【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百二十四話  operation"typhoon"④

巡田から潜入するという連絡を貰って、1時間。これまではちゃんと定時連絡があり、確認は取れていた。

最後の連絡から10分後。俺は携帯端末を持っている。

 

「頼んだ初日に動くのかよ......。」

 

そう俺が呟いたのにも無理はない。警備棟で頼んで、榛名と話している最中にメールで潜入を始める趣旨のモノが届いていた。

 

「凄い行動力だ......本当に。」

 

俺はそう言って事務棟に行って帰ってこない榛名を待ちつつ、携帯端末を握りしめていた。そうしていると着信があった。

画面を見ると、巡田である。内容は調査終了との事。

 

「速っ。まぁいいか。」

 

そう俺は独り言を言って紙に榛名宛ての置手紙をしておいた。内容は『警備棟に行ってくる』だ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

さっきまで居た警備棟の応接室に俺が入ると、もう巡田が居た。そして、巡田はデジカメを出し、パソコンに繋げた。

 

「提督。まさか一回の潜入でこうも分かるとは思いませんでしたよ。」

 

そう言って巡田は俺にパソコンを見せてきた。

そこには明らかに本部棟の内装だが、本部棟に無いものが映っている。デスクトップのコンピュータだ。

 

「同じ部屋にはもっと恐ろしいものがありました。」

 

スライドショーで見せてくれる巡田の声を聴きつつ、次に映る写真に俺は悪寒がした。

 

「銃か......。」

 

「えぇ。しかもこれは軍が使っている小銃ではありませんね。ロシア製のカラシニコフ系統の小銃です。」

 

そう言ってスライドショーを次々と送っていく。映っているのは銃、銃、銃......。

 

「それで、これはどこで?」

 

「使われていない第三会議室です。上手く偽装されてましたが、まぁ、人が寄り付かなそうな場所なのでその程度でいいんでしょうね。」

 

そう言いつつ巡田さんはスライドショーを送っていくが、あるところで写真を止めた。

止められた写真にはよく知っている艦娘。特徴的な髪色の艦娘だ。

 

「鈴谷......。」

 

「はい。この第三会議室に入って私が出た後すぐに彼女が第三会議室に入っていきました。様子を見ていると、どうやら彼女だけがこの部屋を出入りしている様ですね。この第三会議室のパソコンの近くには座布団も隠されていました。一枚だけです。」

 

そう言って少し視界が揺れている俺の異変に気付いたのか、巡田は『大丈夫ですか?』と声を掛けてくれる。

 

「大丈夫です。......続きを。」

 

そう言うと巡田はスライドショーを再び始めた。

 

「さっきの写真は提督から指定のあった艦娘を探している最中に見つけたものなので、これからが本題です。」

 

第三会議室に隠してあったものだろう、それを映した写真が終わると、俺が見たことのない部屋の写真が出た。

 

「ここは?」

 

「艦娘寮です。ちなみに空き部屋みたいです。」

 

そう言って写真が流れていくと、俺は目を疑う様な写真が次々と流れてきた。

霧島や熊野、叢雲は勿論、霧島たちに調査を頼んでいた赤城や金剛、鈴谷、色々な艦娘が集まって会議をしている。

 

「これは動画で撮ってありますので、再生しますね。」

 

そう言って巡田は動画再生ソフトを起動させ、動画を流しはじめる。どうやら音声も取っていた様で、パソコンから音声も流れ出した。

拾っているのは紛れもない赤城達の声。だが、話している内容がおかしい。

資金の使い道、強行偵察艦隊を取り込む......果ては俺がどういう管理をしているかという情報までもが話されている。大型艦建造やら近代化改修やら言っている。

さっぱり意味が判らないが、このメンツがおかしいのはよく分かる。

 

「なんですか、これ?」

 

「......私にもさっぱり分かりません。ですけど、確実なのは提督の耳に入れなくてはいけない行動であるのにも拘らず、提督に伝えてないという事です。」

 

そう言って巡田はポケットからメモ帳を出した。

 

「この動画を撮る前に話していて私の方で解釈したのだと、『提督に知られてない資材が鎮守府のどこかに隠されている』、『強い目的意識の中での行動』ですね。言い方を変えれば『何かを計画している』、『何かを企んでいる』という事です。」

 

そう言って巡田はメモ帳を閉じた。

 

「......巡田さんはどう思いますか?」

 

「彼女たちの行動ですか?......そうですね.............絶対的な法規を無視してまでやらなくてはならない事ですから......『提督にまつわる事』だと思います。」

 

「俺ですか?」

 

「はい。」

 

どういうことだろうか。確かに、彼女たち艦娘は俺の決めたルールは順守する。決して破ろうとはしない。だが、彼女たちは現状、それを破っているのだ。

そんな時、ある言葉が浮かんできた。

 

『大半の艦娘は気付いてないわ。』

 

イムヤの言葉だ。

映像の中にはイムヤも映っている。もしかすると、この言葉にある大半でない艦娘。それはこの映像に映っている艦娘たちだと言うのか。そして、彼女たちは何に気付いたのだろうか。ルールを破ってまでしなくてはならない事を......。

 

「巡田さん。」

 

「はい。」

 

俺は考えた上である事を訊いた。

 

「『尋問』するべきでしょうか?」

 

そう訊くと、巡田は深く考え始めた。そして、結果を俺に伝える。

 

「するべきだと思います。ここは提督の指揮する鎮守府です。その傘下の部下が何かをしているのであれば、動くべきだと思います。」

 

「そうですか......。」

 

俺は覚悟を決めた。

呼び出し、何をしているのかを問い質す。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

夕方。日も傾き、空と水面と陸が紅く染まるこの時、執務室には俺が呼び出した艦娘が居る。

 

「何でしょうか?」

 

赤城だ。

 

「秘書艦もいないようですが......。」

 

そう言う赤城に俺は単刀直入に言った。

 

「前も訊いたが、『何をしている。』」

 

そう言うと赤城は俯いてしまった。何も言わない、というか言えないみたいだ。

 

「俺は赤城の行動を『鎮守府の秩序を乱している』と考えている。」

 

「そのような事はっ......。」

 

赤城が反論してきた。

 

「秩序を乱しているとは思ってません!」

 

「だが、現に赤城『ら』の行動を不審に思っている艦娘が居るんだ。」

 

「『ら』?」

 

「あぁ。」

 

俺はそう言って艦娘の名前を呼びあげて言った。

 

「赤城、金剛、鈴谷、加賀、時雨、夕立、イムヤ、長門......。」

 

赤城は目を丸くしている。

 

「まだ居る。霧島、熊野、叢雲、吹雪。」

 

赤城は目を丸くしたまま黙ったままだ。

 

「密かに集会を開き、どこから持って着たか分からない資材を大量に保有し、あまつさえ俺の命令で無ければしない筈の建造を勝手にやろうとしている......。何をしているんだ、赤城。」

 

赤城は顔を伏せてしまった。

俺の位置からは赤城の表情を見る事が出来ない。

 

「......。」

 

赤城は黙ってしまった。

 

「今は大規模作戦を展開している。それは分かっているか?」

 

「......。」

 

「これまで赤城たちの行動は霧島や熊野、叢雲に俺が頼んで監視・調査していたが、その3人でさえそちら側に行ってしまった。」

 

「......。」

 

一向に赤城は口を開こうとはしない。

何を頑なに言おうとしないのだろうか。

 

「さっきも言ったが、他の艦娘たちが赤城たちの行動に困惑している。そりゃそうだ。古参の殆どがそちらに居るからな。」

 

「......。」

 

「初期から海域解放を担ってきた長門と霧島。長門と霧島と同じように初期から居た熊野。初期艦であり、長門たちと共に海域に繰り出していた吹雪。吹雪と共に出ていた時雨、夕立、叢雲。ムードメーカーで皆を引っ張ってきた金剛。鎮守府唯一の潜水艦であるイムヤ。艦隊の斥候であり目でもある航空隊を最大数運用できる加賀。そして、初期から長門や霧島と共に戦い、絶対的な実力で深海棲艦に立ちはだかり、艦娘たちに慕われ、加賀の先輩である、赤城。............揃って何をしている。」

 

「......。」

 

赤城は一向に口を開かないが、手が動いた。左手が動き、袖に手を入れ、金属音を鳴らして出てきたのは、俺が赤城にあげた懐中時計だ。

 

「資材を溜め込み、外と連絡を取る。......今度は『資材を売る』、『資金を調達する』、『他の艦娘を仲間に取り込む』、『建造を行う』、『近代化改修を行う』......果ては俺の艦隊管理に関する情報までもが話され、挙句の果てには銃器を保有している......。」

 

この言葉には流石に反応した。赤城は懐中時計を持っていた手を揺らして、ビクリと身体を跳ね上げた。

 

「俺が指示していた霧島たちもそうやって『仲間に取り込んだ』のか?」

 

そう言うとやっと赤城は口を開いた。

 

「......違いますっ。」

 

「じゃあ何をしているんだっ!」

 

俺は怒鳴ってしまった。

これまで怒鳴った事が無いと言うのに。怒鳴った事が無いので勿論、赤城も俺の怒鳴ったのは初めてだろう。かなり肩を跳ね上げていた。

 

「言えない事なのか?!」

 

そう言うと赤城は頷いた。そんな赤城は懐中時計を両手で握りしめて、手を震わせている。

 

「このままでは他の艦娘の士気に関わる。古参が揃いも揃って不審な行動をしているからな。そんな古参を見張るかのように提督である俺があれこれと目を配らせていたが不安が増長されるだろう。」

 

そう言って俺は赤城を見た。ソファーで手を震わせている赤城を。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

提督に呼び出されたと思い、柄にもなく喜々と執務室に向かった私ですが、提督はこれまでにない怖い顔をしていました。今までその顔を見たことは何回かあります。それは、巡田さんの時や、メディアが押しかけて来た時、自治体の方々が抗議に来たとき、文化祭(仮)で問題を起こした兵士の前でした。

その目は明らかに何か別のモノを見るような目で、これまで絶対私たちに向けられたことのなかった目ですが、今、提督はその目で私を見下ろしています。

心のどこかで『その目は絶対私たちに向けられる事は無いだろう』と思っていましたが、それは否です。その目で提督は私を見ているんです。

提督をその目で見ていたモノはどれも金剛さんや鈴谷さんが反応し、現れる様な事象。つまり、『提督への執着』が働く様な事が起きている時です。したがって、この目を向けられている私は『提督への執着』によって『処理』される可能性があるという事です。

 

(怖いっ......ここで言ってしまえば楽でしょうけど、そんなことをしてしまえば計画が全てパーです。そうなってしまえば、何も返す事が出来ません......。)

 

俯いて黙っている私に提督はずっと言葉を投げかけてきます。

そんな時、提督の口から知り得ない情報が出ました。『資材を売る』、『資金を調達する』、『他の艦娘を仲間に取り込む』、『建造を行う』、『近代化改修を行う』。それだけではありません。長門や私、秘書艦としての任が長くなければ分からない提督の艦隊管理に関する情報。鈴谷さんの銃器保有の事まで出てきました。

そんな情報をどうやって提督は手に入れたんでしょうか。

 

「......違いますっ。」

 

私は取り繕う意味も無い言葉を言って、また黙ってしまいました。

 

「じゃあ何をしているんだ!」

 

私はその声に驚きました。これまで私は深海棲艦の奇襲やなんかで驚かずに冷静に対処していた自信がありますが、これには驚かざるを得ません。人間に非道に扱われてきた私たちに笑いかけてくれた、人間同等の扱いをしてくれた提督が怒鳴ったんです。

私は思わず懐中時計を握っていた手を震わせてしまいました。怖い。そんな感情が渦巻き、更には色々な妄想が脳裏を走り抜けました。

 

『作戦艦隊の任から解く。』

 

『秘書艦もまだ経験は浅いかもしれないが、高雄や......まぁ最近『番犬艦隊』として俺の横に居たフェルトにでも変わって貰う。』

 

『特務は......他の艦娘に任せる。』

 

提督は私を信頼して色々な任務を頼んでくださいました。それを私は提督からの『信頼』だと思ってます。他の艦娘たちも『赤城さんって提督に信頼されてるんですね。』とよく言われてきました。それが全て失われる。主力である第一艦隊から外され、秘書艦を外され、私の絶対的な『信頼』の意味を持っていた『特務』までもが無くなってしまう。そう思いました。

それは私にとって悲しく、辛い事です。

今、私の手に握られている懐中時計も提督が下さったものです。『景品』だと言って何か訊いて下さると言った提督に『外へ行きたい』と大それたことを頼んだ私を提督は外へ連れ出して下さいました。そんな帰りに提督が下さった懐中時計、『それなら持ってても何ら不思議じゃないだろう?』と仰って私に下さいましたが、それは多分他の艦娘と私への配慮です。

そこまで『信頼』して下さった提督が今、私にアノ目を向けているんです。

身体の震えが止まりません。葛藤と不安です。

 

「わっ、私はっ......。」

 

恐怖で押し潰されそうになる声を必死に絞り出しましたが、提督の顔を見る事が出来ません。

 

「言えないですっ!!私がやろうとしている事、私たちがやろうとしている事っ!!」

 

そう私は振り絞って言いました。そんな私を見て提督はこれまで以上に冷たい目で私を見ました。そして言い放ったんです。

 

「そうか......赤城はあの時言った言葉を覚えているか?『私は理性で『提督への執着』で起きる殺意を抑える事が出来ますが、気付かなかった貴女たちを私は本能の赴くままに殺してしまっても構わないと思ってます。』、『『その時』までに気付かなかったのなら、貴女たちは私にとって提督の害となります。......長門さん。貴女もですよ。』と。ならば俺はこう言う。『俺にとって赤城たちは害だ。』」

 

ガンと頭に衝撃が走ったように思いました。

提督の口から直接『私たちは害だ』と言われたんです。さっきまである程度考える事の出来た頭が回らなくなりました。

提督にその言葉を言われたという事は、私は提督にとって『害』だという事になります。考えてみればそうかもしれません。提督に何も言わず、行動し、提督が不審がっていたのは以前、執務室で言われた時既に分かっていたことです。それが今日、痺れを切らしたんでしょう、提督は私を呼び出して問い詰めたんです。ですけど、私は頑なに言いませんでした。

もうこの時点で分かっていた事なんです。

 

「そんなっ......?!」

 

ですけど私の身体はそれを信じれなかったみたいです。

 

「何を言う。俺の知らないところで資源を貯め、新瑞さんと連絡を取り、パソコンを保有し、銃器を保有している。新瑞さんに関しては自由だと思うが、正直なところ分からない。」

 

考えの停止している私に提督は言葉を投げかけて行きました。

 

「だが、大本営が禁止し、俺も禁止しているパソコンの保有と銃器の保有は駄目だ。それに命令も無い資源回収は以ての外だ。」

 

提督の目がどんどん冷たくなっていくのが分かります。

 

「裏でこそこそと動いて、何かを企んでいるのを見るのはもう沢山なんだ。」

 

そう提督は言いました。一体どういう事でしょうか。確かに私たちは裏でこそこそと動いていましたが、それが『沢山だ』とは。

 

「沢山ってどういうことですか?」

 

そう訊くと提督は語り始めました。

この世界に来る何年も前、提督はある集団に身を置いていた。その集団は男がほとんどおらず、女主体の世界があった。提督はそこに自分の意思をほぼ無視された状態で入れられた。そしてその集団で提督は持っていた力を開花させ、幹部になっていた。その集団は『部活動』というらしい。

その部活動で提督は少ない男の中で志願して入った訳でもない、気の遠くなるような努力をした訳でも無いのに幹部になったが故に、女主体の世界で迫害に遭った。助けてくれる手はどこにもなかった中で裏でこそこそと工作する女たちを見て、それが自分の身に降りかかるのを経験してきたらしい。自分一人を多勢に攻撃され嫌な思いをし、果ては実害もあった。

提督が私たちの行動を不審に思い、艦娘に調査を頼み、取り込まれたら自分で訴えてくるのにはちゃんと理由があったんです。

『何かをしている』という些細な理由でここまで動いたのは多分、提督の本能が警鐘を鳴らしていたんでしょう。

 

「だからもう嫌なんだ......。」

 

そう言う提督の目から光が消えていく。これは金剛さんが提督の危険を察知した時と同じです。

私の本能が私に危険だと知らせています。

そんな時、執務室の扉が開かれました。開けたのは金剛さんと鈴谷さんです。

 

「提督?」

 

「提督?」

 

2人は揃ってそう言いましたが、提督の様子を見て一変しました。私もこんな様子の提督を見るのは初めてですし、勿論金剛さんたちも初めてでしょう。

戸惑う2人に提督は言いました。

 

「お前らは一体何をしているんだ。」

 

目から光の消えた提督はそう言いました。

 

「いやっ......提督の危険を察知したので、来たんデスガ......。」

 

「鈴谷もだけどっ......。」

 

私も今感じたが、提督が害と思っているのは私と金剛さんと鈴谷さんだ。2人は戸惑っているように見えます。

 

「はっ......はははっ......。」

 

力のない笑いが提督の口から洩れました。

 

「赤城。」

 

提督は張り付いた様な表情のまま私に声を掛けました。そして私が答える間もなく、提督は話しだしたのです。

 

「さっきの続きがあるんだが......訊きたいか?」

 

そして提督は私の返事を訊かずに続けました。

 

「俺は最後、こそこそしていた集団......といってもほとんどの奴らだけど、そいつらをどうしたと思う?」

 

そう言って提督は張り付いた表情のまま口角だけを挙げました。

 

「......恐怖で"支配"したんだよ。奴らの仲間同士で不信感を持ち合い、誰も信用できなくした。集団の頭は集団内で社会的に体裁を保てなくさせた。俺はそういう奴らが大嫌いなんだ。」

 

提督は続けた。

 

「あの時は複雑な関係構造をしていたが、今回は単純だ。身内同士で疑心暗鬼させる事は簡単だ。」

 

そう言った提督の言葉を私は反芻した。途中で『集団の頭は集団内で社会的に体裁を保てなくさせた。』と仰った。『集団の頭』つまり私や金剛さん、鈴谷さんの事でしょう。

そうなるとさっき私の脳裏に浮かんだ妄想が現実化してしまいます。

 

「ちょっと待つネ。一体どうなってるノ?」

 

金剛さんが口を挟んできました。たぶん、状況が掴めなないから痺れを切らしたんでしょう。

 

「あぁ。丁度いい。」

 

そう提督は言って、金剛さんと鈴谷さんにも私に言った言葉と同じ言葉で訊きました。

 

「何をしているんだ?」

 

そう言われ、全く理解出来ないのか、金剛さんも鈴谷さんも困った表情をしています。

 

「どういうこと?」

 

鈴谷さんが提督に訊きます。

 

「言ったとおりだ。赤城と金剛、鈴谷、加賀、夕立、時雨、熊野、叢雲、鈴谷、吹雪、長門、イムヤで何をしている。」

 

そう提督が仰ると金剛さんも鈴谷さんも苦虫でも噛んだような表情になりました。

提督は光のない目で金剛さんと鈴谷さんを捉えてまた言いました。

 

「一体、何をしているんだ。」

 

今度は提督の声がいつもよりもトーンが落ちました。

 

「......。」

 

「......。」

 

もう金剛さんも鈴谷さんも私と同じ状態になりました。

戦意喪失というのは丁度いい彼女たちの状態の表現です。

 

「......答える気が無いならいい。下がれ。」

 

そう言った提督は居た場所から机の椅子のところに行き、腰を掛けた。

そして一向に動こうとしない金剛たちを見てもう一度言いました。

 

「下がるんだ。」

 

提督の言葉に消え入りそうな声で金剛と鈴谷は返事をして、執務室から出て行きました。

 

「赤城。お前もだ。」

 

私は返事をする声も出ずにその場を立ち去る事しか出来ませんでした。

 




今回は重くて本当にすみません。まぁ提督の昔話が出たという事で......うん。

そう言えばシリアスが長いと思いますか?
まぁ自分もそう思ってますが、嫌だと感じた方はご一報ください。
そのうちこの長いシリアスともおさらばするんで、それまでの辛抱です。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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