【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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第百四話  試験運用

霧島との意見交換から翌日。早速俺は動こうとしていた。最初は、梯形陣の応用。俺が考えたものだ。これは急遽、練度上げの為にキス島の残敵漸減に向かわせる艦隊に使ってもらう事にした。編成は旗艦:龍驤、陸奥、愛宕、夕張、磯波、加賀。ちなみに今日の建造(※雪風に頼むのを忘れていた)で建造されたばかりでいきなり出撃する龍驤は結構緊張している様だ。そして、俺を見て何も驚かなかったのは逆に俺が驚いた。

 

「キミィ、建造早々に出撃ってどないせえっちゅうねん。」

 

そう突っかかってくる龍驤の後ろに居るメンバーは苦笑いをしている。どうやら龍驤に同意というか、同情している様だ。それに俺の作戦を伝えたので悪いタイミングだったとでも思っているのだろうか。

 

「すまんな。てことで、行ってこい。」

 

そう言って俺は陸奥と愛宕に目配せすると、2人は龍驤を両脇に抱えて出て行った。

 

「帰ってきたら覚えときぃー!!」

 

遠くで龍驤の声が聞こえるがシカトしておいた。

龍驤たちを見送った俺は手元にある書類を見ている。

これは昨日、執務後に赤城と調べていた局地戦闘機で、現状戦力の補強として使えそうなものの資料だ。

 

「さて提督、工廠に行きましょうか。」

 

そう言って立ち上がったのは赤城。昨日から数日間、霧島との意見交換で出た事を終わらせるまで秘書艦を頼んでいる。霧島も昼以降は執務室に入り浸ることになっている。

 

「あぁ。」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

俺と赤城で調べた結果、既存の試製景雲(艦偵型)は改装できる様で、機首に30mm機関砲を4門搭載できる様だ。

そして、新たに開発できないかと考えたのは『一七試局地戦闘機 閃電』だ。震電と並行して開発されていた局地戦闘機だが、震電の開発の目途が立ったので廃棄された戦闘機だ。これを着艦フックなどの改装を施し、震電と混成の高高度迎撃機として運用する。爆装も可能らしいので、零式艦戦62型(爆戦)と同様の戦闘ができるのではないかと考えた。

それぞれを『試製景雲(艦戦型)』と『閃電改』と呼ぶ。開発できればの話だが。

 

「う~ん......。」

 

そう言って俺の渡した書類と睨めっこをしているのは白衣の妖精だ。

 

「出来ないか?」

 

そう訊くと白衣の妖精は答えてくれた。

 

「試製景雲を改装できますが、閃電は......。」

 

そう言って首を捻った。

 

「艦戦型は30mm機関砲だが。」

 

「分かってますよ。艦偵型には武装がついてませんので、30mm五式機関砲でしたっけ?」

 

「多分。」

 

そう言うと白衣の妖精は近くの妖精を呼び、何かを話すと話し出した。

 

「機関砲は機首配置になりますので回転同調機なんかを発動機につけなければいけないので、少し手間がかかりますが出来ます。」

 

今度は俺が渡した書類の閃電を指差した。

 

「閃電に関しては図面が無く、外装だけですので出来たとしてもかなりの時間を使ってしまいます。見たところ震電改と同じ構造のところがあるので、こちらで震電改を解析することで開発は可能かもしれませんが......。」

 

白衣の妖精はどもってしまった。

 

「が?」

 

俺が訊き返すと、言いにくそうに妖精は答えた。

 

「型番見てる限り震電改の下位互換ではありませんか?震電改の元となった震電と同時並行で開発を行われていた見たいですが、震電の将来性などの目途が付いたから計画が破棄されたものですね。」

 

そう白衣の妖精は言ってはいるが、スペックを確認した。

 

「......私的には閃電の必要性を感じませんが。」

 

「そうか......分かった。手を煩わせても仕方ない。試製景雲の方は頼んだ。」

 

そう言い残して工廠を出ようとしたら白衣の妖精に引き留められた。

 

「待ってください、提督。」

 

そう言って止めてきた。

 

「何だ?」

 

そう訊くと白衣の妖精は俺の肩によじ登り、あの場所へ行くように言った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

工廠の奥。これまでに様々な装備を見てきたところだが、そこにはやはり布が被せてあるものがあった。

だがこれまでに見た中で一番小さいサイズ。大人3人が川の字に寝たくらいの大きさだ。

 

「これが今朝開発されたんです。」

 

そう言って白衣の妖精が布を皮下剥がすとそこから現れたのは白いボディにプロペラのない飛行機。

 

「調べたところ爆弾を搭載していない桜花です。」

 

そう言った白衣の妖精を手で捕まえて俺は言った。

 

「特殊攻撃機なぞ使わないぞ。」

 

凄んで言ったが妖精は怯まずに続けた。

 

「この桜花は違います。爆弾を搭載していないんです。そして機体底部にはそりがあります。」

 

そう言って下ろしてほしいと訴えた白衣の妖精を下すと、桜花に走り寄り、機体の後部下を指差した。

 

「ここに着艦用のと思われるフックがあるんです。......これを鑑みるとこの桜花は存在しえない『特殊戦闘機』だと考えていいんじゃないでしょうか?」

 

さらに白衣の妖精は桜花の後ろにある違うものを見せてきた。それは何やらレールの様なもののようだ。

 

「これは火薬式カタパルトです。艦娘の艤装にある水上機発艦装置ですね。ですがこれでは零式水偵や瑞雲なんかは発艦できません。」

 

白い妖精はカタパルトをポンと叩いて行った。

 

「これは桜花専用の発艦カタパルトです。どうやらこの桜花は陸上から射出できるように開発された『桜花四三乙型』の改装モデルです。」

 

そう言うと白衣の妖精は腕を組んだ。

 

「つまり桜花の爆弾が搭載されていた空白のスペースに大口径機関砲を装備させ、戦艦か巡洋艦からカタパルトで射出。攻撃を行い、空母に着艦すればいいんです。」

 

「大口径機関砲って?」

 

「そうですね......興味で調べたところ当時陸軍の『二式単座戦闘機二型乙』に使われていた航空機関砲『ホ301』というのが40mmだったようなので、それを作ります。これならば当たり所によっては戦闘不能にできますよ?」

 

俺は白衣の妖精が言ったことを考えたがもっと確実なのを思いついた。

 

「待て。確か装備品に毘式40mm連装機銃があったな。」

 

そう言うと赤城は唸りだした。秘書艦で良くいるから分かっているんだろうが、思い出している様だ。

 

「提督、ありますよ。毘式40mm連装機銃。」

 

そう言って赤城が教えてくれたので、白衣の妖精に提案した。

 

「毘式、つまりヴィッカースのライセンス品だな。あれは日本のホ301の資料が少ない状況よりも確実に手に入るぞ。」

 

「そうですね......では、かかります。」

 

白衣の妖精は俺の渡した書類の空きスペースにメモを取ると、走って行ってしまった。これから始めるようなので、俺と赤城は邪魔になるだろうと思い工廠を出て行った。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

帰る途中、霧島と鉢合わせたので今日工廠で見た桜花について話した。霧島はロケットモーターで飛ぶ桜花に不信感を抱いた様でそれの運用法を訊いてきたが、あくまで艦載機だと告げた。

 

「多分それなら大丈夫でしょうけど......桜花ですか。」

 

そう言って霧島はメガネを上げた。

 

「特殊攻撃機ならぬ特殊戦闘機。40mm連装機関砲を元に通常の機関砲を取り付けて戦闘機として運用する、と......。これはイレギュラーとして反映されますかね?」

 

そういう話をしていると、横を通りかかった鳳翔が立ち止って俺たちに話しかけてきた。

 

「桜花がどうかしたんですか?」

 

そう聞いてくる鳳翔に俺は新たに桜花が工廠で開発されたと言うと驚いていた。それは無理もない。鳳翔の中では桜花は特殊攻撃機だからだろう。俺はそれを分かっていたのでわざわざ後に特殊戦闘機としてん分類になると言うと『そうですか。』と安心した様で俺にある事を教えてくれた。

 

「桜花と言えば一式陸攻のお腹から切り離されてから飛んだと聞いてます。この鎮守府にはその一式陸攻の仕事をできる飛行機がもう無いようですが、どうするんですか?」

 

そう言った鳳翔の言葉に霧島は驚き、俺の方を向いた。

 

「司令っ!これは使えるかもしれませんよっ!!」

 

そう言って興奮気味に霧島は説明を始めた。

 

「赤城さんらや私たちに装備できる艦載機には数多の種類がありますが、イレギュラーとして艦載機の改造は反映されないんですよ!!つまり、大型艦載機が桜花を抱えて飛べば相手には大型艦載機しか現れずにこちらには確実な攻撃ができる特殊戦闘機が手に入る訳です!」

 

そう言っている霧島の脇で赤城も何かを思い出したようだ。

 

「霧島さんっ!そんなことしなくていいですっ!」

 

そう言って赤城は説明をした。

 

「イレギュラーにすら引っかからないものがあるじゃないですかっ!!」

 

「何かありましたか?」

 

「ユーさんが装備していたWG42ですよ!あれは噴進弾発射機ですからアレを弄ったら噴進弾の代わりに桜花が飛ばせるかもしれません!!」

 

そう言った赤城を俺は一蹴した。

 

「アレを弄って桜花を飛ばせるようにしたらもう原型を保ててないぞ。新規装備になってしまう。」

 

そんなことを議論していると鳳翔が手を挙げた。

 

「あの~。」

 

「何だ?」

 

「二式大艇ではダメなんでしょうか?」

 

「「「それだっ!!」」」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

その場で鳳翔の案で決まり、二式大艇を装備できる艦娘を探した。そうすると案外簡単に出てくるもので......。

 

「秋津洲ですか?」

 

そう赤城は名前を訊いて首を傾げた。

 

「何だ、赤城。不満なのか?」

 

「いえ。彼女......演習で見かけたことありますが戦闘は出来ませんし二式大艇を飛ばす以外に何かできるという訳では無いんですよね。」

 

そう言うので俺は言った。

 

「必要ない艦娘等居ない。秋津洲だって艦娘だ。」

 

そう言って俺は紙を出して書き始めた。宛ては新瑞。以前のドイツ艦勢の様にこちらに移籍を願っている秋津洲を引き取りたいという書類を書いた。多分、資源回収艦隊の方にいるはずだから確実にこちらに来てもらえるかもしれない。そう考えたからだ。

 

「それにここに来れば特殊戦闘機搭載機の母艦として十分に働ける。赤城の話を聞く限り、秋津洲のイメージは『ごく潰し』酷く言えば『役立たず』みたいな言い方だが、こちらに来ればそんなレッテル吹き飛ぶ。」

 

「そう......ですね。」

 

俺は話しながら書き終えて封筒に入れて赤城に渡した。

これで桜花をイレギュラーとしてあちら側に出さない方法を取る手段で使える手筈が整った。

背伸びをして赤城が事務棟に向かうのを見届けると、俺は欠伸をした。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

日が傾きかけた時、執務室に龍驤たちが入ってきた。どうやら帰ってきたみたいだ。

 

「邪魔するでー。」

 

「邪魔するなら出てってくれ。」

 

「ほいなー。」

 

俺は適当に乗ってみた。

 

「ってぇ、アホかっ!報告や。......キミィが提案した戦術、使えたで。」

 

そう言って龍驤は執務室の窓に俺を呼んで埠頭を指差した。

 

「見えるやろ?ウチらの艤装。傷一つあらへん。あっちさんは砲撃してきてもちゃんと照準出来んくて良く夾叉やったわ。ありゃ使えるんとちゃう?」

 

どうやら上々だったらしい。

 

「良かった。じゃあ以降の戦闘では応用しよう。」

 

そう俺が言うと霧島が俺の前に立った。

 

「次は私の提案したのを使いましょう。」

 

「あぁ......。だが試験だから正面海域での試験のみとする。」

 

「はい。」

 

次の日には霧島の本隊と遠征艦隊を使った実質戦力増強の攻略を試したところ、使う事が出来た。だが、イレギュラーとしてこちらに分かるのはまだ先になるのでそれまで待つこととなった。

 




唐突に龍驤建造です。おめでたいというかなんというかって感じですね。
結構ビックリしましたけど......。これで旧一航戦は揃いました。育成が大変になりますね(汗)

それと今回から登場するのは本編にもありますが、桜花が増えます。あと近日中に秋津洲が移籍してきますね。流れ的に。

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