【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百五十八話  新たな提督の情報と雷撃機

 

 俺はいつも通り朝起きて、執務室に居ると秘書艦が入ってきた。

 

「Guten Morgen! アトミラール。」

 

 入ってきたのは番犬艦隊くらいでしか見かけない艦娘(※そんなことないです)、フェルトだ。

 

「おはよう。という事で、早速食堂に行くから。」

 

「分かった。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺は朝食を食べながら考えていたことがあった。先日の深海棲艦の侵攻の時の原因となった新型砲弾についてだ。俺は砲弾と言われてHEATの他にも、ある砲弾の特徴を思い出していた。

そんな事を考えているとフェルトが俺に話しかけてくる。

 

「アトミラール。何か考え事か?」

 

「あぁ。」

 

 俺はそう答えてフェルトに振る話でもないのだが、話した。

 

「先日の深海棲艦の侵攻で原因が特殊砲弾の使用だっただろう?」

 

「そうだな。何だったか。確か......硬芯徹甲弾に装弾筒付翼安定徹甲弾......HEATと言っていたな。2つ目は知らなかったが、他は知っていたぞ。とても恐ろしいものだ。」

 

 険しい表情でフェルトは答える。

 

「確かに恐ろしい。だがその事を考えていると俺は心底、使われてなくて良かったと思うものがあるんだ。」

 

「何だ?」

 

 フェルトは聞いてくれるみたいなので俺は続ける。

 

「フレシェット弾と言う砲弾だ。」

 

「フレシェット......小さい矢か?と言うと、装弾筒付翼安定徹甲弾の一種か?」

 

「そうなる。だが、フレシェット弾は炸裂すると無数の小さい矢を放つ散弾型と呼ばれる砲弾だ。」

 

「成る程......。では装弾筒付翼安定徹甲弾の貫通する弾頭の複数版か。それは恐ろしいな......。」

 

 普通に考えればそう言うのも妥当だ。だが違う。

 

「いや、対物目標に使うモノじゃない。さっき散弾って言っただろう?」

 

「ショットガン......つまり小さい矢が放射状にばら撒かられるという事か。」

 

「そうだ。だがそのフレシェット弾は、よく聞くのは時限式の120mm砲弾だ。用途は遠距離射撃によって撃ちだし、攻撃目標上空で炸裂させる。」

 

 そう言うとフェルトは顔をどんどんと青くしていった。元から色が白いいうのに、そこまで青くなるのと見ると心配になる。

 

「それはつまり......小さい矢が無数に降り注ぐという事か?」

 

「うむ。言うなれば鉄の雨だな。」

 

 俺はそう言って手を使って表現して見せた。

拳を作って砲弾だと言い、上空で弧を描かせる。そして攻撃目標を味噌汁のお椀だとたとえて『炸裂』といい、それを表現する。拳を開いてお椀を掴むように上からお椀に手を被せた。

そんな動作を見るフェルトは口を開いた。

 

「そんな距離から炸裂して降り注ぐのなら確かに散弾だな。そしてそれだけ離れているのなら装甲板を貫くためのモノではないな。となると......」

 

「対人兵器だ。さっき言っただろう?鉄の雨って。」

 

 そう言うとフェルトは俺の目を捉えて力強く言った。

 

「そんなものが降られたらその一帯は惨いことになるぞ?!」

 

「勿論だ。だから俺は本当に使われなくてよかったと言っているんだ。」

 

「......全くだ。もし使うような事があれば上部装甲板が薄い兵装は全て使えなくなる上に、空母の甲板も発着艦が出来なくなる......。」

 

「それだけではない。もし艦橋部がその放射状の範囲内に入っていたなら上の階層があまりなく、薄いブリッジも穴だらけだ。」

 

 俺はそう言いながら箸を進めるが、さっきから箸が全く進んでいないフェルトは俺を不思議そうに見た。

 

「モグモグ......ングック......どうした?」

 

「いやっ......アトミラール。よくあんな話した後でも食べれるんだな。私は想像してしまってから喉を通らないぞ......。」

 

 そう言うフェルトに俺は素直に謝る。自分基準で話をしていたからだ。

 

「それは......ごめん。結構大丈夫なんだよ......こういう話をしながら食べるのも。」

 

 そう言いながら俺は味噌汁を啜る。そんな俺を見てフェルトもあまり残っていなかったので、それを一気に掻き込んだ。

 

「モグモグモグモグ......ンッ......どうして大丈夫なんだ?」

 

 そうフェルトに訊かれて俺は辺りを見渡した。時間的にはもう皆、食べ終わっていてテレビの前に集まる者や、俺の話を訊きに来ていた艦娘を見て食事中の艦娘がいない事を確認すると答える。

 

「何ていうんだろう......。耐性みたいなものが付いたんだ。」

 

「耐性?一体なんの耐性だ?」

 

 そう訊くフェルトにそれを訊こうと耳を澄ませている艦娘に構わず俺は答える。

 

「例えばフェルトは外科手術を見たことはあるか?」

 

「あぁ。いつぞやの番犬艦隊の任務中に提督の私室のテレビで見たな。あれば凄かった。」

 

「何だっけ、脳腫瘍の摘出手術だったか?」

 

「うむ。」

 

「俺はその番組を見ながら食事ができる。」

 

 そう言うとフェルトや周りで耳を澄ませていた艦娘があからさまに驚いた。と言うか一部は引いていた。

 

「......あ......その......手術の映像を見ながらか?」

 

「そうだけど?」

 

「食欲がどう考えても失せるじゃないか......。患者さんや一生懸命治療にあたっている医者には悪いがとても見れたものじゃない......あの時は夕食後で、お腹も落ち着いていたから見れたが......。」

 

「まぁフェルトみたいに食べてから時間が経ってたり、モザイクなどで修正されてたら見れるって言う人が普通なんだ。」

 

「じゃあ何故アトミラールは?」

 

「母親が医療従事者でな医療番組とかが好きで、それに影響された姉も医療の道に進むと言ってそう言う番組を見るようになったんだ。俺もまぁ、いる訳だから食事中だろうが朝起きたばかりだろうがテレビでそれがやっていたら見ていたんだ。そうしたらこうなってしまったんだ。」

 

 そう言って俺はまたチラッとフェルトと辺りを見る。数人は今の説明で納得したのか、引いた表情から直っていたがまだ居る。なので俺は付け加えた。

 

「そう。俺に耐性が付いたのは母親と姉のせいだっ!!俺は悪くないっ!!」

 

 と言って俺はフェルトを連れて食堂を出て行った。

最後の俺の一言で最後まで引いていた艦娘も普通に納得した様だった。俺が異常な人に思われたみたいだったので最後の一言を言って良かった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 執務を済ませると俺は例外に無く、炬燵に収まっていた。時期的にはもう片付けてもいい時期なのだが、俺はそんな事も気にせずに"まだ寒いから"という理由で炬燵を出したままにしていた。今日はフェルトが秘書艦なのだが、番犬艦隊ではないので炬燵に収まろうとしていた。

 

「炬燵は人をダメにするって言われてるって知ってるか?」

 

「勿論だ。というか番犬艦隊としてアトミラールの傍に居た時も炬燵に入っていた者は皆、ダラダラとしていたな。」

 

 そうフェルトは炬燵の前で手袋とケープを取っていた。

 

「フェルトは炬燵に入るのは初めてか?」

 

「勿論だ。」

 

「始めて入る時は覚悟をして置いた方がいいぞ?何故なら......」

 

 そう言いかけて俺がフェルトの方を向くと時既に遅し。フェルトは炬燵に入っていた。炬燵に入ったフェルトは畳んだケープを枕にしてその下に手を置き、頭を乗せていた。

 

「温かいなぁ......。」

 

「......。」

 

 これまでに見たことないくらいの柔らかな表情をしていたフェルトに俺は話しかける。

 

「そのまま寝るなよ?風邪引くから。」

 

「分かった。だが......人をダメにすると言われているのも納得が行くものだ。」

 

 そう言ってモゾモゾとフェルトは奥に入っていく。

そんなフェルトを引き戻すために俺はある話を持ち掛けた。勿論、フレシェット弾の話ではない。

 

「そう言えばフェルト。」

 

「何だ?」

 

「雷撃機は無いのか?」

 

 そう訊くとフェルトは答える。

俺が何故それを訊いたか。それはフェルト、グラーフ・ツェッペリンは改造しても雷撃機が出ないのだ。ただそれだけの理由。

 

「それはだな......一応はあるんだ。」

 

 そう答えたフェルトは俺にある名前を言った。

 

「Fi167という雷撃機は史実では搭載される予定だったんだ。」

 

「それは訊いた事無いな。」

 

「そうか......。」

 

 困った様子のフェルトは少し考えると違う言葉で言ってくれた。

 

「Ar196と前世代型水上機からフロートを取り外して航空魚雷投下用アームをつけただけのものだ。」

 

 そうフェルトに説明された俺はなんとなく分かった。鎮守府に移籍してきたビスマルク達が持ってきた水上偵察機にAr196改があったのだ。姿は覚えている。そして法則的に前世代という事はあまり見た目は変わっていない筈なのだ。容易に想像ができたのだが、それを一瞬にしてフェルトは打ち砕いた。

 

「だがFi167は複葉機だ。Ar196の前世代型はAr96と言われていてこれが元になっている。」

 

「そうなのか......。」

 

 俺は無理やり頭の中に出来上がっていたFi167の単葉機を複葉機に切り替えた。

 

「特徴は場合によって切り離しが可能な固定脚に好条件下なら短距離離着陸ができるらしいんだ。」

 

「そうなのか......。」

 

 短距離離着陸。それはオスプレイみたいな航空機の事を指しているんだろう。そんな代物が70年も昔にあったらしい。

 

「遠回りになったが、結果的には雷撃機は無い。そちらの純日本製の雷撃機を使うしかないのだ。」

 

「そうだったんだな。」

 

 そう言われて俺は納得した。といっても何をどう納得したかは自分でも判らない。

取りあえず、色々な理由があってフェルトにはドイツ製の雷撃機が無いという事だった。

 

 

 





 今日は少し少ないです。まぁ、そういう日もあってもいいですよね。
今日は昨日の特殊砲弾繋がりでフレシェット弾について書きました。そんな話をする提督の謎の耐性は医療従事者なら結構あるみたいです。
 そして雷撃機についてですが、これは少し間違った情報を交えてる可能性もあるので『ふーん』と思う程度に考えて下さい。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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