なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第五話・レヴィの新必殺技!(後編)

 

 

第五話・レヴィの新必殺技!(後編)

 

 

 

 

 

Side~フェイト=テスタロッサ

 

 

良く分からないまま終わった勝負の次の日…

 

「さぁ今度こそ本当の勝負だ!!」

 

結界を張った丘の上で自信満々に指差して来るレヴィ。

 

私はこのまま模擬戦やっても良かったんだけど…

 

 

 

なのはの眼が怖い。

 

 

 

危なっかしいレヴィを心配してるんだろう。

正直私も昨日のままなら危ないとは思うしこのままやってもいいのか…

 

「そう警戒しないでやって見ろって。俺が無策で戦わせると思うか?」

「速人お兄ちゃんの作戦って言う方が危ない気がするんだけど。」

 

楽しそうな速人を冷めた目で見るなのは。

 

なのはは色々言うけど速人の事一番信頼してる。

筈なのに、あれだけ素直で優しいなのはが速人の扱いだけ微妙。

 

「喧嘩は良くないよなのは。」

 

勿体ない気がしたからちょっと止めて見た。

 

「そうだぞなのは。照れるのは分かるがいつも通り俺を称えていいんだぞ。」

 

だけど…胸を張って堂々と言ってくれた速人のセリフのお陰で、空気が凍り付いた。

速人がこんな感じだからなのはからの扱いが良くないんだろうか?

 

「ボクを無視するな!!」

「あ、ご、ごめん!」

 

すっかり置いてきぼりにしてしまっていたレヴィに怒られて謝る。

 

結局なのはが納得しないままだったけど、レヴィと模擬戦する事にした。

 

 

 

 

瞬間、レヴィが高速移動に入る。

しかも私目掛けて。

 

 

前回と同じ危ない展開に少し怒るつもりでプラズマランサーを…

 

「っぁあっ!!」

 

放とうと思った瞬間、全身に痺れが走ってプラズマランサーが消えた。

 

 

 

「見たか新技!走破・雷鳴陣だ!!」

「く…っ!あぁっ!!」

 

真正面じゃなく私の斜め前に移動していたレヴィは、大剣形態のデバイスを振りかぶる。

私は痺れの残る体でバルディッシュを構え、大剣の一閃をまともに受けてそのまま吹き飛ばされた。

 

 

何とか体勢を立て直す私の前で、レヴィは凄く満足げにポーズを取っていた。

 

 

 

高速移動魔法と攻撃は同時には出来ない。

 

 

 

ただでさえ移動中は抵抗緩和とか使わないと全身がバラバラになる速度が出るのに、そんな状態で攻撃動作を行えば絶対に身体が砕ける。

 

射撃魔法を使うにしたって高速移動中の経路自体は移動前に決めておくのが普通だし、あんな速さで動いてる最中に射撃のタイミングなんて取れる訳がない。

 

 

 

 

なのに…どうやったんだろう?

 

 

 

 

「…凄いね。」

「当たり前だ!力を司るボクと最強のマスターで考えた技だぞ!!」

 

胸を張って言い切るレヴィ。

速人は信頼されてるんだね。

 

「でも…負けないよ。」

「ボクだって!!」

 

互いに告げて、私達は斬り結んだ。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

「お兄ちゃん…どんな無茶させたの?」

 

高速移動魔法の最中に攻撃なんて危な過ぎる。

内容によっては止めないとと思って聞くと、お兄ちゃんは首を横に振った。

 

「魔力消費は多めだが、別に無茶はさせて無いぞ。ただ単に雷撒きながら移動しただけだ。」

「雷撒きながら…あっ!!」

 

何をさせたのかようやく分かった。

 

武器を構えて移動中に攻撃すれば反動で間違い無く身体が壊れるし、移動中に射撃なんか出来ない。

 

だから移動中に電気に変換した魔力を撒いて移動範囲をそのまま攻撃範囲に変えたんだ。

 

「お前大方、『付焼き刃で技術的に洗練されて無いものなんて危なくて意味が無い』って思ったんだろ。」

 

言われて頷く。確かにそう思ったけど…それはお兄ちゃんだって同じ筈だ。

剣の練習毎日毎日基礎から繰り返してる筈だし。

 

「極める剣と違って、新魔法って言うのは新しい道具と同義だ。欠陥があっても、ないとあるとじゃあった方がいい場合が多い。」

 

少し言いたい事が分かった。

 

車とかで考えると、今の方が昔と違って凄く性能がいいけど、歩くのと不便な昔の車とで比べれば、昔の車の方が遠くへ行くのに凄く便利だ。

 

「もちろんアレも、方向や放出時間を絞る事で魔力消費を削減したり威力を上げたり出来るには違いないし、余計な事してる分発動に手間がかかるのも確かだ。だけど…便利だぞ。」

 

自身たっぷりに笑うお兄ちゃん。

私だって分かっている。だって今実際に目の前で見たんだから。

 

「でも…それと危ないのは別だよ。」

「仕事じゃないし固い事言うなって。」

 

口調は軽かったけど、少しだけ何も言えない空気を感じた私は黙り込む。

お兄ちゃんは危ないのを分かった上で無茶をする事を選んで、だから管理局に入れないって言ってたくらいだから、レヴィちゃんがやりたくてやってる事に文句を言いたくないんだ。

 

けど、レヴィちゃんの戦いが危ない事に変わりはなくて、どうするか決め兼ねてた私は複雑な気分で空でぶつかる二人を眺めていた。

 

 

 

Side~レヴィ

 

 

 

「電刃衝!」

「ファイア!」

 

ボクの放った魔力弾とフェイトの放った魔力弾がぶつかってはじける。

 

その後すぐに真っ直ぐにフェイトの元に飛ぼうとすると、フェイトの方も真っ直ぐに向かって来た。

 

「えい。」

「なっ!?」

 

デバイスを振っても当たらないくらいで止まってフェイトの前にバインドを使う。

フェイトはバインドにかかる前に止まった。

 

「光翼斬!」

「く…っ!!」

 

フェイトはボクが放った円形の魔力刃を防ぐと、魔力刃と障壁がぶつかって二つとも砕けた。

 

フェイトは固い方じゃないから少しは効いてる筈。

ならここは…追撃だ!

 

「はあぁぁっ!!」

 

ボクは構えた鎌を全力で振り抜いて…

 

 

 

何かにつっかえた。

 

 

 

気が付くと目の前にフェイトの顔があって、ボクの鎌はデバイスで止められていた。

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

蹴り飛ばされたボクは急いで体勢を整えると、フェイトがシューターを作っているのが見える。

ボクもあわせて魔力弾を作って…

 

「プラズマランサー…ファイア!!」

「電…刃衝!!」

 

撃ち合った。

ぶつかって砕ける魔力弾を見ながら、現状を振り返る。

 

…マスターの言ってた通りだ。

マスターはボクとフェイトが失敗しないで戦ったら同じくらいで疲れるって言ってた。

 

そして、そうなった時が…

 

 

 

 

必殺技のチャンスだ。

 

 

 

 

戦闘の終わりに怪人に叩き込まれた必殺技。

そろそろ…いい筈。

 

「ボクは絶対負けない!バルニフィカス!!」

 

カートリッジをロードしてバルニフィカスを剣の形に変える。

 

フェイトはそんなボクを見ながら笑った。

 

「私も負けないよ。」

 

そう言ったフェイトのデバイスが、二つの剣になる。

 

マスターみたいだ…

 

「格好だけ真似したってマスターみたいにコンボも知らないフェイトに負けないからな!!」

「コン…?っ!!」

 

首を傾げたフェイトだったけど、ボクが接近するとすぐに反応した。

 

ボクの剣とフェイトの剣がぶつかってバチバチと雷の弾けるような音が鳴って、フェイトが揺れる。

 

何度か離れて斬ってを繰り返していると、フェイトが揺れなくなって来る。ボクはそんなフェイトの様子を見ながらその時を待った。

 

目を基本によくフェイトの様子を見ていれば、必ず変わる。それが必殺技を出すタイミング。

 

マスターにはいっぱい教えて貰って助けて貰った。

後は…ボクがマスターを信じるだけ!!

 

何回か普通に斬り合っていると…

 

 

 

フェイトの目が変わった。

 

 

 

今だっ!!

 

 

 

「雷神・疾風脚!!!」

「な…」

 

これが、ボクがマスターから貰った必殺技。

 

バルニフィカスに込めていた魔力も一緒に右足に集めての蹴りは、フェイトのお腹に当たる。

 

「うあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

森に吹き飛んで行ったフェイト。

 

「見たか!これがボクの必殺技だ!!」

 

森の中に消えて行くフェイトを見ながら、ボクはバルニフィカスを振り上げて堂々と叫んだ。

よーし…凄いぞ強いぞカッコいい!!

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

「う、うわぁ…」

 

驚くなのはを見ながらニヤけそうになる頬を無理やり平常に保つ。

 

武器を振るうには必ず多少なりとも減速しなければならず、飛行速度を維持したまま攻撃するには体当たりしかない。

だが体当たりなんて面が広くて攻撃力の少ない事をするくらいなら、『丁度画面でやってる攻撃』を借りればいい。

 

そう言う訳で加速しながらノンブレーキで全力で魔力を込めた蹴りを放つ事にした。

高速移動と攻撃が両立出来て、攻撃にしたってほとんど紫電一閃と同じ。

 

必殺に近い威力はあるんだが…

 

 

「ですがこの勝負、フェイトの勝利ですね。」

 

 

静かに告げるシュテルに頷くなのは。

 

シュテルの言う通りで、フェイトは蹴りが当たる直前に防御魔法を展開していた。

障壁自体は抜いたものの、直撃じゃない以上まだやれるだろう。

完全に展開されていなかったからかレヴィは気付かずに満足げにしている。

 

それにしてもあの一瞬に気付くとは…魔法戦なら見切れないものが無くなりつつあるな、なのはも。

 

そして…俺達の予想通りレヴィはバインドに捕らえられ、その周囲に複数の魔法陣が瞬く。

 

まだ無理があった…か。とはいえ健闘したし、まためげずに頑張ればいいか。

 

 

 

Side~フェイト=テスタロッサ

 

 

 

「ごめん、レヴィ。無茶ばかりするから心のどこかで勝って当然だって思ってた。でも…強かったよ。」

「勝手に昔話にするな!ボクは強いんだ!!」

 

レヴィの返事に苦笑いしつつ、魔法の準備を整える。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス…疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ…バルエル・ザルエル・ブラウゼル…」

 

強固な防御を破るとか、射程があるとかならプラズマザンバーブレイカーのほうが効果的だけど、対人で大きなダメージを与えるなら、こっちの方が強い。

 

「フォトンランサー・ファランクスシフト…ファイア!!!」

 

掛け声と共に一斉掃射が始まり、レヴィの姿が魔力の残滓に飲み込まれていった。

 

 

 

 

Side~レヴィ

 

 

 

一応防御はしたけど、飛ぶどころか意識まで落ちそうな位に魔力ダメージを受けてボクの身体はゆっくりと墜ちていく。

 

…あれだけマスターに色々して貰って、また負け―

 

 

 

 

「…けて…か。」

 

 

 

 

マスターに見せてもらった人たちは、誰も諦めてなかった。

 

 

それに―

 

 

マスターだって、諦めなかったからボク達はここにいられるんじゃないか!!

 

 

「負けてたまるか!バルニフィカス!!」

 

無理矢理身体に力を込めて意識を戻す。さすがに魔力は戻らないけど、そっちは全部のカートリッジをロードして、無理矢理高める。

 

 

 

「雷刃!滅殺!!」

 

 

 

高めた魔力を使って最後の一撃を撃つためにボクはバルニフィカスを振り上げた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

「…最早『模擬戦』の域を超えてますね、これは。」

 

静かに告げるシュテルの言葉に内心頷くものの、俺は同時に嬉しかった。

何しろシューター喰らっただけで叫ぶ元気もあるような頃合に終わった前回と違って見事に立ち直ってくれたから。

 

「けど…あのまま撃っても当たらないよ。いくらフェイトちゃんも疲れきってるからってやっぱり無茶してみょ…ひゃ?」

 

何か言ってるなのはの頬を引っ張りつつその目を覗き込む。

こいつは模擬戦での無茶がどうこうと言う台詞を吐いていい立場だと思っているのだろうか?

 

「お前…前回何したっけ?公開着替」

「わ、悪かったからもう言わないで欲しいの!」

 

わたわたと頬を赤く染めた状態で俺を止めるなのは。

そうこうしている間にレヴィの準備は終わったようだ。

準備中何もしなかったところを見ると、消耗しているところに必殺技を受けた後にファランクスシフト撃ったフェイトにはもう余裕が無いんだろう。確実にかわす事を優先しているようだ。

 

しかし、それでも一つ気がかりな事がある。

 

 

 

剣振り上げてから少し経ったが…ここまで発動に時間かかるのだろうか?

 

 

 

疑問を抱いた瞬間、レヴィの姿が消えた。

 

「な、ああぁぁっ!!」

 

驚いたフェイトが直後、雷に打たれたように硬直する。

 

 

走破・雷鳴陣。

 

 

しかも止まった時に自分の前方にだけ放つように調整して魔力消費を抑えたある改良版だった。

硬直しているフェイトの前にいるレヴィは…

 

 

 

「極光『剣』!!!」

 

 

 

魔力を溜めた剣を使って直接フェイトを斬った。

 

終わったと思ったが、何故かあまり派手な現象が起きない。

それなりに魔力を引き上げていたはずなのだが…

 

そんな俺の疑問は、すぐに解消される。

 

フェイトの胸元に魔力溜りのような塊があった。

 

間違いなくレヴィの魔力だが、何であんな形に?

 

 

 

「この力で…ボクは飛ぶ!!!」

 

言いながらまわしていたデバイスを止めてポーズをとったレヴィ。

 

 

 

 

 

直後、フェイトの胸元にあった魔力溜りが弾け、雷鳴が鳴り響いた。

 

 

「あああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

雷を受けて叫ぶフェイトを背景にポーズをとるレヴィ。

 

 

 

間違いなく、俺が見せた特撮の真似だ。

 

 

 

確かに参考にさせる気で見せたがまさかここまでやるとは…

 

でも、思えばこの技コンボになってるし、レヴィは俺が見せたの素直に守ってくれたんだろう。

まさか決めポーズまで含めて何もかもと言うのは予想外だったが…

 

「や…やったぁ!マスター!見てたボク…」

 

光が収まって大喜びしながら俺を見るレヴィ。

だが、話している最中にその身体が崩れ落ちる。

 

フェイトはなのはに任せて俺は落ちてくるレヴィを抱きとめた。

 

「ボク…強くてかっこいい…」

 

意識がおちた状態で寝言のように呟くレヴィ。

よく見ればバリアジャケットはかなりボロボロだった。本当に頑張って持ちこたえたんだろう。

 

「ああ…本当いいもの見せてもらった。かっこよかったぜレヴィ。」

 

幸せそうに眠るレヴィの頭を撫でながら、ここまで信用してくれたことに心を動かされた俺は、もっと真っ直ぐに頑張ろうと素直にそう思った。

 

 

 

 

 


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