【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話   作:しゅーがく

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前回から3日後になりました。
書置きなんですよね......。予約投稿しておけばよかった......。


第十一話  提督の挨拶回り④ 重巡洋艦編

軽巡の艦娘とも一通り話したところ、皆が阿武隈の進水を待っている様だった。どうやら、形式に象った水雷戦隊を編成したいそうな。

俺はそんな事を考えながら行き着いた先は重巡の艦娘が集まる場所。軽巡や駆逐よりも落ち着いている。

俺と金剛がすっと近づき、声を掛けようとした時、一番最初に気が付いたのは青葉だった。

 

「司令官!どうしました?」

 

青葉はポニーテールを揺らしながら来たが、その姿に違和感を覚えていた。俺のイメージではゴシップ記事を書くためにずっとカメラを持ち歩いているイメージだったが、何も持ってない様だった。

 

「いやなんだ、金剛と挨拶で回ってるだけだ。」

 

「そうですか。青葉もできれば司令官の歓迎会の時に色々インタビュー、お話したかったのですが色々ありまして......。」

 

そう言うと、いつの間にか青葉の横に来ていた衣笠がウンウンと大きく首を縦に振った。

 

「提督の歓迎会では提督の周りに常に第一艦隊が居たから近づきにくかったんだよねー?青葉。」

 

「そうですよー!あれ、どうにかならないんですか?」

 

青葉と衣笠はそう言って今、第一艦隊のメンバーが居るところを指差した。先ほど軽巡や駆逐の艦娘のところに居た時に見た時とあまり様子は変わってなかった。

 

「俺もできれば自由にしてたいけど......。」

 

「司令官?」

 

「あいつ等ずっと誰かは俺の近くに居るんだ。」

 

そう言うと青葉は手を打ち、人差し指を立てた。

 

「成程!付き人、みたいな!?」

 

「それだな。」

 

俺と青葉がそんな会話をしていると、金剛が入ってきた。

 

「それは私も同感ネー。進水の挨拶に行った時も、昼に行った時も長門が居たデース。」

 

「そりゃ秘書艦だからな。」

 

そう言うと金剛は頬を膨らませた。

 

「長門が出撃してる時はどうしてるデース?」

 

「大体赤城が居る。」

 

「オゥ......。全く予想通りデス......。」

 

そう言うと金剛は頭を抱えた。

 

「ちょっとー、衣笠さんをほっておかないでー。」

 

と俺と金剛の会話に入ってきた衣笠は少し不貞腐れていた。

 

「大体提督は第一艦隊が近くに居て近づきにくいし、すぐ金剛さんと話弾んじゃうし、衣笠さんともお話してよ!」

 

俺はそう言われ、ちょうど途切れていた金剛との会話を切った。そしてすぐに衣笠に向く。

 

「んで、衣笠。なんかあるのか?」

 

「うん。」

 

そう言うと衣笠はこれまで俺が聞かれなかった事を聞いてきた。その質問は辺りを一瞬で静かにさせる程の威力。艦娘全員がこちらに耳を傾ける内容だった。

 

「提督って、何歳?」

 

それを衣笠が口にした瞬間、青葉はどこからかメモ帳とペンを取り出して書く準備をしていた。

 

「あれ?言ってなかったっけ。」

 

「言ってませんよー。これは提督七不思議ですからねー。」

 

そう言う青葉はワキワキしている。

 

「勿体ぶってないでちゃっちゃと言いなさいよー。提督ー。」

 

そう言って茶々を入れたのは足柄だった。

 

「あー。俺は18だ。」

 

「「「えぇー!!!」」」

 

金剛、青葉、衣笠の驚きの声に混じって周りの艦娘から絶叫が轟いた。それ程の驚きだっただろうか。

 

「何だよ。」

 

俺がそう言うと、金剛は口をパクパクさせながら言った。

 

「わっ、私の方が年上デス......。」

 

「はっ?」

 

俺は一人で驚いた。てっきり同い年くらいだと思っていたからだ。というか艦娘に年齢があったこと自体驚きだった。

俺は恐る恐る聞いてみる事にした。

 

「なぁ金剛......。金剛は何歳なんだ?」

 

そう言うと金剛はニコッと笑って言った。

 

「今年で103になりマース。」

 

「どぅぅえぇぇぇぇ!?」

 

と一人で俺は驚いた。こんな若いのに103歳......。艦娘恐ろしい。

と一人で先ほどの金剛の様に口をパクパクしていると、すぐに金剛は訂正をした。

 

「と言うのは冗談デー、この身体で言えば19になりマス!」

 

そう言うとぬっと現れた大淀が説明を始めた。

 

「艦娘には年齢がありません。ですので、人間が身体的に見た年齢を与えたんです。駆逐艦は例外を除いて大体13~16。軽巡は15~18。重巡は16~19。戦艦は19~21。空母は14~20です。」

 

俺は開いた口が塞がらなかった。色々とあるとは思っていたが、この様だとはうっすら感づいてはいた。

 

「そうなのか。まぁ、俺的には関係無いがな。」

 

「関係無いんですか。まぁ、司令官ならそう言うと思ってましたが。」

 

青葉はそう言うと衣笠の腕を掴んで、続きはまた今度でと言って席に戻ってしまった。そして青葉と衣笠の後ろに居た高雄型姉妹が俺に話しかけてきた。

 

「提督、提督の歓迎会では話しかけ辛かったので遅れて申し訳ありませんが、ご挨拶に。私は高雄型重巡 高雄です。それと姉妹の愛宕、摩耶、鳥海です。」

 

「おう。俺も話しかけに行きづらかったからこうして回ってるんだ。よろしく。」

 

高雄はイメージ通りの感じだった。規律というのが存在するかはさておき、礼儀正しい。そう感じさせた。

 

「と、挨拶を済ませておおもとは提督に色々と聞くためです。」

 

そう言った高雄は手を胸の前で組み、深呼吸をする。高雄はそんな深刻な事を聞くのかと俺は内心覚悟を決めた。

 

「私たち高雄型は戦艦の皆さんの交代要員として第一艦隊に編成される事があります。」

 

「そうだな。」

 

高雄が言い出したのは編成の事だった。俺はそれを聞いててっきり高雄は俺に金剛を進水させた今、どうしていくのかというのを訊きに来たのかと思った。だが、違った。

 

「一か月前、長門さんが提督を呼ぶ力を妖精さんから受け取ったと聞いた日。私たちは第一艦隊と交代で出撃した報告書を提出に執務室に来ていました。」

 

突然高雄は一か月も前の事。しかも俺が着任した日の事を話し出した。

 

「部屋をノックして手を扉に付けた時、聞こえたのです。『艦娘は非人道的に扱われているみたいだ。』と。」

 

どうやら着任した日の長門との会話を聴かれていた様だった。

 

「それを言ったのはその時は人間、つまり私たちに資源を渡し、戦争をさせている人間ではないのかと。ですが提督の歓迎会で分かったんです。あの時あれを言ったのは提督だったという事が。」

 

高雄がそう発すると、再び食堂は静まり返った。

 

「私も秘書艦を何度か経験しているので分かっていますが、提督。提督は自分の居た安全で平和な世界を捨ててまでもただそれだけの理由でこの世界に提督として留まったのではないかと。」

 

「......。」

 

俺は沈黙してしまった。確かに何度か高雄を秘書艦にした覚えはあった。それも結構前だ。

目の前の高雄が求める俺のこの世界で提督として生きる理由がそれだけではないのではないか、そう疑っているのだ。

 

「......提督。」

 

高雄は俺が思考を巡らせているところに水を差した。

 

「正面の門の人間の兵士。所属は陸軍憲兵です。ですが、今は提督の部下という事になってますよ?」

 

そう言って高雄は俺の元から離れていった。どうやら見透かされている様だった。それは高雄が言った言葉から見透かされてた事も察知させる様な言葉も含まれている。

どうやら、ソレが言いたかっただけみたいだった。

高雄がそう言って離れたのを見ていた愛宕や摩耶、鳥海は不思議そうな顔をしてその場を離れてしまった。だが、そんな様子なのはそこだけではなかった。俺と横の金剛の周りもそんな表情をしていたのだ。

 

「......ありがとう、高雄。」

 

俺は小さい声で高雄に礼を言った。たぶん誰にも聞こえては無いだろう。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

高雄と俺の作り出した雰囲気も若干和らいだ頃、茶のポニーテールを揺らしながら歩いてくる艦娘が居た。

 

「ごきげんよう。」

 

「あぁ。」

 

それは熊野だった。ウチに最初に配属された重巡。今は重巡の中で一番練度が高く、初期海域突破時の旗艦は長門と交代して務めて貰っていた。

 

「私は重巡、熊野ですわ。」

 

「うん知ってる。」

 

俺がそう答えると熊野は腰に手をやった。

 

「先ほどの高雄さんの話、聴かせていただきました。提督、提督が動くのなら私もお手伝いいたします。その時は声をかけて下さいな。」

 

熊野はそう言って去ってしまった。

どうやら熊野にも見透かされてしまっていたみたいだ。今日、初めてちゃんと面と向かって話したというのにだ。

 

「提督ぅ?」

 

金剛が小首を傾げてそう言った。どうやら、熊野の言った意味が判らなかったみたいだった。判らないのは当然だが、さっきからこればかりなので気になってしまってるのかもしれない。

 

「何でもないよ。......どうやらもう俺に話のあるのは居ないみたいだ。駆逐艦の方で執務室への出入りを俺が許可したのを聴いていたんだろうな。明日以降来るだろう。」

 

「そうデスネー。では次、行きまショウカ。」

 

そう言った金剛は椅子から立ち上がり、きょろきょろし始めた。

 

「どうした?」

 

「イエ、次は空母のところに行きませンカ?」

 

「いいぞ。」

 

どうやら空母の集まるところを探していたみたいだった。俺がそんな光景を見てると金剛は早速、見つけたようなので歩き出した。

それに付いていく俺は、前を歩く金剛の揺れるアホ毛に目が行っていた。何とも不思議だった。

 

(あのアホ毛はどうやって立ってるんだろう?)

 

空母の集まりのところに着くまでそればかり俺は考えていた。

 




建造開発共にうまくいかない今日この頃......。
嘆いても仕方ないですね。

続編は不定期になりそうです

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