【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百二十七話  operation"typhoon"⑦

 

奇形の装甲空母のような深海棲艦を何とか葬り去り、私たちは本隊に陣形を整えるように連絡を入れた。

陣形を組み直し、それぞれの艤装に目をやると、やはりあれから無傷では無理だったんだろう、小破したのが居る様だ。だがもうこれからは撤退するだけ。通信妖精に鎮守府に繋いでほしいと頼み、受話器を受け取った。

 

「本隊旗艦の長門だ。最深部にて装甲空母を撃破した。」

 

向こうで聞いているであろう提督に言うと、いつものように返事が返ってきた。

 

『作戦艦隊は帰還せよ。』

 

「了解だ。」

 

私はその言葉を聞き、嬉しさと不安で半々な気持ちを抑えながら本隊と支隊へ通信妖精に繋いでもらった。

 

「長門だ。作戦終了、これより撤退する。」

 

私はそう言って通信妖精に受話器を返し、目を瞑った。

出撃する前日、赤城や金剛から伝え聞いた話を心配していた。提督が気付いている。という事を。

正直に言って気が気でない。気付かれたところでどうという話だが、提督が知り得ない情報まで持っていたとか。どう手に入れたのか......。

独りで悩んでいても仕方ないのは分かっている。だが、考えてしまうのだ。戦闘中は戦闘に集中していて考える暇がなかったが、いざ戦闘が終わると考えてしまう。これから鎮守府に着くまでずっと考えてしまうんだろうな、と思った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

金剛と俺の私室で話をしてから3日が経った。

あれ以来、巡田さんは半日に一回のペースで潜入していたが、やはり全員が居ない為か何の話にもならない様で、ここで気になる事があると話をするという感じになっている様だった。それに金剛は曖昧な回答を返すようになったと。これは俺と話してからもうやらないと決めたんだろう。

そして今日、西方海域に行っていた作戦艦隊が帰還する。これでメンバーが全員揃う筈だ。そうしたら赤城から伝え訊いた話に関して討論を交わすはずだ。

俺はこのタイミングを狙っていた。

 

「金剛。」

 

「ハイ。」

 

夕食も終わり、執務室に帰ってきてから話があると言ってまた俺の私室に居た。

 

「今日、作戦艦隊が帰ってくる。」

 

「そうなんデスカ?それで、結果は?」

 

「成功だ。最深部の艦隊を撃破した。」

 

そう言うと金剛はニコッと笑った。

 

「そうデスカっ!」

 

「あぁ。」

 

「ソレデ、話ってなんデスカ?}

 

金剛はすぐに切り替えて来たので俺は話し出した。

 

「次、金剛たちが集まって話をする時、俺はそこに突入する。」

 

「オゥ......。」

 

「それで赤城と鈴谷も止める。他の艦娘もだ。」

 

そう言うとなんとなくだが、金剛はしょんぼりした。

 

「ん?どうした?」

 

「イエ......。ただ、それでよかったのかなって思いマシテ......。」

 

「いい。戦争なんていつか終わる......。その後の事はその時決めよう。」

 

「そう、デスネ......。」

 

そう言って俺は金剛とどういう手順で突入するかと、検討を始めた。

数分で話は決まり、結局金剛が一番乗りする時に一緒に入り、隠れている事になった。内心こういう隠れて驚かすのは好きなので、楽しんでいたりする。

 

「じゃあそれで行こうか。......だが、俺的にはあまり女性というか女の子の部屋が集まっているところに行くのはどうかと思うんだけどな......。」

 

「どうしてデスカ?」

 

話をしていて今更ながら思ったことだが、金剛たちが集まって話をしているのは艦娘寮の空き部屋だ。という事は周辺には艦娘たちに私室があるという事。一度、綾波の荷物持ちで言ったことはあるが、やはり見られたくはないだろう。

 

「何と言うか......デリカシーって言うのか知らないが、異性が異性の部屋とかの部屋に有無も言わずに近づくのはどうかと思うんだ。俺とかに知られたくないことだってあるだろうし、見られたくないって思ってる艦娘だって居る筈だ。」

 

「そう言う事デスカー。」

 

俺がそう言うと金剛はニヤニヤしだした。何を考えているんだろうか。

 

「なっ、何だよ。」

 

「何でもないデース。」

 

そう言って金剛は立ち上がった。

 

「じゃあ、やる時になったら呼びに来マース。それでいいデスネ?」

 

「あぁ。」

 

そう言って俺と金剛は私室から出て行った。

扉を開くとやはりフェルトが立っている訳だが、何だか様子がいつも違う。

少し耳を赤くしていたのだ。

 

「どうしたフェルト。耳赤くして。」

 

「いっ、いやっ。何でもない。」

 

そう慌てて答えたフェルトに俺と金剛が何か分からない様な表情をしていると、勝手にフェルトが話し出した。

 

「たっ、たまたま中の話が聞こえてだなっ......そのっ......金剛とは何日か前にもこういうことがあったから......。」

 

俺と金剛が理解できてないと言うのに、勝手に話していくフェルト。

 

「『やる時になったら呼びに来る』って......どういう事だろうかと思ってだなっ......。」

 

そう言いながらあたふたするフェルトを次第に話が呑み込めてきた俺と金剛はアイコンタクトを交わし、少しからかってやろうとする。

 

「『やる事』ってなんだ?」

 

「そうデース。なんで『やる事』で耳を赤くしているデース?」

 

ニヤニヤを隠しながら俺と金剛はフェルトにそう言った。そうすると案の定、フェルトは反応して耳を赤くしながら続けた。

 

「それに『部屋に近づく』とか言ってたから......。」

 

そうもじもじしながら言うフェルトに俺と金剛のからかいは止まらない。

 

「何だよ、なんかあるのか?」

 

「いやっ......その、だなっ......何をするのだろうかと思ってっ......。」

 

俺と金剛は思った、『コイツ、自分で地雷踏んだ。』と。

その瞬間、金剛はポッと顔を赤くして俯いた。勿論、演技。そしてそれを見たフェルトも耳だけが赤かったのが、今度は顔にまで広がっていた。

 

「こっ、金剛っ!そういう事はっ......よく、無いぞっ!!」

 

「そういう事ってなんだよ。俺は今度、酒保で大きいもの買うっていうから手伝うって話だったんだが......。」

 

そう言いながら俺はニヤニヤするのを堪えられずに、そのまま顔に出してしまった。

金剛も顔を上げてニヤニヤしている。

 

「フェルトは何と勘違いしたデスカ?」

 

そんな俺と金剛を見てフェルトの顔の赤さは最高点に達した。

少しフルフルと震えても居る。

 

「フェルト?」

 

「うぅ......。」

 

そう唸ったフェルトはそのまま執務室の部屋の角に行くと、角に向かって体操座りをしてしまった。

 

「えっ、なに、どうしたの?ツェッペリン?」

 

俺と金剛、フェルトのやりとりを見ていたビスマルクがこっちに来て言った。

 

「何というか、勝手に勘違いして自爆した、みたいな?」

 

そう言うとビスマルクは手を額に当てて眉の間にしわを寄せた。

 

「はぁ......。お堅い所が多い上に、素直なんだからっ......。」

 

「「知ってる(デース)」」

 

俺と金剛はビスマルクに返した。

 

「からかわれてショックでしょうね......貴方に......。」

 

そうなんか残念そうに俺を見ながらビスマルクは腕を組んで言った。

 

「どういう意味だ?」

 

「そういう意味よ......全く、ああなったツェッペリンは面倒なのよ......。」

 

そう言ってビスマルクはフェルトのところに行ってしまった。

というかビスマルクが言ってた意味、結構分からないことだらけだったんだが......。

 

「なぁ金剛。」

 

「ハイ。」

 

「ビスマルクの言った意味、どういう事だったんだ?」

 

そう金剛に訊くと、ビスマルク同様に俺の事を残念そうに見た。

 

「まっ、まぁ、ソレが提督のデフォルトなんですカラ、仕方ないデース。」

 

「は?どういう意味だよ。」

 

そう言っても金剛は答えてくれなかった。

 

「さっぱり分からん......。」

 

俺はそう言って炬燵に入るのだった。

 





久々にシリアスじゃない話を書いた気がします(白目)
書いてて思ったんですけど、シリアスに書くのが好きみたいです←
もうこれは性ですね。治りそうにないです。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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