冒険者
最初はこの響きに高揚していた。まだ見ぬ未開の地、モンスターの蔓延る深い洞窟、誰も手に入れたことの無い宝、新しい世界へと踏み込む。そんな夢広がるものだと思っていたのだが……この世界の冒険者という職業は
「対モンスター用の傭兵と言った所か……夢が無い」
組合から出て第一声がこれだ。冒険者の仕事は受けた依頼でモンスター討伐、遺跡の探索が主に行う事……探検とかはないんだね、残念だ。首元にペンダントのようにぶら下げた銅のプレートを弄る、これが冒険者の身分証明証とのこと。銅《カッパー》はつまり最初の階級、次は鉄《アイアン》。まずはその階級にならねば。そして最終目標はアダマンタイトだ、そうなれば依頼も得られる情報も有益なものになってくる筈だ。
「メタスさん、これからどういたしましょう」
「そうだな……組合で使うように言われた宿があるからそこへ行こうか」
「畏まりました」
では組合へ、ふと私の後を追うユーリを横目で見る。彼女はナザリックの中でも人間を軽視していない珍しい存在だ。この冒険者という職業に就いた以上、人間との交流は必須。彼女なら良好な人間関係を構築できると思っている。しかし……美人だよなぁ……美しさと知性を感じさせるやまいこさんのセンスには脱帽だ。まあプレアデスのメンバーも綺麗な者ばかりだ。ずっと見ていたことにユーリは気づいたのか
「えと、ボクの顔に何かついていますか?」
「いや……しかしどうもこの視線はどうにかならんものか」
誤魔化すように視線を周りへと変えると何やら私とユーリが注目を浴びている。
「まるで珍しい物を見る目ですね……」
「ああ、私のこの防具……少々目立ちすぎたかな……」
腕を見ながらに言う。私が今装備しているこの防具はダークソウルの前作、デモンズソウルに登場するボス、つらぬきの騎士の鎧を再現したものだ。外観も気に入っており冒険者として心機一転、埃をかぶっていたこの防具を取り出したのだ。しかし、ソウルシリーズの騎士はどれも良く外れが無い、素晴らしいものだ。もっと作っておけば良かったな……。
「……此処か」
教えられた通りにやってきた建物の前に、扉を開けその中へと。木製の丸テーブルが何箇所に配置され、恐らく同業者だろう男共が真昼間から酒らしきものを飲み、下品な笑いをしている。広さはまあまあか。正面にあるカウンターに足を運ぶ。
「宿を頼みたい」
「……あんた銅プレートだな、相部屋で一泊5銅貨──」
「二人部屋で頼む」
「チッ……なら7銅貨だ、前払いでな」
舌打ちをした店主の目の前に銅貨7枚を放り投げる。
「二階の奥の部屋を使いな」
親指で階段を指す。私達は宛がわれた部屋へと赴く。
※
部屋に入り全体を見渡す。少々埃っぽい、だが別に気にすることではないが。
「メタスさん、本当に此処に滞在するのでしょうか」
「む?……私は此処で良いが。ああ、埃っぽいし汚いからな。ユーリは気にしてしまうか……」
ユーリは首を横に振る。
「仕方ないとはいえ、メタスさんがこのような場所へ滞在するのは心が痛みます」
割り切っているだろうがやはりユーリは快くは思っていないか。私はベッドまで歩む。
「ふむ……」
ベッドへ腰を下ろすが、そこまでふかふかしていない。実際に寝たらあんまり心地よくは無いだろうな。さてと前振りし
「お前の気遣いは嬉しい、しかし今此処に居るのはナザリックのアルトリウスではない、冒険者メタスだ。お前もまた同じく、ユリ・アルファでなくメタスの仲間ユーリだ、いいな」
「はい」
前もって、メタスの時である私に対する態度を変えるようには言った。様付けは直ぐ無くなってくれたが、流石にタメ口は使えないか。まあユーリは真面目だからな、そこら辺は仕様がない。
「まあ、こういうのも悪くは無いと思っている。気楽にいこう」
「は、はあ……」
気分を変え、部屋の窓を開けて外を見るが、都市というだけあってやはり活気がある。道行く人々を眺めると、背中に大きな剣やら何やらをを携えている者もちらほら。ああ、特にあれは目を引く、バケツみたいな兜に太陽の絵が描かれた鎧……
「……はあぁ!?」
「め、メタスさん!?」
慌てて部屋を飛び出す、階段を勢いよく下りる、他の人間に当たらないように外へと出る。
「今の人は何処に……」
何処を見渡してもさっきのバケツ頭は見当たらない……だが、もしかしたらまだ近くに居るかもしれない。
「おいあんた」
しかしあの人が居るはずが……見間違いか?
「てめぇ聞いてんのか!」
いや、見間違いのはずが無い、あんな目立つ見た目なんだぞ?……ん?振り向くと何やら男が騒いでいた。
「ようやくこっち向きやがったか。どうしてくれるんだ!酒が台無しになったじゃねぇか!」
あーそういえばテーブルに少し当たった気がするな、それで酒が落ちたか何かして怒っているのか。
「悪かった、急いでいたものでな。それで、弁償すればいいのか?」
「当たり前だ!!こちとら……」
すると置いてきてしまったユーリが駆け寄ってきた。
「メタスさん、何か御座いましたか?」
「いや、少し見覚えのある人が居てな、つい飛び出してしまった。まあ見失ったが」
「なあ、その姉ちゃんお前の連れか?」
「……そうだが」
突然私からユーリへと向きを変え、嘗め回す様に彼女を見て下卑た笑みを浮かべた。なんか次の言葉が大体想像がつく。
「酒の代金はいらねぇ、その代わりにこの姉ちゃん貸しな!」
やっぱり……期待を裏切らない男だよ。
「断る」
「何?」
「あっ……」
ユーリの肩を抱き寄せる。
「彼女は私の物だ、誰にも渡しはしないし貸しもしない。だが酒の代金は弁償しよう」
彼女をそっと離し、男に左腕を突き出す。握っていた手を開くと数枚の金貨が、男は慌ててそれを空中で受け止める。
「それで足りるだろう」
「……けっ、我慢してやらぁ」
金を受け取った男は満足してくれたようだ、酒場へと戻っていく。……柄にも無くかっこつけてやってみたけど……何か思い返すとすっごい恥ずかしい!何!?私のもの!?いやいや!流れでああいってしまったけど、やっぱユーリに引かれてるよなぁ……
「……」
チラリとユーリを見たが、俯いていて表情が解らない。 怒らせてしまっただろうか……
「す、すまないユーリ。あの場を凌ぐ為に思わず……」
「トラブルを回避するためのあの行動、正しいかと思われます。お気になさらないでください、メタスさん」
笑顔でユーリは言う。……怒ってないのか?
「そういえば、見覚えのある方が居ると言っていたのですが……」
「ん、ああ……見失ってしまった。恐らくあれも冒険者……会える日が来るかもしれない。さて、宿は確保した、次は依頼を受けよう。組合へ向かうぞ」
「はい」
※
円形劇場の中心で金の鎧の騎士と漆黒の鎧を纏った者が二人。
「ではアインズ様、何時でも構いません。打ち込んで来てください」
「ああ」
グレートソードを両手に構えた戦士、アインズはオーンスタインに肉薄する。
「うぉおお!!」
力強く振られたその右手の剣はオーンスタインの槍に防がれる。左手の剣で突くが後ろへと飛び回避、アインズも前方へと跳躍し更に攻撃を加える。
「でええぇぇい!!」
勇ましい咆哮と共に双刃は竜狩りを刈り取ろうと迫る。だが全ての攻撃はいなされ、決定打どころかまともな一撃すら与えられない。ある程度剣と穂先が切り結ぶとアインズはピタリと止まる。オーンスタインはゆっくりと構えをとき
「……上手くいかないものだな」
アインズはボソリと呟く。
「流石は竜狩りオーンスタインか」
「お褒めに預かり光栄で御座います」
彼の前に膝を着き、アインズはヘルムを消す。
「やはりこうして剣を取って戦うというのも良いものだ。しかも相手は近接職に特化した戦士、経験になる。それでどうだ、オーンスタイン、何か指摘するところはあるか?」
「恐れ多きながらお答えさせて頂きます。アインズ様の剣より振るわれる一撃、素晴らしいもので御座います。しかし、豪腕にて振るわれるだけの剣では素早い者にとって恐るるに足らず、かと」
「成る程……力任せだけでは駄目か……ではもう一度手合わせしてもらいたいが構わないか?」
「望まれるなら何時まででもお付き合いいたします」
「ありがとうオーンスタイン」
もう一度アインズは剣を構えヘルムを装着、オーンスタインはくるりと槍を回し彼をみすらえる。
「(アルさんだって頑張ってるんだ、俺も一つでも何かを身に付けないと……まずは何時か必要になる近接戦、それを完璧なものにしなければ!)」
地面を蹴り上げ、漆黒は黄金へと駆ける。
※
「すまない、カッパーで受けられる依頼で一番難易度が高いものはあるか?」
組合で私は受付嬢に聞く。正直、掲示板に貼っている依頼書は私では読めないものであった。ユーリも文字が読めない、だからこうして聞くしか無い。
「解りました……今でしたらこれですね。ここからやや離れた森林地帯で低級のモンスター討伐というものが」
「ならばそれで構わない」
「畏まりました、ではこの依頼を引き受けるということで申請しておきます、少々お待ちを」
手続きが済むまで時を待つことにする。モンスター退治か、精々楽しませてもらうとしようか。
鎌、ありますよね。生命狩りの鎌とか。そしてブラボの葬送の刃。個人的に葬送の刃のモーションがめちゃくちゃかっこいいと思うんですよね。仕掛け武器という少しジャンルの違うものではありますが、葬送の刃の鎌モードのモーションで生命狩りの鎌を振るえたら、とても素晴らしいと思うんですよね~