なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第三話・魔力蒐集

 

 

 

第三話・魔力蒐集

 

 

 

Side~クロノ=ハラオウン

 

 

 

さすがに呆れた。

 

明らかに誘導弾で制御していい数じゃない。しかも攻撃方法が惨い。

 

おそらく速人や彼女に勝つために試行錯誤した結果なんだろうが…

 

 

「まったく…一人で私に防御魔法使わせるなんて。」

 

 

 

直撃しておいて防御魔法の展開だけで無傷で済ませたリライヴにも呆れるしかなかった。

 

「はぁ…はぁ…」

「さすがに厳しそうだな。」

 

なのはは肩で息をしていた。

 

最後の攻撃もそうだが、最初から全力だった以上仕方がない。

僕とフェイトも実際息が切れるほどではないが、疲れを隠しきれる程余裕はなかった。

 

「だ、大丈夫…お兄ちゃんと訓練するともっとクタクタになるまでやるから。」

「それが嫌だから下がってくれ。と、言いたい所なんだが…一つ頼めるか?」

 

このまま戦っていては間違いなく僕たちは全滅する。彼女達の狙いが分からないがそれはまずい。

 

「結界を破壊できるか?そうすればこれ以上戦闘続行出来ない筈だ。」

 

こっちから捕らえにかかった割にこの有様というのは少し情けない部分もあったが、これ以上戦闘を続けるだけの力は僕達にはない。

 

「スターライトブレイカーなら…けど、リライヴちゃんが…」

 

許してはくれないだろう。そんな事は想定している。

 

「十秒だったね、フェイトがリライヴに切りかかると同時に離れて準備をしてくれ。」

 

僕はフェイトをにアイコンタクトをとる。フェイトは頷いてくれた。

 

 

瞬間、フェイトが飛翔する。

 

 

「接近戦?」

 

 

フェイトの一閃。

リライヴは真っ向から切り結んで…

 

バルディッシュが切断された。

 

「甘いね!」

 

そのままリライヴは流れるように蹴りを放つ。

 

「はあぁぁっ!」

「何?っ!!」

 

変換資質を利用した雷撃。魔法行使も何もなく純粋に雷撃と化した魔力を放つフェイト。

 

バリアジャケットがあるからたいした害にはならないものの、痺れ位は通ったはずだ。

 

とは言え止まらなかった蹴りを喰らったフェイトは脇腹を押さえて離脱する。

 

 

 

「捨て身でこの程度じゃ…っ!!」

「スティンガーブレイド…エクスキューションシフト!!!」

 

 

雨のように降り注ぐ刃。

 

雷撃の痺れが残っている今なら避ける事は出来ない筈。

 

何とかスターライトブレイカーの発射までも保たせて…

 

「シューティングスター!」

「なにっ!?」

 

リライヴは、こっちがフェイトに稼いでもらった時間で準備した無数の刃と同じ位の量の魔力弾を放ってきた。

 

ぶつかり合った攻撃は相殺されていく。威力まで互角か!?

 

切断されたバルディッシュを修復したフェイトが間髪いれずに砲撃準備に入る。

 

「サンダースマッシャー!!」

 

フェイトの砲撃魔法が直進する。魔法の終わりの完璧なタイミングに向かって行った砲撃は…

 

「スパイラルバスター!!」

 

リライヴの砲撃によって撃ちぬかれた。

 

 

僕とフェイトが準備時間まで使用して放った連携攻撃を初見で一人で捌くなんて…

でもコレで…

 

間に合ったと思って視線を移すと…

 

 

「あいにくこっちの狙い通り、どうするクロノ執務官?」

 

 

胸から腕を生やしたなのはの姿があった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

なのはの胸から、腕が生えていた。

 

その状態のまま、集束砲撃を撃とうとするなのは。

 

ここまでやるのか?こいつらは…

 

「はあっ!!」

 

なのはの様子を伺っていた俺に向かって迫るシグナム。

 

 

 

 

…上等だ。

 

 

 

 

スイッチを切り換える。ココロが冷えきって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一手目―擦れ違う様に背後を取る。

 

二手目―左の『徹』にて背中を切り裂く。

 

三手目―模倣、『吼破』。

 

対象が吹き飛んだのを確認後、高町なのはを貫く腕を対象に切り換える。

 

 

風翔斬『ウィンドスラッシャー』。

 

 

腕が引き抜かれたため回避された。

 

 

 

 

 

 

…限界だ!!

 

 

 

「なのはぁぁぁっ!!」

 

 

 

俺は『元に戻って』高速移動魔法を使用する。

 

事件以来修行してきて、俺は全力を自分の意思で少しだけ制御できるようになって来ていた。

 

とは言え、長時間続ければ本当に気持ちが凍って戻って来れなくなるし、そもそも脳内麻薬の操作や心拍数の低下なんて長時間続けたら死ぬ。

 

今だって身体が痛いしな。

 

『ウィンドムーブ。』

 

フェイトやなのはより若干遅いが緩急制動が滑らかに行える。森や室内でも止まる事なく使える高速移動魔法。

 

 

 

 

 

…に、練習すればなるとナギハは言っていた。

 

 

 

減速の行程をシャットダウンしてなのはの元へ飛ぶ。

 

…普通こんな事をすればタダでは済まない。だが、俺は幸い『床作り』に慣れている。

 

まるで地面があるかの様に魔法で作った床を滑りなのはの側に着地する。

直後、放たれたスターライトブレイカーが結界を打ち砕いた。

 

なのはの身体が揺れる。

っの馬鹿!身体を貫かれた後にあんな負担のかかる魔法を撃つなんて!!

 

俺は慌ててなのはの身体を抱きかかえる。

 

 

「なのはっ!しっかりし…ろ?」

 

 

身体を見て気付く。

 

 

傷が無い。

 

 

そういえば光る玉みたいな物が見えていたが…つまり殺傷目的かと思っていたそれは勘違いだった。

 

 

血の気が引いた。

 

 

あ、やば…さっきまで『腕の一本や二本位…』とか考えてた。

よくよく考えたら魔法攻撃なら死なないように調整できる。

それにアルフが言ってた通り連続襲撃事件で…連続殺人事件でないのなら…

 

 

シグナムにやり過ぎたと謝ろうと思ったが、既に全員いなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

倒れたなのはをアースラに運んでもらって、診断してもらった。

その後、全員でブリッジに集まったのだが…

 

「魔力蒐集?」

 

聞きなれない単語を聞かされた。

ユーノが頷く。

 

「ここ最近の襲撃事件では共通して魔力が抜き出されている。なのはもどうやらその被害を受けたみたいだ。」

「なるほどな…」

 

皆相当強そうな『魔法使い』だったもんなぁ…並の奴じゃ相手にならないだろう。

まぁ俺には関係のない話だが。どれだけ攻撃力が高くても大振りなんて当たらない訳だし。

 

「けどごめんなさいね速人さん。リライヴに対処するだけの戦力がなくて…」

「いやいや、アイツは本物だからしょうがないですよ。仕事でやってるクロノとかじゃ、勤務やら規定やらがあるからどうしたって限界が出る。リライヴにはそれがないですからね。」

 

リンディさんの謝罪に返した俺の答えにクロノが表情を歪める。

ま、自力で犯罪者に対処できないと宣告されたようなもんだし当然か。

 

「そんじゃ、久しぶりに共同戦線と」

「それは出来ない、君を事件に関わらせる訳には行かない。」

 

乗り気で手伝いを宣言しようとしたところでクロノから静止の声が入る。

フェイトとユーノは驚いていたが、俺としては納得していた。

おそらく、前回の事件で問題児だったから管理局としては事件に関わらせる気が起きないのだろう。

 

「そんな…クロノ…」

「速人がいるいないはいいけどさぁ…三対一でまだ本気出さなかったリライヴ含めて五人、アタシ達だけで相手にするのかい?」

「フレアを呼ぶ、それで何とかするさ。」

 

何とかなる訳がない。

クロノ自身それくらい理解してるだろうに…

 

まぁ、局員さんの対応って言うなら俺は別に無理に手伝わせろという気はない。こっちはこっちで動く。

 

「高町速人さん、協力していただいてもいいかしら?」

「艦長!?」

「落ち着きなさいクロノ。」

 

リンディさんからの申し出に異議を唱えるクロノ。

ま、とは言えこの状況じゃ無理もないと思うけどな。

 

「OK。俺としても野放しにしておくのは気が進まないしな。」

「ありがとう。正直彼女相手に現状いくら戦力があっても足りないくらいなのよ。」

 

だろうな、と思った。

 

ただでさえ前回の事件ではリライヴの方が数段上だったというのに、そのリライヴの方が修行時間長いのだから仕方ない。

クロノが頭痛を堪えるように頭を抑えている。

 

「そう心配すんなって。誰か死にそうにでもなきゃあこまで無茶はしないから。そうならないように魔導師のお前がバインドとか非殺傷で頑張ればいいのさ。」

「簡単に言ってくれるな君は…」

 

 

諦めたように呟いたクロノは、何処かすがすがしいような表情を浮かべていた。

 

 

「それならば、ただ捕らえるだけという訳にも行かないだろう。」

 

 

クロノは言いつつ、あの場で姿を見なかった緑色の服を着た女性を映し出す。

エイミィさん、いい仕事してますね(笑)

と、ちょっとずれた感想を抱きながら映像を見ていると、クロノは女性の持つ本を指す。

 

「第一級捜索指定ロストロギア闇の書。おそらく今回の事件の元凶だ。」

 

俺は折れるつもりはない、今度こそ全てを護りきってみせる。

示された書物を見ながら俺は静かに手を握り締めた。

 

 

 

 


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