なにかがおかしい。そう思うほど今日は違和感があった。
同じ学校の人が俺を見るとき男子は睨みつけながら、女子は涙ぐみながら見てくる。
(俺がなにかしたか? いや、休日が挟んでるんだからそれはない。それじゃあ、なんで……?)
しかしそんな悩み事も学校に着いたらすぐに無くなった。というか、無くなるしかなかった。
廊下を歩いている時、ふとさっきまで人が集まっていた掲示板を見てみた。
そこに写真と共に書かれていたのは……
『我が学校のアイドルの小鳥遊透と神崎実乃里は、実は付き合っていた!?』
俺と神崎の関係疑惑についてだった。
「マジかよ……」
これから大変になりそうだと思いながら、いつも通り教室に入った。
*
一方その頃、実乃里の方はと言うと……
「ちょっと実乃里! あの記事本当!?」
「ああ、あれは……」
「まさか本当に付き合ってるの!?」
「いくら実乃里でも、小鳥遊君と付き合うのは許せないんだから!」
「いや、あの、話を……」
『いいから答えて!!』
………質問攻めにあっていた。
*
「つ、疲れた……」
さっきまで質問攻めにあっていたがそれも終わり、ただ机にうなだれていた。
「学校のアイドルは大変だな。小鳥遊透さん?」
そんな時、上から声が聞こえてきたので顔を上げてみると、そこには俺の親友、
「おはよう、煉馬」
「はよ。つーかさっきから見てたけど、皆同じような質問しかしてないな」
「見てたなら助けろよ……」
「面白い事を止めさせようなんて思わねーよ、普通」
親友が困っているというのにこの態度は少し酷いんじゃないだろうか。
まぁ、出会った時からそうだから今更気にしたら負けなんだろうが、ということにしておこう。
「いやー、本当に大変だな、人気者
「うるさい……って、ん?」
この時、煉馬の言葉に疑問に思った。
もし自分の事を言っているなら『達』なんて言わないはずだ。
となると、考えられるのはただ1つ。
「……神崎も同じ状況になっているのか?」
そう、神崎も質問攻めにあっているという事だ。
もしそうなら直接神崎と話をすれば良いと思い、煉馬に聞いた。しかし……
「さあ? 確かめてきたらどうだ? あ、行くなら当然俺も一緒に行くぜ」
「やっぱりか……」
あの面白い事大好きな煉馬が教えてくれるはずもなく、一緒に行くとも言い出してきた。
だが別に良いだろうと思い、俺は煉馬と一緒に神崎のいるクラスへと向かった。
「失礼しまーす! ここに神崎実乃里ちゃんはいますかー?」
「おい煉馬、馴れ馴れしくしすぎ……」
『透様ーーーーっ!』
「うわっ!?」
煉馬が教室の扉を開けて中に入り、それに続いて俺も入った。
しかし、すぐに周りは叫び声と共に女子に埋め尽くされた。
「な、何だ!?」
「透様! あれは事実なんですか!?」
「本当に実乃里と付き合ってるんですか!?」
「いや、なぜそこで俺に聞く!? ここって神崎がいるよな!?」
『だって教えてくれないんですもの!!』
「………ほう……」
この言葉を聞いて、後ろで困っている神崎を睨みつけた。
それを見た神崎は頭をぶんぶん横に振って、言わせてくれなかったという目をしてきた。
まぁ、彼女の性格を考えたらそれしかないだろうが。
しかし神崎が無理だとしたらあとは……
(これって、俺が誤解を解かなくちゃダメだよな……)
そう思った俺は、ちょっと言い間違えたら攻撃を仕掛けそうな女子達に向かって、ゆっくり誤解を解いていった。