なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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注)せっかくなので新しくで書いてみました。移転記念という事で。


幕間・あまーい捜査

 

 

幕間・あまーい捜査

 

 

 

Side~リライヴ

 

 

 

大体疲れが取れて身体が回復した頃、私は…

 

 

 

「それじゃ、またね!アリサちゃん、すずかちゃん!」

「うん、またね。」

「また明日!」

 

 

なのはの動向を追っていた。

と言っても、今日学校を見つけたばかりで、家を追おうとしている程度だけど。

 

『ストー』

「お願いだから言わないで…自分でもあんまり好きじゃないんだから。」

 

イノセントが毒舌を吐ききる前に懇願する勢いで止めた。

別にプレシアに協力してたからって犯罪が趣味な訳でも好みな訳でもない。

 

 

単独で多世界を回る身として、近辺の情報…特に、強力な魔導士の情報については知っておかないと不味い。

 

特に、地球は管理外世界だから紛れ込むのにも使う事になる可能性が高いけど、思わぬ所で鉢合わせになったりしたら危険だ。

少なくとも、家とか通学路、友人の家くらいは把握しておいて、この近辺に用事があるときは警戒するようにしないと。

 

 

魔力的なものさえ伏せておければ、なのはに関しては大して問題なかった。

ただ、一緒にいた紫色の髪の娘…確かすずかと呼ばれていた方のなのはの友達が、時々私の方に視線を向けていた気もした。

 

 

速人にしろなのはにしろ、なんだか地球の人にはとんでもない人が多いなぁ…

 

 

でも、とりあえずなのはの家に辿り…

 

 

 

「……家?」

『どう見ても店…ですね。喫茶店でしょうか?』

 

 

 

喫茶店。

 

変身魔法で動物にでもなれば見つかり辛いけど、その状態で捕まったりしたら、相当派手な事でもしないと逃げられない。

 

元に戻るとか魔法を使うとか。

 

「…普通に体格変えるだけでいいか。戦闘用の強化をしなきゃ多分ばれないだろうし。」

『それが妥当かと思います。』

 

相談を済ませた所で店から少し離れ、変身魔法を行使する。

 

高校生くらいの身長と体格に、黒髪の長髪。

なのはとそう大差ない年の私が、ここまで姿を弄れば誰もわからないだろう。

 

さてと…それじゃあ行こうか。

 

内心で覚悟を決めて、店の扉を開いた。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。」

 

男の店員さんが礼をする中、私は店内を見渡す。

特に何か仕掛けてあるって様子はな…

 

 

「すみません、入り口で止まるのは避けていただけますか?」

「あ、す、すみません!」

 

 

店員さんに注意されて、私は慌てて店内に入った。

い、いけないいけない…別に魔導士の本拠地とかそんな変なのじゃないんだから、露骨に変な事はしないほうがいいな。

 

陳列されている商品を眺める。

…普段の視線が低いから、高いと妙な感じがするなぁ。

 

それにしても困った。普段別にそこまで食事にこだわった事がないから何をどうすればいいか…

 

 

「あ、このシュークリームを一つ下さい。」

「はい。」

 

 

とりあえず、お勧めらしく少し目立っていたシュークリームを買って、席に座る。

 

…うん、どうやら店員さんも含めて普通な感じだ。

魔力を扱う人なんて殆どいないようだし、私の話がなのは達に漏れないようにだけ気を使えばいいか。

 

軽く安心して、買ったシュークリームを口に…

 

 

 

 

 

 

 

「っ…」

 

 

 

 

 

ついばむように端を齧った瞬間、なんだか幸せな気分になった。

 

 

一瞬、何事かと思った。

 

 

何か危険な薬品でも入れられたのかと齧ったシュークリームをまじまじと見る。

だが、当然何かあるわけがない。

 

ショーケースに入ってたものなのだ、私が変装だと見抜かれているとしても、薬品が入ったものなんて出すわけがない。

 

 

恐る恐る、また一口。

 

 

齧って、齧って、齧って…

 

 

 

 

「あ…」

 

 

 

 

 

気がついたら、手の中にあったはずのシュークリームは綺麗さっぱり消えてなくなっていた。

 

私は、ゆっくりと席を立ち…

 

 

 

「……すみません。」

「はい?」

「シュークリーム1箱、持ち帰りで。」

「ありがとうございます。」

 

 

 

なんだかボーっとした気分のまま、箱を抱えて店を出た。

 

 

 

 

 

 

「はあぁ…」

 

何だろう。おいしかった…

なんだか久しくこんな気分味わった覚えがない気がする。

虚しい生活してたんだなぁ私…

 

『…いいんですか?』

「なにが?」

『結局なのは達の自宅までは判明していませんが。』

 

イノセントの指摘を受けて、漸く目が覚めた。

 

 

 

 

 

何やってた私!?

 

 

 

 

 

なんかシュークリーム齧ってからの記憶がおかしいよ!?

何にも見てない!お客さんどころか店員さんの様子とかまるで覚えてない!

 

『…はぁ。』

「デバイスが機械音声で溜息吐かないでよ!」

『大声は出さないほうが妥当かと。いくら森の奥とはいえ、人に聞こえたら危険ですよ。』

「むぅ…」

 

静かに正論を吐かれ、私はそれ以上抵抗もできずに変身魔法を解く事にする。

 

『もう飛ぶのですか?』

「さすがにね。魔導士が常駐してる所をうろついて居られるほど自身過剰じゃないよ。修行なんかもやり辛いし。」

『そうですね。』

 

イノセントとも意見が一致した所で、私は周囲を見渡して人が居ない事を確認した所で転移魔法を行使して地球を離れた。

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

魔法の発動を感じた俺は、木の陰から顔だけ出してリライヴが転移していく様子を見送った。

完全気配遮断+魔力隠蔽。どうやら上手く行っているらしく、少なくともリライヴに見つかったようには思えなかった。

 

しかし、訓練帰りに聞き覚えのない声がしたと思ったら、面白いものが見れたな。

 

 

「…見たな?」

『ええ、見ました。』

「録画は?」

『デバイスですよ?記憶等は全てデータです。』

 

問題ないだろうとは思ったが、一応ナギハにも確認を取る。

どうやら、ちゃんと俺が見た様子は記録されているようだった。

 

「ははっ、そりゃいいや。まさか最強クラスの魔導士がシュークリーム箱買いしてニヤついてるとこ見れるとは思わなかった。フェイトの時は狙ってやってみたけど、結構いい絵集まるもんだな。」

 

つい可笑しくなった俺は、小さく笑う。

 

『管理局に連絡するのではないのですか?』

 

どうやら自分の予想と違っていたらしく、ナギハが疑問を口にする。

 

「まぁな、そんなに悪い奴にも思えないし。」

『勧善懲悪…という訳でもないと言う事ですね。』

「それを言うなら武器持ってる奴なんて全員大なり小なり悪いって。」

 

納得したのかどうかは分からないが、ナギハはそれ以上何も言ってはこなかった。

 

「とりあえず、整備とかで誰かに見られても不味いからな。携帯かどっかにデータ分けとくか。」

『了解しました。』

 

いい収穫だった。

俺は嬉々として岐路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

家に着くと、父さんと兄さんがなんだか神妙な顔で話していた。

 

「何かあったの?」

「なんだか父さんが妙な客を見たらしくてな。店内を調べていると思ったら、シュークリームをまじまじと眺めて何か調査しているようだったと。」

 

兄さんの解説を聞いて、殆ど間違いなくリライヴの事だと悟る。

 

「ちなみにどんな格好だった?」

「黒髪の女子高生のようだったが…」

「あぁやっぱりか。」

 

変装解く前のリライヴにぴたりと当てはまって、思わず笑ってしまう。

 

「何だ、知り合いか?」

「まぁな。」

 

俺の知り合いと知ってか、二人は少し肩の力を抜いた。

 

「色々あるんだ、良かったら流しておいてやってくれない?」

「ふむ…確かに警戒心は見えたが、そこまで悪意は感じなかったからな。お前が知っているならかまわんか。」

「サンキュー、父さん。」

 

父さんが納得してくれたから、兄さんもそれ以上何も言わなかった。

 

 

しかしリライヴの奴…調査か何かに来たんだろうに、菓子食べて浮かれて直帰するなんて抜けてるとこもあるんだな。

 

 

 

 

Side~リライヴ

 

 

 

 

「くしゅっ…」

『風邪ですか?』

「んー…かもね。世界によって気候変わるのに、あちこち移動してたら身体がついていかないのかも。」

 

それに、私の噂をするような知り合い自体がそうは居ない。

体調にも気を配るようにしようと決めて、箱から一つのシュークリームを取り出す。

 

『って、体調管理すっ飛ばしてまた食べるんですか?』

「大丈夫だって。オーバーSの消費ペース知ってるでしょ?少しくらい多めに食べても身体壊したりはしないよ。」

 

イノセントの小言を聞き流して、改めてシュークリームをかじる。

本当に…おいしい。

 

「…こんな気分、いつから忘れてたのかも覚えてないくらいなんだからさ、少しくらい見逃してよ。」

 

私の呟きに、今度はイノセントも何も言わなかった。

いつ以来なのかも覚えていないし、つい最近まで…というか、本当にさっきまで、食べ物がおいしいなんて事で幸せな気分になんてなる余裕がなかった。

 

 

 

イノセントもそれを知っているからか、何も言わなくなって…

 

 

 

『分かりました。後から体重計や鏡に怯えださないのであれば別にかまいません。』

「もー…本当に酷い所ばっかりつくんだから…」

 

結局辛辣だった自身のデバイスの発言に、私は肩を落とした。

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 




時期的にここまでの情報で出しても問題無い内容しか出せないため、前から知らない人には何でこの話が振って沸いたのか分からないかもしれないです、すみません(汗)
ほのぼのしたいなと思ったら、話に出来そうなものがコレだったので。

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