なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第四話・なのは的お友達『前編』

 

 

第四話・なのは的お友達『前編』

 

 

 

ジュエルシードを集めながら、魔法の鍛錬をするなのは。デバイスを持ってない上に魔法より体術修行のほうが長い俺とは、あっという間に差が開いてしまった。

 

リベンジとばかりに再戦を挑まれ、空中から撃たれ放題。アッサリ敗北。

さすがに卑怯と感じたのか室内で勝負して勝利…虚しい。

魔法鍛錬に精を出したからか、ユーノがまったく気づかなかった少年の持つジュエルシードに気づく(俺がスって回収)。

 

何と言うか、凄い成長ぶりである。

 

 

「ずりぃ。」

「えっ?」

 

 

俺の呟きに、困惑した声を返すなのは。あまりにいきなりなので無理も無いが、ちょっと拗ねてみる。

 

「俺、人生=訓練期間って位なんだぜ?それが実戦一週間位の魔法少女に制空権抑えられた位で手も足も出ないって…」

「いや、ほぼ生身で空中にいる魔導師相手に攻撃仕掛けて打ち落とす速人の方が異常なんだからね?完全な身体強化のみで跳躍補助も飛行系も高速移動系も使ってないのに。」

「なのはも速人お兄ちゃんの方が異常だと思う。室内だと勝てる気しないし…」

 

呆れたいのはこっちだと言うのに何故かダブルで呆れられた。何で!?

 

「空中にいる相手が面倒か…うし、ちょっとやってみるか。」

 

滞空対策でも考える事にしよう。膳は急げと立ち上がり…

 

「あ、あの…今日すずかちゃんのお家に…」

「行って来い行って来い。友達と遊んだってバチ当たらないだろ。ユーノ、何かあったらなのはを頼むぞ。」

 

俺はさっさと部屋を飛び出した。鳥を打ち落としたい所だけど…逮捕されるな間違いなく。となれば方法は一つしかない。

一階に下りて兄さんを捕まえる。

 

「あ、兄さん。ちょっとお願いがあるんだけど…」

「何だ?」

 

答えてくれた兄さんを見ながら、小さく咳払い。

そして、頼みごとをサラッと、出来るだけ自然に告げる。

 

 

 

 

 

「空飛んでくれない?」

 

 

 

 

 

お前が飛べと庭でブン投げられた。いくら人外の兄さんでも無理だったらしい。

対空戦の訓練がしたいと事情を説明したら、姉さんが空中に的を投げる役を引き受けてくれた。

 

 

 

うっし、絶対に何とかしてみせる!!

 

 

 

せっかくの協力を無駄にしない為にも何かしら習得しようと心に決めた。

 

 

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

私は速人お兄ちゃんが去った部屋でさっきまでの話を振り返り、溜息を吐かざるをえなかった。

 

 

「速人お兄ちゃん酷いよね、ずるいだなんて。」

 

 

 

浮遊魔法で空中から一方的に攻撃してたにも拘らず飛べない筈のお兄ちゃんにジャンプ攻撃で敗北。

もう少し高度を維持するように心掛けながら射撃を放ち続けて辛うじて勝利。

室内で、壁や天井を蹴って跳んでくるお兄ちゃんを追いきれず、逃げる事も出来ずに完封負け。

 

 

コレが、一応魔法を使える私と、運動能力を上げられるだけのお兄ちゃんとの戦績。

 

 

ちょっと…と言うかかなり人間止めちゃってると思う。

 

「速人には正直魔導師の事情を良く知ってる僕の方が驚かされるよ。陸戦って言って空を飛ばない魔導師もいるんだけど、あの様子だと強化すらない生身でもそういう魔導師と戦えそうだ。普通に考えたら質量兵器でも使わないと勝てない筈なんだけどね。」

 

ユーノ君にとっては、速人お兄ちゃんの能力は兵器と同じみたい。ちなみに質量兵器って言うのは、地球にある銃や爆弾、ミサイルみたいなもののユーノ君達の住んでる『管理世界』での呼び方らしい。

 

「でも、速人お兄ちゃんは恭也お兄ちゃんには試合で勝ったの見た事無いよ?それと、お父さんが前に言ってたけど、『本物の御神の剣士は完全武装の一部隊にだって負けない』って。」

 

それが本当なら速人お兄ちゃんはまだ普通なのかもしれない。そう思って言ったんだけど…

 

 

「は…ははは…なのはには悪いけど、ちょっと人間かどうか疑っちゃうかも…」

 

 

ユーノ君は震えだしてしまった。初めて魔法に出会った時はとってもビックリしたけど、魔法が常識のユーノ君にはむしろお兄ちゃん達のほうがおかしいみたい。

 

 

今度くーちゃんの変身とか見せてあげよう、きっと本気でビックリすると思う。

 

 

「なのは、そろそろ準備はいいか?」

「あ、はーい!」

 

お兄ちゃんに呼ばれて、私はユーノ君と一緒に部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

元々お兄ちゃんが忍さんと会う約束をしていて、久しぶりにと言う事で忍さんの妹のすずかちゃんに、アリサちゃんともども、遊ぼうと誘われたのが今日のお出かけ。くーちゃんまで来られるみたいで、アリサちゃんが連れてくる予定になっている。

 

ジュエルシード探しにかかりっきりだったし、せっかく休みの日に一緒できる都合がついたのだからと言う事で今日は遊ぼうと言う事になった。

 

 

 

はずだったんだけど、バスに乗った今日この時点では、この後あんな事になるなんて予想もしていなかった。

 

 

 

 

「で、ブラコンのなのははここ最近どーしてあたし達を放置で速人にへばりついてるの!?今日こそ話してもらうんだから!!」

 

 

 

 

半分怒って半分ニヤニヤしてるアリサちゃんに詰め寄られた私は、その場に置かれたノートのタイトルを見て、今回呼ばれた訳についてそこではじめて知った。

 

 

 

『第一回、高町なのは熱愛発覚!友情より愛情なのか裁判!』

 

 

 

ノートには、殴り書きしたかのようにそう書かれていた。

 

 

ただからかわれてるだけなら怒った所だけど、あんまり遊べなくなった事を心配されてた上、お兄ちゃんと一緒にいるのを優先してる事がバレてる以上、後ろ暗いのは私の方で。当然、魔法の事を話す訳にも行かなくて。しかもアリサちゃんは納得が出来るまで話を詰めたがるタイプ。

 

 

高町なのは、魔法に関わって以来最大のピンチ。

 

 

口が軽い速人お兄ちゃんがいてくれればと思っちゃった私は、本当にブラコンなのかとしばらく自分を疑う羽目になった。

 

 

以下、ちょっと見せたくない軽い口喧嘩になっちゃいました。

 

「いろいろあって遊べなかったのはごめんなさい。だけどこれはあんまりなの!お兄ちゃんと熱愛って何!?」

「熱愛は熱愛でしょ!?男の子と女の子が四六時中ベッタリしながらイチャイチャウチャウチャしてる事よ!」

「仲がいいのはいい事なんじゃないかな…」

「誤解なのすずかちゃん!速人お兄ちゃんはなのはが下手だったり失敗すると大笑いするんだから!」

「それもそうね、バカっぽいし恭也さんと比べると超子供で頼りないし。」

「ア、アリサちゃん酷い!子供なのはしょうがないと思うの!それに恭也お兄ちゃんとだって稽古でいい勝負するんだから!」

「ふ、釣りにかかったわねなのは!こんなちょっとの言葉に反応して庇いだすなんてやっぱり熱愛かブラコンじゃない!」

「あ…ちっ、違うもん!」

「速人君、口調が軽いから誤解されるけど、お勉強以外では結構やさしくて頼りになるもんね。」

「す、すずかちゃんまで誤解してるー!!」

「なのは、正直に言えば楽になるわよ。兄妹だから遠慮してるって言うなら心配要らないし。」

「確かお姉ちゃんも美由希さんと恭也さん争奪戦をやったって言ってたよ?」

「にゃ!?ホントなのすずかちゃん!」

「食いつく位興味あるんじゃない!素直になりなさいなのは!馬鹿にしないし手伝ってあげるから!!」

「って違うよ!本当に今のは違うのーっ!!」

 

そんな、まるで知らなかった新しい話を含めた騒ぎ。

でも、そんな内容をあまりに大声で話していたせいか…

 

 

 

 

「皆様、忍お嬢様と恭也様から伝言です、『今の話をこれ以上続けたり外の人に漏らしたりしたら覚悟しておくように。』だそうです。」

 

 

 

 

静かに現れたノエルさんによる死刑宣告一歩手前の伝言で、ようやく不毛な言い争いは終わりを迎えてくれた。

 

それにしても恭也お兄ちゃん…わざわざ口止めするって事は本当の事なのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

大騒ぎが終わったところで、ジュエルシードの反応があった。

 

『なのは、ジュエルシードだ!すぐ近く!!』

『う、うん!判ってるけどでも…』

 

一緒にいるのに急に抜けられない。どうしようかと考えていたら、ユーノ君が走って行ってしまった。

あ、そうか!

 

「ユーノ君!ごめん、ちょっと連れて来るね!」

「手伝うわよ?」

「大丈夫!」

 

ユーノ君を追いかけるフリをして、その場を抜け出した。今回は助かったんだけど、速人お兄ちゃんと一緒にいるとこんな事ばっかり慣れていくようでちょっと複雑なの。

 

『結界を張る。そうすれば外部から隔離されるからそこで変身を!』

 

お決まりになった手順。世界の色が変な風に歪んでいって、結界に入ったところで私は変身した。

ジュエルシードは…と、反応を探してみると…

 

 

 

探すまでも無いとっても大きなネコさんがいた。

 

「コレって…暴走?」

「いや、大きくなりたいって願いが正しくかなえられたんだと思う。」

 

ちょっと気が抜けてしまった。

とは言え、ジュエルシード自体は危ないものに代わりはないし、こんなに大きくてもすずかちゃんが困っちゃう。何しろ木より大きいんだから。

 

「と、とりあえず封印しちゃうね。」

 

私はそう言ってレイジングハートを構えて…

 

 

 

 

ネコさんに金色の光が突き刺さるのを見た。

 

 

 

苦しそうに倒れるネコさん。私は慌てて光が飛んできた方向に視線を移す。

 

そこにはとても綺麗な女の子が飛んでいた。

 

少し寂しそうな目で、黒い杖を振り上げる女の子。私は慌ててネコさんと女の子の間まで飛んでいって、放たれた光の弾を防ぐ。

 

 

 

「同系統の魔導師…ロストロギアの探索者か。」

 

 

 

見た目と同じく、綺麗で悲しげな声が私の耳に響いた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 


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