なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第一話・出会いと再会

 

 

 

第一話・出会いと再会

 

 

 

Side~クロノ=ハラオウン

 

 

 

「地球は久しぶりだな、出来れば何も無い時に来たかったが…」

「仕方無いよ、事件がいつ起きるかは私達が決めてる訳じゃないから。」

 

僕とフェイトとアルフは三人揃ってモニターを眺めていた。

 

 

魔導師連続襲撃事件。

 

 

最近頻繁に起こっている事件であり、同一犯の可能性が高い。

 

「AAクラスですら何も出来ずに敗れる程の相手だからな、なのは達が心配か?」

 

フェイトは小さく頷く。

無理もない…初めて出来た友達が事件に巻き込まれるかも知れないんだ。

まして今回の事件、魔力を集める事が目的の様で、襲われた魔導師は魔力を奪われている。

なのはの魔力量は驚異的だ、狙われる可能性が高い。

 

「大丈夫だって、一回とはいえフェイトに勝っちゃうような娘なんだ。それにヒーロー君もいる事だしね。」

「速人…」

 

と…アルフが口にした言葉を耳にしたフェイトが頬を染める。

 

「…前にも言ったと思うが、彼の女性への対応は褒められたものじゃない。人の気持ちに水を注す趣味はないが」

「そ、そういうのじゃないよ。速人が良くない事言ってたのは分かってるし。」

 

以前、似たような反応をしていたので少し心配になった僕は、フェレットもどき相手に掴み掛かって叫んでいた会話ログを聞かせた。

 

アルフとフェイトは揃っていい反応を見せていなかったので安心していたのだが…

 

「ただ…アリシアと、短い間だけど母さんを救ってくれたのは間違いなく速人だから…」

「僕としてはその辺の無茶も真似て貰いたくないんだが…」

 

というか、本音を言うならそちらの気持ちの方が強い。

だが、だからと言って放っておけばよかったなどと言う事も到底出来ず、曖昧な忠告しか出来ずにいる。

 

それに…

 

「クロノも気になってるから訓練時間増やしてるんでしょ?アレからクロノに渡される仕事が増えたってリンディさん言ってたよ。」

「別に…彼は関係ないさ。」

 

こんな図星をフェイトに突かれるようじゃ、速人を気にするなと言った所で説得力が無かった。

 

書類仕事は権限があれば僕じゃなくても誰でも出来るが、前線には誰でも出ると言う訳にも行かない。だから、とても申し訳無かったが母さんやエイミィを頼っている。

 

とは言え、それを認めれば速人の無茶の株が上がってしまう。だから誤魔化す事にした。

 

「それよりもリライヴの方が問題だ。正直な話、今彼女に絡まれたら僕じゃどうしようもない。他の部隊から人を借りてもいいが、時間稼ぎも出来ないようじゃ応援を呼ぶ事すら出来ないからね。」

「アイツは何だったんだろうね?あの鬼ば…プレシアを手伝ってたみたいだけど、管理局のデータにも無いんだろう?」

 

フェイトに落ち込まれて慌てて呼び方を変えるアルフがおかしかったが、笑い事でもない。

 

管理局が把握していない強力な魔導師。となれば秘密裏に『造られていた』可能性すらある。

あの年齢では誰かに騙されていたり洗脳を受けていたとしても分からないだろう。

 

「けど、最後は私達を助けてくれたよ?」

「彼女は自分で言っていたからな、依頼主を守ると。わざわざ助けた速人を信用したと言った所だろう。」

 

それに、怪我こそ負わされたとは言え、彼女はほぼ非殺傷設定で戦っていたし、刺したアルフの怪我も致命傷には程遠いものだった。

彼女は誰かを進んで傷付ける気は無いのだろう。確証は無いので楽観は出来ないが…

 

「まー何にしてもなのはと速人には借りがあるんだ。模擬戦ででもキッチリ返してやろうかね。」

 

拳を鳴らして笑うアルフ。前回の事件のときは速人にいいようにあしらわれていた様だし少し苛立ちもあるのだろう。

 

「ア、アルフ…乱暴は…」

「そうかい?友達と模擬戦なんて楽しそうだと思うけど…」

 

宥めようとしたフェイトだったが、アルフに楽しそうと言われて情景を想像したのか頭を悩ませていた。

…友達について少し考えて貰わないと、会う度模擬戦やられてもなのは達が大変だな。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

私はいきなり結界の中にいた。

 

突然現れた女の子が、ハンマーを振り抜いて来る。

互角に戦えていたんだけど、突然その娘の魔力が強くなって…吹き飛ばされた。

 

「ぶち抜けええぇぇっ!!!」

 

その子が叫んでプロテクションが破れ…

 

 

 

女の子はその場でグルグルと回った。

 

 

 

彼女は私に向かって進まない身体を慌てて止める。

 

「な…んだよこれはぁっ!!」

「はいはーい、迷子か?ならお家送ってやるから事情を話してみろよ。」

 

聞き慣れた声に視線を移せば、左手の鋼線を使って女の子の身体を絡めとった速人お兄ちゃんの姿があった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

なのはがもろバレだったから分かっていた。何も対策をしていないと魔力の反応は相手に見抜かれると。

だから、俺はあの事件以来魔力反応の隠蔽を目的に修行を重ねてきた。

 

どうやら上手くいったらしく、彼女はまるで俺に気づく様子が無かった。

 

「なんだテメェは!結界に魔力反応はコイツだけだったぞ!?」

「へー、結界展開した魔導師と間違えたんじゃなくて、お前が展開したんだな。」

 

 

俺の言葉を聞いて苦虫を噛み潰した様な顔をする赤い服の女の子。

ま、この状況でそんな事考える方が珍しいし誤解じゃなく狙って襲撃して来たって事が分かった所で何の意味もないわけだが。

 

「で、取りあえず何が目当てか教えてくれるとうれしいんだが。まさか雇われの殺し屋か何かか?」

「…殺したりしねーよ。」

 

物凄く機嫌悪そうな声でそう言う女の子。

だよなぁ…殺しに来たにしちゃいろいろお粗末だし。

 

「となると誘拐か人質か…何にしても覚えがありすぎて困るな。」

「にゃ!?私いきなり襲いかかられる覚えは無いよ!」

 

 

なのはは全力で否定する。

 

 

 

哀しいかな妹よ、御神の剣士は裏の世界で恨まれまくりなんだよ。

 

 

 

何しろ俺が暗殺者として出来る全力で行ったとしても正面からじゃ負けるんだ、その人間離れした戦闘能力を同業者は目茶苦茶疎ましがってるだろう。

 

だが、魔導師が御神の剣士に用があるとは思えない。となると別件か?

 

「まぁいいや。ここで目的教えてくれたら今は取りあえず放してや」

 

そこまで言って、俺はその場を飛び退いた。

 

刹那、ビルが斜めにずれた。

 

「なのは!ビルを出ろ!!」

「う、うん!!」

 

今の一撃で鋼線が斬られた。それはいい。

 

問題なのは…

 

 

 

 

 

 

 

今の一撃が無色だった事だ。

 

 

 

 

 

「今ので倒れてくれるとやりやすかったんだけど…贅沢言ってられないか。」

 

 

 

今の間に逃れた赤い女の子は、白い少女の横にいた。

 

 

 

「俺達なかなか縁に恵まれてるみたいだな、リライヴ。」

 

白い少女…リライヴは、何の悪意も見せない澄んだ笑顔で微笑んだ。

 

 

 

 

 

さてどうするか…俺は内心ちょっと焦っていた。

赤い女の子はいい。パワーは凄いが大振りのみって言う典型的な狙い目だ。武器がハンマーだけになおさら。

 

 

 

だが…問題はリライヴだ。

 

 

 

一応風の高速移動魔法は身に着けたが、速さがフェイトどころかなのはのそれより遅い。旋回性能はいいがアレじゃリライヴが高速移動使ったらアッサリ逃げられる。

 

 

 

まぁ魔法そのものの訓練はあんまりやってないから当然だがな!!

 

 

 

…と、とにかくこんな状況じゃあのリライヴ相手に中、遠距離戦をやる羽目になる。

それは無理だ。

なのは一人じゃ接近=ゲームオーバーだし…

 

なんて、ちょっと考えていると…

 

 

「お兄ちゃん!私にリライヴちゃんと一対一でやらせて!!何でこんなことしてるのか聞きたいの!!」

 

 

…なんてすっとぼけたこと言い出した。

 

「馬鹿かお前は!一対一も何もあるか!お前みたいな運動音痴がリライヴとやり合える訳ないだろ!百歩譲ってあっちの赤い娘にしとけ!」

「お兄ちゃん接近戦しか出来ないじゃない!魔法戦なら私だって!!」

 

俺はなのはと睨み合う。リライヴの相手をなのは一人にやらせる訳にはいかない。

 

「俺にすら勝った事ないくせに!お前にアイツの相手は無理だ!!」

「私アレからずっと魔法戦の訓練してたんだから!リライヴちゃんにだって簡単には負けないよ!!」

 

互いに不毛な言い合いをして…

 

 

 

「テメェら…あたしを舐めんじゃねぇぇぇっ!!」

 

 

 

赤い服の娘が力一杯に叫んでいた。

 

見れば、ハンマーを振りかぶった状態でジタバタともがいていた。

透明の輪が見える。リライヴがバインドをかけたのだろう。

 

あー…そうだなうん。舐めてる様に聞こえなくもないセリフばっかだ。

 

でもすまん赤い娘よ。そこの真っ白な娘は多対一でやっとどうにかなる規格外なんだ。

 

 

「落ち着いてヴィータ。白い娘はともかく速人相手に一人で突っ込んだら拙い。」

「なのは!高町なのは!!それに絶対リライヴちゃんの方が白いと思うの!!」

 

なのはがブンブンと腕を振り回しながらリライヴに抗議していた。

 

 

何と言うかグダグダだった。

 

 

誰か来ないと収拾つかないかなとか思ってたら、紫色の光と金色の光が舞い降りた。

 

「礼を言うぞ、リライヴ。よくヴィータを止めてくれた。」

「なのは!速人!大丈夫!?」

 

双方の増援だった。

どういうタイミングなんだか…

 

 


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