なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第十一話・足りない手札

 

 

 

第十一話・足りない手札

 

 

 

『兵器運用の強化は、進化する世界の平和を護る為である!』

 

朝食を貪りつつ、流れてくる演説に耳を傾ける。

レジアスのおっさんはりきってんなぁ…

 

『首都防衛の手は未だ足りん。地上戦力においても我々の要請が通りさえすれば地上の犯罪も発生率で20%、検挙率においては35%以上の増加を、初年度から見込む事が出来る!』

「このおっさんはまだこんな事言ってんのな。」

「レジアス中将は、古くから武闘派だからな。」

 

傍の席から聞こえてきた辛辣な反応に眼を向けると、冷めた表情でモニターを見つめる知り合い達がいた。

確かにどっから出た数字だよとか、そんな都合よく行くかとかあるんだろうけど…

 

「気持ちは分かるんだけどなぁ…」

「意外だな、奴は罪人を潰す力を求めているんだぞ?」

 

合席しているフレアが、俺の呟きに答える。

コイツ周辺だけ空いてるから座っただけなんだが、まさか答えが返ってくるとは思いもしていなかった。

 

「大規模事件は海で起こるからって戦力骨抜きにされてんだろ?全事件の被害総数はその方が減るだろうけど、逆に言うと少ない被害をずっと自分の担当する場所で見せられてた訳だろうしさ。」

 

要は、毎日何も出来ない状態で目の前で一人殺されるか、他所で二人殺されるかどちらかを選べ。と言った状況だ。

関係無い人からすれば二人より一人のほうが被害少なくていいだろうが、そんな理由で毎日死者を見せられる方はたまったものじゃない。まして根がいい人なら尚更だ。

 

「確か唯一のオーバーSも失ってたよな?」

「ああ。だが、全事件の被害総数が減るのであれば問題ない選択肢だ。それに、予算や装備でどうにかできると言うのであればリライヴのような者など生まれはしない。」

 

言い切ったフレアにとっては、もしさっきの二択で自分が何も出来ない者になるとしてもそれで被害が減れば構わず、中将の話は単なる暴走なんだろう。

 

コイツを中将と会わせない様にしておこう、多分中将ストレスで死ぬ。

 

とはいえフレアの話通り、海…次元世界担当から人材や予算を引っ張ってきて地上を護れば、解決しないとシャレにもならない大事件に回せる戦力が減り、両立させようとすれば徴収が厳しくなり、管理局を認めていないが故に一人で戦っているリライヴのような反発が増える。

 

「あちらを立てればこちらが立たず…か。」

「何もかもを立てたいお前としては納得がいかないか?」

「よくお分かりで。」

 

でなければヒーローなんて言える筈も無いとこまで落ち込んでる身だ、ある種当然だと分かってはいるが、だからと言って納得する気は無い。

 

「そういやスバルたちは?」

「教官の気まぐれで一日休暇だそうだ。」

「…お前よく知ってたな。」

「そう思うなら聞くな。」

 

見当たらないので聞いてみたが、よく考えたらフレアに聞くのって思いっきり人選ミスなんだよな。

なのは達の集まっているテーブルに顔を出す。

 

「フォワードメンバー何処行ったんだ?」

「一日休みだから午前中は一緒にエメラルドスイーツに行くって言ってたよ。」

「へー、そうなん…は?」

 

休みの行動だ、もう少し平和で何事も無い返答が帰ってくるのかと思ったら、なんか信じられない答えが返って来た。

 

「好奇心のある年代だ、根掘り葉掘り聞かれて困るような話を知られている運の悪さを呪うんだな。」

「シグナム副隊長…」

 

意地悪い笑みと共に告げたシグナムをなのはが恨めしげに見る中、俺は一人額を抑えていた。

変なことになってなきゃいいけど…

 

 

 

Side~スバル=ナカジマ

 

 

 

「アンタ妙に機嫌いいわねぇ…休みもらえて嬉しいのは分かるけど。」

「だってなのはさんの親戚のお店にいけるんだよ?それにスイーツ美味しかったし。」

 

町の思いっきり端の方に、そのお店はあった。

立地条件が悪いって言ってたけど、これは確かに通りすがりで来る場所じゃないなぁ…

 

「ディアーチェさんとか…店員なんでしょうか?」

「それは無いでしょ、あの態度で勤まるわけ無いし。」

 

不安げなエリオにさっぱりとしたティアのコメント。

これだけ聞くと失礼ではあるんだけど…王様名乗ってたあれじゃさすがに無理があるって言うのはあたしも思う。

 

とりあえず入ろうと店のドアを開く。

 

「いらっしゃいませ…おや?君達は…」

「えへへ…お休みになったからきちゃいました。」

「ゆっくりしていってくれ、見たとおりなんだ。」

 

店内に少しある座席には、誰も座っていなかった。

 

「場所が場所で、買いに来てくれても座ってノンビリしていく人はあまりいないんだ。」

 

苦笑いしながらそう言ったフレイアさんに薦められるまま、あたし達はテーブルを一つ占領した。

 

「珍しいお客さんみたいだね。」

「すずか。」

 

メニューを眺めていると、店の奥から紫色の長い髪をした女性が出てきた。

 

「月村すずかです。なのはちゃん達とは幼馴染なんだ。昔話位ならできるから聞いてね。」

「いいんですか!?」

 

願っても無いことだったけど、言われるとなんだか無断で探ってるみたいでなんだかまずい気もする。

気がかりを察してくれたのか、すずかさんは小さく笑う。

 

「なのはちゃんから連絡があってね。『シュテルちゃんに変なこと言われる位なら』って。」

「あ、あはは…成程…」

 

私の質問に返されたとんでもない答えを思い出して背中が寒くなる。

手回しされていたのには驚いたけど、かえって安心して話が聞けそうでよかった。

キャロが店内を見回した後、質問を切り出す。

 

「ここって普段シュテルさん達が働いてるんですか?」

「ん、うん。後は普段はお義兄さんが飲み物を入れたりしてるんだけど…今日はちょっと外してるんだ。」

 

楽しそうに告げるすずかさん。

 

「親子水入らずでお出かけなんだ。仲いいからお姉ちゃんとお義兄さん。」

「へぇ、いいですねそういうの。」

 

 

 

Side~月村恭也

 

 

 

「こうやって三人で出かけるのもいいわね、恭也。」

「ああ…」

 

普通はこういう時、両親で子供を挟んで歩く物なのだろうが…何故か俺が忍と雫に挟まれる形で手を繋いで歩いていた。

 

『兄さんの女殺しって雫にも利くんだな…』

 

以前こんなふざけた事を言っていた速人はとりあえず叩き伏せておいたが…この有様では否定できない。

 

「雫はどう?」

「私はお父様と修行してる方がいいんだけど…でも、お母さんからお父様とってばかりじゃ悪いから。」

「恭也、雫って本当に優しいわね。」

 

俺と繋いだ手をそのままに前に回りこむように移動した忍は、雫の頭を嬉しそうに撫でる。

異世界とは言え、日常は変わり無…

 

「さてと、次は…」

「待て、静かに。」

 

それだけで、忍も雫も何もピタリと動きを止めた。

 

何かを擦る様な…こんな場所でする筈の無い音がした。付近にコンテナを運んでいるような者も見当たらない。

しかも地下…か?

 

「気のせいかも知れんが念のために調べてくる。5分経って連絡一つなければ速人に伝えてくれ。」

 

静かに頷く忍。

 

「何かあったら私は…基本逃げる、最悪でお母さんを逃がす事だけに専念する…でいい?」

「ああ…絶対に無理はするな。」

「はい。」

 

雫は真剣に問いかけ、返事を返してきた。

まだ子供。普通の大人よりは強いが、それだけだ。

だが、見栄や手柄には走らないようにとは散々に言ってきてるし、雫自身そんな方針を誇ってくれているようだから、無茶苦茶な事はしないだろう。

 

俺は近くのマンホールを探して、人目を避けて飛び込んだ。

 

それだけで、すぐに分かった。

こんなところに、絶対にいる筈の無い少女が、足元もおぼつかないまま鎖に繋がれた箱を引きずって歩いていた。

しかもこの箱は…速人から聞いている、今扱っている危険物…

 

 

「速人には俺から連絡する。とりあえずもうすこし待っていてくれ。」

 

 

先に忍たちに連絡した後、俺はすぐに速人に連絡を繋いだ。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

兄さんから入った連絡は、ちょっと…と言うか大分まずい物だった。

 

「あー…話聞かれると思うけどどうする?」

『出来るなら知り合い相手にしてもらいたい所だな、拘束されたらたまらん。』

「了解。」

 

軽い感じで終わらせたからか、傍にいたなのはが笑顔でこっちを見ている。

 

「誰からだったの?」

「兄さんから。レリックのケースを繋がれた女の子を見つけたから対応してくれって。」

「ふー…ん!?」

 

普通に言ってやると、面白いように表情を変えるなのは。

 

「あえて映像通信にしてないんでな、映せと言われても無理だ。場所はサードアベニューF23の路地裏だそうだ。」

「軽い!はやてちゃん、聞いた?」

『ああ、なのはちゃんはフォワードの皆に指示を。安全確実に保護するよ、レリックも、その女の子もや!』

 

なのはに怒鳴られ、はやてが動くと、途端に慌しくなる。

 

…鎖で繋がれた女の子…か。

 

自由なはずなのに未だに首輪が外せていない娘を思い出した。

レリックがあったならあいつも来るはずだ…ネタバレした状態でどれだけ通じるか分かった物じゃないが、やるしかない。

 

「にしても…見つけたのはたまたまその場にいた民間人か…」

「それは…」

 

何気なく呟いた一言を聞き逃さなかったフェイトの表情に影が差す。

俺は慌てて手を振った。

 

「責めるつもりは無いけど、こうなるとますます朝の話が…な。ま、いいや。今は動こう。」

「そうだね。」

 

こんなタイミングで話し込んでいると、どっかの誰かに投げ捨てられかねない。

フェイトもそれ以上何も聞かず、頷いてくれた。

 

 

人手、資金…力不足。

 

 

それも…ただ人がいただけならともかく、町の下にレリックの反応があっても気付けないほどに。

勿論、監視員が街中うろついてる様な物騒な町がいいかというとそういう訳でもないが。

 

本当あのおっさん苦労してんだな…

 

六課的にはあまりいい立場の相手じゃないんだが、同情せざるを得なかった。

 

 

 

Side~キャロ=ル=ルシエ

 

 

 

位置的には町にいる分隊長達よりも近い私達も、女の子の保護されている場所に向かうことになった。けど、ヘリで来る隊長達と違って手早い移動手段が無かった。

 

「お仕事で急ぎ?送るわよ。どうせこうなったら恭也さん達も出歩いてられないし。迎えついでに。」

 

と、アリシアさんが車のキーを持って出てきてくれた。

徒歩よりは早いけど、民間人を勝手に巻き込むのは…

 

「どの道貴女達が乗らなくても行くわよ?恭也さん達迎えに行かないといけないし。」

「…分かりました、お願いします。」

 

結局、最優先することは別にあったのでお願いする事にした。

全員が乗り込むと、シートベルトをしっかりかける。

 

「急いだ方がいいでしょ。非常車両用のランプとか持ってる?」

「え?あ、はい。クロスミラージュ。」

『プットアウト。』

 

アリシアさんの言う通り、いつガジェットが出だすかも分からない現状で一般の人を長い間放っておくわけにも行かない以上急いだ方がいい。

これなら少なくとも信号とかで長い時間待たされたりはしなくなる。

 

「さて…と。紙コップから水を零さなくなるまでやった修行の成果を見せる時ね。待っててねフェイト、今すぐお姉ちゃんが大切なお仲間届けるから。」

 

動き出す前の車内で呟かれたアリシアさんの言葉の意味が分かったのは、車が走り出してすぐだった。

 

 

もう……ガジェットなんて恐くない、車が嫌だ。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

シャマル先生と、局を離れていなかった前線メンバーを乗せたヘリは、現場目指して飛んでいく。

 

「しっかし何者何すかねぇ?子供を保護するのはともかく、子供が持ってるのがレリックだって分かる一般人って。」

 

ヴァイスが呑気に呟いた言葉に、誰一人答えを返せなかった。

何しろ、ここにいるメンバーはヴァイス以外全員その正体を知っているのだから。

 

『ちょっと、恭也お兄ちゃんに無茶させないでよ。』

『馬鹿。目立つ為に戦うとかは無いけど、やばい事になってたら手を貸すだろ。今回だって女の子の救出な訳だし。』

『でも心配だよ…いくら恭也さんでも魔法が使えないんじゃ…』

『直接斬るしか無いもんなぁ…戦闘になってたら大変だな、相手が。』

『恭也お兄ちゃんの心配は?』

『いると思うか?地上ならリライヴでも倒すぞ。』

『それはさすがに嘘…だよね?』

 

ヴァイスの問いかけをスルーしつつ念話で密談する俺達知り合い組。

 

「そろそろ着きますから無視しないでくださいよ!」

「っとごめん。」

 

少し不満げに声をかけられ、ようやくなのはが答えを返した。

 

実際には、無視と言うか答えるに答えられない状況だっただけなのだが…

悪いねヴァイス、俺と身内が色々面倒で。

 

 

 

 

 

現地には兄さんと…何故かこれ以上無い程に覇気を失ったフォワードの四人がいた。

 

「皆どうしたの?」

「す、すみません。」

 

なのはに声をかけられてようやく姿勢を正す四人。休暇を貰って潰された影響…と言う事もないだろうし。

一体何が…

 

「俺はもういいですか?」

「あ、はい。すぐに避難してください。」

 

他人行儀に言葉を交わす兄さんとなのは。

今は通信も繋がってるし下手な事は言えないしな、結局話したのがフォワードだけじゃ面倒だ。

 

考えていると、兄さんが向かう先に車が見えた。

 

……ああ、そう言う事か、アレに乗ってきたのか。

大方非常用のランプでも借りて好き放題走ってきたんだろうな、急がなきゃならないって理由で全力で。

 

「皆は、こっちで現場調査何だけど…」

「私も地下捜査に着く事になった。」

 

珍しく言いよどんだなのはに続いて、一つも表情を変えないままフレアがそう言った。

不信感を隠せないのか思わずフレアを見る四人。

あんな車に乗せられた次はフレアみたいなやりにくい奴の同伴、大変だな皆。

 

「危険があれば手を貸せる程度の位置にはいるつもりだが基本は別行動だ、気にするな。」

「なぁ、やっぱり俺が下にいたほうが」

「レリックの封印処理が出来るのか?」

 

言い切る前に、バッサリと切られた。

俺としては空戦よりは地下戦のほうが圧倒的に戦いやすいのだが、どうやらそういう訳にも行かないらしい。

 

「反応は廃棄都市区画からだ、対リライヴで必要があれば天井に穴を開けて出てくる。それもお前には出来まい。」

 

ぐうの音も出ない。

一つの反論もできない中、フレアはさっさと開いたマンホールに飛び込んだ。

 

「…いいのはやてちゃん?あれ。」

『ええんや、頼むからほっといてやって。』

「う、うん。」

 

あまりよくない対応に対して疑念を抱いたなのはがはやてに通信で問いかけるが、泣き声にも似た悲痛な声を返す幼馴染にこれ以上の催促はさすがのなのはも出来なかったようだ。

 

フレアからすれば通信でも連絡は取れるし、呑気に会話する位なら迅速な行動を…なんだろうが、本当に扱い辛い奴だ。

 

『隊長二人とヴィータ副隊長、リイン曹長で海上のガジェットを撃破。速人君は念のためヘリに乗っ取って、リライヴが出てきたら対応。』

「了解。」

 

ヴィータも教官としてどっかに呼ばれてたはずだが、どうやら戻ってこれるらしい。

これだけ戦力が揃うなら余程大事でも無い限りはどうにかなるだろう。

 

「じゃあ速人君…に任せると危ないから、なのはちゃん、この娘をヘリまで抱いてって貰える?」

「はい。」

「前フリ要らないでしょ!ってか信用してよ!!」

 

俺の訴えを流して、シャマル先生は機材を持ち、なのはは女の子を抱き上げる。

いくらなんでもこんな小さい子に…って言うかキャロでも何もしないって言うの!

 

「少なくともスバルやティアナくらいじゃないと?」

「そうそう…ってあれ?」

 

心を読んだかのようなフェイトの呟きに頷くと、フェイトまでもが無言で去っていく。

 

「いや、別に二人ならなにかするって訳じゃ…少しは聞けよ!無視して歩くな!!」

 

ヘリまでは一緒のはずなのに、何か俺だけ輪から外された。

今回俺何もしてないよね?何でこうなる。

 

 

 

Side~リライヴ

 

 

 

レリック絡みとなれば出ない訳にも行かない。

けど…

 

「私の作戦はご不満ですかぁ?」

「貴女が不満。」

「ひっどぉい、そんなつれない事言わないで下さいな。」

 

このヘンタイメガネが考えた作戦にそって動くって言うのがどうにも気に食わない。

 

「そんなに気にしなくても、リライヴなら一人で全部やれちゃうんじゃないの?魔法使ったら無敵じゃん。」

「愚か者。」

 

呑気に告げたセインの言葉を一蹴するトーレ。

 

「無敵など無い。人の身の客人である彼女を使い倒すなどと考えている暇があれば自分の腕を磨け。」

「ごめんトーレ姉。」

 

謝って地面にもぐっていくセイン。

能力の特性を考えて地下の警戒についてくれるらしい。

レリックがあると言う事で既にルーテシアが向かってしまっている以上、見ててくれるならありがたい。

 

「申し訳ありません、騒がせました。」

「いいけど…本当随分律儀だよね、自分で言うのもなんだけど信用されて無いでしょ?」

「…今は、客人で協力者ですから。」

 

さすがに信用されているという訳でもないが、その辺は分かった上で立場を見て対応してくれているらしい。

律儀なトーレを指しつつクアットロを横目で見る。

 

「見習ったら?貴女より随分参謀っぽい性格だよ?」

「勿論、姉さま達は尊敬してますわよ。」

 

殴りたくなる笑顔で返してくるクアットロ。

尊敬という言葉がこれほど似合わない奴も珍しい。スカリエッティが言った方がまだ…いや、同類か。

 

「けど大丈夫ですか?いくら簡単に倒してるって言っても向こうも一回も全力は出して無いんでしょう?不安があるんでしたらお嬢様についててもらってもいいんですけど。」

 

クアットロにしては珍しく人の心配…という訳では無いだろう。

私の相手は恐らく隊長陣になると予測されている今、それを速人が出る前に片付けられるのか…作戦上の心配だ。

 

「簡単に倒せる…かは分からないけど、少なくとも絶対負けないし、問題ないよ。」

「言い切りますね、それほど自身があるんですか?」

「片翼の鳥に負けるほど、堕天使は弱くない…って事。」

 

不思議な顔をする一同。

けど、これは戦闘機人の皆の方が分かっているはずだ。

機械としての能力と生命体の感覚の融合を目的としているのだから。

 

能力、道具は魔導師の場合魔法で扱っている、道具そのものを扱う能力にも長けている。

けど…速人のような戦闘能力…戦う為に必要な感覚が魔導師にはまるで足りていない。

 

まさに『片方欠けている』んだ。

 

並大抵の相手なら、創意工夫でどうにかできるのかもしれないけど…

生憎、私はそんな鳥に負けるつもりは無い。

 

速人は…逆が欠けている。

 

いくら当てられても効かなかったら、先が読めても追いつけなければ意味が無い。

この間のデタラメな速さには驚いたけど、それでも防御魔法を駆使すれば防げてしまう。

 

過信は禁物だけど、それでも負ける要素が見つからなかった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 


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