私が小鳥遊君の部屋に入ってから10分くらいたっていた。
しかし私は勿論、小鳥遊君も無言で何も喋らず、ただただ時間をもてあましていた。
(なにこの静寂! ここはやっぱり私が話を持ちかけないと駄目なのかもしれないけど、でもでも話しかけにくいよー!!)
そんな感じで私がすごく悩んでいると、小鳥遊君が私に話しかけてきた。
「……何か、用があったんじゃないのか?」
「ふぇ? あ、うん」
これを気に、私は小鳥遊君に学校での出来事を話した。
小鳥遊君がいないと静かでとても違和感があったこと、皆が小鳥遊君がどうしてるのか気にしていること、小鳥遊君に早く学校に来てほしいと皆が思っていること、なるべく私だけではなくて霧谷君や不動院君のことも話した。
私が話している間、小鳥遊君は口を挟まずに無言で頷きながら話を聞いてくれていた。
その時の小鳥遊君の顔がどこか申し訳なさそうな、悲しいような感じだったけど……。
「そう、か……。わざわざ悪いな」
「ううん、気にしなくていいよ。私が勝手に来ただけだし……。明日からは、普通に来れるの?」
この時私は小鳥遊君の気持ちなんて考えてもいなかった。
きちんと考えていれば、小鳥遊君の気持ちをわかってあげられたかもしれないのに。
「いや……多分、普通には無理かもしれない」
「どうして…?」
どうして普通に来れないのだろう。何か不都合でもあるのかな?
そう思っていると、小鳥遊君が辛そうな顔をして言った。
「怖い、んだ。あの時過去を思い出してから……。また、目の前で大事な人が死んじゃうんじゃないかと思うと……」
「……!!」
そうだ、私は小鳥遊君の過去を知らない。だから、わかってあげられてなかった。小鳥遊君の過去が、どれだけ小鳥遊君を鎖で縛っているのかも。
でも、駄目だよ。だからって部屋に引きこもって外の景色を見ずに、孤独に生きるなんて。
私は無意識に小鳥遊君に腕を伸ばして……
――――優しく抱きしめた。
「か、んざ、き……?」
私の突然の行動に驚いたのか、小鳥遊君は抵抗もなにもせずに疑問の声をあげた。
私はそれに答えるように、ポツリポツリと言葉を紡いだ。
「それじゃあ駄目だよ、小鳥遊君。たとえ小鳥遊君が部屋に引きこもろうと外に出て学校に行こうと、私達の
だったら部屋に引きこもってないで、外に出ようよ。1人が怖いなら、私も一緒に外に出るから。2人で、外の世界を見よう?」
「……………る」
「へ?」
小鳥遊君がボソリと何か言ったので顔を覗いてみると、そこには顔を赤くした小鳥遊君がいた。
「一緒に、なら……出る」
「っ!!」
………不謹慎かもしれませんが、この時私は小鳥遊君に萌えを教えてもらいました。
とにかく、そうと決まれば実行するのみ!
私は小鳥遊君の様子をよく確認しながら、玄関の扉を開けた。
そこは私にとってはあまり変わらない、普段の景色。だけどずっと引きこもっていた小鳥遊君にとっては新鮮な景色に心を奪われた。
「外って、こんなに綺麗だったんだな……」
そう言った小鳥遊君の顔には、いつもより素敵な笑顔が張りついていた。
そして小鳥遊君は私の方を見ると、さっきよりも微笑んで言った。
「神崎、ありがとな」
ああもう、小鳥遊君は私を悩殺させる気ですか?
後日、小鳥遊君は学校に来ました。
クラスの皆に囲まれていて話をすることは出来なかったけど、今はそれでも構わない。
小鳥遊君に近づけた、今はそれだけで、私はとても幸せですから♪