なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第二十二話・惨劇の中で

 

第二十二話・惨劇の中で

 

 

 

「ハッキングから遠隔召喚、管制を麻痺させて浮き足立ったところに砲撃…用意周到な上見事な連撃だな…」

 

一分もしない間に同時に騒ぎが起こり、戦力の大半を封じられた。

 

騒ぎが起きてすぐ、中のメンバーとの連絡がつかなくなった。

完全に通信が絶たれたらしい。

 

何でも麻痺製のガス弾が撃たれたらしいが…殲滅が目的なら、初めからオーバーSで砲撃を打ち込むなり、麻痺じゃなくて毒性にすればいい。ましてガスの類ならば、吸うのを待たずに着弾時の爆発で引火させて施設内に火をまわす事だってできる。

それをやらなかったとなると、殺しに来るだろうグリフが内部に潜り込む可能性は薄い。

 

空からオーバーSの反応が接近しているらしいが、それはまるで関係ないし。

 

『アイツが会場内にいる可能性は薄そうだ、俺は周囲を回りつつ見かけた奴を片付ける!』

『アタシはリインと近づいてきてる奴をやる!!ガジェット相手に出来る奴は少ねぇから出来るだけ片付けといてくれ!!』

『了解!』

 

外にいて唯一無事だった隊長格のヴィータに話をつけて、その辺を歩き回る。

 

 

が、一向にガジェットらしい気配が無い。

 

 

あんな駆動音も隠し切れない鉄の塊が閉鎖空間で動き回ってれば分からないはずが無いんだが…

 

「お?」

「あっちゃー…こりゃまずいっスねぇ…」

 

で、何故か戦闘機人のほうが見つかった。

赤い長髪を束ねた娘と短髪の二人組だが…こいつらこんな所で何やってるんだ?

まぁ襲撃犯なのは武装を見れば間違いないし、さっさと捕らえるか。

 

「話は後で聞くから今は寝ておいてくれよ。」

「舐めんじゃ…ねぇよっ!!」

 

と、急加速から蹴りかかってくる短髪の少女。気が短い奴だな。

前髪に掠める程度に蹴りを避けた俺は、足を振りぬいた体勢の少女の脇腹に峰打ちを叩き込む。

 

「ぐ…き、くかっ!」

「おっと。」

 

さすがに頑丈だからか、スーツが防御効果でも持ってるのか、普通に峰打ち打っただけじゃ効果が薄いようで、蹴り上げてきたのを下がってかわす。

 

そこまでやって、俺は額を抑えた。

 

「…ローラーシューズ止めない?」

 

掠めた際に前髪が数本、物凄い勢いで抜けたようで地味に痛い。

物によってはぎりぎりで避けない方がいいかもな…

 

「うるせぇよ!」

「はいはいノーヴェ、作戦忘れてないっすよね?コイツはグリフさんに任せる。」

 

興奮気味の短髪少女…ノーヴェをたしなめる長髪の少女。

その背後に、紫色の魔法陣が展開されていた。

 

…成程、どう会っても俺と確実に当たるように準備してたって訳か。

 

出来るなら先手を取れないかと凪形態…から味方に誤解を受けると言われて覆面を取った状態で動いていたんだが…俺を見つけたらそこに転送じゃ意味なかったな。

 

「分かった。ここは見逃すからさっさと離れとけ。」

「ざけんな、グリフが来たら三対一になるってわかっ…」

 

甘く見ているかのような俺の発言に怒ったらしいノーヴェの抗議は、グリフが完全に姿を現したところで止まった。

 

 

尋常じゃない程の密度の『気』。

 

 

ようはただの『殺意』と『闘志』の向け合いなのだが…生命や生存本能そのものに中てられる。飲まれれば弱い奴ならぶっ倒れて失禁したりもするだろう。

息を呑んで震える程度で済んでいる二人は十分マシな方だ。

 

無言で去っていく二人をそれ以上気にする余裕も無く、グリフだけを見据える。

 

が…

 

「…待っていたよ。」

 

唐突に、グリフからの殺気が消えた。

 

「何が待ってただ、脱獄なんてしやがって。しかも異界で世紀の大犯罪者の一味かよ、絶対馬鹿だろお前。」

 

長話をする訳にもいかないが、聞きたいことも言いたい事も山ほどある。

何で約束破って脱走なんかしでかしたのか、そんなにどうでも良かったのか…とか。

 

 

 

そんな俺にかけられた言葉は、予想もしていなかった物だった。

 

 

 

「決まっているだろう?早く御神と斬り合いたかったからさ。」

「は?」

 

何を聞いているのか、と言った感じで首を傾げるグリフ。

だがすぐに、嬉しさを隠せないかのように笑いながらグリフは続ける。

 

「約束通りに裁判を受け、刑務所を誰一人殺さずに出られるだけの力量を取り戻す為に右膝がある程度治るのを待って…こうして約束通り、誰一人殺さずに再会する事が出来た。」

「え?あれ?」

 

とても嬉しそうに話すグリフに、なんかとてつもなく嫌な予感がしてきた。

 

 

 

 

俺…ひょっとして、『刑期を終えて』…って言って無い?

 

 

 

予感が当たりである事を示すように、グリフは笑みを隠さずに続ける。

 

「約束を守る気など無いのかもしれないとも思ってはいたが、楽な奇襲に走らないあたりちゃんと守ってくれるんだろう?今はダメだ、何て都合のいい事は言い出さないよね。」

「ちょ、ちょっといいか。俺が言った約束の内容まんま復唱してもらっていい?」

 

念を押してくるグリフに確認の為聞いてみると、気持ちよく頷いて…

 

「『お前がこのまま裁判受けて刑務所出て、それまで誰も殺さなかったら…お前が戦いたがってた御神の剣士と戦わせてやるよ。』だろう?心待ちにしていたんだ、一字一句間違って無いけどね?」

 

聞き覚えのある台詞をまんま復唱してくれた。

うん、裁判は刑務所入る前に受けて、刑務所力ずくで出て、重傷こそ沢山いたけど誰も殺してない。

 

………頭痛い。

 

フレアが『綺麗に紙一重で内臓避けて』斬られてた時から少しばかり違和感はあったんだよなぁ…あの重傷加減してたのか、化物め。

 

はぁ…しょうがないな。

 

相変わらず狂気を宿した瞳ではあるが、同時に待ち遠しいプレゼントを目の前にした子供のようなグリフの視線に覚悟を決める。

 

 

俺は神速に入り、グリフに斬りかかった。

 

 

尋常じゃない加速と身のこなしでの斬撃に、反応して防いで見せたグリフだったが、頬を浅く斬った。

 

約束破った奇襲…『じゃない』。

 

「あれから7年だ、俺も一応奥義までは貰ってきた。俺が『御神』じゃ不足か?グリフ。」

 

この証明に、これほどふさわしい物は他にない。

勿論、グリフが御神の奥義まで知ってる訳がないのだが、それでも理解できたんだろう。今見せた神速の異常さが。

 

頬を伝う血を指で掬ったグリフは、暫くその血を眺め…

 

「最高だ。」

 

その一言だけ告げて笑う。

 

直後、前例がない程の殺意を以って、グリフが剣を振りかぶった。

 

 

 

Side~フレア=ライト

 

 

 

「戦闘機人だな、弁明はあるか?」

 

空に待機していた戦闘要員と思われる戦闘機人の二人を見つけた私は、その前に躍り出た。

 

「無い。」

「時空管理局、フレア=ライト一等空尉。お前達を連行する。」

 

既に戦闘中であればともかく、待機していただけの相手だと口上が必要になる為告げることだけ告げておく。

後は投降の意志が無ければすぐに叩けるのだが、聞くまでも無い。

 

二人は臨戦態勢に入って私を見据えていた。

 

「セッテ、お前は航空戦力を頼む。いけるな?」

「了解。」

 

言葉を酌み交わした二人の内、セッテと呼ばれた二対のブーメランを手にした戦闘機人が飛来する此方の増援に向かう。

私はそれを無視して残った戦闘機人に接近、グレイブを一閃した。

 

対して彼女が右腕の刃を振るうと、グレイブが中ほどから両断された。

 

 

 

尖端を外して斬れる腕はあるか…追撃に出ずに下がった事といい、業や感覚の訓練もしているようだな。

 

 

 

私は、左の逆手で手にしていたグレイブの尖端部分を魔力を通して修復する。

武器を破壊したと追撃に出るようならこれで貫いたのだがな。グリフ辺りと修練を積んでいると言う速人の予想は当たりだったか。

 

「味方はいいのか?」

 

と、戦闘機人が示したほうに僅かに視線を向けると、戦闘の光が見えた。

恐らく、先に離れたセッテとやらに墜とされているのだろうが…

 

「ガジェット相手に逃亡したり、部隊総出で一人に墜とされているような奴等の面倒など見れるか。」

 

施設を守る為に警備についているはずの連中が悲鳴を上げて逃げ回るなどと言うあまりにお粗末なものを見た後で、使えるかどうかも分からん部隊の救援になど時間を裂く気は無かった。そんな事をしている暇があるのならば、戦闘機人の数を減らした方が余程状況を好転させられる。

 

離れる気は無いと悟ったか、戦闘機人は高速移動に入る。

首だけ返して背後を見て、腕を振り上げている戦闘機人の姿を確認した私は、振り返らずに懐に潜り込むように後退する。

 

「何!?」

「はっ!!」

 

 

振り下ろされる腕を左手で掴み、海面に向かって全力で投げる。

 

『スタッブバスター。』

 

投げの勢いが止まらないうちに砲撃魔法による追撃。黒い光に呑まれた戦闘機人はそのまま海面に衝突して水柱を上げた。

 

 

 

直後、背後に向かって一閃。

 

 

 

 

距離を取って回避した戦闘機人は、私を睨むように見据えていた。

 

つくづく機動性が高いらしい。少なくとも海面には触れた筈だというのに殆ど間も無く背後に回るとは。だが…

 

「っ…」

 

戦闘機人のスーツの腹部は僅かだが裂けていた。

 

僅かな傷ではあるが、高度な技量の者同士の場合は僅かな差がそのまま戦力の差を示す。

どうやら、グリフや速人程倒せない相手では無いようだ。

 

とは言え相手は戦闘用に作られた生命体、どんな隠し玉があるかは分からない。

警戒をそのままに構えた私は、再度眼前の戦闘機人と切り結んだ。

 

 

 

Side~スバル=ナカジマ

 

 

 

なのはさん達の下へ向かう途中、いきなり射撃が飛んできた。

何とかプロテクションで防ぐ事は出来たけど…

 

人影が飛び掛ってきた。

 

空中から着地を待たずにブースターで加速された蹴りを放つ人影。射撃に意識をそらされ回避は間に合わなかった。

 

交差させた腕に感じる衝撃。あたしは成す術も無く壁に叩きつけられ…

 

「うおおぉぉぉぉっ!!」

 

反動で加速した。

 

 

 

 

 

『止める必要が無いときは吹っ飛ばされてもいい。』

 

速人さんとの攻防の修行の片手間に、魔導師には無い戦い方について色々と聞かせてもらったものの一つ。

固定した紙は殴るまでもなく破けたけど、糸で吊るしただけの紙は全力で殴っても拳を覆うように張り付くだけで破れなかった。踏ん張ると言うのは詰まる所固定の意味を持ってて、普通は姿勢を崩さない為に堪えるけど、ダメージを全部受け止めている事になるって事だった。

速人さんはコレであたしの拳をバリアジャケットなしで受けて、アザと、吹っ飛んで地面を転がった時の擦り傷だけで済ませてみせた。

ジャケットなしであたしの拳をまともに受けたら骨折じゃすまない…って言うか多分死ぬから、相当ダメージを減らしてる事になる。

 

さすがに聞いただけですぐそこまでの事はできないけど、抵抗しないで攻撃の勢いに乗るように跳躍する位は出来た。それだけでも軽減は出来るらしい。

すぐ後ろが壁だったけど、壁に叩きつけられる衝撃と、叩きつけるほど吹き飛ばす勢いを生み出す蹴りのダメージなら、間違いなく後者を軽減した方がいい。

 

 

 

 

お陰で、どうにかダウンしないで動けたわけだけど…

 

「なに!?っ!!」

 

あたしの反撃を受けた、短髪の子は防御姿勢のまま少し滑っていって止まる。

何とか反撃に持っていったとはいえ、さすがにダメージ受けた直後じゃあまり重い一撃は打てなかったか…

 

「くそ…旧式の癖に…」

「偏見は良くないっスよ、ノーヴェ。リライヴだって人間なのに滅茶苦茶だったじゃないっスか。」

 

構えなおした娘をノーヴェと呼ぶ、もう一人の女の子が姿を見せた。

最初の射撃は彼女が撃ったのか。

 

「ま、こっちはこれでOKっスからさっさと片付けるっスよ。」

「ティア!」

 

『こっちは』と言う彼女に嫌な感じを受けて様子を伺って見ると、皆が光弾に囲まれていた。

全方位となるとさすがに防ぐにもまずい。完全に制圧され…

 

『任せなさい。』

 

一番信頼しているパートナーからの念話で、ただ一言だけが届く。

二丁の銃を手にたたずむ姿はどこかで見たような静けさを持っていて…

 

瞬間、ティアが動き出した。

 

かなり細かな射撃音が響き、次から次へと光弾が撃ち落される。

 

「こいつ、動くなっスよ!」

 

近くの数個の光弾を打ち落とした所で、残りが殺到する。

ティアはそれを、片足を軸にしながらの回避で避けつつ狙いをつけた光弾を打ち落としていく。

 

回避と狙いをつける動作が一緒になってるそれは、いつか見せてもらった地球の射撃使いが使っていたものの一つ。

 

『…ま、連射も精度もあの人ほどじゃないけど、これくらいはね。』

 

全ての光弾を撃ち落したティアは、油断無くクロスミラージュを髪を束ねた女の子に向ける。

狙って撃って当てる。ただそれだけの基礎も、極めるとそれそのものが必殺の特殊技能になる。

自分に特別な物が無いって気にしてたティアにとって、普通で辿り付ける異常な領域は憧れで光明だったんだ。

 

きっと同室のあたしも知らないところで、疲れが残らないように、でも毎日繰り返して積んできたんだ。やっぱりティアは凄いや。

 

「アレを抜けるって…マジっスか?」

「このグズ、仕留めとけよ。」

 

驚きつつも構えなおす戦闘機人の二人。

 

『今の目的はあくまで隊長達との合流、あしらって撤退するわよ。』

『『『了解!』』』

 

敵を倒すことは手段であって目的じゃない。

あれだけの事が出来てまだ冷静なティアの判断に、あたし達は信頼を持って強く答えた。

 

 

 

Side~ゼスト

 

 

 

「ゼストっつったか?何たくらんでんだか目的を言えよ。納得できる内容なら、管理局はちゃんと話を聞く!!」

「若いな。」

 

眼前の騎士の訴えを一言で片付ける。

 

俺もかつてはそんな事を思っていた。

今となってはそれに素直に賛同できるものでもないが…

 

「だが、いい騎士だ。」

 

小さな、だが真っ直ぐな眼をした騎士。

彼女のような騎士が増えてくれるのならあるいは…

 

『旦那!褒めてる場合かよ!』

 

アギトの声に意識を切り替える。

確かにそんな余裕は無い。この身がいつまで持つかも分からん以上、出来るならここで目的を果たさねば。

 

だが…

 

『くっそーあいつ等、融合相性もいいんだろうが錬度も高ぇ…しっかりあわせてくる。』

 

融合には相性がある。

いくらアギトが優秀といっても、こればかりはどうする事もできん。

 

いたずらに時間をかければ戦力が復活する、突破するならそろそろ決めなければ。

 

「アギト、融合を解除しろ。俺がフルドライブで、一撃で墜とす。」

『冗談!フルドライブなんか使ったら、旦那の身体は…もうリライヴだっていないんだぞ!?』

 

壊れかけの体にリライヴが処置を施してくれたお陰で、どうにか最近ダメージの進行が少なく済んではいたが、彼女が失踪した今となってはそれも出来ない。

 

今の俺が幾度も使える力では無いが…

 

「終わらんさ、成すべき事を…終えるまではな。」

 

ここで決めればそれで済む。その程度であれば問題も無い。

 

『ふっ…ざけんな!!旦那の事はアタシが守るって言ったろ!!』

 

だが、内のアギトの叫びが、それを許さぬと全霊で告げていた。

 

 

 

 

 

一昔前、リライヴと知り合い、初めて処置を終えた後のことを思い出す。

 

「一人で死んだつもりになってたら、何処かからヒーローがやってきて怒られるよ。」

「…何だそれは?」

 

処置が終わり、目的を成すまでの間だけ持てば構わないと告げた俺に対して、リライヴが呆れ気味に呟いた言葉の意味が分からず聞き返す。

 

「ごめんごめん。ただ…貴方は今ここにいて、二人にとっては生きてる大切な人なんだって話。ちなみにこれを否定したら私も本気で怒るからね、素材が生身じゃない知り合い何て結構いるんだから。」

「覚えておこう。」

 

出来るなら死人に引っ張られて欲しくは無いと思っていた私にとっては聞き流すべき話だったのだが…

 

 

 

 

『旦那の命は削らせねぇ!アタシが必ず…旦那の道を通してやる!!!猛れ!炎熱…烈火刃!!!』

 

アギトの渾身の力を込めた炎の刃。

 

流しては…おけんな。

 

力だけでなく、どれだけの意思が込められた炎なのか分かってしまう。

間違いなく眼前の騎士にも勝てるだけの力ではあるが…本部の防御が復帰してしまえばレジアスの元に辿り付くのは…

 

いや、間に合わせてみせる。

 

誓いを新たに、眼前の若い騎士と再び斬り結んだ。

 

 

 

Side~ヴァイス

 

 

 

主力が地上本部にいる中で六課は襲撃を受けていた。

戦力が守護騎士のお二人しか残っておらず、交替部隊の大半も倒されてその辺に転がっている。

そんな中、六課内部に進入してくるガジェット群を、俺は拾ったデバイスで迎撃していた。

 

「ふぅ…ったく、昔の話なんだがなぁ…」

 

バックヤードスタッフもいる中、ろくに戦闘能力が無い六課を動き回るガジェットと落ちているデバイスを見かけたら、いつの間にか迎撃に入っていた。

 

 

『アウトレンジショットの達人で、優秀な狙撃手だったって…』

 

 

ティアナの奴に掘り返された話を思い出して頭を振る。

 

 

持ち上げられて感化されたか?ガキじゃねぇってのに。

 

 

後輩相手に情け無い話だが、昔話まで掘り返してきたアイツに文句の一つも言ってやるべきかと思いながら、再度デバイスを構える。

 

炎の先に人影が映り…局員の服装じゃ無いと確認できたところで狙撃を放つ。

 

余程勘が良くなければこっちの先制に気付く事はできない。

綺麗に向かって行った俺の狙撃弾は…

 

 

早撃ちで打ち落とされた。

 

 

当然、一発で決められなければこっちの存在に気付かれる。

 

「ち…だがまだ…」

 

普通、気付かれてから撃つのは狙撃手の仕事じゃないんだが、後ろがバックヤードスタッフとなると、俺がやるしかない。

 

気付いて向かって来る人影に対して、タイミングを待つ。

 

姿が完全に視認出来るところまで来て…

 

「お前」

「止まれ。抵抗しなければ危害は加えない。」

 

完全に現れたその姿に驚いた一瞬で、銃を突きつけられていた。

 

 

 

Side~フェイト=T=ハラオウン

 

 

 

デバイスは受け取れたものの、六課襲撃の報を受けると同時にギンガの安否が分からなくなったため、スターズとライトニングで分散する事になった。

ライトニングは六課に向かう事になり、その途中に信じ難い光景が目に入った。

 

 

 

フレア空尉が押されている。

 

 

 

相手は二名の戦闘機人らしいけど、空尉も速人に近い戦闘技術を体得している。

なのに2対1位で普通の相手に手間取るなんて…

 

「…エリオ、キャロ、先に行って。」

「分かりました、気をつけて。」

「えっ?」

 

完全空戦はできない二人がこんな相手との戦闘に巻き込まれたらそう簡単には抜けられない。

それに、二人には悪いけど…あのフレア空尉が手間取る相手ともなれば正直まだ早い。

 

「いくよ、バルディッシュ。」

『ソニックムーブ。』

 

攻撃行動に移ろうとしていた、桜色の髪をなびかせ巨大なブーメランを手にした戦闘機人の前に移動する。

 

「はぁっ!!」

 

奇襲にはなったと思ったけど、簡単に防がれる。

これは…そう簡単にはいかないな。

 

「貴女は…」

 

私の乱入で、戦闘が止まる。仕切りなおしとばかりに並びなおす戦闘機人二人に対するように、私はフレア空尉と並んで構える。

 

「子供二人はいいのか?」

「貴方が苦戦する程の相手を放置出来ませんから。」

 

 

並んで睨み合うのも一瞬、四つの閃光が空を駆けた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 


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