【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百六十三話  『FF』作戦②

 

 早朝。俺は赤城と共に艤装に乗り込んでいた。

理由は明白。『FF』作戦参加の為、そして命令でもある同行に従ってだ。俺の戦地への同行には連絡をした時からさっきまでの間、約3日間もの間艦娘に行くなと止められ、泣かれて収集がつかない3日間になってしまった。そんな時、作戦には参加しないがこういう時こそ、俺を必死に止めるだろうと思っていた金剛はそれをしなかった。

 

『提督が決めたのデース。それを私たちがとやかく言えないデス。それに赤城に乗るんですから、問題ないデス。皆、赤城を信用してないデスカ?』

 

 と言って回っていたみたいだ。その金剛の説得に言ってた赤城の信用云々に関しては俺は少し思うところもあるが、まぁ、皆が赤城を信用している事には変わりはない。

最終的にはさっきまで全員の説得にかかり、やっと出発できるのだ。

 

「提督。」

 

「何だ?」

 

 俺は赤城の艤装に乗り込み、格納庫を通りながら赤城と話した。

 

「この作戦の提督随伴には従わなかったほうが良かったのでは?」

 

「そうだな......だが、大本営の決定でもあるし、あちらではそれが普通なんだ。あちらに合わせる方が自然に見えるだろう?」

 

 そう言って心配そうな表情をしている赤城に言う。

今回の作戦は当初とは大幅に変更されている。まず、こちらの派遣艦隊だが横須賀鎮守府艦隊司令部、端島艦隊鎮守府艦隊司令部合わせて12隻。イレギュラー発現防止の編成の為に半減させたのだ。更に特殊陣形。あの後、作戦の見直しをしていたアメリカから連絡が入り、新たな陣形が伝えられたのだ。

 

 

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そして中継地が作られた。どうやらアルフォンシーノ群島の基地を建設中に、その航路上にあったクイーン・シャーロット諸島を集積地にしていたらしく、そこで補給をするとの事だった。

 

「そうですよね......。分かりました。この赤城、提督がお乗りになるからには、損傷する訳にはいきません。無傷で帰還しましょう!」

 

「そう張り切るのもいいが、こっちの艦隊は殿だ。追撃されようものなら盾にならねばならん。」

 

「そうでした......。」

 

 そんな話をしながら俺は赤城の艦橋に入った。

ちなみに何日も海の上なので、着替えを持ち込んでいる。食料は常備されているらしい。というか、鎮守府近海以外に出撃するなら確実に必要だからという理由で、艤装内の食堂が稼働するらしい。出撃中はそこでご飯だと赤城は言っていた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「艦隊に通達して下さい。抜錨。繰り返す、抜錨。これより機動部隊はアルフォンシーノに向かいます。」

 

 赤城がそう通信妖精に言うと、艦内でベルが鳴り、金属の擦る音がし始める。

巻き終わったのを確認すると次の指示を出した。

 

「全艦、前進最微速。」

 

『全艦、前進最微速っー!』

 

 妖精が赤城の指示を復唱し、機関室に指示を送る。そして動き出した。

外に目をやると、埠頭には全艦娘、非番の門兵、酒保の従業員が並び、手を振っていた。少し耳を澄ませば、叫び声が聞こえる。

 

『いってらっしゃーい!!』

 

『御無事でー!!』

 

『提督ぅ――!!』

 

『行かないでー!!』

 

 十人十色の叫び声が聞こえるが、御無事ではフラグだ。そんなフラグ、回収したくない。そしてまた門兵と酒保の従業員が居る。知らせた艦娘を探しだして折檻だな。そう心に決めた。

 ふと並んでいる艦娘に目をやると、数人と言わずに大半が涙を流している。

 

「出征する息子じゃねぇし......。」

 

 そうひとりで呟いた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 船の中に居るのも最初は落ち着かなかった。忙しないという程でもないが、妖精が走り回っている。艦橋では観測員からの報告や機関室の調子、格納庫で整備中の艦載機の状況、各所の防衛火器の調子などが逐一報告されている。それを全て赤城は訊き、指示を出していた。

だがそんな情景を眺めていても落ち着いてくる。大型艦という事もあり、余り揺れない船内で俺は座りながら船を漕いでいた。船の中で船を漕ぐってのも変な状況だが、寝てしまうのは良くない。そう思い、気合を入れて目を見開く。そして衣類と一緒に持ち込んだ、ミントのタブレットを口に放り込み噛み砕くと鼻から一気に空気を吸い込んだ。

最近見つけた眠気解消法だ。簡単に言えば鼻から空気を吸い込むことで一気に冷たい空気を食道、気管、肺に入り、身体がそれに驚くのだ。何だか身体に悪そうだが、そんな事、こうもミントタブレットを食べていると考えなくなるものだ。

そんな俺に赤城は声を掛けてきた。

 

「提督。」

 

「ん?」

 

「艦橋に居てもあれですから、外で潮風にでもあたってみてはどうですか?埠頭に居る時とはまた別に感じますよ。」

 

「そうか......なら行ってこようかな。」

 

 赤城はどうやら俺の方にも意識を飛ばしてくれていたみたいだ。立ち上がると、俺は艦橋から出て、飛行甲板艦橋横に出た。

そこには何故か黒板があり、艦載機妖精たちが集まっていた。

 

「提督。潮風にでも当たりに?」

 

 最初に俺に話しかけてきたのは赤城零戦隊1番機の妖精だ。いつぞや、話をした妖精だ。その妖精が話しかけてくるとわらわらと妖精たちが俺の周りに集まってきた。

 

「あぁ。初めてだからな、同乗して出撃だなんて。」

 

 そう俺が妖精と目線を合わせる為に座り込むと妖精たちも座った。

 

「私たちも提督の同乗には反対だったんですけどね......。空母は艦隊で重要な役割を持ってますから、一番狙われるんです。もし艦橋に被弾しようものなら私たち、帰還したとしてもその場で零戦を降りますよ。」

 

「そんな事、分かっている。だがあちらの要請は空母機動部隊での参加だ。長門に乗ればよかったとでも?」

 

「そうは言ってませんよ。私たちなら赤城に艦載機を近づけさせませんし......」

 

「攻撃隊が砲撃させる間もなく、戦艦や重巡は沈めますっ!」

 

 胡坐をかきながらそんな事を話す。俺は思い出した。赤城の航空隊はとても練度が高い。制空戦闘もこちらは零戦52型でも加賀の烈風隊に優勢を取る。そして、攻撃隊も敏腕だ。

流星隊の魚雷は命中率が横須賀鎮守府随一で、彗星隊の急降下爆撃もフェルトのスツーカを抜けば降下角度は一番急だ。しかもエアブレーキは使わないらしい。何でも『速度調整をして空中分解を防ぐためのエアブレーキを使ってわざわざ速度を落とすわけにはいかない。限界速度ギリギリまで出してから縦ロールで失速させる。』とか無茶を言っていた。

 確かに限界速度を出さなければ空中分解はしないが、機体が耐えられる以上にGは掛かるはずなのだ。一体、どうしているのだろう。

 

「色々逸脱しているからな......赤城航空隊は......。」

 

「「「そりゃ、勿論!」」」

 

 艦載機妖精たちは声を合わせて言う。本当に色々とおかしいのがウチの赤城航空隊なのだ。

 

「そういえば提督。何故今回の出撃に零戦52型と烈風を起用したんですか?私たち戦闘機隊は艦戦なら全て乗りこなせますが......。」

 

 言われるだろうなとは思っていた質問だった。

 

「今回の作戦には端島鎮守府からも来ている。こっちが雷電改やらを使えばあっちが欲しがるに決まっている。」

 

「ですが......。」

 

 そう食い下がってくるのも無理はないだろう。赤城航空隊の特徴は逸脱した腕ともうひとつ、特徴があるのだ。それは、赤城航空隊は発艦後は上昇して一度、雲の上に行くのだ。つまり、高高度からの奇襲をするという事。低空戦闘に向いた零戦でもその戦法を取る航空隊だ。

 

「俺は端島鎮守府にこっちの航空隊の練度を見てもらうつもりでもある。端島鎮守府は俺たちの歩いた道を歩いているだけだ。それがもし、『へっへ~、俺たちだってやれるんだぜぇ~。そっちの艦隊よりも強いらぁ~!』とか言われたら腹が立つだろう?だから見せつけてやるんだ。赤城航空隊の胴の赤帯は有名だからな。」

 

 そう俺が言うと、集まっていた艦載機妖精たちは目をギラリと輝かせた。

 

「私たちは零戦が一番長いですから、格闘戦には自信があります。見せつけるならアクロバティックなのがいいですよね?」

 

「今回もエアブレーキ無しで急降下爆撃ですね!」

 

「魚雷投下したら格闘戦に入りますか.......。」

 

 妖精たちはそう宣言した。最後の、流星隊。確かに格闘戦は出来るが、流星は翼面積が広い上に大型機だ。被弾すれば着火するのも確実だ。無理をしないで欲しい。

 

「無理をしない程度に。撃墜、撃破数は赤城航空隊で取ってくれ。」

 

「「「了解っ!」」」

 

「さて、俺はそろそろ艦橋に戻る。そういえばどうして妖精たちはここに居たんだ?」

 

 俺は立ち上がるとそう妖精に尋ねた。そうすると声を合わせて答える。

 

「「「お腹が減ったので今日のお昼の予想を。」」」

 

 俺は少し滑りかけたが、持ち直しポケットに手を入れた。丁度持ってきていたものがあったのだ。

 

「腹が減ってるならこれを食べると良い。金平糖だ。」

 

 そう言って俺は袋を1つ妖精に渡した。と言ってもその袋、妖精4人分くらいある。渡そうと下ろした時、周りの妖精たちもそれを囲んで、受け取ってくれた。

 

「ありがとうございます。甘いものは好きなんですよ!」

 

「そりゃ良かった。ほどほどにしておけよ。」

 

 そう言って俺は艦橋に戻った。

ちなみにこの後、お昼の時に妖精たちはどうやらいつもより食べれなかったみたいだった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 夜も深まり、艦橋から見える景色は黒一色になってしまった。

先頭を長門、中央に赤城と加賀、後方に高雄。そして両脇、長門と赤城、加賀の間付近の外側に島風と雪風が並んで航行している。ここからは長門の第二艦橋の光が少し見えるだけで後は月明りと星しか見えなかった。

 そんな真っ暗な水面を眺めながら俺はぼーっとしている。何故ならこの時刻、午前0時前後は俺が寝る時間だ。だが今は出撃をしていて、寝る訳にもいかない。航行しているのは安全の確保された日本近海と北方海域の辺り。数時間前は少し暖かかったのに、すごく冷え込み、今は上着を羽織っている。

 俺がそうやって目を開いていると赤城が俺に声を掛けた。

 

「提督、寝た方がよろしいのでは?」

 

「いいや、寝る訳にはいかない。幾ら安全海域とはいえ、危険だ。」

 

「そうは言いますが、今はもう当直しか起きてませんし......なにより提督のお体に障りますよ?」

 

 そういう押し問答をすること5分。結局俺は折れた。決め手は赤城の艤装には1600人ほどの妖精がいるらしいが、今寝ているのはその3/5。艤装の維持に必要な最低人数しか起きてないらしく、赤城航空隊は全員寝ているらしい。

それを訊いて俺は折れたのだ。

 

「これから艦長室に案内します。そこでお休みになって下さい。私も寝ますから。」

 

「分かった。」

 

 そう言われて俺は赤城に付いて行くこと数分。どうやら艦長室に到着したみたいだ。ここはどのブロックか分からないが、気にしても仕方ない。そのうち覚えるだろうと、考えつつ赤城が扉を開いたので付いて入ろうするが突然廊下に押し出されてしまった。

 

「どうしたんだ、赤城?」

 

「いっ、いえっ!何でもないですよっ?!」

 

 明らかに赤城が慌てている。どういう訳だろうか。

そう思い、入ろうと試みるが赤城に通せんぼされてしまい、ドアノブに手が届かないでいた。

 

「ちょっと......寝るんじゃ、なかったのかっ?.......どうしてっ......通せんぼなんかっ!」

 

「忘れてましたっ!......ここに提督を入れる訳にはいきませんっ!!」

 

 そうやり続ける事数分。赤城が疲れを見せ始め、俺は隙を突いて扉を開いた。

そこは別に普通の部屋。艦長室というものだから机があると思ったが、机は無い。畳が敷かれ、布団が畳まれているだけだった。そしてその畳の上に何だか見覚えのあるモノが置かれている。

 

「あれって、俺の荷物?それにもうひとつのは......。」

 

 そうボソッと言うと赤城が顔を赤くして答えた。

 

「私の、です......。」

 

「は?」

 

「提督が乗艦する事は前から分かっていたのに、忘れてましたっ!!ここで提督に寝てもらうつもしでしたけど、よく考えたら私はいつもここに寝てたんですよっ!!」

 

 そう言い始めて赤城は顔を赤くして早口で色々と言い始める。

そんな光景を俺は無視して中に入った。中を見渡すと畳が敷かれてないところにはソファーも置かれていて、他にもちょこちょこモノが置いてあった。

 

「ここで2人とも寝ればいいんじゃないか?俺はソファーで寝るけど?」

 

「ダメですっ!寝違えてしまいますし、身体に悪いです!私がソファーで寝ますっ!」

 

「いんや、俺が寝る。俺だって結局、乗ってきたけどオマケみたいなものだし。赤城の艤装だから赤城の言う事を聞くし、それに女の子がソファーで寝るなんてはしたないだろう?」

 

 そう言うと赤城はモジモジしながら言った。この刹那、俺は嫌な予感がした。

 

「私の言う事を聞いてくれるんですか?......なら、私と......」

 

「ちょっと......」

 

 遮ろうとしたが時すでに遅し。

 

「私と布団で寝ましょうっ!あぁ、言っちゃいました......。」

 

 こうして俺と赤城は一緒に布団に入ったが、狭い。身体の大きい俺に女性成人サイズである赤城には布団は狭い。それに何だか入った布団の甘い匂いに頭がやられそうだった。くらくらとする。俺は背中を向けているが赤城はどうしてだろか、こっちを向いていた。普通、反対側を向くものだろうと内心思っているが赤城には分かるはずも無く、俺は背中に伝わる感覚を無視する努力をした。

そして赤城が寝てしまったら布団から出て畳の上で寝よう、そう心に決めたのだ。

だが上手くいく訳も無く、俺は赤城に捕まっている。

 

「赤城?赤城?」

 

「......(寝てます)」

 

「手を放して貰えないか?」

 

「......(寝てます)」

 

「おーい、赤城?赤城さーん?」

 

「......(寝てます)」

 

 結局赤城にホールドされたまま朝を迎えることになり、朝起きた赤城に『どうしたんですか?目の下にクマが出来てますけど?』と言われて何も言えなかった。

 




 
 立て続けに作戦の事をたらたらとやるつもりはないので、この作戦終了までの後半が大体が赤城の土壇場になります。今回のはまぁ......気にしないでください(白目)

 お知らせです!遂に、特別編『俺は金剛だ!』の新規独立作品が今日、公開されました!要チェックですよ!!

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