲姫だと断定させるようなのは後者だった。特徴。艦これでは下半身が無い描写だったが、こちらではそれは関係ない。艤装が船の形で海に浮くからだ。もし、その名の通り、駆逐艦だというのならば『駆逐艦のような』と言う筈だ。というか、言ってはいたが、信憑性がない。これまでの話は全て推測だ。それは前者からだ。出没地から割り出した。この辺りがどの海域に属していようが2つに絞れる。中部海域と南方海域だ。だとしたら未確認深海棲艦で現れるとしたら離島棲姫、駆逐棲姫、南方棲戦鬼だ。一応装甲空母姫が現れるとの事だったが、この場合は無視する。

 最初に離島棲姫は除外だ。離島棲姫は陸上型だからだ。移動できるわけがない。そうしたら駆逐棲姫か南方棲戦鬼だけとなる。ここから特定しようと思うと案外簡単かもしれない。

もし南方棲戦鬼だったら苦戦することなく撃破出来た筈だからだ。南方棲戦鬼は比較的倒しやすいと言われていた記憶がある。というかそもそも南方棲戦鬼がどれほどのサイズでどの艦種かも分からない。判別できないのだ。だとするとやはり駆逐棲姫だ。

 

(駆逐棲姫で間違いないだろうな......。)

 

 俺はその場で持っていた紙に走り書きで書き留め、天を仰ぐ。

久しぶりに顔を上げた気がするが、気づいたら温度もそこまで低いわけでは無いようだ。むしろ、なんだか温かい。

 

「あったかいな。」

 

 そう呟くと立ち上がり、艦橋に入った。ちなみに艦橋に入ったのも久しぶりな気がする。

俺が艦橋に入ると、赤城が話しかけてきた。

 

「あら。どうされたんですか?」

 

「いや、なんだ。気付いたらかなり時間が経っていたな。」

 

「そうですよ。提督がああなってから4日位経ちましたからね。」

 

「そんなにか?!」

 

 どうやら俺は今回の作戦のことを考え始めてから4日間、ずっとああだったみたいだ。下を向いて考え事をする。癖みたいだ。

 

「それで、終わったんですよね?」

 

「あぁ。色々とな。」

 

「そうですか。」

 

 俺はそう言って赤城の横に立った。

 

「今後はアメリカ主導の作戦には参加しない方がいいだろうな。ろくなことが無い。」

 

「えぇ。潜水艦の奇襲攻撃ですね。アレはイレギュラーでした。」

 

「あぁ。おかげで作戦前に出ていた米機動部隊が壊滅したな。」

 

 そう言ってると目の前から大きな飛行機が飛んで来るのが見えた。慌てて俺は赤城に現在地を聞くと、どうやら日本近海らしい。

制海権を奪還したとはいえ、空の港は使っていない筈なのだ。俺たちが出て行って戻ってくる間にそんな整備を出来るとも思えない。なら深海棲艦だとしか考えられなかった。

 

「対空戦闘用意っ!」

 

 そう言うと赤城や妖精たちは俺に何言っているんだと言わんばかりの視線を浴びせてきた。

 

「えっ?未確認機だろう?」

 

 そう俺がいうと赤城は首を横に振った。

 

「違いますよ。アレは二式大艇。秋津洲さんの搭載艇です。」

 

 俺はそう言われて思い出した。ウチには秋津洲がいた事に。

 

「だが何故、二式大艇が?」

 

「それは迎えですよ。こうやって出撃から帰ってくる頃になると秋津洲さんはこうして二式大艇を飛ばしてくれます。」

 

「そうなのか。知らなかった......。」

 

「そりゃそうですよ。秋津洲さん、埠頭から出てきて飛ばしてますから。」

 

 そういう赤城は笑った。

どうやら俺も知っていると思っていたみたいだ。

 

「赤城さん。秋津洲さんからです。」

 

「ありがとうございます。」

 

 突然、通信妖精が受話器を赤城に渡した。どうやら秋津洲かららしい。

 

『おかえりなさいー!お疲れ様かもー!』

 

「お出迎えいつもありがとうございます。」

 

『どういたしまして!じゃあいつものように大艇ちゃんの飛んでいった方角が鎮守府だから追って帰ってきてね!』

 

「分かりました。」

 

 そう言うと赤城は通信妖精に受話器を返した。

 

「と、言うことです。」

 

「あぁ。」

 

 秋津洲はどうやら俺がいつぞや頼んだ哨戒任務をやってくれているようだ。そしてそのついでに出撃していた艦隊の出迎えもしてくれている。

そんなことをしていたのかと感心した反面、なんだか申し訳なく思えた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 鎮守府の埠頭に接岸し、投錨するとすでに艦娘たちが集まっていた。

 

「おかえりー!提督ぅ~!」

 

 声がよく響いているのは金剛だ。俺は笑って手を振るが、なんだか違和感がある。

金剛の格好だ。

 

「どうした、そのカチューシャ。」

 

「んへへ~。気づいちゃいマシタ?」

 

 そう言うと金剛の脇に居た比叡が言った。

 

「金剛お姉様、先日改二に大規模改装が出来る練度になったので改装したんですよ!」

 

「おぉ!おめでとう!」

 

「ありがとデース!これでバリバリ戦えます!」

 

 そう言うが一方の霧島は俺に訊いてきた。

 

「作戦はどうなりましたか?」

 

「あぁ。失敗したよ。」

 

「失敗っ?!」

 

「詳しい話は後で。とりあえず散れっ!息がし辛い!」

 

 金剛や霧島と話すために降りてくるとすぐに艦娘に囲まれてしまったからだ。動けない、暑い、息し辛いの三コンボだ。

 

「赤城!」

 

「はい。」

 

「損傷が重い艦から入渠。それと報告書は無しだ。俺が居たからな。」

 

「了解しました。」

 

 そう指示を飛ばし、派遣艦隊の移動が始まったのを見て俺は艦娘にどいて貰いながら本部棟に帰った。

ちなみに両手にかばんを持っている。ひとつは俺のでもうひとつは赤城の。着替えやらだ。赤城のは後で執務室に来るからと言っていたので運んでおくのだ。

結構重いからここから寮までは大変だろうと思っての事だ。それに後で入渠場に行かなければならない。アメリカが空中投下した物資の運び出しだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺は一度、執務室に帰った。私室に自分の荷物を放り込み、赤城の荷物を執務室の入ってくる艦娘の死角になるところに置いた。

じきに赤城が執務室を訪れたので荷物を渡すと俺は入渠場に向かい、アメリカの空中投下した物資の運び出しをして貰い、雑誌と赤城が持って行かなかった酒を私室に運んでもらってから俺は秋津洲を探しに出た。

理由は今日の帰りのやつだ。これまで秋津洲は俺の指示無しで黙々と任務をこなしてくれていたのだ。俺はたまたま通りかかった電に秋津洲が何処に居るのか聞き、そこに向かった。

電に言われた通りの場所に着くと、秋津洲は居た。何処に居たかというと鎮守府の棟外、艦娘寮から300mくらい離れたところにあるツタが骨組みに這い、ツタの葉が屋根になっているようなところだ。

 

「よぉ、秋津洲。」

 

「提督っ?!」

 

 俺の顔を見るなり秋津洲は飛び上がった。驚いたのだろう。電曰く、この場所には艦娘は来ないらしい。皆私室や本部棟、酒保に行ってしまうからそこでくつろぐ事はないということだった。

 

「どうしたかも?」

 

「ちょっと用事があってな。」

 

「それにしてもここがよく分かったね。ここ、艦娘来ないからってあたしのお気に入りの場所なんだよねー。」

 

「酒保が出来るまではここは艦娘がよく来てたらしいぞ。」

 

 そう俺が言うと秋津洲は立ち上がった。

 

「それで、用事はなにかも?」

 

「あぁ。秋津洲がここに来たのはどれくらいだったかなってな。」

 

「うーんと......かれこれ4ヶ月経ったよ?」

 

「そうか......。これまでどうやらこちらに来てすぐに出した哨戒任務をずっとやっていたと聞いてな。」

 

 秋津洲は自分の頭を描きながら『えへへ』とか言っていたがすぐに持ち直した。

 

「はっ?!提督の言い方だとあたし、忘れられてたかもっ?!」

 

「そうなんだ。すまなかった......。俺が忘れてたのにずっと哨戒任務をやっていてくれて。」

 

 そう俺が誤ると秋津洲は首を振った。

 

「いいよ。思い出してくれたから。」

 

「ありがとう。これからも哨戒任務は秋津洲に任せる。」

 

 と言った瞬間、腹が鳴った。それもその筈だ。今の時刻は午後1時すぎ。この時間はもう食堂は開いていない。

 

「......すまん。」

 

「大丈夫かも。赤城さんの艤装で食べてこなかったの?」

 

「あぁ。時間が時間だったし、やることやって秋津洲に会ってからって思ってたからな。」

 

「......じゃあどうするかも?」

 

「自分で飯作って食べる。じゃあ、秋津洲。俺は戻る。」

 

 と言って歩き出したら秋津洲に止められた。

 

「ちょっと待つかも。あたしの昼の残りで良ければあるから食べるかも?」

 

「残りか......。というか残り?食堂で食べてないのか?」

 

「朝は食堂だけど昼と夕は提督の号令で歓迎会とかがなければ自分で作ってるの。」

 

 そう秋津洲は言った。だが変だ。艦娘寮は先日改装されて調理室が拡大したとはいえ、毎日食事を作る余裕は無いはずだ。

 

「艦娘寮で作ってるのか?」

 

「ううん。自分の艤装。あたしは糧食庫のお陰で給糧艦としても動けるから、他の艦より台所は大きいし色々揃ってるかも。」

 

「そうなのかー。じゃあ昼夕もそこで?」

 

「はい。自分で作るのは楽しいからね。」

 

 そう言われながら俺はどんどん文字通り、引き摺られていった。行き先は勿論、秋津洲の艤装だ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 秋津洲の艤装に上がり、食堂で俺は秋津洲の昼の残りをもらった。と言っても残りには程遠い、ちゃんとした食事だった。

ご飯と味噌汁、ロールキャベツ、蒸かしたじゃがいもと人参、漬物だ。

 

「いただきます。」

 

 俺はそれを食べるが、予想に反してと言うかなんというかとりあえず美味しかった。食堂の間宮とはまた違う美味しさだ。

 

「おぉ、美味しいな!」

 

「ありがとう!残りって言ったけどまだあるから、おかわりいいかも?」

 

 そういう秋津洲の言葉を聞き流し、口に放り込む。味噌汁も美味しいかった。ガツガツと掻き込み茶碗を秋津洲に渡す。

 

「おかわり、もらえるか?」

 

「もちろん!」

 

 結局秋津洲のところでご飯3杯おかわりしてしまった。秋津洲の料理は美味しかった。さすが、毎日作っているだけある。

食べ終わり、初期の片付けをやろうと思ったが秋津洲に止められてしまい、食堂(※秋津洲の艤装の)で腰掛けていると秋津洲が話しかけてきた。

 

「満足したかも?」

 

「あぁ。ごちそうさま。」

 

「お粗末さま!」

 

 そう言って一瞬間が開くと秋津洲は再び口を開いた。

 

「それで、今日の夕ご飯のことなんだけど......。」

 

「ん?食堂に来るのか?」

 

「ううん。」

 

 なんとなく嫌な予感が頭を過ぎった。

 

「噂の提督の作るご飯が食べたいかも。お願い出来るかも?」

 

「だぁー......だと思った。いいぞ。何がいい?」

 

 まぁ、一食ごちそうになったからいいだろうと俺は言った。

 

「まだどの艦娘にも食べさせてない提督の好きな料理がいい!」

 

 そう言われて俺は火が付いた。

 

「おしっ!わかった!今日は俺が作ってやる!んじゃ、今日は秘書艦もいないことだし、哨戒任務以外では執務室に居るといい。」

 

「了解かもー。......初めて執務室に入るから緊張してきた。」

 

「おい、まだ立ち上がってすら居ないぞ?」

 

 そんな話をしながら俺は秋津洲に執務室に来てもらった。

 哨戒任務は秋津洲が勝手に決めた時間にしているようだ。いつも朝食後と夕食前に2回やっているみたいだ。出撃がある日はその期間予定時間にも出るとのこと。

そんな仕事の話もしたが、他の話も秋津洲から聞いた。事務棟に行けば酒保で売ってないものが買える事や、外で遊んでいる艦娘たちが何をしているだとか。俺の知らないところの話がたくさん聞けたし、多分秋津洲にしかわからないことも聞けた。有意義だった。

そんな風に話をしていると秋津洲の哨戒の時間になり、出て行ってしまったので俺は私室に戻って材料を確認する。ちなみに秋津洲には何を作るか言っていない。

 

(あー。食材、足りないな。ネギとかネギとか......。)

 

 俺は酒保に買いに走り、準備を終わらせて秋津洲の帰りを待った。

俺が丁度作り終え、皿に盛った頃、秋津洲が執務室に戻ってきた。

 

「ただいま戻ったかもー!んふふー、提督は何を作ってるのかな?」

 

 そう言って秋津洲は私室を覗き込んできた。

俺もそれには気付いていたので、秋津洲に入ってくる様に言う。

 

「丁度できたから食べよう。こっち来て。」

 

「は~い。」

 

 そう言って秋津洲は席に座った。

 

「ふむふむ......提督はチャーハンが好きなの?」

 

「あぁ。簡単そうに見えて奥が深いんだが、今日は俺の好きなチャーハンを作らせてもらった。普通のでも良かったんだがな。」

 

 そう俺が言うと秋津洲は『いただきます!』といってレンゲを取り、チャーハンを口に運んだ刹那、秋津洲はお茶をがぶ飲みした。

 

「ひいぃぃぃぃぃぃ!!辛いぃぃぃぃ!!!かもじゃないくらいヤバイかもー!!」

 

「あちゃー。ダメだったか。」

 

 そう。俺が好きなチャーハンとは、キムチチャーハン。しかも普通のキムチチャーハンとは一味違う。豆板醤が親指分くらい入っているのだ(※これだけ入れるとほんとうに辛いです)。辛いのが苦手な人は食べれないチャーハンなのだ。

 

「こ"んな"がらいのずぎがも"(こんな辛いの好きかも)?!」

 

「あぁ。」

 

「がらずぎる"ー!ゲッホゲッホ!」

 

 そうヒイヒイ言って咳き込みながらではいるが、秋津洲は食べていた。そんな秋津洲の目の前にもうひとつ皿を置く。

 

「辛いのもあるが、普通のもあるんだな。これが。」

 

「ぞればざぎにい"っでほじいがもー(それは先に言って欲しいかもー)!」

 

「あはは、悪い。食べれないなら俺が食べるぞ?」

 

 まぁ、秋津洲の前に置いたキムチチャーハンはあまり乗ってなかったから3口くらいで秋津洲は食べきり、普通のを食べ始めた。

なぜそれだけしか乗ってなかったかと言うと、少し食べてもらって食べれるならあとから出そうと思っていたからだ。

 

「じゃあ改めまして......いただきます!」

 

 そう言って秋津洲は普通のチャーハンを口に運んだ。

その瞬間、『フン!?』と言って飲み込むと秋津洲はレンゲを置いて飲み込むと訊いてきた。

 

「これ、どうやって作ってるの?!」

 

「え?不味かった?」

 

「逆かも!!美味しいっ!!」

 

「そうか。」

 

「教えてほしいかもー!あたしのレパートリーが増えるかも!」

 

「はいはい。後で材料書いてやるからまずは食え。」

 

 そう食べるのを催促すると秋津洲はブツブツと何が入ってるか考えながら食べ進めた。

結局、秋津洲はあとから出した普通のチャーハンは食べ切り、早めに食べ終わっていた俺が書いた材料と入れるタイミングを書いた紙を渡した。

 

「ごちそうさま!それとありがとう!」

 

「あぁ。お粗末様。」

 

「じゃああたし、寮に帰るかも!」

 

 そう言って秋津洲は執務室を出て行った。

それと入れ替わりで赤城と加賀が入ってきた。どうやら資料探しみたいだ。そんな2人は執務室にまで漏れだしていた、匂いに気がついた。

 

「スンスン......。何か作ったんですか?」

 

「スンスン......。本当ですね。」

 

 そう訊いてきた2人に俺は隠さずに作ったと応える。

 

「あぁ。今日はな。」

 

「そうですか。ちなみに何を?」

 

 なんだか加賀の食いつきがいいのが気になるところだが、俺は言った。

 

「キムチチャーハンだ。」

 

「キムチ......韓国の漬物ですね。美味しいのですか?」

 

「俺は好きだ。少し残ってるから食べるか?」

 

 そう言うと2人共頷いたので俺は私室から2つの茶碗に1杯分くらいチャーハンを盛って箸と一緒に赤城と加賀に渡した。

 

「「いただきます。」」

 

「どうぞ。」

 

 そう言って箸でキムチチャーハンを口に運んだ2人は両極端な反応を見せた。

 

「美味しいっ!美味しいです!提督っ!!」

 

 赤城はどうやら辛いのには強いみたいだが一方で加賀はというと。口を抑えている。

 

「どうした?」

 

「いえ、辛い......ですね。」

 

「あぁ。豆板醤マシマシだ。」

 

 そう俺が言うと加賀はチャーハンを掻き込み、俺が持っていたお盆に置いて言った。

 

「やっ、やりましたっ......。」

 

 そう言った加賀は少し唇を赤くしていた。辛すぎてだろうな。

一方の赤城はというと、もう食べ終わって資料探しをしていた。

そんな加賀に濡れた清潔な手拭きを渡して赤城に待ってもらったのは言うまでもない。ちなみに鎮守府でキムチチャーハンは噂になり、次の日の朝に残りを求めて艦娘が殺到したが、皆加賀のような反応だった。どうやら俺と赤城だけが変みたいだ。腑に落ちないが。

 





 今回で『FF』作戦は終わりです。
オチに関してはすっかり作者から忘れられていた秋津洲と、異常に辛いキムチチャーハンの話にさせていただきました。ちなみにキムチチャーハンのレシピはありますが、読者様が作って次の日に体調崩したなんてなったら笑えないのであえて書きませんでした。すみません。普通のチャーハンはどこかでまた出てきますのでその時に書かせていただきます。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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