「……どうかされましたか、村長殿」
「こっちに馬に乗った騎士風の者が近づいているそうで……」
「ふむ……」
アインズとアルトリウスは顔を見合わせると、アインズは頷き
「任せてください。村長殿の家に生き残りの村人を至急集め、村長殿は達と共に広場へ」
「はい!」
今も尚健在しているデス・ナイトも引きつれアインズ達は広場へと赴く。すると村長の言った通り、此方に向かって騎士風の者達が複数やってきた。彼等は先程の帝国の紋章を入れており、装備を統一させていた騎士達とは違い、簡潔に言えば装備の纏まりが無い者達だ。
広場に到着すると綺麗に整列し、馬に乗ったまま一人の屈強な風貌をした男が出てくると、アルトリウスとアルベドはアインズよりも一歩前に移動する。男はデス・ナイトに視線を向けた後、アルベド、アルトリウス、アインズの順に視線を変えていく。
「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長『ガゼフ』。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士達を退治するために王の御命を受け、村々を回っている者である」
「王国戦士長?」
聞きなれない単語に思わずアインズは疑問符を浮かべる。
「王国戦士長……確か王国の御前試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭兵士たちを指揮する者、王国最強とも唱われている……だな」
「アルトリウス様の言う通りです……本物かどうかは……」
以前に訪れた村で得た知識を口に出すアルトリウスに村長は相槌を打つ。
「この村の村長だな?横に居る者達は誰だ?」
「初めまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が騎士に襲われておりましたので助けに来た魔法使いです。彼女は私に仕えている戦士アルベド、そして」
「アインズ様に仕える騎士、アルトリウスだ」
各自己紹介が終えたことでガゼフは馬から降りアインズに頭を下げる。
「村を救っていただき感謝の言葉も無い」
「(ほう……)」
ガゼフの行動にアルトリウスは感心を覚えた。王直属の戦士だ、それを鼻に掛ける者だって居る。だが彼からはそんな雰囲気は感じられない。アインズ達のような身も知らず、ましてやあからさまに怪しいであろう者に対して頭を下げ感謝の言葉を出す。アルトリウスはガゼフに興味を持ち始める。
「いえいえ、実際は私も村を救ったことによる報酬目当てですから、お気にされず」
「そうか……では申し訳ないが、どのような者達が村を襲ったのか、詳しい話を聞きたいのだが?」
「少しお待ちください」
アインズは何も無い空間に腕を突き出すと、彼の腕の先が黒い空間に消える。そこから損傷の少ない鎧を取り出す。ガゼフや村長達は驚く表情を見せるが、一方のガゼフは直ぐに引き締める。
「この鎧の持ち主がこの村を襲っておりました」
取り出された鎧を受け取り、様々な角度からガゼフは見る。
「……確かにこれは帝国の鎧のようだな、だが中身はそうなのかは確証できない」
鎧の形状と紋章を見てガゼフは村長の方を向き
「もしかしたら、スレイン法国の騎士が帝国の振りをしていたという可能性があるわけです。帝国と王国の仲を更に悪化させるために」
「な、なんと……」
「さて、アインズ殿。もうしわけないがこの鎧を頂いていきたい」
「構いませんが1つだけ条件があります」
「条件?」
ガゼフは眉間に皺を寄せる。金銭か?それとももっと別の?ガゼフは様々な事を考えたが
「彼処に居る私の僕がいます。デス・ナイトと言うのですが、あれと一戦交えて欲しい」
「なっ!?アインズ様!?」
真っ先に反応したのは村長だ。
「王国最強の力を是非この目に焼き付けておきたいのです」
「……了解した、皆も構わないな?」
「戦士長がお決めになったのなら」
「異論はありません」
「えぇ!?」
ガゼフの部下達も口を揃えて肯定を示す。アインズは内面でほくそ笑む。王国最強、もし今後の害になるようであれば此処で力を把握しておこうという魂胆だ。もしデス・ナイトよりも強ければそれ相応の対応を、もし弱ければそれまでだ。しかしアインズも予想しない人物が動き出す。
「お待ちくださいアインズ様、彼とは私が戦いたいのですが」
「え?」
思わず間抜けな声を出してしまうアインズだが
「ごほん!アルトリウス、何故だ?」
「王国最強という異名をもち、見る限り相当な剣の使い手。同じく剣士である私と純粋にどちらが上か、興味がありまして」
「む……わかった、アルトリウスに一任しよう」
「感謝します……ということだ、私が相手で構わないな」
「異論はない」
よしとアルトリウスは呟き、アインズと伝言《メッセージ》で会話を始めた。どうやら伝言はアインズとアルトリウスが接触したことによって使用することが出来るようになったようだ。
『すいません、しゃしゃり出てしまって』
『いえ、でもなんでアルさんは彼と戦いたいと?』
『さっきもいった通り、純粋に興味があるのですよ』
伝言を切りアルトリウスとガゼフは広場の真ん中へと相対する。ガゼフはバスタートソードを両手で、アルトリウスは深淵の大剣ではなくクレイモアを右手で構える。
「怪我をしても恨まんでくれよ」
「それは此方の台詞だ」
互いに視線は反らさない。審判を申し出たアインズが
「両者構えてください……では、始め!」
火蓋は切って落とされた。先に動くのはガゼフ、アルトリウス目掛けてその手に持ったバスタートソードを振るう。アルトリウスはクレイモアでその一撃を防ぎ
「でやぁぁぁぁ!!!!」
力強く横薙ぎに剣が流れ、剣を縦にすることでそれを遮る。二秒ほどつばぜり合い、ガゼフは更なる猛攻を加える。そこから数回に渡る剣劇が繰り広げられた。
ガゼフの剣はその鍛え上げられた体から繰り出される激しくも華麗な剣舞。アルトリウスはその体躯では想像できない素早く隙のない動きで全ての攻撃を捌いていく。ガゼフは一旦距離を置き
「やるな、アルトリウス殿。だが、このままでは埒があかん。武技を使わせてもらおう」
「武技?」
剣を強く握り締め再度アルトリウスに肉薄する。
「うおおおお!!《四光連斬》!!」
「!?」
打ち出されたのは四つの剣閃、それを受け止める。
「まだまだぁ!!《六光連斬》!!」
次は六つ、激しい火花を散らしバスタートソードとクレイモアはぶつかり合う。ガゼフは更に《流水加速》と叫ぶと突然動きが速くなる。剣を引き切っ先が向かってくるが、クレイモアの刀身で受け止める。
「これが……武技……!」
「何だ、あの騎士。戦士長の攻撃防ぐだけで精一杯じゃないか」
「まだデス・ナイトだっけ、そっちの方が強そうだったな」
ガゼフの部下が口を揃えてアルトリウスの事を言う。アルベドは部下達を睨むが、アインズが彼女の肩に手を置く。
「アインズ様……」
「抑えろ、アルベド」
「しかしよろしいのですか?あの下等生物共はアルトリウス様を罵倒しているのですよ?」
低く、凄みのある声でアルベドは言うが、一方のアインズは何やら余裕な雰囲気を出す。
「確かにあの人が罵倒されるのは許されざることだが……あの人は負けることはまずありえん、まず左腕も使っていない。よく見ていろ」
「?」
「ふん!!」
「くっ!!」
思い切り振られたクレイモアにガゼフは飛び退く。
「……」
ふとガゼフはアルトリウスの足元を見る。足跡が複数地面に着いているが、それは全部ガゼフの物だけだ。
「(先程から薄々気づいていたが……アルトリウス殿はあの場から一歩も動いていないか)」
あれほどの斬撃を防ぎつつも、その場から一切動かずに居る。間違いなく、手を抜かれている。すると
「良い剣筋だ、ガゼフ殿。昔の私であれば最初の一太刀で切り伏せられていただろう」
「そう言って頂けるとは光栄だ……だが貴方も防いでばかりでは私には勝てないぞ」
ふむとアルトリウスは自身の手に握るクレイモアを見た後
「ガゼフ殿、少しお聞きしたいことがある」
「なんだ?」
一度クレイモアを振った後、ガゼフに剣先を向け
「貴公は何の為にその剣を、何を守る為にその剣を振るう?」
「……王の為、この国の為に我が剣はある。その為ならこの命を投げ捨てる覚悟もある!!」
「ッ!?」
アルトリウスは震えた。別に恐怖等ではない、目の前に居る男。彼は自分よりも確実に強い意志で此処に立っている。ガゼフの言葉にアルトリウスは感激した。
「(……人間は素晴らしい。私には此処までの意思はあったか?いや、無い……弱いからこそ倒れ、何度も立ち上がる。人間の意志の強さは異形なものとは違う。異形となり人間を止めてから気づくか……皮肉な話だ)」
顔が見えていれば彼は笑みを浮かべていただろう。アルトリウスはガゼフの目を見る。
「形は違えど私も王の為に剣を振るう者、ならばこれより敬意を払って相手をしよう」
クレイモアを肩に置き
「ガゼフ殿、我が剣から視線をずらすな、神経を研ぎ澄ませろ。これより踏み込むのはこの世界の者がまだ踏み入れた事の無い領域だ……しかと見ろ、深淵歩きの剣を……!」
この作品のアルトリウスの声は置鮎 龍太郎さんで脳内再生してください(笑)
ダクソの武器はホントいいですよね~。個人的には3にも栄華の大剣枠or刀系武器も出て欲しいところです。