【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
俺は大本営に呼び出されていた。呼び出される事自体、余りないので緊張して行くのだが、今日は特別緊張している。
何故なら今日呼び出された理由は"日米合同作戦"が展開されるからだ。前々からなんとなくあるだろうとは考えていたのだが、まさかこんな早くにあるとは思わなかった。ちなみに大本営から活動休止が言い渡されて4ヵ月が経った頃だ。
「今回初の試みとなる日米合同作戦の概要について説明する。」
新瑞はそう言って俺に渡した資料に沿った説明を始めた。
「作戦名『FF』。本作戦の目標は中部海域攻略に先駆け、アメリカ西海岸の掃討作戦である。」
アメリカの状態はというと、西海岸を掃討しなければならない程になっているのだ。ちなみに日本まで来た外交官、米艦隊はと言うとアルフォンシーノ群島に基地を設営し要塞化、そこから出ていたみたいだった。という事は北から降りてきたという事になる。
「第一段階。横須賀鎮守府派遣艦隊並びに端島鎮守府(大本営の鎮守府)派遣艦隊は北方海域アルフォンシーノ群島に集結。米海軍機動部隊と合流。」
俺は渡された資料に目を通した。こちらから艦隊編成指定はされていないが、米海軍の編成は分かっている様だ。旗艦は米海軍唯一残っていた原子力空母、ジェラルド・R・フォード級原子力空母 二番艦 ジョン・F・ケネディが担い、傘下巡洋艦5隻、駆逐艦6隻、揚陸艦2隻がこの作戦に参加する。
それと補足によればジョン・F・ケネディはどうやら倉庫で眠っていた物を稼働させたらしい。その他巡洋艦、駆逐艦、揚陸艦は日本皇国との国交回復から急建造し揃えたものだという。この中の数隻は日本への航海もしたとのことだった。つまり、アイオワの艦隊に居たという事になる。
「第二段階。アルフォンシーノ群島出発後、日本皇国海軍艦隊が米海軍機動部隊前衛に特殊陣形を展開。全方位索敵を開始。」
特殊陣形は資料に書かれていた。どうやら深海棲艦に対する戦闘力が乏しい米海軍機動部隊を内側に、横須賀と端島の艦隊が前衛と側面に展開した巨大傘陣の事みたいだ。
「第三段階。日米艦隊はクイーン・シャーロット諸島へ到達後、回頭。アメリカ西海岸沖約30kmを南下し、接触する深海棲艦を撃破する。」
予定航路が掛かれた地図が乗っていた。とても短絡的なものだ。
「第四段階。チャネル諸島周辺に到達したならば、そのまま南下。カリフォルニア半島から回頭、アルフォンシーノ群島に向けて北進。」
「第五段階。アルフォンシーノ群島に帰還後、日本へ帰投だ。」
それで今回の日米合同作戦は終了らしい。何でも米海軍が深海棲艦との戦争を中断してから初の大規模作戦(※こちらから見ると普通の哨戒任務)との事。この作戦の目的は最初に説明が始まった時に言った通り、アメリカ西海岸に現れる深海棲艦の掃討だ。こういうと哨戒任務と比喩するのも間違っている気がする。
だが何故日本皇国の艦隊が派遣されるのか......。
それは西海岸には深海棲艦の水上打撃部隊、空母機動部隊が現れるらしく、現行艦では太刀打ちできないとの事。ならば、これまでそういった深海棲艦の数多と戦ってきた日本皇国海軍に合同作戦要請をしたとの事だった。
「本作戦の概要は以上だ。」
そう言うがこれだけではない。こちらの派遣艦隊の編成に指定があったのだ。空母機動部隊と水上打撃部隊だ。
それに気になる事があった。この作戦、イレギュラーに引っかかるのではないかという事だ。俺はその場に居合わせた新瑞に声を掛ける。ちなみに作戦概要説明は新瑞からあった。
「新瑞さん。」
俺がそう声を掛けるとこの場、会議室に居た大本営の人間や端島鎮守府の提督がこちらに振り向いた。
「何だ、提督。」
「この作戦はイレギュラーになる可能性があります。」
「何だと?」
そう新瑞は反応した。"イレギュラー"という単語には大本営や端島の提督も敏感になった様だ。先日の特殊砲弾の使用と侵攻事件からだ。
「説明を頼めるか?」
そう言われ俺は会議室の黒板の前に立ち、こちらの編成を書きだした。
「"イレギュラー"と判断した理由、それはこちらの日米合同艦隊の編成にあります。こちらの編成は横須賀鎮守府艦隊司令部、端島鎮守府艦隊司令部傘下水上打撃部隊及び空母機動部隊の艦娘総勢24名、24隻の艦隊編成となります。私は米海軍機動部隊を"イレギュラー"の対象とは判断しませんが、こちらの24隻という数字は明らかに編成オーバーです。12隻の連合艦隊というのであれば"イレギュラー"にはならないと考えられます。」
「ふむ......。」
俺が説明すると新瑞は明らかに困った表情をした。
「ならそうしようと言いたいところだが、この作戦立案は米海軍からのモノだ。作戦変更を伝えねばならないが、"イレギュラー"という単語を使う訳にはいかない。」
「それなら今回の作戦にそこまでの艦隊派遣は出来ないとでも先方に言えばいいのでは?」
端島の提督がそう言った。なんだかんだ言って今初めて端島の提督が話した様な気がする。
「......うむ、それで試してみよう。」
そう言うと新瑞は新たに言い変えた。
「こちらから派遣する艦隊は横須賀鎮守府艦隊司令部と端島鎮守府艦隊司令部から合わせて12隻までとする。双方は空母機動部隊で宜しく頼む。」
「「了解。」」
そう俺と端島の提督が答えると新瑞は更に付け加えた。
「それと本作戦にはそれぞれの派遣艦隊に提督も同行して貰いたい。」
「っ?!」
派遣艦隊に同行。それはつまり旗艦に乗り込めという事みたいだ。
「以上だ。今後の本作戦の日程は口頭ではなく郵送物で伝える。」
会議が終わってしまったので俺はそのまま鎮守府に帰る事になった。
ちなみに今回の会議には艦娘の同伴は会議室前までという事になっていた。だが横須賀鎮守府艦隊司令部から護衛として付いてきた艦娘にのみ、会議風景を音声無しのリアルタイムで監視する事を許可されていた。護衛として付いてきたのは番犬艦隊、アイオワを除いたドイツ艦勢だった。
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「大本営発表日米合同作戦派遣艦隊には俺も同行する事になった。」
俺は帰るなり長門と赤城にそれを伝えた。
こういった事を話すならこの2人なのだ。
「それは......強制なのか?」
「あぁ。どうやらそうみたいだ。そうなった理由としては端島鎮守府の提督が度々同行していたという報告があったからだ。こちらよりも報告義務が重いみたいで、話を訊くと毎日の報告書やらの執務はウチみたいに1時間ばかでは終わらないらしい。」
そう俺は言うがこれは本当の話だ。会議の後、少し端島鎮守府の提督と話す機会があったのだが、その時に『執務に追われて軍人であるのにも関わらずデスクワークばかりで大変ですよね?』と相槌を求められたのだ。
「成る程。ですけどそれは提督の同行に何の関係が?」
「確かに関係ないな。......だが大本営から言われてしまったのなら仕方がない。今回の作戦には古参組のみで編成した空母機動部隊で出る。編成は今から考える。」
そう言って俺は編成表を出すとパパッと書いて長門と赤城の前に出した。
旗艦:赤城、加賀、長門、高雄、雪風、島風。そう書き出した。
「ふむ......空母機動部隊。航空戦は赤城と加賀の航空隊、合わせて180機。水上打撃戦力として私と高雄。水雷戦闘には駆逐艦中運が最も高い雪風に、うなぎ登りの島風か......。」
「普段でしたら私たち一航戦と金剛型四姉妹か長門型、北上大井ペアですけど......防空の事も念に置いてますね。」
2人の見解はそうだったみたいだ。俺の編成趣旨が伝わってよかった。
「俺は旗艦に乗り込む。それと今回はある決め事をしようと思う。」
そう言って俺は先に長門と赤城に伝えた。
「もし艤装に俺以外の人間が無断で乗り込むようならば殺害する事を許可する。」
「「っ?!」」
俺のその発言には長門も赤城も驚いた。それもそのはずだろう。普段の俺なら絶対こんな事は言わないからだ。
「いいか?艤装の上も領土だ。入られたのならばそれは立派な侵犯だ。俺への許可は要らない。必要ならば殺せ。その後に報告を聞く。」
「「了解。」」
長門と赤城には今の意味が理解できたみたいだ。どういう意味で俺がそんなことを言ったのか。
「俺が空ける間、鎮守府運営は陸奥と夕立、時雨に頼むことにした。それと武下さんにも協力を仰ぐ。何かあったのなら対処して欲しいと。」
そう言って俺は立ち上がった。
「この後、派遣艦隊に招集をかけ、作戦概要を説明する。それまでに昼飯だ。」
俺は長門と赤城を連れて食堂へ向かったのだ。
これから開始される作戦に少し違和感を覚えつつも、今後の動きを考えながら向かう。西海岸の制圧は確かに重要な課題だ。それを日本皇国に協力を仰ぐのも分かる。
だが、米海軍の艦隊の数と配置、陣形を訊いて何故だかその違和感を拭い去る事が出来なかった。
今回から日米合同作戦です。詳細は言いませんよー。ここで言ってしまえば色々ネタバッ((殴
それと提督の同行に反対しなかった理由も後日、本編にて書かせていただきます。
近日公開と宣伝しました、『俺は金剛だ!』の本編化ですが、少々遅れております。
3/28までには投稿する予定ですので、こうご期待っ!!
ご意見ご感想お待ちしてます。
※挿絵が間違ってましたので変更しました。