椿の花の色~あなたは私の胸の中で炎のように輝く~ 作:桜華惨禍
第六話です。
これで、大きな区切りは、一つ御仕舞いです。
──深い闇の中に落ちてゆく……
ゆっくりと、ゆっくりと……
……終わりが見えないな……
……そうかここが、あの世なのか……
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い
……怖い
何もない……光も……人も……温かさも……
……寂しい、誰も声を掛けてくれない……
……深淵が見えない……終わりが無い……
悲しみが、心を蝕む。絶望が、ゆっくりと這い上がってくる。希望が、断たれてゆく。泣きたい気持ちに襲われる。
……ろくな人生じゃ無かったな……
……家族と上手くいかなくて……親孝行もしてあげられなくて……
……友達も少なかったな……
……気づいたら女の子に、なって……
……本当にろくな人生じゃないな……
最後の女の子のところで、くすりと笑ってしまった。
……本当に、なんて冗談だよ?……
楽しかった。怖かった。嬉しかった。困った。泣きそうになった。感動した。
……そして何よりも──
──良かった。
短い時間だったけど、何よりも充実した時間だった。
……ごめんね。如月ちゃん俺は、お姉ちゃんには、なれなかったよ……
……これで、終わりか短い人生だったな……
そして俺の意識は、深い深い深淵へと堕ちていった。
「終わりじゃないですよ?」
∽ ∽ ∽
目が覚める。
知らない天井ならぬ黒い闇が、目の前に広がる
えーっと、どないせんと?
いや?どうしろちゅーねん?
体は、自由だが、さっぱり訳の判らない状況だ。
……あのー、俺って死んだんじゃないんですかねー?
いや、そもそも返事する相手が居ないつーの
「死んでませんよ?」
おわっ、嘘だろなんで、返事返ってくるんだよ。
誰だ、貴様見ているな!!
「あははは……なかなか個性的な挨拶ですにゃ……」
というか、誰だ、姿を見せろ!
俺は、体制を立て直して声のする方向を向く
──絶句した。
その姿は、その見た目は、まさか──
──俺ェ?
何故かそこには、女の子の姿の俺が、いた。
Why?(何故?)
∽ ∽ ∽
えーっと、向き合う俺と女の子(俺)凄く気まずいんですが……
……どちらか様でしょうか?
「初めまして!睦月型一番艦の睦月です!」
そう名乗る少女──睦月ちゃんは、そう言った。
あの、えっと、初めまして?
「はい!初めまして!」
……子供特有のハイテンションで挨拶を返してくれた。
……というか、何故こんなところに?
「それは、ですね。貴方が、まだ死んでないからですよ?」
………………………………え?
「ですから、お兄さんは、まだ、死んでないですよ?」
少女から衝撃な事実をカミングアウトされた。
……じゃあここは、どこなの?
「ここは、ですねお兄さんの精神の中です。」
……ここ俺の精神のなかなんだ……
「正しくいえば。睦月の精神の中なんですけどね」
どっちだよ!
「そうですねー、体は、睦月ですけど精神が、お兄さんの物みたいな?」
みたいな?って
「仮に精神の部屋としときましょう」
どっかで、聞いたことあるフレーズ!ねぇそのネーミングでいいの?一応きみの体の精神なんだよ!?
「まぁ、細かいことは、気にしないで下さい」
まぁ、気にするなといわれれば今は、引きますけど……
「お兄さんは、最後に何をしたか覚えてますか?」
えーっと、確か俺は……
………如月ちゃんを庇って戦艦の砲弾を喰らったんだっけ?
……思い出すついでにあの痛みまで思い出した……
……二度とやるか、あんなもん……
「ハイ、その通りです。でその一撃で私は、死にました」
死にましたって……そんなノリで言うもんじゃ間違ってもねえぞ?
って!それじゃ俺死んでるじゃん!
「いいえ、お兄さん、死んでませんよ?」
だから、いま死んだって言ったじゃん!
「ですから、お兄さんは、死んでいません」
どういうこと?事態が飲み込めないんだが
「つまり、睦月は、死にましたがお兄さんは、生き続けてるんです」
──は?
「私の意識は、何故かお兄さんに乗っ取られていたんです。……理由は、わかりませんが……で、最後の瞬間は、睦月のほうが、何故か表に出てしまい砲弾の方へ突っ込んだんです。」
……なんで君が表にでたの?
「…………如月ちゃんが、轟沈して、しまわないように……」
…………君にとっての如月ちゃんって一体なんなの?
「……如月ちゃんは…………姉妹なのです……」
姉妹?……なるほどだから如月ちゃんは、俺をお姉ちゃんと呼んでいたのか
……姿が、同じ俺を見て……
「……はい、だから……睦月は、如月ちゃんを、助けたかったの……」
「その結果、守ったは、いいけど睦月は、死んでしまったんです……」
お恥ずかしい話にゃあと睦月ちゃんは、そういった。
──ふざけるな。なんで君が死ななくちゃならないんだ!
「お兄さん?」
話に納得するより、苛立ちのほうが、早かった。
君は、ただ妹を守ったのだろう?
……元々は、君の体に勝手にいる俺を追い出せば君は、助かるんじゃないか?
君の話を聞く限りだと死んだのは、肉体ではなく精神の方みたいだからね。
睦月ちゃんが、黙る深い沈黙が流れる。
「……お兄さんは、以外と賢いんですにゃあ………」
おい、今は、そんな話じゃ──チュッ♪
チュッ?
「いひひひっ!お兄さんに初めてをあげちゃった♪」
初めてを、あげちゃた♪
じゃねー!おい!真面目な話してんだぞ!
それをいきなり、き、き、キスするなんてててなにを考えてんだ!!
「お兄さん、すっごい初々しいにゃしぃ♪」
初々しいって……
おい!真面目な話に水を差すなよ!
「睦月の初めては、どうでしたか?」
だーかーらー!!
「……お兄さんには、生きて欲しいのです……」
はっ?なんで、如月ちゃんは、睦月ちゃん君を待っているだよ?なんで、名も知らないこの俺なんかを……
「お兄さんは、かんむすを漢字で書くとどういう字になるかわかりますか?」
かんむすを漢字で書くと?何回も聞いている言葉だけど漢字でなんか判らないけどそれが、何か関係あるのかよ!
「艦隊の艦に娘と書いて艦娘と呼ぶんですよ?」
だからそれの何が、関係してる──
「私達の前世は、簡単に言うと船なんです。」
──っは?
それが、どうしたって言うんだよ!
「乗ってる人が、船のエゴで、死ぬなんてあり得ますか?」
それって
「……はい、睦月は、船として、お兄さんに生きてて欲しいんです」
───なんて、なんて、残酷な答え──
……そんなの認めらるか!
「お兄さんが、生きr──」
──それ以上の言葉を聞く前に俺は睦月ちゃんを抱きしめていた。
「お兄さん……。離して下さい苦しいです……」
いやだ!離したら睦月ちゃんは、消えてしまうんだろう?
そんなのないよ……
助かるなら二人とも助かる方法を考えようよ!
そしたら、睦月ちゃんは、消えなくて済むだろう?
睦月ちゃんは、首を横に振りながら俺を引き剥がす。
「お兄さん。それは、無理なんです」
なんで?なんで睦月ちゃんは、こんな俺の為に……
そんな一言を言った俺に反論するように睦月ちゃんは、言葉を紡ぐ
「こんなのって言わないで下さい。お兄さんには、私の初めてをあげた相手なんですよ?」
そんなの……
「そんなのもこんなのもありません。私は、お兄さんを大切に思っています!」
──なら!睦月ちゃんは、消えたいっていうのか!
「──本当に消えたいって思いますか?」
そういい放った睦月ちゃんは……
──泣いていた。
瞳一杯に涙を貯めて俺に向かって言う
「消えたくないです!如月ちゃんや他の姉妹の皆と一緒にいたいです!新しい人生を、楽しみたいです!」
もう離ればなれは、嫌だから……
そう泣きながら睦月ちゃんは、答えた。
そして……
「だけどもう無理なんです……」
はっきりと、そう答えた。
「睦月は、あの戦艦ル級の一撃で死にました。今ここにいるのは、その精神の残留思念みたいなものです……」
──そんな、そんなことって……
……俺は、睦月ちゃんを助けることは、出来ないのか?
俺の初めてを奪った責任をとってくれないのかい?
「クス、その台詞は、睦月のですよ?お兄さん」
涙を流しながら睦月ちゃんが、笑いながら答える
……自然と俺も涙を流し始めた……
……本能みたいなものでわかる……もう、助からないのだと……
「あぁ、もう限界みたいにゃ……」
次の瞬間睦月ちゃんの体が光の粒子の様に消え始める。
……睦月ちゃん……
「そんな顔しないで下さい。お兄さんには、笑顔でいてくださいにゃしぃ」
此方に向かってニッコリと笑う
そして俺に向かって──
「お兄さん。出会いが、あれば、必然的に別れが、やってきます。そんなときは、笑顔で見送ってください!……辛気臭い顔で見送られるのは、嫌です……」
あぁ、わかった。
こんな顔でいいかい?
俺はたぶん、涙でぐしゃぐしゃな顔を無理やり笑顔を、つくって睦月ちゃんに向ける。
「……ありがとうございます。最後にいい思いでをくれて……お兄さん後、睦月は、本気ですにゃ?私は、お兄さんが好きです…………お兄さん短かったけど、お兄さんと喋れたこの瞬間は、ずっと忘れません…………」
ありがとう。と
そう言いながら睦月ちゃんは、光のように消えた。
スーっと暗闇に光が満たされる。回りの闇を振り払いながら回りを、明るく照らす。
──俺の姿も代わりに今は、睦月ちゃんになっていた。
──そして……
「うわぁーーーーー!!!こんなのって!こんな残酷なことは、無いよ!!なんで、なんで、君が消えなくちゃならないんだ!!!!消えるなら俺の方だろうが!!!!」
──泣き叫んだ
嗚咽が止まらない。
叫ばずには、いられない。
止まらない感情の濁流が、俺に襲いかかる。
さっきまで喋っていた。いとおしい少女は、もう居ない──
──そう思うと、もう、限界だった。
「……睦月ぢゃんは、俺に生ぎで欲じいと祈っだ!」
──俺も、好きだよ
「だがら!おれば、いきづづげる!ごのもらっだがらだで!!!」
──感謝する
「むづぎぢゃんば、おれの、むねにいぎづづげる!!」
──忘れは、しない
「ざいごのじゅんがんまれ!!」
──煌めく炎のように…………
俺は、光に包まれ、意識が、再び浮上しようとする。
──────生きるために─────
∽ ∽ ∽
───一人の、男を生かすため、一人の少女が、犠牲となった。
───一人の、男は、その少女の、躯で生きてゆく。
───只一人愛したその少女の、躯で……
そんな、ちっぽけだけど一生懸命で、罪深いそんなお話…………
第零章 祈り ~終幕~
少々急いで執筆したので、間違った文法や、誤字が、あるかもしれませんので報告してくれたら嬉しいです。
次回も、楽しみにして頂けたら幸いです。
─追記─
微妙に台詞修正しました。