【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百五話  障害と赤城の決断と真実

 

俺たちがイレギュラーをどれだけ回避するかを画策し始めて数週間が経った。

やっとの事で霧島の案の結果が出たのだ。結果は......効果あり。但し、あからさまなものだと深海棲艦側に増援が現れる事があったらしい。なので支隊として出る遠征艦隊にはそれなりの手練れで無いといけないという条件が加わった。

そして、白衣の妖精に頼んでいた試製景雲(艦戦型)と桜花の改装が終わり、実機が工廠に2機ずつ置いてあるとの事だった。そして俺の目の前には銀色の髪の少女が立っている。片手には大きなボストンバッグ?みたいなものを持って俺の前で固まっていた。

 

「おーい。......駄目だこりゃ。」

 

俺の顔を見るなり固まったこの少女は秋津洲。ドイツ艦勢が移る前に居た司令部の艦娘だ。大本営の新瑞に手紙を出したら二つ返事だったのはこの際伏せておこう。内容は大体わかるからな。

 

「司令。秋津洲さん、運んでおきますね。」

 

そう言って俺と共にいた霧島が連れて行った。

こんなんでは先が思いやられる。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

先行して二式大艇はこちらに送られてきていたので工廠の方で改装がなされていた。二式大艇の背中に載せる事になった桜花は、機首に40mm機関砲を装備していて、どうやら切り離しの時に尾翼に当たるらしく、二式大艇が上昇中でないと切り離せないというハンデが付いた様だったが、運用できないよりましだと思い、俺はそのまま試作機を作って貰った。

 

「い、いきなり実戦かも?!」

 

俺を見るなり気絶(だったらしい)していた秋津洲は俺から伝えられた事にそう反応した。まぁ、無理もない。何週間か前に龍驤も同じ反応をしていたから。

 

「そうだな。だが、鎮守府正面海域だ。接敵するのは弱った小型艦だ。」

 

「分かったかも。......それにしても大艇ちゃんの背中になにやら白いのが乗ってるけど、なに?」

 

そう訊いてきた秋津洲に赤城が答えた。

 

「桜花四三乙型改、特殊戦闘機です。」

 

「それってなにかも?」

 

「私たち艦娘が今のところ操れる唯一の噴進機構搭載戦闘機です。」

 

そう言うと秋津洲は自分の艤装に担架されている二式大艇に走って、背中に乗っている桜花を見上げた。

 

「艦載機?なら赤城さんとかが使えばいいんじゃ?」

 

「私たちでは使えないんです。二式大艇にのみ搭載ができるので、いわば秋津洲さん専用戦闘機ですね。」

 

そう言ったのを訊いた秋津洲は目を輝かせた。

 

「ホントかもっ!?あたしっ、前いたところでは役立たずでいつも海辺に居たの......。役に立てるって聞いて飛んできたけど、こんな風だなんて思ってなかったかもっ!!」

 

秋津洲はピョンピョン跳ねて喜んでいるが、さらっと自分で自虐してたな。

 

「それで、この白いのはどうやって使えばいいかも?」

 

そう訊いてきた秋津洲に霧島が説明した。

 

「二式大艇を哨戒に出し、上空で切り離すだけです。そうすれば桜花に搭乗している妖精が対空・対艦戦闘を始めます。但し、飛ばせるのは1回だけです。飛ばした後は艦隊の空母に桜花が着艦しますので、切り離すタイミングを見極めて下さいね。」

 

霧島が説明したのを訊いた秋津洲は艤装に入っていき、出撃するといって艦隊を引き連れて埠頭から離れて行った。

ちなみに編成は旗艦:秋津洲、熊野、高雄、五十鈴、吹雪、加賀だ。

出撃して沖に出るのを見届けてから戻ろうと思っていたが、何やら艦隊が反転して戻ってきてしまった。

 

「えっ?なに。」

 

俺は戸惑い、埠頭に接岸した秋津洲の方に走り寄ってみると、しょんぼりした秋津洲が艦橋から出てきた。

 

「どうした?」

 

そう言うと秋津洲は目を潤ませながらにわかに信じがたい事を言った。

 

「沖に出れない......。沖に出ようとしたら機関停止しちゃって、後退が出来たから戻ってきたかも......。」

 

そう秋津洲が言うのを訊いていた霧島は何かに気付いたのか、走って本部棟に行き、誰かを連れて戻ってきた。連れてきたのはプリンツだった。

 

「えっ?なにっ?!」

 

そう戸惑っているプリンツに霧島は言った。

 

「プリンツさん、今すぐ艤装を出して沖に出てくれませんか?」

 

「えっ......はっ、はい。」

 

プリンツは霧島の言葉に戸惑いながら、艤装を埠頭に出して、沖に出て行った。だが、秋津洲と同じところで止まってから戻ってきた。

 

「沖に出られない......です。」

 

そう言ったプリンツの言葉に満足したのか、霧島は説明をした。

 

「どうやらここの工廠で建造されたか、ここの艦娘に拾われないと出れない様ですね。秋津洲さん、プリンツさん。前いた司令部では海に出れましたよね?」

 

そう訊いた霧島に秋津洲とプリンツは頷いた。

 

「つまり、『移籍』というのはここに在籍しているだけで戦闘行動は出来ないんですね。」

 

そう言って霧島は溜息を吐いた。

 

「振り出しです......司令。」

 

俺はそう言った霧島に分かったとだけ言うと、半泣きの秋津洲に俺は言った。

 

「秋津洲。」

 

「うぅ~......なにかも......?」

 

「秋津洲の艤装はまだ工廠で建造できないから、どこかの海域で拾ってくるしかない。それまで待っててくれるか?」

 

「......うんっ。」

 

秋津洲は袖で涙を拭きながら応えてくれた。しんみりした空気が流れるこの場所で霧島は言った。

 

「ですけど、沖に出なければいいので沖までの哨戒任務とかは出来ますよ?それに大艇は航続距離が長く、それに桜花も積んでます。それだけでも役に立てるはずです。」

 

「それを先に言えっ!」

 

俺は渾身の突っ込みを入れたところで、正して秋津洲に言った。

 

「艤装が発見されるまで、鎮守府を守る目となるのは秋津洲だ。頼んだぞ?」

 

「分かったかもっ!......じゃなかった、分かった!!」

 

秋津洲は飛び切りの笑顔をしてくれた。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

私は昨日の夜、ある決断をしました。

正月のあの時、提督の事が心配で私室に入った私が見た提督の弱々しい姿、それを見て私は酷く落ち込みました。これまでの5ヵ月間、提督がいらっしゃることを喜び、提督に褒められるように色々な作戦や任務をしてきました。ですが、正月に見てしまったのです。

ただ私は私の理想や願い、希望を叶えて貰っているだけで、提督を追い込んでいるだけでした......。ならせめて、提督をこの戦争からより早く解放し、戦後も帰る事が出来ない提督の為に手を尽くすべきだと......。

なら何をするべきか?一、艦娘がやれることなんて限られてます。現状、できる事を進めておくべきだと考えましょう。

 

日本皇国の経済は艦娘の資源回収によって回っているところが大きいと聞きました。ですので、資金集めの為に資源を調達しましょうか。ですけど、鎮守府の資源保管庫からくすねるのはいけませんので、自分で集めてこなくてはなりません。ですけど、私は資源回収に適していないので、どうしましょうか......。資源回収が出来たとして、どこに保管するかも問題です。私の私室は加賀さんも居ますし、鎮守府内に何か......。

 

(確か吹雪さんが鎮守府の見取り図を持っているとか......。それに金剛さんも独自で鎮守府の地図を持ってますね。)

 

適当に歩き回って保管場所を探すのも野暮ですから、適当に理由を付けて地図を見せてもらうことにしました。

 

「赤城さん?どうしたんですか?」

 

私は思い立ってすぐに吹雪さんが居ると思われる私室に足を運んでいました。出迎えてくれたのは吹雪さんの姉妹艦の白雪さんです。

 

「吹雪さんに用がありまして、いらっしゃいますか?」

 

「もう直ぐ帰ってきますよ。お部屋でお待ちになって下さい。」

 

「はい。ではお邪魔しますね。」

 

私は白雪さんに部屋にあげてもらい、待つことにしました。部屋は広く、どうやら吹雪型駆逐艦全員で共同の様でかなり広いです。

そうこうしているうちに吹雪さんが帰ってきました。

 

「ただいまー!って赤城さんっ!?」

 

何やら袋を下げているので酒保にでも行っていたんでしょう。

 

「吹雪さん、頼み事があります。」

 

そう私が言うと吹雪さんは私が座っている正面に座ってくれました。

 

「頼み事って何ですか?」

 

「鎮守府の見取り図、施設や部屋とかが確認できるファイルを貸してほしいのです。」

 

そう言うと吹雪さんは快く貸してくださいました。返すのは何時でもいいということだったので、私は持って部屋を出て私室に戻りました。私室にはてっきり加賀さんがいると思ってましたが、置手紙で『酒保に行ってきます。』とあったので当分帰ってこないでしょう。私としては好都合です。自分の机に行き、ファイルを広げて隠すのにいい場所を探し始めました。資源を回収するにあたって、回収された資源は全てドラム缶に入れられます。そしてそれは艤装の空きスペースに置かれるのです。帰ってきた時に埠頭に接岸するので、埠頭近くがいいでしょう。収めるのに丁度いいです。案外早く見つかるもので、一度空襲に遭って全て焼け落ちた鎮守府の建造物ですが、妖精さんが図面通りに建て替えたので元々空いていた建物やなんかも全て元通りになっていました。

埠頭近くの林のところに小屋があったのでそこに資源を隠す事にしましょう。

 

次はどう調達するかですが、これはもう出撃した時にときたま立ち寄る放棄された製油所やらで採れる資源を持ってくるしかありませんね。

その際にどう仲間にバレないようにするかですが......彼方此方でドラム缶に入れれるので問題ないと考えました。

 

そして誰かとパイプを繋げておくことですかね。繋げるならばそれなりの地位にいる人間ですが、生憎民間人の方々には蔑んだ感じはしませんが、軍人となると話は別です。特に艦娘について知っている人間となると、『兵器』だ『深海棲艦』だとうるさいのでそう言うことを言わない人間......。鎮守府で働いている人間か、大本営に務めている新瑞さんか総督。総督ならかなりの地位でパイプを繋げておくのに十分だと思いますが、総督です。協力して下さるか分かりません。ですが新瑞さんならどうにかなるかもしれません。

こっそり提督が提出する書類に手紙を混じらせておきましょう。

 

考えついた事は一通りやりましたが、上手く行くか分かりません。ですけど、提督の為です。これからは忙しくなりそうですね。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

鈴谷は近衛艦隊で金剛さん並みにヤバい奴とか言われてるみたいだけど、失礼しちゃうなぁ。

確かに提督の危険には敏感だし、一刻も早く駆けつける為にいろんな技を身に着けたけど、そんな簡単に人を殺めたりしないって。だけどさ、提督が本当に危険なら殺す事も厭わないよ?だって、提督が本当に危険の時ってもう既に手遅れじゃん?

というかこんなことをするつもりじゃなかったんだったー。

遂に鈴谷しか気づいてない事に気付いた人が現れましたっ!!

何時もなら提督の居る執務室が見える範囲に居るけど、今は違うよ。鈴谷のレーダーに異常な反応捉えたからその反応源を追ってるんですっ!!どうやら埠頭近くの林に入って行ったけど、その先って何もないんじゃないの?確か小屋があったような気もしなくもない......。戻ってきた反応源は提督の執務室に入っていって便箋と封筒を持って私室に入って行っちゃった。あちゃー......。

 

 

 

 

 

鈴谷と同じことをしてるよ。

 

 

 

 

 

どうしたもんかねぇ......。こっちから近づいて話を持ち掛けてもいいけどさぁ、こっちは既にかなり手回し終わってんだよねぇ。資金も潤ってるし、人間とのパイプもね。

戦闘に関しても抜かりないよ!夜中に勝手に砲撃練習したり、いろんなものを応用したりして戦闘にも強くなってるけどさぁ......。艤装の妖精さんには口回ししてあらゆるところを改造済みなんですよっ!!にひひー。鈴谷だけで複数相手できるよっ!戦争を早く終わらせるためには深海棲艦を殲滅するほかないじゃん?和解も一瞬考えたけど、あんまり戦闘に出して貰えないから深海棲艦と鉢合う機会が無いんだよねぇ......。噂では航空巡洋艦に改装ができる最上型は優先レベリングらしいけど、実際分からないしねぇ~。

 

 

 





これはもうノーコメントです。
感想の考察でも結構前に出てましたが、鈴谷が何をやっているのか......。実はこんなことをしていたんですね(白目)
赤城も行動に移しましたが、遥かに整っているのは鈴谷の方ですのでどうなることやら......。

そして秋津洲、不憫。

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