【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百四十四話  一難去ってまた......

 今日の秘書官は、金剛だ。

何というか初めてな気がとてつもなくしている。これまで記憶の中にある金剛型が秘書艦をしたのは比叡、榛名、霧島だ。どれだけ記憶を遡っても、金剛の秘書艦経験はない気がする。気がするだけだ。もしかしたらあったかもしれない。

 

「終わった。金剛、提出頼めるか?」

 

「分かりマシター!行ってきマース!!」

 

 そう言って金剛は上機嫌で書類を片手に執務室を飛び出して行った。

朝食の時に比叡に訊いた話だが、どうやら秘書艦が今日だと分かってからずっとテンションがいつも以上に上がり、昨日もなかなか寝付けなかったらしい。

俺は内心で『遠足前の小学生か』と呟きながらその話を聴いていた。

 執務が始まって約1時間。いつも通りに終わり、一息吐いていると執務室の隠し扉が開かれた。そしてそこから出てきたのは、巡田だった。どうしてそこを知っているのかと言うと、赤城、金剛、鈴谷が動いて居た時に証拠をつかむために巡田に渡していた本部棟内の隠し通路の地図を覚えたのだろう。そして何故、こんなところから現れたのか......訳など大体想像がつく。

 

「提督。失礼します。」

 

「巡田さん、どうかしたんですか?」

 

「米海軍艦隊が鎮守府に再び来るとの事。厳戒態勢を敷くことを愚考します。」

 

 巡田がここに現れる訳。それは、鎮守府に深海棲艦や沖の方から接近する艦艇があった場合。それと、鎮守府に陸から侵入しようとする輩が危険だと判断された時だ。今回は、海だ。それも沖からでは無いアプローチ。

 

「......分かった。巡田さんは持ち場に戻って下さい。」

 

 そう言うと普段なら首を縦に振る巡田が横に振った。

 

「......どうしてですか?」

 

「出来ません。」

 

 そう言い切った巡田は俺に提案してきた。

 

「米海軍の先日の来航。そして、アメリカに向かった使節団の話を訊いてみると持ち場に戻る事は出来ません。」

 

「艤装に侵入していたっていう奴ですね......。」

 

「はい。ですから持ち場に戻る事をせず、私たち諜報系長けた門兵を集め、アンブッシュする事を提案します。」

 

 そう言った巡田の目はこれまでに見たことのない目をしていた。

そしてその目は俺を捉えていたが、俺に向けられたものでない事は直感で感づいた。この目はこれから来る艦隊に向けられるであろう目だ。

 

「アンブッシュ......迎撃ですね。」

 

「はい。機密を盗まれる可能性があります。」

 

 そう言った巡田は少し上唇を噛むと、続けた。

 

「それに......艦娘の拉致、も考えられます。」

 

「どうしてっ......。」

 

「戦力増強、以外考えられません。」

 

 巡田はそう言って俺に向かって敬礼した。

 

「全員捕まえ、提督の御前で跪かせてみせます。」

 

 そう言い、巡田は隠し通路に戻ってしまった。どうやら俺の返事を聞かずに行ったところ、どうやら確定らしい。

 

(艦娘と他の門兵にも連絡を入れないとな。)

 

 俺は思い立ち、行動を始める。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 巡田の話通り、米海軍のアイオワと共に来ていた艦隊が鎮守府の埠頭に入ってきた。

そして停止して投錨すると、橋を下ろしてきた。今回に関しては俺は入港も上陸も許可していない。この時点では俺は何をしてもいいのだが、相手が相手だ。アメリカなのだ。それに横須賀鎮守府ではどうなってるかなんて知った事は無いだろう。

 

「提督。入港も上陸も許可がいるかね?といってももう、入港はおろか上陸しているがな。」

 

 俺の横でウェールズの話した言葉を天見が翻訳する。

 

「そのようですね。......今日はどのような御用件で?」

 

 そう俺が聞くと、ウェールズはすぐに答えた。

 

「今日は念押しだ。中部海域は我々米海軍が総力を挙げて制圧する。日本皇国海軍の出る幕は無い。それに領土侵犯を犯す事になる。国際的に干されたくはないだろう?」

 

 鼻にかけたように話すウェールズの言葉を淡々と訳する天見は俺に訳を終えると話した。

 

「この前から気になっていたんですが、中部海域というのは?」

 

「中部海域というのは太平洋の中央にある海域です。そこはハワイがある場所ですが、今は深海棲艦がいる海域です。」

 

「はぁ......。」

 

 聞いてきた天見はそれで満足したのか、俺の返答も伝えて訳を続けた。

 

「アイオワがいれば深海棲艦など怖くも無い。それに日本皇国にばかり良い顔させて等居られない。それだけだ。」

 

 得意げに言ったウェールズを見て俺はゲンナリしつつ、俺の横に門兵が来た。連絡の様だ。

連絡はこうだった。埠頭や要塞砲周辺の警備中、見知らぬ戦闘員を捕獲したとの事だった。来ていた戦闘服の肩にアメリカの星条旗のパッチが付いていたとの事。どうするかという指示が欲しかったようだ。俺はその返事に武装解除させ、警備棟の一番綺麗な地下牢に居れる事を伝えた。着ていた 入れる

そしてその後、俺はウェールズに明らかにこれまで向けてきた目を覆した。それには気付いたウェールズは話を変えてきた。

 

「何かあったのかね?強盗でも押し入ったか?」

 

 そう言ってへらへらしているウェールズに俺は返答した。

 

「えぇ。どうやら見たことのない強盗だった様です。優秀な警備が"処理"しました。安全ですね。」

 

 そう言った途端、ウェールズは目を見開いた。

驚いたのだろうか。

 

「スキューバ装備に短機関銃、覆面、戦闘服......とんだ恰好をした強盗です。近頃の強盗はこんな風なんですかね?」

 

「どう"処理"した?」

 

「聞きたいのですか?」

 

 俺はそう言うと巡田がこちらに来た。

来た巡田は俺とウェールズに発現許可を貰うと答えた。発言

 

「武装解除し、拘束された後、引きずりまわされ、通りすがる鎮守府に居る人間や艦娘に死なない程度に何かをされます。そして大本営に連れて行かれ、処分が下されます。処分を下すの等、1分もあればいい方でしょう。その後、ここに拘束されて来て何十何百という目の前で土下座をし、惨たらしく殺される......。鎮守府に手をかけたことを後悔させます。」

 

 そう語った巡田だが、今の話は巡田の体験談だ。より鮮明に、リアルに語られた巡田の言葉にウェールズは脂汗を拭いながら言った。

 

「それはっ......国際法にっ!?」

 

 ボロを出したみたいだ。巡田が拳銃を引き抜くと門兵全員が小銃を構えた。

それと同時に他の門兵が報告に来た。

 

「停泊中の艤装にも侵入者ありです。全員捕縛し、地下に連行します。」

 

 そう言って門兵は立ち去った。

 

「地下に連れて行き、どうするのだ。」

 

「名前と所属を言わせ、拘束。大本営に連絡を取ります。」

 

 そう俺は答えると天見は訳す。

それを訊いたウェールズは部下と少し話をした後、俺に言った。

 

「その不埒な輩の"処理"、こちらに任せてはくれまいか?」

 

「いいえ、結構です。」

 

 俺はそう答えて話を戻した。

 

「私からひとつ、お教えしておきます。中部海域への侵攻でそちらは甚大な被害を被るでしょう。しかも深海棲艦の艦隊を壊滅させる間もなくです。」

 

「なん、だとっ......そちらに出来て我々に出来ない訳が無いだろうっ?!」

 

「貴艦隊は壊滅します。艦娘1人でやれることなんてそうそうありませんからね。」

 

 そう言って俺は言い放った。

 

「そもそも私が貴官にお教えせずとも、気付かなければなりません。」

 

「我々、米海軍を舐めてもらっては困る。では、帰らせてもらう。」

 

 そう言ってウェールズはアイオワに乗り込み、抜錨を指示したのか、錨が巻き取られていく。

それを見送り俺は執務室に戻った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 金剛は執務室に帰ってくるなりファイルを漁り始め、見つからなかったのかそのまま『資料室に行ってキマス。』と言って執務室を飛び出したかと思えばすぐに帰ってきた。

 

「違和感があったので調べてみたらビンゴデシタ。提督、これを見て下サイ。」

 

 そういって金剛は俺にある本を開いて見せた。そこにはアイオワに関する事が書かれていた。基本情報、兵装、戦歴など......退役までの話が書かれていた。

違和感というのどの辺りか知らないが、1つ言える事がある。深海棲艦の現れる前に中東で起きた戦争に艦娘の存在しないアイオワは出撃していた。それに近代化改修があり、兵装が現代化していた。もしそれがあのアイオワにもあるのなら、『イレギュラー』が出てくる。

更に、アメリカは『イレギュラー』の事を知らない。知らずにアイオワに妖精が作った現代兵器を使わせるとそれに応じた深海棲艦の新たな兵器を投入してくる。経験済みであり、それはとても恐ろしい事だ。更にその被害がこちらに及ぶ事も考えられた。

 

「アイオワが近代化改修もとい、改造をしてしまえば飛び道具が強くなってしまいマス。」

 

「そうだな。それに彼らは『イレギュラー』を知らない。もし妖精に何かを作らせていたならば深海棲艦は同じようなものを投入してくるだろう。」

 

「ハイ。なのでアイオワの艤装を離れたところから調査してた青葉の資料を持ってきマシタ。写真やレポートなど......。」

 

 俺の指示なくそこまでしていたのかと少し感心した。だがどう対策するか話さなければならない。

 

「ですけど変なんデス。」

 

 そう切り出した金剛は机に青葉の資料を広げて見せた。

レポートと写真が数枚だけだが俺はそれを見て目を見開いた。明らかにミサイルがあるのだ。それに発射管が何本もある。

 

「これは......。」

 

「多分ですが、記念艦として残っていたアイオワを無理やり動かしたのではないかと思いマス。」

 

「そっちが九割九分そうだな。」

 

 俺はそう言った後、続けた。

 

「多分アイオワだと名乗った艦娘も民間人か軍人だ。艦娘じゃない。」

 

「その様デス。それに艤装には人間がたくさん乗ってマシタ。全員船を動かすための乗組員デス。」

 

 溜息を吐いて俺は頭を掻いた。面倒な事になった。

本当に中部海域を攻めると言うなら止める義理などない。だが攻めたとして、アメリカはどうするのか。ウェールズの様子を見てると色々と思うところがある。傲慢で鼻にかけた様な話し方だった。大統領は違うかもしれないが、ウェールズは軍人だ。それに自らを艦長と名乗ったが更に艦隊指揮官だとも考えられた。厄介だ。

 

「艦隊を編成して中部海域の入り口に斥候を送ろう。米艦隊の中部海域侵攻を確認次第連絡を入れて撤退だ。」

 

「編成はどうしますカ?」

 

「隠密性が欲しいところだ。イムヤとゴーヤに出て貰おう。」

 

 俺はそう言って編成表を書き、脇に置いた。

これからどうするかを考え始める。イムヤとゴーヤに行ってもらったとして、どうするのか、だ。

そんな時、執務室の扉が開かれた。開いたのは赤城だ。

 

「提督っ!アイオワだけが戻ってきましたっ!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 埠頭に佇むアイオワの周りにはさっき去った現代艦は無い。ただアイオワだけが居た。それに何だかウェールズの乗っていたアイオワとは違ってみえる。誘導弾を積んでいないのだ。

そんなアイオワの艦橋から誰かが出てきた。ウェールズじゃない、見てくれから察するに艦娘だ。

 

「ハーイ、アドミラル。ミーはアイオワ級戦艦 一番艦 アイオワよっ!」

 

 埠頭に集まっていた艦娘や門兵たちは面を喰らい、言葉を失った。勿論俺もだ。

 

 




 月から水まで更新できませんでした。リアルで少しパソコンが使えないところに居ましたので......。携帯でやってもよかったんですが、全角のスペースが無いので無理でした(←挑戦してた)

今回のは題名から察せれますね。ころころと状況の変わる鎮守府です。もうごちゃごちゃですね(汗)

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