【完結】 艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話 作:しゅーがく
文化祭(仮)が終わり、ドイツ艦勢が皆に溶け込んだ頃、俺は初めて大本営から送られてくる作戦に参加(※強制)することになった。
大本営から送られてきた書類に作戦名と大まかな内容が書かれていた。
作戦名『雷撃作戦』
横須賀鎮守府艦隊司令部傘下の機動部隊、水上打撃部隊が揚陸艦部隊を護衛して南進。台湾、リンガ、タウイタウイを経由してリランカ島に上陸。友好国ドイツとの貿易中継基地の設営をする。その際、横須賀鎮守府艦隊司令部司令官は作戦中、指揮下の部隊を柔軟に運用することを許可する。
ということだった。
俺はこの最後にかかれていた『横須賀鎮守府艦隊司令部司令官は作戦中、指揮下の部隊を柔軟に運用することを許可する。』という文からある事を考えていた。
大本営は富嶽を使うことを遠まわしに言っているのだ。だが、どう運用すればいいのか。航路に出現する深海棲艦を片っ端から海上絨毯爆撃すればいいのか。それとも何かを空輸しなければいけないのか......。俺は頭を抱えてしまった。
だが一つ、分かっている事は揚陸艦『天照』がこの鎮守府に来るということだ。これも俺の悩みの種となっている。
「はぁ......。」
俺は横須賀鎮守府からリランカ島への航路図(※読めません)を見ながら溜息を吐いた。
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俺は滑走路横の格納庫に来ていた。そこには空襲で焼けて以来から製造が続いている陸上機が所狭しと並んでいる。
その一角で陸上機の搭乗員だろう妖精がたむろしていた。
「お疲れ。」
俺はそう声を掛けた。
「お疲れ様です、提督!どうされたんですか?」
俺はそう訊かれてどうせ知る事になる作戦の事を話した。ちなみにたむろしていたのはどれも爆撃中隊や飛行戦隊の長たちだった。
「うーん......爆撃部隊からしてみると、出して貰うなら護衛が欲しいところです。」
そう妖精は言った。
「そもそも爆撃部隊に護衛部隊が付くのは常ですし、何より富嶽の対空装備は無いのも同然ですからね。」
他の妖精もそんな様な事を口を揃えて言うのだ。
「ですけどそうすると護衛部隊は空母から出さなければなりませんし、航続距離の長いに越したことはないので、零戦を護衛に就かせるのが妥当だとは思いますが......。」
「零戦は高高度性能が良くない......。」
俺はそう呟いた。零戦は低空でのドッグファイトであの鬼性能を発揮するが、高高度で飛行するために必要な過給機が無い。
「かと言って雷電改では......。」
「航続距離が短すぎるか。」
雷電改は元は局地戦闘機なので高高度での飛行に強いが、航続距離が零戦の約1/4なのだ。
「難しいですね。」
そう言って俺と妖精総勢30人が腕を組んで唸ってしまった。いい案が浮かばないのだ。
「あっ......富嶽は確か自由大気圏(高度10000m以上)を飛ぶので、零戦や雷電改ではその高さは飛べませんね。」
こうして護衛部隊を付けるか付けないかの話は八方ふさがりになってしまった。
だがある疑問が俺の中に浮上してきた。
「というかそもそも高度10000を飛べる深海棲艦の艦載機はあるのか?」
そう言うと妖精たちは何かを察した様な表情をした。
そして俺が最初に話しかけた妖精が答えた。
「居ないですね。なら護衛なしの方向でいいでしょうね。」
そう言ったのだ。だが俺は今いなくても今後は分からないと思い、保険を掛ける事にした。
「いや、震電改を迎撃に出せるようにしておこう。震電改なら高度10000を飛ぶことができる。」
そうして俺と妖精との話し合いは終わった。
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俺はまだまだ考える事があった。
富嶽を使うこの作戦、俺の指揮下にある艦隊と航空隊は自由に使えるのだ。艦隊編成の指定も機動部隊と水上打撃部隊とだけしか書かれてなかった。
俺は悪い笑みを浮かべた。
「提督?......怖いですよ?」
そう言って来たのは今日の秘書艦の霧島だった。
「霧島。」
「はい。」
「機動部隊と水上打撃部隊を投入するということは最低でも12隻の投入だよな?」
「そうですね。」
霧島は素っ気なく答えてくれた。
「ですけど艦隊護衛という名目で水雷戦隊が必要になるので実質18隻以上ですかね?」
「やっぱり?」
「はい。」
そう言った霧島はメガネが変な風に光を反射していた。
「大本営から送られてきた作戦書は見た?」
「勿論。あれには船の数の指定がありませんでした。」
俺は悪い笑みをした。
「不安過ぎるから24隻だ。それも高速艦で固めた艦隊。」
そう俺が言うと霧島は立ち上がった。
「私の出番ですね。」
「あぁ。編成しておくから、その気で宜しく。」
「了解です。」
こうして俺は艦隊編成をし始めた。
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霧島が秘書艦だった日から数日後、準備が整い、作戦発動の日となっていた。
俺の目の前には出撃艦隊に選ばれた艦娘たちが整列している。
水上打撃部隊 旗艦:霧島以下金剛、比叡、榛名、熊野、鈴谷。機動部隊 旗艦:赤城以下加賀、蒼龍、飛龍、祥鳳、瑞鳳。護衛第一艦隊 旗艦:最上以下古鷹、加古、鳥海、北上、大井。護衛第二艦隊 旗艦:神通以下吹雪、島風、雪風、時雨、夕立。
全員が高速艦だ。
「鎮守府には数日帰ってこれないだろうが、頑張ってくれ。」
俺はそう言って皆の顔を見た。
皆は急に選ばれたのを不思議に思っているのだろうが、全員何度も組んだことのある艦娘同士の筈だ。連携云々は問題ない。仲の良い悪いは俺が把握できないところなので置いておいたが、それでも、選んだ艦娘は他の艦娘とは違うところがあった。
全員が猛者で、長い事戦っている古参と現場叩き上げの手練れだ。
「それとこの作戦が成功すれば、ドイツとの貿易で手に入れた嗜好品はこちらに優先的に回してくれるそうだ。ビスマルク!」
「なに?」
「ドイツで有名なものを教えてくれ。」
俺は唐突にそんなことを言い出した。
「観光客がよく買っていくのはニュルンベルクソーセージとか、ビール、コーヒー、フレーバーティー、ワイン、グミ、バームクーヘン、テディベア、かしら。......食べ物が多いわね......。」
俺はそれを聞くと向き直った。
「聞いたか!?交易が始まれば今ビスマルクが言ったものがいっぱい日本に来る!これから赴く作戦はそれの橋掛けだ!」
と俺が言うと、皆がおぉーと歓声を挙げた。
「因みに俺が食いたいと言うのもあるが。」
出撃艦隊の皆が滑った。このやりとりはもう何回もやっていて、定番化してきていた。
「だからさ......生きて帰って来い。絶対だ。......何があっても、何としてでも帰って来い。」
そう言って俺は敬礼をした。
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俺の話が終わるとそれぞれが艤装に乗り込み、出撃していった。
鎮守府に残る艦娘と俺、手の空いている門兵や騒ぎを聞いた事務棟の職員や酒保の従業員、俺が埠頭で手を振って見送った。
朝の早い時間だったが、護衛の為に長い旅に出て行った艦娘たちの後ろ姿はとても凛々しく見えた。帰ってきたら飛び切り盛大に歓迎会を開いてやろうと俺は考えた。
だがその一方、高雄が俺に伝言と言って早々に手を振る列から離脱すると、伝言を伝えられた。
「赤城さんから伝言です。『普段、提督の身辺には護衛が居ますがそのほとんどが今回の出撃でいなくなります。ですので私たちが帰ってくるまでの期間、『番犬艦隊』を編成させておきました。』とのことです。ちなみにメンバーはビスマルク、プリンツ、レーベ、マックス、ユー、フェルト、朝潮です。」
「おい......この編成の理由は聞いたか?」
そう言うと高雄は苦笑いして言った。
「赤城さん曰く『全員犬に見える娘を選びました!』だそうです。」
「やっぱり......。」
俺の想像通りだったので肩を落とした。赤城の編成する『番犬艦隊』はその名の如く、本当に俺の近くから離れようとしないので結構柔軟に動けない欠点があるのだ。
これから大本営や出撃していった艦隊との連絡のやり取りで忙しい時もあるだろう。その時にこんな多勢で動いていたら鈍くなってしまうのだ。
俺は思わず溜息を吐いてしまった。
「なぁ、高雄。」
「はい?」
「赤城って過保護だよな。」
そう言うと高雄に首を横に振られた。
「そうかよ......。」
俺は今日の秘書艦である愛宕を連れて執務室に戻って行った。今更だが何故今日の秘書艦に赤城は伝言を伝えなかったのだろうと思ってしまった。
うわぁ......結構酷い始まりにしてしまいました(白目)
今回から始まる『提督の苦悩』ですが、これは『提督の嘆き』と似て長編になる予定です。どこまでつづくのやら(ゲス顔)
基本的にはこれまで出てきた艦娘から離れて、残った艦娘との絡みが増えると思います。たぶん......。ですけど、ドイツ艦が『番犬艦隊』に任命されているのでそっちの絡みが殆どになってしまうと思いますが......。
それと、総合で100話を今回で達成しました。みなさまのお蔭でここまで成長する事が出来ました!
100話分の文字数ですが、大体23万字ですので文庫本1冊以上ありそうですねwww
これからも末永く(←末永いの?!)宜しくお願いします。
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