魔法少女?リリカルなのはDiabolical Modified 〜魔改造された彼女たちの運命〜 作:アリヤ
第一作目以外は実はあまり書いていないのですけど、第一作目が終われば他を書いていきたいと思います。
一応、プロローグ後編も数日しないうちに書く予定ですけども、その後は第一作目が終われば書いて行こうと思います。
それではどうぞ!!
プロローグ
――高町なのはは生まれてからたった四年で狂った。
その原因はなのはの家である高町家ではない。狂わされたのはなのはが暮らしているこの世界だ。
始まりは誘拐から始まった。生まれながら持つ異能力者、七つの大罪の力を多数の人間が利用しようという輩がなのはを誘拐しようと試みるが、何度も失敗していた。
しかし、その誘拐が成功したと言っていいのは高町家で起こったあの件があったためだ。
なのはの父親である高町士郎がボディーガードの仕事をしていた時に大怪我を負い、入院してしまった時の隙を狙われたのである。
本来あるシナリオならば、ここでなのはは一人で生活することが多くなるだけだ。だがこの世界は本来のシナリオと違い、この地球は異能力者が多数存在する世界となっている。特になのはの異能力は非常に珍しく、欲しがる者が多かった為に誘拐する輩が増えていった。そのため、本来のシナリオとは違い、なのはの兄にあたる高町恭也は士郎の事故の件で自分の力を付けながらも、なのはを誘拐しようとする輩から守ろうとしていた。
「な、なのは、大丈夫か?」
「う、うん。私は大丈夫なの。それよりお兄ちゃんは?」
「俺も大丈夫だ。だけど、どうにかしてこの場を逃げ切らなければ……」
高町家からは逃げて何度も見失わせては居るはずなのだが、どういう事かすぐに向こうに見つかってしまうという繰り返しだった。
その度に恭也となのはの二人は逃げ続けていた。恭也には御神流が使えるには使えるが、異能者が相手になると分が悪すぎる。昔は異能者という人間は少なかった為、御神流が通用する時代もあったけども、今ではそれもあまり通用しない。しかも相手が多数となり、なのはを守らないといけないとなると、なおさら分が悪かった。
そしてどんだけ運動を鍛えようとも、ずっと走り続けることは不可能であり、恭也だってわかっていた。だけど何としてもなのはを捕らわれない為にも、絶対に逃げないといけないと思った。
しかし、その思いも崩れ去ってしまう――
「なっ、先回りだと!?」
さっきから路地裏を使って逃げ回っていたが、先回りされて逃げ道がなくなってしまう。
多数の人間に囲まれ、なのはが捕まらないように警戒をする。
「なのは、大丈夫――」
だが、なのはが居るだろう方向へ向くと、なのはの姿が居ないことに気づいた。
囲まれるまでなのはの握っていたのは確かだった、しかしなのはの無事だと確認しようとすると居なく、そこでなのはと手を握られてないという事に今になって気づいた。
そして恭也が前方に顔を向けると、なのはが捕まえられている事に気づく。
「な、なのは!!」
「…………」
どうやらなのはは気絶しているようで、返事はなかった。しかしなのはを捕らわれた事によって、恭也は怒りが湧いていた。どうして何度もなのはを誘拐しようとしてくるのか。しかも、最近襲撃してくる気配はなかったというのに、士郎が誘拐されたところを狙ってきたかのように現れた。
そう、なのはを誘拐しようとしていた輩はあまりにも用意周到だった。士郎は入院中で、さらに異能者であるなのはの母親である高町桃子は士郎に付き添っているこの時期にわざわざ狙ってきていたのだから。
「さて、これでようやくターゲットを確保したわけだが……」
「返せ……なのはを返せ!!」
持ち歩いていた二つの小刀を両手に持ち、なのはを取り戻そうと恭也は動き出す。なのはを救うためなら何をしても構わない気持ちで挑もうとし、敵を殺す気でいた。
しかしあり得ない事が、恭弥の体を襲う。
「なっ!? 体が動かない!?」
「しばらくそこで動けないままでいろ。俺たちが遠くに消えるまでな」
すぐに異能力によるものだと察するが、これではなのはを救う事も出来ず、簡単に逃げられてしまう。何としてでも阻止しなければならないのだが、生憎異能力に対抗した力を恭也には持ち合わせていない。事態は恭也にとってとても最悪な結果だった。
そして、彼らはようやく目的であるなのはを捕えた為、動けない恭也をそのまま気にせずに恭也の前から姿を消した。恭也が動けるようになったのは、彼らが居なくなってから三十分後の事だった。
動けるようになったのを確認すると、恭弥は近くの壁を思いっきり殴った。力強く殴ったために、殴った右手からは血が垂れており、だがそのような事を気にしていなかった。あまりにも無力で、なのはを守れなかった自分に苛立ちを覚えてしまった。
だが、今の世界では仕方ない。御神流が使えたところで、距離が離れていようと使用できる異能力に対抗なんてさすがに御神流でも勝ち目がなかったのだ。
「……とりあえず、父さんに伝えるか」
その後、恭也は病院へと向かい、なのはが誘拐されたことを全員に伝えた。そして、なのはを守ることは出来なかったと家族に言うが、誰も恭也を責めることはせずに、誘拐されたなのはを救い出す事だけを考えていた。
だが、情報が余りにも少ない。誘拐した彼らは情報をあまり残さず、恭弥は何とか倒した一人から情報を聞き出そうとしたけども、何時間も聞いても口を割らないため、恭弥の方が先に砕けてしまった。正直言えば、どうしてあの時自分が守れなかったという後悔が恭也には残っており、そうであればこのような事態になる事もなかったからだ。
それから高町家はなのはを救うために動き出す。どんな相手あろうと、なのはを救うためなら容赦するつもりはなかった――
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しかし、なのはが誘拐されてから何も進展せず、あっという間に一年の年月が過ぎてしまった。
その間に士郎は退院することが出来たけども、なぜか情報が全く手に入らなかったのだ。この一年なのはを血眼になるほどにまで探していたけども、それでも手がかりが余りなかった。
だが、事態は急変する――
「はい、どちらですか?」
ある日の夜、高町家にインターホンが鳴る。
桃子が玄関のドアを開けてそこに居たのは、服や顔が血で染まっているなのはの姿がみてた。昔みたいに元気がなく、目を虚ろにしていた。
「……な、なのはっ!!」
なのはが突然目の前に現れた事に驚き、血で汚れることも分かっているのにも関わらず、そんな事を気にせずに抱きしめて涙を流していた。
その桃子の言葉はリビングにいた士郎たちにも聞こえ、全員玄関へと駆けつけてた。
しかし、心配してようやく帰ってきたというのに、なのはは悲しむこともせず、表情が変わっていなかった。
その事にすぐに気づいた士郎と恭也だが、とりあえずなのはに付いている血を拭く為に、最初に桃子となのはの姉である高町美由希の二人と一緒にお風呂で体を洗う事になった。
それが終わり、全員がリビングに集まったところで、なのはからどうやって帰ってきたのかを聴くのだった。
「それで、どうやって帰ってきたの?」
「…………」
だが、なのはは何も答えられなかった。目は未だに虚ろで、表情も先ほどからずっと変わっていなかった。
一体、なのはが誘拐されて何が起こったのか。それを聴きたかったけども、なのはは答えようとしない。それどころか、なのはの感情すら読み取れないという事態だ。
「じゃあ、今まで何をされてたの?」
「…………」
「それも、答えないか」
何がなのはをここまでにさせたのか。それは結局分からずじまいではあるが、とりあえずなのはが帰ってきただけでも良かったと思うことにしたのだ。
その後も何度もなのはに質問をするが、なのはは一言も答えなかった。
「とりあえず、なのはへの質問は一旦後にして、とりあえず夕食を食べましょ」
夕食の時間帯になっていたので、なのはへの質問は一度後にして、桃子は夕食の準備をしていた。
そのあともなのはに聴こうとはするが、何一つ答えず、そのまま時間が過ぎていくだけだった。明日にでも事情を聴こうと全員思い、今日の所はこの辺りにしてなのはは自分の部屋へと戻っていった。
だが、なのははこの時からずっと言葉を話さず、家族との会話も一言の事が多く、小学校に通い始めるまで続くのだった――