【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百十三話  三つ巴⑦ 鈴谷編その2

 

パソコンってのは便利だよねぇ。すぐに知りたいことが調べられるってのがこれまた良い!と、わざわざ送って貰ってこんな使い方をするためのものじゃないんだけどね。

鈴谷がパソコンを使うのは調べるためって言ったけど、具体的には国内の情勢とか世論、最近の話題なんだよね。えっ?そんなのテレビで見ろって?テレビで調べきれないからこうしてるんじゃん。

国内情勢やら世論やらって言ってるけど、殆どは鎮守府や艦娘、深海棲艦に関する事なんだよね。鈴谷たちとは違う目線ではどう映ってるのかってね。

最初に言っておくけど、調べれば調べるだけはらわたが煮えくり返るかと思ったよ。

何故かと言うと例えば鎮守府だったら......『各地に点在する鎮守府では毎日ひっきりなしに出撃をしているようですが、出撃回数の割に海域の解放が順調で無いように思えます。』、『知能レベルの低い相手にどれだけ苦戦しているのだろうか。』、『税金と資源の無駄遣いなんじゃないのか。』、『金と資源を海に捨てている様なものだ。』といった感じなんだよね。勿論、『貿易拠点の設営に成功。貿易がより活発に。』、『怯まずに挑み続ける鎮守府。海の平和はもうすぐそこまで。』みたいなのもあるんだけど、圧倒的に多いのは否定的な意見かなぁ?

艦娘についても結構挙がってたよ。『特殊能力で機械を出し入れできるとか意味不www』、『あんな女、子どもが本当に戦争している様には思えない。』、『狂言なんじゃないか。精神障○者の集まりなのでは?』みたいな他の関係ない人を侮辱するようなこともあった。他には『軍の開発した愛玩製品の実験体。』、『人造人間みたいな?』とかいうのもあったし。

深海棲艦でもまぁまぁあったね。でも驚きだよ。まさか『深海棲艦って何?船?』とか『どっちが敵で味方か分からないwww』、『戦争してるの?いつから?』と言ったのが多かった。というか大半だった。

そして一番鈴谷を怒らせたのが提督の事。『横須賀鎮守府が最近一般公開するようになって行ってみたけど、提督やっぱガキだったし。』、『あんなんが指揮してるとか意味分からない。』、『あれだけ税金と資金を使い込んで鎮守府は大きくしてるみたいだけど海域奪回が全然進んでない件。深海棲艦って拳銃でも死んじゃうらしいけどw』......提督の事を馬鹿にされてる気分だよ。これ以外にも色々あったけど、結局収束するところはどれだけ国民が関心が無いかってところだった。

世論調べてるときに、一番問題視してる事が政治家の汚職問題だった。政府機関のお金を横領して遊びに使ったとか、別荘買ったとか......。他には国内の資源不足とか、貧富の差とか、タダ飯食らいの軍とか......。

 

「あぁあ......。」

 

パソコンで調べた内容を纏め終わって鈴谷はもう見るのも嫌になったよ。

鈴谷たち艦娘が命の駆け引きをしてる間、鈴谷たちの大義名分の国民たちは金、金、金......。

 

「戦争を艦娘に丸投げした結果だよ......。自分たちの置かれた立場を知らないんだよね......。」

 

そう。日本というか世界各国は深海棲艦によって海を失って、連絡が途絶えてる。海を取り返すために国が動き、軍が動き......皆命を投げ捨ててまで戦った人たちは確かにいた。だけどもう忘れてる。

今、命を投げ捨ててるのは艦娘で、人間じゃない。そう思ってるんだろうね。だから外の世界の話で終わってるんだと思う。

鈴谷たちがこの身体、艦娘になる前、一応鈴谷も軍艦だったころの記憶はあるけど、あの時、人間たちは一丸となって戦ってた。誰か戦争のしたい人たちに扇動されてたけど、それでも一丸となってた。皆、戦争を身近に感じて、恐れていた。

なのに今はどうだろう。海では戦争しているのに、陸はまるで戦争が無いみたいだ。

 

(きっと戦争を感じると途端に国のせい、軍のせい、鈴谷たちのせい、提督のせいにされるんだろうな......)

 

そう、最期に責任を取るのは多分、この戦争で一番知られている責任者。......提督。

 

(自分たちが戦争してる事を知る必要があるんじゃないかな?)

 

鈴谷はそう思う。

別に羨ましいとかそういうんじゃないけど、無責任だと思う。戦争を丸投げして、自分たちの身を自分では守らずに守ってくれる『人』たちに当たる。資源、金、狂言......。

 

「あぁーーっ!!!もうっ!!!!」

 

床に叩き付けた拳がジンジンと痛む。

鈴谷は知らないけど、鈴谷が進水するまでは酷かったって聞いたよ。それで今の状況にみんなが満足してるみたい......。

そんなみんなも『人間たち』と同じ。調べるまで鈴谷もそっちだったけどね......知らなかった頃の鈴谷も同じ。

 

(何より、提督だよ。あんまりだよ......。)

 

そう。今、鈴谷が一番怒ってるのは提督の事を誰も考えてない事。

人間たちは寄って集って悪口合戦だし、艦娘たちはこの『システム』に気付いていない事。前者は仕方ないと思う。教えても理解できる人は少ないだろうね。だけど、鈴谷たち艦娘は違うじゃん。身近に提督が居て、どういう経緯で提督としてこの鎮守府に居てくれてるのか......。いつも皆に付き合って遊んだり、話したりしてる提督は本当は苦しんでて、辛い思いをしてる。それに気付いてない。普通に気付いたら分かる事。

 

(いつになったら気付くんだろう。皆......。)

 

笑い声が廊下から聞こえてくる。

 

『司令官が褒めてくれたっ!』

 

『昨日、一緒に遊んだんだー!!』

 

『提督がさっき新しい艦載機を下さいました!』

 

司令官、司令官、司令、司令、提督、提督......。誰も気づいてないじゃん。

 

「はははっ......誰も気づいてないじゃん。」

 

起き上がって、纏めたファイルを保存して電源を切って箱を被せる。念のためにこうしてる。誰かがもし入ってきてもいいようにね。

そう言えば今日の朝方にここに来たら赤城さんが出てきたっけ。何か考えながら出てきたけど、赤城さんが遠く行ってから入ってみたけど何もされてなかったみたいだからいいけどさ。

入っていくのも見ていたけど、ここをピンポイントで入ったんだよね。もしかして、鈴谷がここに通ってることを知られちゃったかな......。

でも、分からなかったようだからいいけどね。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

鈴谷は一刻も早く戦争を終わらせることを目標にしてるけど、どこまで行けば終戦なのか分からないんだよね。地球上の深海棲艦を殲滅したらなのか、太平洋を制圧したらなのか分からない。だけど確実に言える事は、太平洋制圧したら一応終わりな気がするんだよね。といっても出撃する場所にはインド洋とかあるんだけどね。それも含めての制圧だろうけどさ。

 

(大まかな奪回海域予定は『鎮守府海域』と『南西諸島海域』、『北方海域』、『西方海域』、『南方海域』、『中部海域』ってあるから多分全部終われば終戦なんだろうねぇ。)

 

そうだろうなって思った事。

それ以外にはいきなり現れるのを倒すっての以外は無いからね。ちなみに制圧が終わっているのは『鎮守府海域』と『南西諸島海域』かな。『北方海域』と『西方海域』はかなり終わってて、残すのは『南方海域』と『中部海域』。

1/3が終わってるんだよね。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

鈴谷は用事でいつも居座っている部屋から出てある場所に入り口がある地下に入ってるよ。

鎮守府には使われてない地下牢みたいなのが点在してて、今鈴谷がいるのは鎮守府の西に入り口があるところ。東のは警備棟がその上に立ってるからね。

ここには溜めた資源が積まれてるんだよね。もうかなり埋めちゃってるんだけど。

 

「ふんふふーん~♪」

 

溜まった資材を眺めながら歩いていると視界の端にちょろちょろと妖精さんたちが見える。ここの妖精さんは鈴谷の艤装の妖精さんたちだけど、こうやって出撃しないときはここの管理をして貰ってるんだよね。

そう言えばどうやって資材を溜めてるかだけど、鈴谷は出撃しないから資源は溜めらんないんだ。だからどうやってるかっていうと......。

 

「鈴谷。」

 

「おっ、イムヤ。ちぃーす。」

 

そう、伊-168ことイムヤがやってます。潜水艦だから出撃しても分からないし、そもそも提督が潜水艦を起用しないからね。

潜水艦の用途と言ったら『デコイ』、『資源回収』とかしかないらしい。よく分からないけど。それをイムヤに頼むのが嫌らしく、イムヤは出撃を数回経験してるだけだったのを鈴谷が引き入れたんだ。

今イムヤは資源回収の為に勝手に出撃してるけど、酷使はしてないんだ。ほどほどに出て、資材を満載して帰ってきて、休む。行く場所はいろんなところ。実を言うと、鈴谷もどこに行ってるのか分からないんだ。でもイムヤは鈴谷がやろうとしてることを理解してくれてる。

 

「使わないから凄い事になってるけど、どうしよっか?」

 

「あぁ......開発資材と高速建造材ね。」

 

そうこの地下は提督がこしらえさせた地下のシェルターにつながるところがあって、そこには入渠場があるんだ。

 

でも備えてるだけで実際使われる事はイレギュラーが起きない限り滅多にないから、イムヤが修理とかに使ってるけどどうしても開発資材と高速建造材は使えないんよ。

建造する訳でもなければ工廠も無い。使う場面が無いんだ。

 

「うーん......どうしようね。」

 

これが今鈴谷が抱えている問題。『資材問題』である。

 

「開発すれば提督のところに連絡は行くし、高速建造材なんて使い道が建造しかないじゃん......。」

 

最近はあえて高速建造材は持って帰ってこない様にしてるらしいけど、現状でかなりの数があるから困っているんだよね。

 

「そうだけど、使わないならどうするの?」

 

「そうなんだよねぇ......捨てるのももったいないし......。」

 

そうやってイムヤと考えた末の結論は、イムヤが資源回収で回る時に高速建造材を置いてくるってことになりました。

よく分からない状況だけど、こうすれば数を減らすことができる。

 

「開発資材はどうにか誤魔化しながら使う?」

 

「そうね,,,,,,誤魔化しながらね。」

 

結局、開発資材の使い方の回答はでなかった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

今日も部屋に籠って提督の様子を見て、今は執務室に居ます。

3時くらいまでここで待機して寝に帰ってるんだけど、この3時まではぼけーっと月明りを眺めてるんだよね。

何が起こるって訳じゃないし、だたの待機だけどさ。

 

(今日は割と見えるんだね。)

 

空を照らす月明りは海と地面を照らしてるけど、この光景は毎日少しずつ変化するから面白いんだ。

そんなことをしてると3時になった。

 

「鈴谷、交代よ。」

 

そう、この時間になるとイムヤと交代して鈴谷は寝るんだ。イムヤはというと消灯時間になったら寝て3時に交代して、提督がごそごそし始めたら私室に帰るっていうのをやってる。寝首をかかれない様にっていうのだけどね。

 

「おやすみぃ。」

 

「はいはい。」

 

鈴谷は足音を立てないように執務室を出て、靴を脱ぎます。

こうすれば足音を立てない様に廊下を歩くことができるんだよね。何故か知らないけど執務室前の廊下は普通に歩くと足音がしちゃうんだよね。靴脱げばしないけど。

 

(鈴谷は夜型なんですってこういう訳なんよ。)

 

誰にいう訳でもなくそう心の中でつぶやきながら私室に戻って鈴谷は寝に行きます。

 





鈴谷に仲間が居ないと誰が言ったか......はははっ(ゲス顔)
イムヤが仲間ならどうして出撃せずに部屋に籠ってる鈴谷が資源を多く持ってるかっていう理由に繋がるんですよね。
そして鈴谷は気付いてないと思うけどちゃっかりシステム外行動してるんですよね。鈴谷がっていうかイムヤがですけど。
さて、どうなってしまうのやら。

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