なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第四話・レヴィの新必殺技!(前編)

 

 

第四話・レヴィの新必殺技!(前編)

 

 

 

「ルベライト。」

「あっ!!」

 

シュテルのバインドによって拘束されるなのは。

闇の補助がない為魔力値はなのはと大差無くなったようだが、知識量と理の特性はそのままな為、戦術レベルはシュテルの方が上のようだ。

 

「ブラストファイヤー!」

「っ!レイジングハート!」

『ジャケットパージ。』

 

と、なのはは何をトチ狂ったのかバリアジャケットを消す。

バインドも吹き飛んだがさすがに致命な気がするんだが…

 

が、なんとなのはは再生成もしないままプロテクションを展開する。

 

…確かにそれなら間に合うが、真っ裸で空中にいるのはさすがにどうかと思う。

 

普段なら衝撃を抑えてくれるジャケットがない為、防御魔法を張った手が裂けて傷が出来ているようだが、無視したなのはは砲撃の終了を待たずにシューターをシュテルに叩き込んだ。

 

…シュテルは戦術的にかなり優秀なんだが、意地張ったりしないからな。

もう少し負けん気あれば面白いんだが。

 

 

自分の格好に気付いたなのはが慌ててジャケットを生成するのを横目に、落ちるシュテルを受け止めた。

シュテルは落ちた自分の様相を認めると、俺の顔を見つめた後目を伏せる。

 

「…負けました。」

「アレで勝ったと喜んだら、いろんな意味で間違ってるから気にするな。」

 

なのはを見て見れば何かディアーチェに詰め寄ってる。

大方恥知らずとか言われたんだろうな。

 

「よーし!次はボクだ!!さぁ!誰が相手だ!?」

 

レヴィが自身のデバイス…バルニフィカスを頭上でグルグル回す。

なのはの慣らしで来たのに何でレヴィが張り切ってるんだか。

 

「…それじゃ私もリベンジ。」

 

だが、フェイトが何故か楽しげに名乗り出た。

アイツ、バトルマニアか。

 

「フェイトちゃん頑張って!!」

 

なのはの声援に笑みを返す事で答えるフェイト。

俺は軽くシュテルをつついて声援を促す。

 

「宵の騎士として無様に負ける事がないように。」

「何で!自分が負けたくせに!!」

「負ける気なのですか?」

「ボクは勝つ!!!」

 

シュテルから放たれたのは挑発だった。

単純なレヴィはアッサリ乗せられる。

 

ま、士気が上がったならいいか。

 

俺はディアーチェとシュテルの間に座り、構えるフェイトとレヴィを見る。

 

「それじゃ構えて…始め!!」

 

俺の合図を聞いた瞬間、高速移動するレヴィ。

 

 

 

 

…が、フェイトの『目の前』でバルニフィカスを振りかぶったレヴィは、フェイトが準備していた射撃魔法を直撃して落ちて行く。

 

 

「何でぇぇぇ!?」

 

 

…レヴィ、それはこっちのセリフだ。

何処の世界に開始直後に無計画で真正面に飛び込む馬鹿がいる。

牽制のつもりで準備していたのだろうプラズマランサーを全弾直撃させて終わったフェイトの方もむしろ呆然としている。

…呆れてるのだろうか?

 

 

おまけに…

 

 

 

 

 

 

 

「何で真面目にやらないの!?」

 

試合終了後、レヴィはなのはに説教されていた。

雰囲気に呑まれたのか負けたのがショックなのか、いつもの元気がないレヴィ。

 

「や、やったよ…」

「真面目にやってどうして目の前に高速移動魔法で現れるの!普通の飛行と違ってどうしても始めと終わりに間が出来るんだからやられに行っただけじゃない!!」

 

思いっきり落ち込んだレヴィが、ちらちらと俺に目を向けて来る。

念話で助けてと言わない辺り、どうにかして欲しいけど泣き付くのは嫌なんだろう。

 

「それで?どうして正面に行ったの?アレだけ速いんだから背後とか行けるよね?」

「だ、だって…」

 

言い淀むレヴィ。

目茶苦茶マズい理由なんだろうレヴィはなのはに怯え…

 

 

 

 

 

意を決したように強く地面を踏み鳴らした。

 

 

 

 

「そんなのかっこよくないじゃないか!!!」

 

 

 

 

言い切った。

 

 

凄ぇ。

お怒りモードのなのは相手にあんな真っ直ぐ啖呵きれるとは。

 

「レヴィ!!」

 

なのはに本気で火がつく前に声を掛ける。

割と真面目な一喝になのはも含めて全員の視線が俺に移る。

 

「お前には足りないものがある!それは―」

 

静まる一同。

 

俺は満足するまでためて…

 

 

 

自信満々に言い切った。

 

 

 

「必殺技だぁっ!!!」

 

 

 

緊張感が霧散した。

 

 

 

が、ただ一人未だに本気のレヴィが目を輝かせて手を叩く。

 

「そ、そうだったのか!!」

「って違う!違うよレヴィちゃん!!」

 

フリーズから立ち直ったなのはがいち早く割り込む。

だが時既に遅く、俺はレヴィを連れて家に向かって駆け出した。

 

「暗くならないうちに帰れよー!!」

「お、お兄ちゃんの馬鹿あぁぁ!!!」

 

なのはの怒りの声を背に、俺は結界を出た。

 

 

 

 

 

テレビにやたら服装に合わないメカベルトを装備した男が写る。

 

掛け声と共にベルトを操作すると、男の姿が消えて、フルアーマーになった。

 

「おぉ!変身した!?」

「これはレヴィも出来てるから大丈夫だ。」

 

バリアジャケットのセットアップもそんな感じだし。

 

問題はここから。

 

「必殺技は?」

「そうそこだ。今普通に戦ってるだろ?」

 

ゴテゴテの怪生物と殴る蹴るの乱戦を行うフルアーマー。

 

「初手から大技行く必要は無い。見てろ、ここだ。」

 

段々弱ってよろける怪人に大して、やたらと光る足で蹴りかかるフルアーマー。

怪人が光った後に爆発して粉のように散っていった。

 

「おおぉぉ!!」

 

目を輝かせるレヴィ。

そうまで喜んでくれるなら嬉しい限りだ。

 

だが、レヴィはふと首を傾げる。

 

「ボク持ってるよ必殺技。それに最初から使って無いし。」

「でも一撃で決めようとしただろ?雑魚以外にアレは無理がある。ちなみに必殺技ってどんなんだ?」

「雷刃滅殺極光斬!!」

 

知らなかったので聞いてみると、なんだか凄そうな名前が帰って来た。

 

「ネーミングセンスはなかなかだ。やっぱ技の名前はかっこよくないとな。」

「本当?かっこいい!?」

 

何か相当嬉しかったらしい。

なのはもそうだが、この手の事に超淡泊だからなぁ…

 

 

 

 

って違う。

 

 

 

 

「じゃなくて、どんな技なんだ?」

「えっと…グルッとやってピカッとなってドーンって撃つ。」

 

動きを交えた説明。

撃つって事は放出系か。魔導師放出系好きだな。

 

「だとしたらマズいな。」

「何で?」

「レヴィは高速型だろ?合う奴を身に着けないと。」

 

俺はレヴィと共に外に出る。

 

「バルニフィカスを持って構えて。」

「うん。」

 

素直に構えたレヴィに俺はナギハを手に斬りかかる。

 

「え?わ!わ!」

「取りあえず魔法は使わないように。」

「えぇ!?」

 

連続でバルニフィカスを叩いてレヴィの手から弾き飛ばす。

 

俺はそこで…

 

 

「雷刃!滅殺!!」

 

レヴィのモーションを真似て振りかぶる。

呆然とそれを眺めるレヴィ。

 

「極光斬!!!」

「うわっ!と…」

 

大振りを辛うじてだが回避するレヴィ。

 

「と、まぁこんな感じで簡単に回避される。バインドでもかけないと使えないだろ?」

「そうだよ。だからバインドとか使わないと撃たない。やっぱり問題無いんじゃ?」

「ふっふっふ…そんなお前に見せてやろう。コンボの恐ろしさと言うものを。」

 

再度バルニフィカスを握り直したレヴィに連続で斬りかかる。

 

「わ!わ!わっ!!」

 

頃合を見計らって左の徹を叩き込む。そしてバルニフィカスを手放した瞬間に溜めを作り…

 

踏み込むと同時に右の切先をレヴィの喉元に突き付けた。

 

「避けられたか?」

 

軽く首を横に振って否定するレヴィ。

だが、表情が浮かない。

 

「今の必殺技?」

 

どうやら威力に疑問があるらしい。

 

俺はレヴィに障壁を張らせて構え、踏み込むと同時に突きを一閃。

 

障壁を貫いたナギハはレヴィのジャケットを軽く裂いた。

 

「銃刺突『ガンブレード』、破壊力は見ての通りだ。」

「お…おおぉぉ!凄い!!」

 

なのはの障壁だと破れないんだが、高機動型のレヴィの障壁ならどうにかなったな。

 

「とまぁこんな感じの相性があるんだ。俺みたいな連続攻撃をするかはともかく、高機動のレヴィは高機動の技を作った方がいいと思うぞ。」

「で、それを最後に当てればいいんだね!よーし!!」

 

張り切るレヴィと共に新魔法の開発に勤しむ俺を、なのはや宵の騎士一同は複雑そうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

その夜、鍛練から戻って来て寝ようとソファに行くと、ディアーチェの姿があった。

 

「何故止めない?」

 

ディアーチェは俺を真っ直ぐに見据えてそう聞いて来た。

 

「レヴィの事か?」

「貴様なら分かっている筈だ、性能頼りの戦いを一回り弱体化した今の身でやれば危険な事くらい。」

 

ディアーチェの言う通り、注意した方が良かったんだろう。

その方が安全で確実だ。

 

「そうだな、今のまんまだと危なっかしいよな。にしても…」

 

嬉しくなった俺は、不思議そうに表情を歪めるディアーチェに思ったまま告げる。

 

「お前何気に家族思いなんだな。」

「な…」

「一向に馴染む気見えないから心配だったんだけど…いやぁ良かった、何よりだ。」

「だ、黙れ!我がそんな…えぇい!はぐらかすな!!」

 

何か意地張って否定しようとしたディアーチェだったが、話を優先して振り切った。

 

「確かに戦術的には問題だし危なっかしいけど…ああいうの好きなんだよね俺。」

「趣味で戦わせるつもりか。」

 

呆れるディアーチェに対して返す言葉もない。

 

「ふざけてるつもりはないけど否定は出来ないな。」

「ならば一体何のつもりだ?」

 

聞き返して来るディアーチェ。

納得出来るまで聞くつもりなんだな。

 

「前代未聞の不可能ごとって、どんな奴ならできると思う?」

「いきなりなんだ…前代未聞の天才ではないのか?」

「確かに天才も当てはまるが…ようは不可能だと思ってない奴だ。」

 

少し考えを巡らせたディアーチェは、気付いたのか眼を細める。

 

「…まさか、アイツが馬鹿だから不可能を考えないと思ったとか言うんじゃないだろうな。」

「そういう事だ。」

 

何でもないように返す俺を見ながら頭を押さえるディアーチェ。

怒りを押さえるタイプとも思えないし、大方呆れているんだろう。

 

「それにアイツああいうのが気に入ってるみたいだし、気に入ってるなら文句つけたくないしな。普通に生活するのに邪魔なディアーチェの王様気質にも文句言ってないだろ?」

「む…」

 

自分の事を出されて唸るディアーチェ。

言った所で聞く気も無いだろうが、取りあえず文句すら言ってないのは事実だから納得する他無いんだろう。

 

「ま、安心しろって。お前らの主はこの俺なんだぜ?危険なんか全部取っ払ってやるよ。」

 

自信満々に言い切ると、ディアーチェは鼻で笑う。

 

「レヴィを手本にする必要などない、貴様も充分大馬鹿だ。」

 

ディアーチェは理解している。

俺が宣言した事の難度も、俺がその難度を理解した上でこのセリフを言った事も。

だから…

 

「サンキュー。」

「馬鹿よばわりされて礼を言うな。」

 

悪態を吐いた割に、ディアーチェは笑顔だった。

難しいのは分かってるがどうにか有言実行と行かないとな。

 

 

 


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