遅咲きオレンジロード   作:迷子走路

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『尽される人』

 最近の美柑は空を見上げる事が多くなっていた。

 その事に特に意味は無く、星を見ても綺麗だという感想くらいしか彼女は持たない。

 そうするのは何となく。そう、何となく空を見上げていたら『親友』がこの地球に訪れる様な気がしたからに過ぎない。

 待ち合わせの時間に時計を何度も確認するように、今日も彼女は空を見上げる。

 …ただ、今日はいつもと違った理由で上を見ていた。

 

「その見た目、随分久しぶりだね」

 

 大きな事件も無く、暫く時間が流れた頃。もうすっかりと外は涼しくなり衣替えの時期となった。

 そんな時期、10月は美柑にとって特別なイベントがあった。

 今日がその10月16日…大好きな兄の誕生日である。

 ()()()から早2年。彼女は思考を重ねてリトのプレゼントを考えてきた。

 時期的に本格的な冬に差し掛かる頃なので、最初の年には手頃な値段の服を。翌年には一年かけて練習した手編みのマフラーをリトへ贈った。

 本当なら最初の年も、もっと別の何かを考えたのだったが、編み物自体の経験が殆ど無かったのと思いつくのが遅すぎたので止む無く断念。

 貯金はお小遣いからこまめにしていても、小学生のものではやはり大したものは買えそうに無く、そもそも始めた時期を考えればこの頃の本来の美柑が残した財産しかないのが問題だった。

 1年とない期間ではリトに似合いそうな服も買うには難しい。

 なので自分なりの計画を実行しながらしっかりと編み物をマスターした彼女は、翌年になってようやく納得のいくプレゼントを手渡す事に成功した。

 さて、彼女は臨海学校を終えた後から必死で今年の誕生日プレゼントを考える。

 既に手袋くらい作れる程には腕を上げている美柑だったが、去年と同じ手法で果たして今年のリトの誕生日を祝えるだろうか? 答えはノーだ。

 なぜなら今年からは競う相手が存在する。

 美柑は兄である結城リトという青年が、好意によって贈られた品に優劣を付ける人間ではない事は当然理解している。

 だが、物事にはインパクトというものも大事である。

 そして何よりも、今年のララのプレゼントを彼女は()()()()()

 その事を考慮すれば今年の誕生日はまさに決闘とも言えるだろう。

 考えに考え抜いた美柑はつい最近になってようやく答えを出す。

 この件で友人であるサチ達に意見を聞いた上で出した結論は意外なぐらいあっさりとしたものだったが、ある意味で彼女を納得させるには十分な答えだった。

 やがて当日を迎え、美柑は父やララ達と共にリトを祝福する。

 どうやらリトは既に春菜から何かプレゼントを貰っている様子だったが関係はない。

 それなりに時間を過ごしたあたりで、彼女はリトに「外で待っている」と耳打ちして玄関へ向かっていった。

 

 そして現在。

 

 後からはララと才培の楽しげな声が聞こえる中で美柑は兄を待った。

 数分経ってから、追うようにして現れるリトの姿を確認すると彼女は顔を綻ばせる。

 リトは内心でその笑顔にドキリとした。

 この数年で自分の妹は随分と成長したと思っていたが、その大人びた雰囲気から零れた年相応の笑顔を見て、素直に可愛いと思ってしまった。

 別にやましい気持ちがある訳ではない。変な感情を抱いたわけでもない。

 兄とはいえ、妹が可愛いと思ってしまっても問題は無いはずだと心を落ち着かせながら彼女に歩み寄るリト。

 そうすると、美柑はスッと両手をこちらに差し出す様にしてリトを見ていた。

 その姿と表情を察したリトは隣に立って腕を出す。やがて彼女は花が咲いたような笑みでその腕に抱きついた。

 互いが相手の体温を感じ合う。

 そんな光景にもすっかりと慣れてしまった兄妹は穏やかな気持ちで暫くの間そうしていた。

 上目遣いで美柑はリトを見ると、リトは照れたような微笑で視線を逸らす。

 二人のそんな光景を見る人間はいない。

 今、この世界にいるのは美柑とリトだけだった………と本人たちさえも錯覚していた。

 

「キシャーッ」

 

 反射的に距離を取る二人。

 何故か顔を赤らめて気まずそうにそわそわしている光景はまるで付き合いたてのカップルの様だった。その反応には先程までの熱のこもったスキンシップをしていた姿はまるで無い。

 とりあえず、という風に空気を裂いた声の主を二人は見上げると、そこにはララから贈られたリトへのプレゼントが嫌でも目に付いた。

 リトは植物の世話を好むという情報を得た彼女は、宇宙的にも珍しい花をプレゼントに選び、心からこの日を祝う。

 態々学校を休んでまで宇宙へ探しに行って選んだ贈り物を兄妹は苦笑しながら眺めると、その花はもう一度二人に向かって鳴いた。

 

「キシャーッ」

「にしても、これスゲーよな…いろんな意味で。近所の人が腰を抜かさなきゃいいけど」

「そうだね…まぁ、しっかりと面倒見てあげよう? 私もちょっとくらいは世話するからさ」

 

 花といえば大体は綺麗だとかカワイイといった感想を抱くのが普通だろう。

 中には特殊な花も存在するが、それはプレゼントという括りではなかなかお目にかかれない存在だと思われる。

 だが、目の前のそれは間違いなくそのお目にかかれない部類の花だった。

 まず大きい。そして触手の様な(つる)を持ち、花の部分にはこれまた目を引く()があった。

 あまりにも独特なその見た目に、渡された時は思わず絶句するリト。

 しかし渡された以上は大切にするのが彼の流儀である。一瞬食べられてしまうかもと思ったのは仕方ない事なので目を瞑ってあげて欲しい。

 

「最初はどうなるかと思ったけどさ、思ったより大人しいよなコイツ」

「だね。待ってる間見てたけど、言ってる事が理解できるみたいだよ? ね、()()()()

 

 美柑の言葉に反応するように一鳴きする光景を見る限り本当に言葉を理解しているんだとリトは納得する。

 それと同時に今の彼女の発言に対する疑問を訊ねた。

 

「セリーヌって?」

「…あ、ごめん。リトのプレゼントなのに…さっき考えたんだ。だって言葉が解っちゃうなら、せめて名前くらいつけなきゃって思って」

「あ~それもそうかもな。セリーヌ…セリーヌね。うん、良いんじゃないか? なぁ、今日からセリーヌで良いかな?」

 

 リトの問いに花…セリーヌは心なしか嬉しそうに鳴いているように二人には聞こえた。

 もともと名前は美柑が考えたものなのだから、このタイミングで彼女をそう呼んでも問題は無いだろう。

 この姿からは『彼女』とは到底呼べないと美柑は苦笑するが、せめて女性らしい名前を付けてあげられた自分を褒めてやりたいと思ってしまう。

 今は奇声を放つ禍々しい見た目の花だが、彼女の知るセリーヌはもはやその姿からかけ離れた人間の様な姿をした少女だ。今の時点で目の前の花がそのような変貌を遂げるとは誰も思わないだろう。

 懐かしい見た目の家族に美柑は声をかける。

 自分にはまだ早いし、実感の湧かない事だと思っていたことだが今の彼女はそれも実感していた。

 彼女にとって、この花は特別な存在。ここまで来て彼女が欠けるなんて考えられないほどに大事な『自分の娘』に心からの言葉を与える。

 

「いらっしゃいセリーヌ。これからよろしくね」

 

 こうしてまた一人、結城家に家族が再び加わった。

 

      ◆

 

「でさ、リトにプレゼントあげたいんだけどね。最初に言っとくけど、何も思いつかなかったとか、めんどくさくなったとかじゃゼッタイないから」

「誰もそんな事思わないって。ありがとう美柑」

「まだあげてないよ? もう、はいっコレ」

 

 私はただの紙をリトに渡す。

 もちろん綺麗な色の紙だけれど、それに文字を書いただけの品にリトは困惑している。

 そりゃそうだよね、去年が手編みのマフラーだったのに手抜きも良いところだもん。

 準備時間約30秒の紙を手にしたリトは、書かれた文字を後からの家の中の明かりで照らして読み上げる。

 これが今年の私のプレゼントだ。

 

「んん? 結城美柑一日自由券?」

「うん。次の休みの間の一日だけ、私がリトの言うこと何でもきいてあげる」

「なんだそれ、いつもと変わらないだろ? 俺っていつも美柑の世話になりっぱなしなんだし」

 

 その発言はちょっぴり嬉しい。

 けど、それはそんな意味じゃないよ。ララさんが用意したセリーヌよりも大きな思い出を作らないといけないんだから。

 

「『何でも』だってば。リトが触りたいように好きにしてもいいし、どんなカッコウもしてあげるよ? ちょっと手の届かないものだって取りに良くし、お金さえあれば隣町にだって買い物してきてあげる。とにかく『何でも』してあげる自由券なんだから」

「あんまり『何でも』とか言うなって。外で言っちゃダメだからな」

「リトにしか言わないよ?」

 

 当然だ。こんなのリトにしか言わないし、言えない。

 何でもしてあげたくなっちゃうのは、相手が『リト』だから。

 

「ん~…わかった。じゃ、次に使うからその時はヨロシクな?」

「うん! ちゃんと考えててね。あ、ちょっとくらいならエッチなことでもオッケー…だよ?」

「はは、しねーよ。ほらっ風邪ひいたらダメだろ。家の中に戻ろーぜ」

「ジョーダンじゃないんだけど?」

「はいはい、そういうのは無し無し」

 

 最近リトはスルーをするスキルを身に付けたらしい。

 何だか女のコの扱いに手馴れてきてる感じはするけど…大丈夫だよね?

 ララさんもそんなリトに前とはちょっと違う感じで好きになってる感じだけど、今のところは問題ないみたいだし。

 リトが学校でモテてないかだけが心配だ。今度ララさんに聞いてみようかな。

 

 セリーヌにおやすみをして家の中に戻ると残した二人はまだ盛り上がっていた。

 まったく、誰の誕生日何だか…。

 そんな二人を制するように私とリトで部屋の片付けを始める。

 私一人でするって言ったのにリトはどうしても手伝うと言って聞かなかった。

 ちょっと強く言ってみても軽く笑いながらあしらってくるのは何だか面白くない。けど、最後の一言で私は折れてしまう。

 

「俺が一緒にやりたいんだよ。イヤか?」

「う…そんなワケ、ないじゃん。はぁ、わかったよ」

 

 何だか最近リトに勝てない気がする。今度の休みはギャフンと言わせてやろう。

 そう決心をしながら二人でお皿を洗う事に集中する。

 ………何だかこういうのも悪くないかも。

 

      ◆

 

「んん、あったかい…やわらか…」

「ふぁ…リト…ち、近い…嬉しいけど、動けないってば~!」

 

 今日は『結城美柑一日自由券』を使う約束の日。

 いつもどおり兄妹は一緒に入浴し、同じベッドに寝た。

 王様になった時のリトは寝ながら女性の弱点を確実に攻めてくる寝相を持った一種の才能を持っていたが、今回のリトにまだその兆しは無い。

 いや、現在進行形で美柑は襲われているのだが、これは単純に抱きつかれているだけである。

 どうやら今回のリトは、美柑と共に寝るようになってから手元の何かに抱きつく癖が付いてしまったらしい。

 たまに眠りが深いときはこのように加減が無くなる時があるが、普段はもう少し優しい感じで抱きしめてくれると美柑は語る。

 暫くして眠りから覚醒するリト。自分の腕の中には大事な妹の姿。

 息苦しそうに呼吸を荒くしながら顔を赤くしている顔を見た瞬間、リトは慌てて美柑の肩を掴んで距離を引き離した。

 

「あんっ! もう…何でもって言ったけどいきなり大胆すぎない?」

「ごごごごめんッ!? 大丈夫か!?」

 

 美柑は未だに赤い顔で自身の髪の毛を弄りながら視線を逸らす。

 かつて『リトを好きになる効果』を持つセリーヌの花で一騒動あったのだが、その時に美柑はリトを好きになるとどうなるかを体験している。

 花の効果も合ってか、その時よりは我慢出来る程度になってはいるものの。ここ最近の美柑はその時の感覚を思い出しつつあった。

 

(な、なんか最近の私、変かも…。リトのこと好きだったのに、ここのところ抱きしめられたりしたらそれどころじゃないくらいドキドキしちゃう)

 

 最近のリトは本格的なシスコンへの道へ歩み出している。

 美柑に対しての扱いや、気の遣い方等。美柑がリトと仲良くなろうと接すれば接するほどにリトはその反応に応える様になった。

 そうなるとどうなるか。

 次第にリトは美柑が何をどうすれば機嫌が良くなるか、喜ぶか。それを無意識に何となく察し、そのまま行動に移せるようになってきている。

 言ってしまえば、美柑がリトにそうなるようにしたのだが、そんなリトに美柑は虜にされ、逆にもっと好きになってしまったのだ。

 互いの為にそうやって、互いに喜び、互いに求め合う。

 そんな堂々巡りの幸せループに美柑は陥ってしまう。

 別にこのままでもいいかもしれないと思ったのは一瞬だけ。なぜなら、このままでも良かったのはララが訪れるまでの話だから。

 もしこのままリトを好きになり過ぎて行動に支障が出れば目下最大の敵であるモモが訪れた時に対処する事が出来なくなるかもしれない。

 リトの手を握れば鼓動が高鳴り、声が上ずる。

 リトの腕を抱きしめれば周りの音が聞こえなくなる。

 最近は一緒の湯船に浸かれば、いろいろと我慢しなければ関係そのものが崩壊するかもしれないレベルになっていた。

 リトへの好感度は既に振り切れていると思っていただけにこの誤算は大きい。

 やっと慣れてきた事がここに来てまた、ぶり返すなど誰が想定できるだろうかと頭を悩ませる美柑。

 今更リトを嫌いになるなんてなかなか出来ることではない。少しでも慣れるしかないのが唯一の方法だと彼女は思った。

 ある意味、今日はそれを克服するチャンスなのかもしれない。

 

「あはは、気にしないでって。私は…嬉しいし。そ、そうだ。お腹すいたよね? ご飯とパンどっちがいい?」

「え? ええと、パンかな」

「わかった! じゃあ部屋で待っててね、すぐ作るから!」

 

 事前にララには今日一日二人っきりで過ごしたいと伝えているため今日は出かけて貰っている。

 そんな久しぶりの二人の日常が再び実現した。

 

――――――

 

「あ、リト! もう今日は私が全部するのに!」

「といってもなぁ、せっかくのプレゼントなんだからじょうろは使いたいし、セリーヌの面倒くらいは俺が見ないと」

「じゃあ他の事で私をつかってよね!?」

 

 

「ねぇリト。さっきから私あんまり動いてないんだけど?」

「ん~? でも使ってるだろぉ?」

「うぅ…たしかに後から抱きしめられてる…って、そういう事じゃないんだけど」

 

 

「あれ? リトどこいったの~って、わわっ!?」

「あはは、つかま~えた~。一緒に昼寝でもしようか?」

「こんな時に!? って、ひゃ! ベッドに引きずり込まないでよ!?」

「んじゃ目覚ましセットするから2時間俺の抱き枕になってくれな?」

「これじゃあいつもと変わらないってば~~!!」

 

 

ジリリリリ!!

 

 目覚ましの音に最初に起きたリト。

 時計を止めると腕の中にいる大事な妹の髪を優しく撫でる。

 無理矢理ベッドに引き込んだが、やはりこの状態で長時間いれば美柑といえど眠気を堪える事はできなかったようである。

 小さな寝息をたて、穏やかに眠る姿を見ていると心が温かくなる感覚に陥るリト。

 一晩考えた末にリトは自由券の使い方を考えた。

 

 それは、美柑を出来る限り休ませてあげる事。

 

 別に、何でも無い日だって何でも言う事を聞いてくれるのはいつもの事だった。

 無理難題は言わないものの、一緒にいると美柑はいつもリトを気遣っている。

 それを察していたリトは今日という日を利用してやろうと考えた。

 いつもと同じなら、今日は逆にこっちが好きにやってやろう…と。

 だがやる気になっている美柑を置いて自分が動く事はできない。

 ならばこちらも動かなければいいのだ。

 そうすれば美柑も休まざるを得ない。決して自分が美柑を抱き枕にしたり抱きしめたりしたいからではない…半分は。

 

「自由券なんだからこういう使い方もあり…だよな?」

「う~ん……」

 

 こうしてリトの作戦に敗れた美柑は更に数時間の眠りにつく結果となるのだった。

 

      ◆

 

「もう! どうして起こしてくれなかったの!?」

「いや、気持ち良さそうだったし。悪いかなって」

 

 目を覚ますと既に日は落ちかけていて、すぐに寝過ごしたのだと判断できた。

 結局今日はリトに抱きしめられてばっかりだ。

 せっかくの一日なのに私はリトに何も出来ていない。

 とにかく何かしてあげたい。だから私は遂にワガママを言い出す。

 

「とにかく何かさせてよ~!」

「えぇ…う~ん。あ、そうだ。耳掃除なんてどうだ?」

「耳掃除? うんいいよ! じゃあ耳かき持ってくるから待ってて!!」

 

 耳掃除という言葉を聴いて私はようやくリトの役に立てるのだという嬉しさから勢い良く部屋を飛び出した。

 これがリトの策略とも知らずに。

 

――――――

 

「あの、これおかしいよね? 何で私がリトに耳掃除されてるの?」

「俺が耳掃除されたいなんて言ったっけ?」

 

 はかられた…!!

 今の私は胡坐をかくリトの足を枕にして耳掃除をされている。

 どうしてこうなったのか?

 思えば今日のリトはずっとおかしかった。最初からこうするつもりだったのかもしれないと思ったのはこの時だ。

 唸る私に対してリトは息を吐く。

 耳掃除されているので顔を見る事は出来ないけど、多分駄々っ子を見るような目で見てるに違いない。リトのくせにナマイキだ。

 

「ごめんって。でもさ、俺はこうしたかったんだから偶にはいいだろ? こういうのも」

「……好きにしたら? 自由券なんだし」

「俺さ、いつも美柑に頼ってばっかだろ? だからさ、こうやって美柑の面倒見てあげれるのって凄い少ないんだよ。だから今日はありがとな美柑。最高のプレゼントだよ」

 

 もう、そういうのやめてよ…。やだなぁ、なんでこんな単純な事でいつまでも照れてるんだろう私。

 今は小学生だけど、本当に小学生みたいだ。

 何処までも未熟で、何処までも愚直な過去の私。

 中身はこんなになっちゃったってのに…あぁ、嬉しすぎて顔が緩んじゃう。

 

 リトの好意が嬉しい。

 リトの優しさが嬉しい。

 リトの返事が嬉しい。

 

 リトの優しい手付きで耳の中を弄られると何だかゾクゾクする。

 蕩けそうな幸せは人間をダメにするのかも。

 今日一日の計画は全て無駄になっちゃったけど、なんかどうでも良くなってきた。

 

「まぁ、たまにはいいか…♡」

「次、反対いくぞ~」

「ん~♪」

 

 あ、買出し忘れてた…でも後でいいや。どうせ着いてくるだろうし。リトと一緒で不満な事なんてあるはずないんだから。




沙姫&レン「あれ、出番は……?」

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