なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第二十一話・予言の幕開け

 

 

第二十一話・予言の幕開け

 

 

 

ヘリの見送りを終えた今、俺は割とどうしようもない窮地に立たされていた。

 

 

「うーっ…」

 

 

ヴィヴィオに睨まれているのだ。

 

 

本人は真剣なのだろうが可愛くて仕方が無い顔で…ってそんな事はどうでもいいんだが、威嚇でもするかのように唸って睨まれてるとどうにも対応し辛い。

何よりこんな外に長い事出しておきたくも無いんだが、ヴィヴィオは俺の前から全く動こうとしない。アイナさんが声をかけても、てこでも動かんって感じで軽く足を開いての仁王立ち。

 

『フェイトー!!』

『ご、ごめん…』

 

決定的なトドメを刺してくれたフェイトに向かってやけくそ気味に念話で叫ぶ。

 

事の発端は、なのはが『俺に対して』様子が変だった事に、ヴィヴィオが気付いた所からだった。

で、俺じゃなくてもう一人のママであるフェイトに聞きに行って、フェイトがさらっとなのはが俺に怒られたと答えてしまったのだ。

何があったのかなんて詳しく説明してもさすがにヴィヴィオに分かるわけも無いし、そもそもベラベラと喋るような事でも無いから簡潔に答えるようにしていたらしいが、つい前日に涙と殴られた痕を残して部屋に帰ったはずのなのはを真っ先に見たヴィヴィオが、なのはママの敵だと悟ってか睨んできているのだ。

 

「なのはママは悪い子じゃない。」

「いや…うん、まぁそれは俺もそう思う。」

「じゃあ怒っちゃダメ!!」

 

悪い子じゃないから怒るな。うん真っ当だ。真っ当すぎる。

 

まさかなのはがヴィヴィオの母親になるのを渋っているなんて理由をそのまま伝えられる筈も無く、どうしたものかと。

 

『さ、こんな感じの平和極まりない日常を守るためにも、早いとこ仕事片付けようか。』

『はい。交替部隊には私から指示を』

『華麗にスルーするな!しかも流す気ならわざわざこっちにまで念話送ってくるな!嫌がらせか!!』

 

心底楽しそうにさっさと離れていく我等が狸部隊長。

聞くまでも無くからかってるんだろうが、言わずにはいられなかった。

 

答えるまでどうあっても動きそうに無いヴィヴィオ。…仕方ない、気は進まないが真面目に答えるか。

 

「怒らない…ってのは約束できないな。」

 

正直に告げると、俺を見るヴィヴィオの瞳が潤んだ。

そんなヴィヴィオに目線を合わせるようにしゃがみ込んで、その頭に掌を乗せる。

 

「けどな、なのはママの事が好きで大事だからなんだ。ヴィヴィオもなのはママに怒られたりするだろ?」

「…ホント?」

「本当。」

 

笑顔で、けど真面目に答えると、少しだけ間を置いてヴィヴィオは頷いてくれた。

 

「でも、あんまり怒っちゃダメ。」

 

頷いてはくれたもののやっぱり心配なんだろうヴィヴィオは念押ししてくる。

まぁ、その心配はいらないんだが。

 

「それは大丈夫。何しろ俺がなのはに怒られる事の方が多い位だから。」

「おじさん悪い子!!」

 

安心させるつもりで告げたのだが、何故かヴィヴィオに怒られた。

フェイトとシグナムが軽く笑いを吹き出すのが聞こえるなか、俺は頭を抑えた。

 

 

立場無いなぁ…俺。

 

 

 

 

Side~ヴィータ

 

 

 

 

公開意見陳述会を前に、あたしは苛立ちを抱えていた。

 

 

 

 

朝からなのはの様子が…具体的に言うと速人への態度がおかしかった。

 

様子を伺いつつもどこか避けているようで、速人の話が話題に上がってもすぐに済ませようとしている。

自慢じゃねーがカウンセラーでも何でもねーあたしとしては、こういうのに特別敏感とも思ってねーんだが、そんなあたしが違和感感じる位だから、きっと何かあったんだろう。

だから、なのはより分かりやすいフェイトの表情もどこか暗かったから、何か知ってるだろうと思って問いただしてみた。

 

「ちょっと、速人に怒られたんだ。」

 

フェイトはそうとだけ答えてくれた。細かい話は本人に聞くわけでも無いのに出来ないと言った所だろうが、あたしとしてはそれだけで十分だった。

 

 

 

あの万年駄々甘馬鹿男が怒る理由なんて、我慢や無理のしすぎだと言う位しかねぇ。

 

 

 

 

狭いヘリの中、当然傍で話していれば聞こえてくる会話。

そんな中、なのははお決まりにもなりつつある、『受け入れ先は探している』という台詞を告げる。幸せになって欲しいと。

 

「まるで自分には無理だとでも言いてぇ見てーだな。」

「っ!?」

 

あまり他人様の家庭内の話にまで口を挟むべきじゃねーのは分かってたけど、本当につい口にしてしまった。殆ど独り言みたいに呟いたつもりだったんだが、横目で様子を伺っていたなのはは一瞬はっきりと分かる動揺を示す。

 

速人が怒り、なのはが心配する事なんて二人をそれなりに知ってれば誰だって想像つく話。

 

 

 

いつ何が起こるか分からない仕事だから、とでも言ったんだろう。昔墜ちてることも考えて。

 

 

 

傍にいながら何も出来ず、何も気付けずにあんな光景見てるしか出来なかった。

そのせいで今なのはに不安を与えてるとなると、信用が無いままだと証明しているようで、なのはにも、騎士の癖に仲間も守りきれなかった自分自身にも苛立ちが募る。

けど、そんな結果を出した身としては下手な口出しなどできる訳もなく、それ以上は言わなかった。

 

「そんな事無いですよ。」

「「そうですよ!!!」」

「と言うか、既になのはさんと一緒に居るのが幸せで仕方ない感じになってると思います。」

「う、うえぇ!?」

 

だが、そこまで暗い話には考えが至らない教え子四人に、特にフェイトに保護してもらって幸せだと断言できるからかエリオとキャロからはすさまじい力で反論をかぶせられるなのは。

 

立場的に部下まで含めて全員に批判される事なんてそうそう無いからか、教え子を相手に困った様子で小さくなっている。

 

「家族は一緒に居られると幸せなんですよ。ずっとヴィヴィオと一緒に居たいなら、もうなのはさんも家族だと思ってるんですよ、きっと。」

「そう…なのかなぁ…」

「はいです!」

 

本当に幸せそうに告げるリイン。

ま、常識的に見たら異色極まりない組み合わせで家族やってて幸せなあたしら八神家の一員に、あれだけ満面の笑みで告げられたらなのはとしても否定できねーだろ。

 

後は…なのはが安心できるまで、あたしが空で守ればいい。

昔の事はどうにもできねーけど、これから先はどうにでも出来るんだから。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

翌早朝フェイト達と共に現地入りした俺は、当然ながら隊長達と違って施設内に入れず、かと言って外を見回っても空からグリフが来るわけも無いので、地下でノンビリする事となった。

と言うのも、傍にギンガがついてくれているのだ。

 

「って、だからって俺だけノンビリしてるってのも…」

「八神部隊長から、勝算が薄い相手と交戦する予定と聞いています。さすがに敵襲を伝えること位は出来ますので少しでも神経を温存しておいてください。」

 

『体力を』と言わずに神経というギンガ。どうやら何となくでは察しているらしい。

 

『神速』どころか『貫』ですら、並じゃない集中力や感覚がいる。見切りとはそういうものだ。

ほんの少しだって頭がクリアな状態で戦闘に入れるのなら、それに越した事はない。

 

察した上で気を使ってくれているのであれば、ありがたく受け取っておく事にしよう。

 

「とは言え寝不足って訳でも無いし、少し話さないか?」

「では、警備の片手間程度に。」

 

断られるかとも思ったが、少し呆れた様子ではあるものの付き合ってくれるようだ。

 

「んじゃさ、何で警備員大概杖装備なんだ?」

「杖…ですか?」

 

いきなり振られた話題が意外だったのか、不思議そうに聞き返される。

けど、今回の警備の上では割と重要だ。

直接叩ける近代ベルカ式だって一応出てきているだろうにああも杖持ちばかり見かけるのは少しおかしい気がする。

 

「ああ。AMF破る射撃となるとAAクラス以上の技巧が必要になってくるだろ?その辺に並んでた量産魔導師軍団全員が修得してるとはとても思えないんだが…」

「量産って…失礼ですよ。」

 

少し怒られたが、割と重要な問題だと察してくれてはいるんだろう。少しの間を置いて答えが返ってきた。

 

「スバル達と違って古参の方々も多いでしょうし、そういった方であれば多重弾核なり何かしらのAMF対策はあると思います。レジアス中将は以前から対AMFの案を出してらっしゃいますし。ティアナがB以前でも修得していたように、対策として一技術に専念すれば覚えられなくは無いですから。」

 

確かにここの警備は地上部隊と六課で殆どを占めている。

警備で中に入るのにデバイスすら持っていけないなのは達のことを考えると、とことん地上戦力以外の余計なのを混ぜたくないんだろう。

以前から気にかけていたレジアスさんが何の用意もしてないわけが無い。とは思いたいが…答えたギンガの口調から察するに『そう思いたい』と言った程度の話な気がする。

 

「…今からでも上の面子に確認したい位予想情報だな。」

「それは…はい。教導官もエースもとにかく数が不足しているので、地上部隊がどういった訓練メニューを組んでいるかまでは…」

「おいおい…もし無策だったらどうするんだ?」

 

ギンガの返答に少し嫌な予感を抱く。

長距離転送とAMFのコンボが使える事は既にアグスタで披露してもらってる。

警備の人数は揃ってるように見えるが、アレをここでやられたら実際に戦闘可能なのは六課のメンバー以外では余程優秀な奴だけと言う事になる。

 

恐らくエース級のいない地上部隊では部隊行動前提だろうから、同時に攻撃可能な人数が多い射砲撃に傾倒したんだろうが…今回ばかりはそれだけだとまずい。

ここに来て何となく感じてた嫌な予感が、話してたせいか具体的になってしまった。

 

「ち…失念してたな。」

「…こう言っては何ですが。」

 

今からでもはやてにでも誰にでも伝えて引かせた方がいいかと考えていると、ギンガから声をかけられる。

 

「仮に対策を打っていて皆さんがガジェットと互角に戦えるだけの魔導師だったとしても、戦闘機人相手ではまとめて倒されてしまうかと。」

 

ギンガの指摘は虚しいが当たりだった。

ガジェットと互角。つまり、スバル達位の実力があれば十数人いても蹴散らせる程度と言う事。

 

「要は、あれか。元々俺達だけで相手にする位の気でいないとだめだから気にするな…と。」

「はい…警備の皆さんに悪いとは思いますが…」

「いや、適材適所だな。避難誘導や状況確認なんかには魔力があろうとなかろうと人員は必要だし、戦闘は全力で引き受ければいいって事か。」

 

静かに頷くギンガ。

やれやれ…これはグリフに会っても時間かけてられないか?

 

「ですが、余計なのは私達で引き受けるので貴方はくれぐれも焦らないでくださいね。」

 

と、考えた傍からまるで分かっていたかのようにギンガから念押しを受ける。

 

「…なぁ、あってからそこまで日は長く無いと思うんだが、そんなに分かりやすいか?」

「良くも悪くもとにかく皆を守ろうとしていると伺ってますし、『警備の魔導師の方々の心配』までするような人ならそれが真実だってすぐ分かりますよ。あまり無茶しないでくださいね。」

 

軽く笑みを漏らしながら答えてくれるギンガ。

どこまで聞いたかは知らないが、俺の事を聞いた上で気遣ってくれたから休んでいろと言ってくれたのだろう。

 

…やっぱ『神風』はやりすぎだったかな?

 

 

 

 

Side~エリオ=モンディアル

 

 

 

 

無言。

それが僕達の現状だった。

 

シグナム副隊長はこの場を離れていて、スターズはヴィータ副隊長と共に哨戒中。

で、僕とキャロは…フレア空尉に付き従って警備を行う事になっていた。

 

緊張なんて物じゃない。下手に私語でも放てばどうなるか分かった物じゃない。

フリードですら鳴き声一つ上げない今、キャロもかなり緊張しているんだろう。

 

何も無い六課内での油断にすら恐いフレア空尉の前で、任務中に油断でもしたら…

 

 

暫くそんな時間が続き…唐突にフレア空尉が立ち止まった。

僕とキャロが硬直する中、フレア空尉は振り返る。

 

 

何があったのかと姿勢を崩さず固まっている中…

 

「萎縮する位なら楽にしていろ。周辺警戒は私がする、その調子では必要以上に疲れるだろう。」

「あ…す、すみません…」

 

速人さんと同質の修行をしているらしいフレアさんは、背後を見てもいないのに僕達の緊張を察したらしく、声をかけてくれた。

 

…そうだよね、フレア空尉は味方なんだ。味方に疲れて任務が出来ないなんて本末転倒だ。

 

再び歩き出した空尉に、一呼吸して体を少し楽にした後ついていく。

 

「お前達は他の警備よりはるかに戦力になる、変なところで消耗するな。」

 

と、空尉から思いもしなかった評価を受けた。

 

「は、はい。」

 

人の心情とかを気にして無い…と言う事は、空尉から見たお世辞でもなんでもない評価だから、喜ぶべきなんだろうけど…当の他の警備の人のいる中を回っていると言うのにこんな事を子供の僕達に堂々と言うあたりはちょっとどうかと思う。

 

『に、睨まれてる…よね?』

『そうだね…』

 

キャロからの念話に同意しながら、警備のついでに周囲の人の表情を伺う。

僕らはともかく、フレア空尉は完全に睨まれていた。

 

このまま何か喋られたらまずい…

 

「あの…フレア空尉はどうして管理局に入ったんですか?」

 

もうこの際怒られても何でもいいから方向性を逸らそうと思って問いかけてみる。

けど、答えは無かった。

 

あのまま色々言われるよりはましだったと思うし、さすがに雑談に付き合ってくれるほどは甘く無いだろう。

答えが無くても仕方ないと思い…

 

 

 

「父が管理局員だった。」

 

 

 

唐突に、答えが告げられた。

 

「じゃ、じゃあお父さんに憧れて?」

「汚職事件を起こして逮捕され、賠償は家族である母と私に回された。元が病弱だった母は以降増えた仕事に悩殺され息を引き取った。」

 

明るい話が聞けたのかと思った矢先に地雷を踏んだことを知らされた。

真逆の間違いに怒らせてしまったかとも思ったけど、空尉は続きを語ってくれた。

 

「父は本来守るべきだった母を私事で死に追いやった。だから、私は無辜の民を守る事にのみ全力を尽くす。」

 

そこまで言って、前を歩いていた空尉は再び僕達を振り返った。

 

「お前達はフェイトの力になる為に六課に来たのだろう?」

「はい。」

「えっ!?」

 

さすがにそれをそのまま言うわけにはいかない理由。だから直接的には伏せているけど、この人相手に取り繕っても無駄だと思った僕は、本気で頷く。

 

僕とフレア空尉を見比べて戸惑うキャロの手をそっと握る。

 

「…はい。」

 

と、キャロも少し置いて頷いた。

 

「高町一尉等を見ていて、最近理由に私事があっても、それが各々の力になるのなら良いかとも思い始めている。」

 

怒られるとすら思っていたから意外だった、でも嬉しかった。

なのはさん達をちゃんと見て、感じてくれている物があることが。

 

「だが…真なる部分が私事に無いことは間違えるな。どんな理由にせよ他者の為に命懸けの場で戦うことが出来ないのなら、辞めて民として普通に暮らせばいいだけだ。別に戦えと言っている訳じゃない、お前達が自分で戦わなければならない場所に来ているんだと言っているだけだからな。」

「「はい!」」

 

フェイトさんが戦えと言った訳じゃない。僕もキャロも、自分でここにいる。

フェイトさんの力になりたいのも本当だけど、管理局が…六課が、何の為に作られたのか。

 

平和や秩序を…皆を守る為。

 

話したくも無かった筈の話をわざわざしてくれた上で伝えてくれた大事な事。ちゃんと覚えておこう。

話は終わりとばかりに背を向ける空尉。

 

「それと、力も気概も無い割に評価にだけは不満を持つような連中の機嫌取りなど必要ない。」

「え?あ…」

 

最後それだけ言って歩き始めた空尉について歩き出す。

いきなり何のことかと思ったけど、僕がこの話を振ったきっかけを思い出す。

言われてみまわしてみると、周囲に誰の姿も見えない場所に来ていた。

 

『尊敬…したほうがいいのかなぁ?』

 

キャロからの念話に、僕はまともに答えられなかった。

ついさっきまでは物凄い嬉しかったんだけど、最後の一言だけで台無しになった気がする。

 

硬すぎる理由とか色々分かったけど…やっぱりこの人酷い。

 

ただ、とりあえずこの後の警備は緊張が過ぎることもなく普通に出来たから、話せてよかったとは思う。

 

 

 

 

Side~ゼスト

 

 

 

 

「ったく…リライヴの奴無茶しやがって…」

 

アギトが不満を隠さずにぼやく。

スカリエッティからの説明ではAMF技術を盗み知る為に我々に近づいていたので排除した。という事だったが、正直その可能性は無いだろう。

本当にその気ならば、ガジェット一機でも無傷でくすねてどこかに篭った方が解析などもしやすいし、彼女の実力ならばわざわざ取り入らずともそれ位は容易い。

 

アギトもリライヴが裏切ったとは思っていないようで、重傷を負って逃げたという彼女の心配をしている。

 

「仕方があるまい、彼女は俺やルーテシアとは違う。」

「そりゃ!…そう…だけど…」

 

スカリエッティの手が施されていないと言う意味で、彼女は我々とは違う。

その上、綺麗過ぎる。何かしら闇を抱えているのは間違い無い筈だと言うのに、それで尚あの純粋さ。

根から歪んだ悪意に食い潰されるのは無理も無い事だ。

 

「だがスカリエッティからの手出しが無いという意味ではお前も」

「そっから先は無しだぜ旦那。リライヴも助けに来てくれてたみたいだけどさ、アタシの恩人はやっぱ旦那とルールーだからな。」

 

俺の言葉を止めたアギトが、開いていた資料に映るレジアスの顔を覗き込む。

 

「旦那の目的は、このヒゲ親父だろ?そこまではあたしが付いて行く。旦那の事、守ってあげるよ。」

 

出来るなら死人に引きずられて欲しくは無いのだが、協力してくれる気でいるアギトにそれを言うのも無粋。

 

「…お前の自由だ、好きにしろ。」

「するともさ。」

 

俺に残された時は短い、ここで全てを終わらせる事が出来ればいいが…

 

 

 

 

Side~グリフ

 

 

 

 

開かれているモニターからそれぞれに声が聞こえる。

スカリエッティは随分と楽しそうだが、今は僕も同意したい気分だ。

 

「準備が出来たまさにこの時になって、まさかこの世界で見つかるとは思わなかったよ速人…」

 

牢屋暮らしの間に落ちた体力と勘を取り戻し、僕が全力で振るえる剣も手に入った。

 

後はトーレが敗北したと言う戦闘者との交戦を試しとして地球に戻って速人を探そうと思っていた、丁度そこで見つかるとは思わなかった。

 

『グリフ…君のほうも大丈夫かな?』

「ああ…此方も準備は出来ている。」

 

あくまでも目立つのは主賓であるスカリエッティの『研究成果』。

僕はただ…速人との戦いを譲ってもらえれば構わない。

 

ガジェットの転送がすんで、局に動きが出れば速人も見つかるはず。そこにルーテシアに直接送ってもらえれば構わない。

 

向こうも僕の事を警戒しているはずだから、さすがに速人が空中にいるという事態にはならないだろう。

 

『さあ…始めよう!!』

 

スカリエッティの号令と共に他の戦闘機人が動き出す中、僕は手にした剣越しに、僕に打ち勝って見せた彼の姿を思い出す。しかも本物の御神はそれ以上という。

 

「楽しみだよ…速人。」

 

惨劇が幕を開ける中、僕はただ一人との再会を思い描いて剣を握る手に力を込めた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 


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