神裂と一悶着あった後、俺は砂浜に建てられた大きなパラソルの下で、敷かれたシートに座り目の前に広がる水平線を眺めていた。
すぐ側では割と早くに蘇生した当麻を含めた上条一族で色々と盛り上がっている。自然と見るものがなければそういう目立つ所へ視線を向けるのが自然なのかも知れないが、実際には自然と目が逸れていってしまう光景なのだ。
――なんか物凄く際どい水着を着た随分と年下の女の子(に見える詩菜さん)。
――その子を追いかける刀夜さん。
――そんな刀夜さんを怒りの表情を浮かべながら追いかける当麻。
――その当麻の後を追いかける茶髪の少女(おそらく、車内で話していた乙姫ちゃんなのだろうが、当麻が凄い暴言を吐いていたので外見は当麻の別の知り合いかもしれない)。
滑稽な喜劇、というにはあまりに悲劇的なその一団を俺は進んで見ていたいとは思えない。
「それにしても『
現実逃避ではないが、去り際の神裂から伝えられた話を思い出す。
――『
能力・特徴共に今まで確認された事がなく便宜上その名で呼称される正体不明の魔術。
そして、その特徴こそが世界中の人間の外見と中身をランダムに入れ替えるというモノ。
ただしそれは副作用でしかなく、その本質は十字教における主の使いである天使を人の位に無理やり引きずり堕とすというその名の由来ともなったものだ。
…あまりに馬鹿げている。元の世界であれば魔術師には不可能な魔術だし、出来たとしても術者は歓喜する間も無く『
世界構造や魔術基盤、魔術理論の土台からして作りが違うのだとしても、魔術によって天使をこの世界に堕としてくるなど前代未聞の事であるようだし、『
しかも天使がこの世界に現れただけでこの様である。未だ完成した魔術ではないとは言っても本格的にその力がこの世界に介入し始めたのなら、どんな災害が発生するのか想像もつかない。
そんな
とはいえ、やることがないのならばこの場を離れもう少し情報収集でもしていればいいだろう、となるかもしれないがそうしてもいられない理由がある。
一つはこの世界の異変は上条当麻の近辺を発信源としているという事。
それを探り当てられたから彼女達は日本へ迷わず向かって来られたのだと言う。
しかし当の本人はあんな感じでそんな魔術師には見えない。前提条件としてレベル0の能力者であっても魔術を扱うのは相当な負荷を伴うと言うがそんな素振りも見せない当麻は犯人ではない。ということは天使を手中に収めた魔術師の目的も不明な今、『幻想殺し』という上条当麻が狙われる可能性もあるという。逆に言えば彼の近くにいれば、黒幕とも接触出来る可能性があるということでもある。
ただ俺がもう一つ注目した点は上条当麻の近辺が震源であるという所だ。“近辺"がどれ程の範囲なのかは不明だが、地球規模で言えば上条家も近辺だろう。
俺が呼び出されたのはその上条当麻の両親が住む家だった。これは偶然だろうか?…おそらくだが、そうではない。そうそう関係もない大魔術が偶然に何度も起こるとは思えない。『
俺自身天使を感じることが出来たのは異界に敏感である特性故であり、その他に天使との繋がりを感じられないからだ。
こちらの問題に関しては、これで打ち止め。
だが、もう一つ。神裂から気になる言葉を聞いた。
『…忠告しておきますが、その魔力殺しを極力外さない様に。貴方の持つ魔力は、『
俺が感じ取れた気配の乏しい謎の魔力は、どうやら天使の持つ魔力、『
ただ、再度調べてみても俺の持つ魔力(仮)の流れは地脈からくるものしかない。天使とは関係ないものだ。
神裂は多くを語らなかったが、推測は立つ。
間違いなく地脈を流れる力や『
『魔術回路』は私が生前存在していた世界では魔術師の誰もが備えていた魔術の素質とも言える擬似神経である。魔術師がただの人間とは異なる明確な証であり、特有の内臓とも言えるだろう。
この『魔術回路』には魔術基盤への
精製法は二つ。
本来なら小魔力と大魔力の大小とは単純に量を表すもので質に大した差はなかった。ただこの世界では質も全く違うものという事なのだろう。
何故俺が感知出来たのかといえば『魔術回路』がその力を私に扱えるレベルまで変換し、魔力(仮)にしたからなのだろう。それが理由なのはおそらく間違いない。しかし、そもそも常識を違える世界で認識の外にあった力を魔力に変換出来た理由は分からない。
『魔術回路』にその機能が生まれ付き備わっていたのか、或いは…。
「体が環境に順応したから、か」
英霊の生命力とは魔力そのものだ。一応『世界』から魔力は調達出来ている。とはいえ、あくまでそれは最低限度の活動に支障をきたさない程度である。その現状に危機を覚えた『魔術回路』が環境に合わせて機能を拡張し、独自の魔力精製を行ったと考えれば辻褄が合わない事もない。
しかし、そんな事があり得るのか?英霊となったからには輪廻の輪から除かれ、現世とは時空を異にする英霊の座に永久に固定される。不変の、人類の守護者として。
ただ、今回はとんでもないイレギュラーが発生した。原則として現世に出向くのは分身だけ。当然、本体の写し身なのだから変化など起きよう筈もない。だが、今回は本体そのものが現界している。
起こり得ない筈の
存在を維持していく事が出来ずその内消えるのか、低級霊に堕ちるのか、英霊の座へ連れ戻されるのか、何の変化も現れないのか。いずれの可能性もあり得るが、今の所目に見えた変化はなくいずれか結果に辿り着くとしても、今すぐという事にはならないだろう。
せめて、消えるにしろ何にしろこの事態が収束した後にしてもらいたいものだが。
「…しかし、本当に考え事しかしてないな」
皆楽しそう?に遊んでいるというのに俺だけ場違いなのは当初から考えていた事だ。
よく分からない場所に放り出されて、よく分からない事態に巻き込まれれば誰だって考え事が多くなるものだが、俺がこの場に居られるのは上条ご夫婦の厚意のおかげだ。コレでは連れてきてくれたあの夫婦に申し訳が立たない。
まあ、とりあえずの結論としては、いずれ上条家へ戻り調べ直す必要がある様だ。という所か。私がこの世界特有の魔力の気配を捉えきれていない以上、あの魔術師達にも協力して貰わなければならない筈だ。あの土御門元春と呼ばれていた金髪の少年は話を聞いてくれそうな雰囲気はあったし、神裂と呼ばれていた彼女も警戒こそ解いてはいない様だが、害意はない様だ。立ち去る直前にも、
『すみません。私も少し冷静ではありませんでした』
と一言の謝罪の言葉を残していった。根っからの悪人ではないのだろう。武器は向けられはしたが、彼女には殺気はなかったし、俺の不用意に魔力を発した俺を警戒し、他の二人を庇う意味で前に出ただけだろう。
それでもいきなり殴りかかる如何なものかとも思うが、彼女が冷静でない理由も何となく分かりはする。彼らとの会話の中であの魔術師の二人は半端に魔術の影響を受けたことで、魔術の影響下にある人々には入れ替わっている様に見えるらしい。会話の中で元春は一一一という男優を、そして、神裂はステイル=マグヌスという
神父。その名で呼ばれる女性は恐らく存在しない。つまり彼女は誰からも男性として見られているという事だろう。
本来の彼女は非常に魅力的なプロポーションの持ち主であり、奇抜とはいえ、露出の多いその格好と整った顔の造形もあり男女問わず多くの視線を集める事だろう。
しかし、それが男性であれば?自身が女性であるという認識による他の女性への無頓着さや、男女の区別をなされた公共施設の使用等を一朝一夕の内に習慣化出来たとも思えない。
そこから導き出せる結論は…。彼女の為にも、早急に事態を収束させたいものだ。
「そこら辺を散歩でもしてくるか」
一応の結論が出たという事で、気晴らしにそこら辺を歩いてみようと思い立った。今すぐ上条家へ向かうべきかもしれないが、信用もない状態であまり行動を起こすのは得策ではない。一人で何とかなるならともかくそうでないなら尚更だ。しかし、いい加減心地が悪くなってきた所ではあるしここでじっとしているよりはと、思案していたその時、
「うぅぅぅうぅううぅううぅ…」
「!?」
いきなり俺の隣でうめき声が聞こえた。
どうやら考え事に意識を割きすぎていたらしく新たにパラソルの下に現れた存在に気付いていなかった。少し気を抜きすぎたと思いつつ振り向くとそこには俺が初めて見た時には首まで埋まりながら遊んでいた?青い髪の青年が体操座りをしていた。
…首から下まで見える様になると、彼が本来は女の子である事が見て取れる。
流石に男が女の子用のの水着をこんな公の場で披露する筈ないもんなー。
「とうまが…、とうまが相手をしてくれないよぅ…」
妙に高い男の声だったが、哀愁を誘うには十分な声色だった。
…一応声はかけてみよう。彼女とて好きでこんな姿になっている訳ではないのだから。
「あの、大丈夫、か…?」
「……ん?」
その子がコチラに向き直る。パッと見ただけでも190センチはあろうかという巨体が引き伸ばされた様には見えないピンク色のセパレートに包まれており、腰付近にある短いスカートの様なフリルが余計なアクセントを加えている。
本来は小さい娘用の水着だったのだろうが、入れ変わった人間のサイズに自然と変わるのか、オーダーメイドでしかあり得ない程の大きさに仕上がっている様だ。
無駄に抜け目ない魔術である。ピッチピチの食い込んだ彼女は流石に見てられなかっただろうから、そこだけはグッジョブである。
「…そう言うあなたはだあれ?」
「そういえば…自己紹介もしてなかったな」
彼女と乙姫ちゃんと呼ばれていた茶髪の子にはまだ挨拶もしていない。
皆が『わだつみ』に戻ってきた時には自己紹介するとしよう。
「俺は衛宮士郎って言うんだ。刀夜さんに聞いてないか?」
「そういえば、とうまのお父さんがそんな事言ってたね」
思い出す素振りも見せずその時の事は正確に覚えているとばかりに即答する。
言い方は悪いが、その間の抜けた見た目とは違い記憶力が高いのかもしれない。
「あ、自己紹介して貰ったんだから私も自己紹介するね」
「そうして貰えると助かる」
「私の名前はインデックスって言うんだよ」
「へぇ…え?」
なんだそれは。人の名前じゃないだろ。
もしかして普段から呼ばれなれているあだ名を言っちゃったのか?と思いつつ尋ねる。
「えー…と?それはあだ名か?記憶力が良いから、とか」
「ううん、違うよ。『インデックス』は本当の名前。でも、記憶力が良いからっていうのは当たらずとも遠からずだね」
それからとうまと似た様な反応するんだ、と言った後、コチラに伝わり易い様に言葉を選ぶようにゆっくりと疑問に答えてくれる。
「えーとね。私はイギリス清教第零聖堂区、『
…訂正する。全然分かり易くなかった。
まあ、言っていることの所々は理解出来た。
イギリス清教というのはイギリス独特の十字教会の事だろう。イギリス国教会、正確性を求めるならイングランド国教会と言った方が俺には馴染み深い。
第零聖堂区、ネセサリウスというのは分からないが恐らく教会の一部署だろう。
そして少女が名前だ語った『Index-Librorum-Prohibitorum』とはラテン語で、日本語に直せばそのままが名乗った通りの『
禁書目録というのは
そして彼女が“魔法名”を名乗った事。
dedicatusとは献身的な、捧げるといった意味を持つ単語だが、後に続く数字の意味は分からない。コードネームか何かだろうか。
と言う事はこの子も魔術師という事か?
しかし元春達との会話の中では登場しなかったし、当麻とも親しそうな所を見るとどうやら彼らとは別口の様だ。正体を見極める為に彼女の話に合わせる。
「…なんか、難しい名前をしてるんだな。それに魔法名って…魔法少女ごっこでもしてるのか?」
「むぅ…馬鹿にしないでくれるかな。コレは『献身的な子羊は強者の知恵を守る』って言うちゃんとした意味を持ってるんだから」
「そ、そうか。済まん」
「とうまと違って素直に謝ってくれたから許してあげる」
「それは助かる」
「ところで、あなたのバックに入ってる物って何?なんか『
「へっ?」
なんだか釈然としないが、この子がそう言うのであればインデックスと呼ぶとしよう。
インデックスは俺の傍に置いていたリュックを断りもなしに手に取ると中から『赤原礼装』を引っ張り出す。
「むむ?何かの聖遺物?」
「ええっと、それは『聖骸布』って言う…んだってさ」
「トリノの聖骸布じゃないから他の聖人の聖遺物なのかも。どうしてこんな霊装をあなたが持ってるの?」
「そうだな…」
絶対に聞いてやると言う意志をヒシヒシと感じる。サラッと『礼装』という専門用語が出てきた以上彼女も魔術の関係者なのだろう。とはいえ彼女からは何の悪意も感じとれず、ただただ好奇心のみが伝わってくるのみである。
ここは事実を話しておくか。話す必要性がない所は除外して。
「俺さ、ここに来るまで色んな場所を回ってたんだ。その時に行き合ったとあるシスターさんの手伝いをしたんだよ」
「何を手伝ったの?」
「…“掃除”、かな」
「ふぅん。そのお礼にコレを貰ったの?」
「いや、掃除を手伝った後に俺が夕食をその人の分まで作ったんだ。確かカレーライスだったかな。そしたら偉く好評でさ、コレ程のモノを頂いたのに何もお返ししないのは失礼だって言って、唯一手元にあったっていうコレを貰ったんだ」
「…お手伝いのお礼じゃないんだね」
「まあ、な。あのくらいの“掃除”なら彼女だけでも何の問題もなかったし。俺のお節介だった気もする。それで、その聖骸布って凄い物なのか?」
ここは徹頭徹尾惚けてみる事にした。
この子は隠匿とか考えていなさそうだから色々聞けそうだ。
「うん、凄いよ。こんなに正確な聖骸布を作れたそのシスターは凄い人だったんだね」
「特にどの辺が凄いんだ?」
「うーん。能力自体は外界からの守りだからあんまり珍しくはないかな。それに明らかに後付けだけど魔力を増幅させる細工もしてあるよ。これを着てるだけで魔力の燃費も効果も凄く良くなると思う」
…初見でこの『赤原礼装』の能力を正確に言い当てた。
人は見た目だけでは判断出来ないな。
俺の少し驚いた顔を見てインデックスは説明する事が楽しくなってきたのか、一度座り直してから嬉しそうにまた喋り始める。
「でも、この聖骸布の凄い所はそこじゃなくて、オリジナルの再現率なんだよ」
「オリジナルの?」
「うん。もう完璧って言って良いくらい。それに元々は一枚の布だったのに服の形に直されて更に別の機能を埋め込まれても完成度を損なってないもん」
それは一応オリジナルではあるわけだし、当然か。
服の形にされた理由はよく分からないが魔術教会の一つであるアトラス院で礼装に作り直したかららしい。それ故か魔力増幅機関まで取り付けられたのだそうだ。かのシスターにはアトラス院に知り合いがそこにいる様で、共に武器以外の改造してみるのも案外楽しかったと言っていた。
「だから十分な『
「テレズマ?」
「あっ、まずはそこから説明しないとね」
少し惚けて見せるとそれからインデックスは頼みもしていないのに『
先ほどは神裂からその名前しか聞いていなかった。
俺の知識では確かギリシャ語で護符を意味し、確か天使に関わる言葉だったというくらいの認識しか持ち得ていなかった。
だが、こちらの世界に於いては非常に重要なものであるらしかった。
『
それを、役割や姿を似せるとオリジナルと似た様な性質を持つ様になるという魔術理論『偶像の理論』によって集めて、十字架等に宿させるとオリジナルの力がほんの少しだけ再現出来るということだった。
非常に似通ったモノに『世界の力』というのもあり、地脈、霊脈によって世界を行き渡っているらしい。
「因みに神殿とか教会とかはその『世界の力』を『
「そうなのか。…にしても、良く知ってるなそんな事」
「ふふーん。だって私一〇万三〇〇〇冊の魔道書を保管してる魔道図書館だもん。当然なんだよ」
「えっ?」
…禁書目録ってそういう意味なのか?にしても一〇万三〇〇〇冊とは…?
それに関して俺が聞こうとしたがインデックスの関心はもっと別の所へ向いていた。
「むぅー。これかもって思ったけど『天使の力』は集まっててあの力は感じられない」
「あの力?そういえばさっき埋まってた時にもテレズマとかレイとか言ってたな。何かあったのか?」
そう聞くと先ほどまで嬉々としていた表情をうむむ、と思案顔に様変わりさせつつ語ってくれた。
「うん。さっきまで海の方に顔向けさせられて当麻に埋められてたせいでどこから出てたのかは分からないんだけどね。後ろから『
「何やってるんだ当麻…」
まあ、それは置いておいて。インデックスが感じたという魔力は間違いなく俺の魔力(仮)だろう。
「それで、『
「『
「確か
「うん正解!それでね、各天使はそれぞれ属性を持ってるんだよ。
「さっき感じた力は違ったと?」
「うん…。だったら『世界の力』の筈なんだけど、『世界の力』はそれだけじゃ役に立たないんだよ。ホントはさっきも言った『
「へぇ…」
貴重な意見を聞くことが出来た。『
属性がないというわけではないらしいから、俺の属性である“剣”に染まってしまっているということか。元々使っていた魔力には属性というモノはなかった。もしかしたら、ただの魔力よりも俺の魔術と相性がいいのかもしれない。これは検証しなければ。
しかし、ここまで判明したのにいつまでも(仮)では言いにくい。『
と、少しの間黙って考え事をしていると目の前のインデックスが俺の顔をじー、と見ているのに気がつく。
「えっと、なんだ?」
「…もしかしてなんだけど、あなたって魔術師?」
「ッ…どうしてそう思ったんだ?」
突然の的を射た質問に驚くが、ごく自然に対処する。
「魔術の話はとうまと最初に会った時にもした事があるんだけど、全然信じて貰えなかったから日本の男の子は皆そうなのかなって思ってたから」
「…個人的に興味があったから調べてみただけさ」
「ふーん。そうなんだ」
まあ、分からないでもない。
科学の最先端を行く学園都市の学生に魔術だの天使だのという話をした所で、アニメとかゲームの話だと思われるか、宗教学や考古学的な学問としてしか捉えらえられないのかもしれない。更にそれをシスターが語るのだから宗教の勧誘だと思われてもおかしくない。
「ふぅ、とうまは全然聞いてくれないから少しムカムカしたけど、ちゃんと聞いてくれる人と話していると楽しいね」
「そう思ってくれたんだったら良かった。もし良ければでいいんだけどもっと色々教えてくれないか?」
「うん、分かった!色々教えてあげるね。今度は魔道書の話を…あっ!!!?」
説明を始めたかと思うといきなり立ち上がった。
「どうし、」
「とうま達がすごく面白そうな事してる!私もそれがしたいっ!ごめんねしろう、また後で!」
俺の言葉を遮りながら砂浜へと走っていく。…身長一八〇センチメートル超の男が女の子走りをするというのはまた、なんというか、その、斬新だな。
そんな考えを隅に追いやり、インデックスの駆けていった方の砂浜を見ると、
「…アレが遊びか?」
俺にはどう考えても、さっきまで並びながら走っていた人達の一番前の人が転倒して折り重なった人造の塔にしか見えない。
…おお!刀夜さんが下にいる詩菜さんを庇って腕立て伏せの状態でずっと固まっている。流石、妻への愛は誰にも負けないな。
って、ちょっと待て。インデックスはアレを遊びだと言っていた。って事はつまり…?
「うおっ!?ちょ、ちょっと待てインデックス!?あなた様は一体何をする気でござりまするかっ!?」
「いい加減堪忍袋の緒が切れたんだよ!とうま!こんな楽しそうに皆と遊んで!良いもん!私も勝手に参加するもん!」
「や、ちょ、イ、インデックスさん?まさかビリビリの上に飛び乗るつもりではないですよねっ!?待て、早まるな!俺の下にいるロリコンがお前…じゃなく、母さんを衰えた肉体で懸命に守ってんだ!お前のその惜しみもなく巨大化した体で乗っかられると四〇〇パーセントを超える確立でお前と親父が
「言ってる事の意味が分からないんだよ!!それに私そんなに重くないもん!今から上に乗って証明してあげる!」
「い、いや、だから待てってぇ!!ええい!こうなりゃ最終手段、青ピの全身を惜しげもなく使ったボディープレスを喰らうくらいなら、一人だけでも助かろうと逃げ出すダーク上条さんになってやらぁあ!!ってなわけで、どきやがれ猫被りビリビリ少女!!」
「わー、お兄ちゃんの背中あったかーい♪」
「何トリハダボイスを上げながら喜んでいやがる!?早くしねーとお前ごと潰されかんぞ!?」
「とーうーまー!!!」
「マ、マジで来んの!?インデックス様!後で何でも奢ってやるから、頼むからやめ…」
―――ズガンッ!
「「「「くぁwせdrftgyふじこlp!?!??!?」」」」
予想通りの大惨事。
コレは助けに行かなければならないだろう。
海の中で倒れてしまっている故、下にいる上条夫婦が溺れてしまう可能性もある。
「士郎さーん、助けてくれないかしらー?」
「み、身動きが出来ない!?し、士郎くん手伝ってくれー!」
「ヤ、ヤベェ…せ、背中がブレイク…ガクッ」
「きゃー!?お兄ちゃんが白目剥いてるよー!?」
「と、とうまっ!?大丈夫!?」
まあ、この世界に来て初めての人助けが、遊んでて積み重なってしまった人達の救助とはなんとも平和ではないか。
とりあえず、再び意識が飛んでいってしまった当麻を最優先に助けるとしよう。
どうもご無沙汰です。nakataMk-Ⅱです。
後書きを投稿した後から書くという暴挙。ひたすら放って書いて消しを繰り返してたらいつの間にやら7月も最終日。一月に一回も投稿出来ないのはどうなんだと思い、ついつい焦って後書きも忘れて投稿してました。すみません。
とりあえず突然出てきた『剣の回力』というのは単に(仮)呼びを自分で始めておいてめんどくさくなってきたからです。考えは簡単。界力の
パッと見かっこ悪い気がしましたけど回にはめぐるという意味がありそのままめぐる力だし、英語の名詞でもある
見苦しい言い訳でしたねすみません。ネーミングセンスが欲しい…。
今後は前回と同じく誤字脱字等の訂正を主に更新していきます。
ついでに久々にステータスも更新しときます。今後もよろしくお願いします。それではまた。
〔Main Weapons〕
〔魔術回路〕
〔質〕:C+++ 〔量〕:B+ 〔編成〕:???
マジックサーキット。
個人の生命力(小源(オド))、星・自然の生命力(大源(マナ))から魔力を精製する為に、また魔術式が刻まれた魔術基盤にアクセスし魔術を発動させる為に必要不可欠な擬似神経。
魔術を扱う者にとっては回路を備えている事自体が資質であり、多くあればあるほど優秀な魔術師とされる。家柄の古い魔術師程本数が多い傾向がある。
魔術回路は抗魔力を備えており、内部に干渉にしようとする魔力を弾くことが出来る。一般的な魔術師は魔力を弾くに留まるが、内包する魔力量次第では完成した魔術すら弾く。
彼の魔術回路は二十七本で、一般人から生まれた人間にしては多く、一般的な魔術師比べても遜色ないという程度。彼の扱う特殊な魔術を扱う一点に特化している特異回路(ここでの“特化”とは個人に刻まれた魔術基盤に接続することに長けているという意味)。元々質の良い回路であったが長年の鍛錬により研磨され、英霊化により更に強化されている。
反面、特化している故に自然干渉(世界の魔術基盤へのコンタクト)、その中でも特に攻撃系がからっきしで、標準的な魔術の扱いには不向き。『強化』『構造把握』及びその派生を除けば、初歩の初歩である『魔力感知』と『魔術抵抗』以外の魔術は実用レベルに持っていくのは困難。扱えるまでになったとしても平凡の域を出ない。