なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第八話・折れない心、届かない心

 

 

 

第八話・折れない心、届かない心

 

 

 

 

どっかの馬鹿が一人で格好つけにいったと聞いて、俺となのはは慌てて増援に向かった。

…ま、騎士は接近戦ばっかみたいだし、あんまり気にはして無かったんだけどな。

予想通り無事だったフレアだったが、何かリライヴまでその場にいた。

 

「リライヴちゃん!今度こそお話聞かせて貰うから!!」

 

 

なのはは宣言と共にレイジングハートをリライヴに向ける。

リライヴは呆れた様に目を細め肩を落とした。

 

「言ってる事とやってる事が違うと思う。」

「全くだ、少しはリライヴを見習え。戦闘に容赦は無いが殴って言う事聞かせようなんてした事無いぞ。」

「お、お兄ちゃんはどっちの味方なの!?」

 

俺はリライヴに続く様に肩を落とす。なのはは俺に向かい抗議して来るが、残念ながら味方はいない。

 

「和平の使者は槍を持たない。」

 

いつもの機嫌悪そうな目でなのはを見るヴィータ。

 

「武器を持って話し合いに来る奴はいねぇって意味だよ!寝言は構えてるもん見て言えバーカ!!」

「ば、馬鹿!?」

「いい事言うじゃんヴィータ。こいつ殴って文句言えば解決すると思ってる節があるからさぁ…前例がそんなんばっかだからかも知れないけどどうにも」

「だから!お兄ちゃんはどっちの味方なの!!」

 

腕を振って抗議して来るなのは。両サイドの髪が一緒に上下に揺れて小動物のようだ。

思わず頭を撫で…

 

 

 

 

「何をやっているお前達は。」

 

 

 

 

凄まじく冷めた声がフレアから放たれた。

 

「あ。」

「にゃ!?あ、わわっ!!」

 

手を止めるのと殆ど同時に、恥ずかしかったのか赤くなったなのはが俺から少し離れる。

 

リライヴを見ればこちらを見て苦笑していた。

さすがにこの状況でやるこっちゃなかったな、うん。

 

「仲がいいのはいいけど、そろそろ始めない?」

 

言いながらデバイスを構えるリライヴ。

敵との問答は無用か、らしい対応だ。

 

「OK、それじゃ」

「リライヴちゃんと一対一!止めないでねお兄ちゃん!!」

 

ナギハを抜こうとしてずっこけた。

 

 

こ、コイツは…このリライヴ相手にまだそんな事言ってんのか…

 

 

リライヴは静かに、少し瞳を細める。

 

「相手に認められるには、自分の全てを以て認めて貰うしか無く、保護者の速人が手伝っては話など聞かせて貰えない。」

「えっ…あ、うん。」

 

リライヴの静かな言葉に頷くなのは。

こいつ…まさかとは思ったがこのリライヴ相手にまでそんな事考えてやがったか。

 

「一途で綺麗な気持ちは嫌いじゃない。けど…私は貴女がなんであれ別にいいの。話なんてする気は無いよ、例え貴女が私に勝ったからって。それとも、拷問にでもかける?」

「そっ…そんな事っ!!」

「力付くで無理やり出来る事は壁を壊す事だけ。それでいいと思ってる君に話す事は無いよ。」

 

折れないとは思ってたけど、本当に俺達と変わらない年の人間の思考じゃないな。

 

なのははリライヴの宣告に少しだけ俯いて…決意を固めた瞳をリライヴに向けた。

 

「壁を壊す事しかできないなら…リライヴちゃんの拒絶を打ち壊してみせる。私は絶対に諦めないから!」

 

真っ直ぐな瞳で言い切るなのは。

 

あー…だめだ、こりゃ言っても聞かんわ。

 

リライヴは少し驚きを見せて、微笑む。

 

「速人も大変だね。」

「だから!なんでなのはに言葉を返してくれないの!?」

「ゴメンゴメン、さっきから君の言葉を聞くたびに複雑そうな表情を浮かべてるからさ。」

 

リライヴはそういって笑う。

顔に出ていたんだろうか?だとしたら俺の戦闘方法的には致命的だなぁ…ポーカーフェイスポーカーフェイス…

 

「…フレアさん、私と一緒にリライヴちゃんと戦ってくれませんか?」

「へっ?」

「何?」

 

折角取り繕おうとしたのに、整える間も無くなのはがそんな事を言い出した。

 

反抗期?あ、目から汗が…

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

分かってた、リライヴちゃんが一人で戦える相手じゃないなんて。

それでも、皆でよってたかって囲んで何もさせないように戦ってたあの状況で、誰かと話すなんて間違ってる。

そう思ったから一対一で戦いたかったんだけど…

 

 

どうやら、そういう問題でさえないようだった。

 

 

きっとリライヴちゃんは何を言っても話してくれない。

何しろ自分の事を話すかどうかを躊躇うと言うより、話そのものをする気が無いみたいだから。

 

 

 

そしてもう一つ…速人お兄ちゃん。

 

 

 

きっとなのはが『助けて』って言わなくても助けてくれるだろう。

けど、そんなお兄ちゃんに頼っていたら、きっと何も出来なくなる。

 

手伝うと決めて今ここにいる。我侭を通すのもお兄ちゃんに抱えられっぱなしなのもやめないと。

 

 

だから、フレアさんと一緒に戦う。

 

 

「私の方はかまわない、赤い少女も子供とは言えベルカの騎士、止める者は必要だろう。」

「子供じゃねー!!」

 

フレアさんが承諾してくれて、後はお兄ちゃんだけ。

お兄ちゃんは少しだけ考え込むようにした後…笑みを返してくれた。

 

「…しょうがないか、そこまでやりたきゃ思いっきりやって来い!」

「うん!!」

 

きっと、私が戦う事を認めてくれてるわけじゃなくて、いざとなったら何とかすればいいって考えて許可してくれたんだと思う。

だから、とりあえずお兄ちゃんから卒業するためにも…

 

 

心配かけないように勝ってみせる!!!

 

 

「それじゃ…行ってみようか。」

 

静かに告げるリライヴちゃんに向かってフレアさんが飛び出して、戦闘が始まった。

 

 

 

「ふっ!!」

 

リライヴちゃんの透明な剣を『流す』フレアさん。その動作からそのまま攻撃に繋がった一閃に辛うじて反応したリライヴちゃんは紙一重でフレアさんの一閃を避ける。

 

「アクセルシューター…シュート!!」

「っ…嫌なタイミングで撃つね。」

 

呟きながらも私のシューターはリライヴちゃんの放った見えないシューターに打ち消される。

リライヴちゃんはあれを残したまま戦うから魔法発動としての感知が殆ど利かない。

対処に思い悩んでいた私だったけど…

 

フレアさんが何もない空間を薙ぐと、リライヴちゃんが眉を顰めた。

 

シューターを壊したのかな?だとしたら凄い。殆ど見えない上に私やフェイトちゃんの射撃より速いのに。

 

「なるほどね…半年間速人の真似事したんだ。」

「そこまで分かっているなら諦めろ、接近戦で私に勝つ事は不可能だ。」

「遠距離なら勝てそうだけど?」

 

リライヴちゃんは言いながら私を見て笑う。

なのはだって毎日魔法戦の訓練して来たのに…ちょっと怒ったかも。

 

「ディバインバスター!!」

「そんな馬鹿正直な砲撃じゃ」

「バーストッ!!!」

 

直線上に放たれた砲撃を避けたリライヴちゃんだったけど、爆発した魔力に飲み込まれた。

ディバインバスターバースト。放った砲撃の魔力を爆発力に変えて周囲の敵を巻き込むバリエーション。躱されても魔力ダメージを与えられるように考えた技。

たとえ防御魔法で防ぎきられたとしても、外すよりは余程いい。

 

展開した防御魔法を消したリライヴちゃんは、冷めた目で私を見て来た。

 

「…清々しいくらいにためらい無く、えげつない攻撃するよね君は。」

「にゃ!?ひ、酷い!全部避けたり防いだりするから頑張って当てようとしてるだけなのに!!お兄ちゃんだってこれ初めてで完全回避したし!!」

 

リライヴちゃんに溜息を吐かれて言い返す。

私の言葉を聞くと、リライヴちゃんはお兄ちゃんを横目で見て苦笑いする。

 

「和んでいる場合か!!」

「あ!ご、ごめんなさい!!」

 

と、フレアさんが怒声を放つと共にリライヴちゃんに黒い光を放つ槍を振るう。

二、三回斬り結んだ後、リライヴちゃんはフレアさんの槍を離れて回避する。

 

「っ…やり辛い、それが『武芸』って奴だね。」

「芸ではないがな、知っているのか?」

「市販の本に速人がやってるようなレベルまで載ってるかは分からないけど、触りくらいなら読んだよ。これは真面目に習得した方がいいかもね。」

 

クロスレンジはフレアさんの方が有利みたい。

なら…やっぱり距離を離させないようにするしかない。

 

「足止めします!」

「任せる。」

 

静かにそれ一言だけ残してリライヴちゃんに向かうフレアさん。

私は複数のシューターを精製して、リライヴちゃんに向かって放った。

 

 

 

SIDE OUT

 

 


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