「………ごめん。ごめんな、神崎……」
「小鳥遊、君……?」
泣かないで。泣かないでよ、小鳥遊君。
いつもみたいに笑ってよ。
私は、あなたの笑顔が好きなのに。
泣き顔なんて、してほしくないのに。
*
あのトリプルデートから5日後、小鳥遊君は学校にすら来ていなかった。
「何か、静かやな……」
「透がいないだけなのにな……」
「……きっと、俺達の中では大きな存在」
「どうしたのかな……」
「………………………………」
小鳥遊君が学校に来ないのは、もしかしてあの時にした何かの過去のせい、なのかな?
もしそうだとしたら私、余計なお節介をやいちゃったのかな…?
(放課後、小鳥遊君の家に行こうかな……)
それで休んでた理由がそのせいなら、きちんと謝ろう。
そして皆が心配してることを伝えて、明日から学校に来てくれるように説得しよう。
うん、決めた!
放課後は小鳥遊君の家で(私の中では)2人の秘密デートだ!
「ここかぁ……」
放課後、私は逢歌と小雪に先に帰ってもらって小鳥遊君の家に行った。
「よし、それじゃあ早速……」
私はブツブツ言いながら玄関のチャイムを押した。
あ、声は霧谷君に似せた方がいいかな?
『……はい』
「よっ! 透生きてるかー!」
『うるせぇよ……つか、生きてるから今出れてるんだろうが……』
「だよな! そんで、家に入っていいタイプか?」
『ああ。開いてるから入っていいぞ……』
「そんじゃ、お邪魔しまーす!」
そう言いながら私は玄関の扉を開けた。
すごい! 私だってばれなかったよ! 将来声優か女優になる才能あるかな!?
って、そんなことはどうでもいいとして。
えーっと、小鳥遊君の部屋は……あ、ここか。
「透、入るぞー!」
『!? ……ああ。だけど聞きたいことがある』
聞きたいこと? 何だろう?
もしかして、神崎実乃里だってことがばれた!?
『お前……本当に煉馬か?』
ばれたーーーーーー!!
え、何で!? 何でばれちゃったの!?
いけないいけない、ここはあえて平常心を装うのよ!
「な、何でだ?」
『最初におかしいと思ったのはインターホンごしに会話してる時だ。煉馬が遊びに来る時とかはチャイムを鳴らさずに入ってくるんだ。今回は律儀だったから改心したのかと思って深くは考えなかったが……。やはりおかしいと思ったのは玄関から俺の部屋へ来る方法と、今の行動だ。
いつも煉馬は玄関から俺の部屋まで走って移動してくるんだ。風邪で寝込んでるのもお構いなしに。だけど今回はゆっくり歩いて来てた。それから今、入っていいか確認したよな? 煉馬ならそんなことしないで扉を思い切り開けるんだ。だからこそ不思議に思った。本当に煉馬なのか……と。違うか?』
す、すごい……。1つ1つをしっかり見ていて細かく指摘してる……。こんなこと、誰も出来ないよ……。
やっぱり小鳥遊君はすごいなぁ……。敵わないよ。
私はクスッと微笑んで扉をゆっくり開けた。
その先には、驚いている表情の小鳥遊君。
「神崎……?」
「……久しぶり。元気そうでよかったよ」
さぁ、室内デートを始めましょう?