「2つ目ゲット!」
「ふぅ……。やっとか……」
俺達は問題を解いて答えに導きだされた場所に行き、景品があるかを探していた。
しかしやっぱりと言ってはあれだが、全校生徒が一斉に探しているせいもあり、行った場所に景品が無いときもあった。
そのせいか、10ヶ所位回ったのに、未だに2つしか景品を見つけられていなかった。
………まぁ、そう考えるといい方なんだろうが。
だから俺はこのまま続けても無駄足になる可能性があるので、今すぐにでも止めたかった。
多分不動院もそう思っている。
しかしそれは、今俺達の前で仁王立ちをしている人物が許さなかった。
「透、不動院君、また問題解いてくれる? 他の場所にもまだあるかもしんないからさ!」
「……………はぁ、わかったよ……」
「………………………(コクリ)」
あ、今、不動院が頷くまでの時間が長かった。
やっぱり嫌になってきてるのか? それとも休みたいのか?
俺は煉馬に聞こえない程度の声で、不動院に聞いた。
「大丈夫か? 何かあるんだったらちゃんと言えよ? じゃなきゃアイツには伝わんないからな」
「……大丈夫。疲れてはいないから。ただ……」
「ただ?」
不動院は言おうか悩んでいるのか、口を閉ざし、考えこんだ。
そして言おうと決心したのか、俺の方を見て口を開いた。その瞬間、
「遂に見つけたわよ! 不動院燐!」
向こうから不動院を呼ぶ声が聞こえ、呆然とその方向を見ていると、いきなり不動院に腕を掴まれた。
そしてそのまま、されるがままに引っ張られていた。
「お、おい、お前を呼んでたんじゃないのかよ!?」
「……だから逃げている!」
その声はあの大人しい不動院かと思うくらいに早口で、まるで今すぐ何かから逃げたいかのようだった。
まぁ、実際逃げているのだが。俺を巻き込んで。
そのまま不動院に何も言わず、ただ一緒に走っていた。
「……っごめん、悪気は、なかった、んだ、けど……」
「いや、気にするな。だから休んでろ」
「……(コクリ)」
あの後俺達はまるで鬼から逃げるかのようにやみくもに走っていた。
すると走りすぎて疲れたのか、いきなり不動院が止まったので、誰にも見つからないような場所で休んでいた。
そして息を整え終わったようなので、さっきの出来事を聞いてみた。
「お前、何で逃げたんだ? 嫌いだから会いたくない人なのか?」
「……確かに会いたくない。けどそれは嫌いだからとかじゃなく、見つかったら面倒くさい」
「そんなになのか……」
あの不動院がここまで言うのだから、余程見つかると面倒くさいのだろう。
あえてこれ以上は質問しなかった。
しばらくすると不動院が回復したので、煉馬の携帯に電話をした。
「あ、もしもし。煉馬か?」
『死になさい、この泥棒猫が』
何故かいきなり罵倒された。
しかもこの声、さっき不動院を呼んでいた女の声だよな? 何で煉馬の携帯に出るんだ?
「あ、あの……」
『なんで貴方なのよ!? 私は燐のお嫁さんになるために毎日花嫁修行しているのに!! 私の燐を返してぇええええええっ!!!』
…………………………え?
今、何て言った? 『燐のお嫁さん』……?
つまり、あの声の主は俺が不動院と駆け落ちしたと思っているのか?
じゃあ今、俺がやらなきゃいけないことは……。
「よし、不動院。今すぐ帰ろう」
「…………っ!!??」
あ、すごい驚いてる。
だけどこのまま逃げ続けていると、嫌な噂が流れるかもしれないしな……。
やはりここは、不動院を声の主に渡した方がいいだろう。自分や不動院のためにも。
「……俺はここに残る…っ!(ジタバタ)」
「うぉおっ!? 暴れるな!?」
なんかものすごい勢いで抵抗しとる!?
「悪いっ! 嫌かもしれないが、我慢してくれ!」
「……離せ…っ!(ジタバタ)」
「だから暴れるなって!」
どうしてこんなに嫌がるのかを疑問に思いつつ、俺は学校まで暴れる不動院を引きずった。
まさか、あんな話になるとは知らずに――――。