遊戯王GX 凡骨のデュエルアカデミア   作:凡骨の意地

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今回でデュエルは終結します。


第十三話:タッグデュエルの決着

「またも十代が不利になったか……くっくっく、これは気分がいい……」

 

 観客席にて黒い笑いを浮かべているのは、オベリスクブルーの万丈目準だった。彼は、十代の敗北を望んでいる。何故かというと、彼に敗北したからだ。

 月一の実技試験で、遊城十代と戦った。クロノス教諭から譲ってもらったレアカードを用いても勝てず、大衆の前で恥を晒してしまった上にクロノスからの信用も失った。取り巻きも去っていってしまい、プライドも地に堕ちていった。

 俺は海馬コーポレーションに並ぶほどの、万丈目グループの三男だぞ? 次世代のデュエルキングになる男だぞ?

 そう威張っても、もう鼻で笑われてしまう。それが悔しくてたまらない。そうさせてしまったのは、遊城十代だ。あいつさえ、いなければ……こんなことにはならなかった。あの能天気さと、無駄にあるドロー力だけは、腹が立つ。

 だが、それも風前の灯。城之内先生と孔雀舞のフィールドにはモンスターが、しかも伏せもある。これを破るなど、到底できまい。

 

(今に笑ってやるぞ……遊城十代)

 

 万丈目は一人邪悪に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十代は、カードを引いた。握りしめられていたのは……水を操る英雄だった。彼自身には力はないけれど、可能性を届けてくれる。まさに、自慢のヒーローだ。城之内は、口を呆けて開けた。まさかこんなギリギリの状態で、バブルマンを引くとは……やはり、すごいデュエリストだ。

 

「俺は、《E・HERO バブルマン》を守備表示で特殊召喚!! 手札がこのカードのみのとき、特殊召喚できる!! そして効果を発動! フィールドにカードが何もない場合、二枚ドローできる!!」

 

E・HERO バブルマン 星4 DEF1200 戦士族 水属性

 

 十代は新たに二枚のカードを手札に加える。新たに加えた中の一枚は、さらにラッキーなカードだった。

 

「さらに俺は、魔法カード《貪欲な壺》を発動する!! 墓地のモンスター5体をデッキに戻し、二枚ドローする!! 俺が戻すのは、《ユーフォロイド》、《ユーフォロイド・ファイター》、《フレイム・ウィングマン》、《ランパートガンナー》、《ジャイロイド》だ。それらをデッキに戻して、新たにカードを二枚ドロー!!」

 

「そういうことね……」

 

 舞は、一瞬で十代の行動の意図を理解した。城之内も察したようで顔をしかめる。

 

「全てが融合デッキ、そして翔のデッキへと帰っていった。それにより、デッキの圧縮率をあげているのに加え、融合ヒーローも再利用できる。うまい戦術だな」

 

「そういうことだ。だけど俺の狙いは少し違うぜ先生! さらにもう一枚目の《貪欲な壺》を発動する!! デッキに戻すのは、エクスプレスロイド、レスキューキューロイド、バブルマン、キューキューロイド、レスキューロイドだ。そして二枚ドロー!!」

 

「またっ!?」

 

 舞は驚く。なんというドロー力だろうか。バブルマンで貪欲な壺、貪欲な壺で貪欲な壺を引いて見せるとは……。それだけのドロー力があるということは……凄いものを見せてくれるのだろう。十代の手札は既に4枚、これだけあれば、勝ちへと繋がる一手を繰り出せるはずだ。城之内は、そう思った。

 

 

 

 一方十代は、《ラッキーカード》を引いていた。常に自分のそばにいて、共に戦ってくれている相棒が、手札に来たのだ。武藤遊戯がくれた、想いのこもったカード。

 このカードで……勝負を決めるぞ、翔。

 ちらっと翔を見て、十代が頷く。これだけで、翔との意思疏通はできる。カードを天に掲げて、勢いよくデュエルディスクに置く。

 

「俺は、《ハネクリボー》を守備表示で召喚!! さらに一枚カードを伏せて、ターンエンド!!」

 

ハネクリボー 星1 DEF200 天使族 光属性

 

 

 舞は、不審に思う。十代は、攻撃もせず守りを固めただけだった。ハネクリボーは確か、破壊されたターン、戦闘ダメージを0に出来る特殊効果があった。だが、破壊して損はない。恐らくその場しのぎのためのカードだろうから。

 

「あたしのターン、ドロー!! ……出来ることはないわね。なら、バトルフェイズに入るわ!!」

 

 戦闘破壊して、次のターンになにもさせずに、城之内で止めをさせばいい。

 だが……舞のそのタクティクスは、謝りだった。

 十代は叫んでいた。先程の大量ドローの末に築き上げた力を与える、カードの名前を。

 

 

 

「バトルフェイズ開始時に、リバースカードをオープン!! 速攻魔法《進化する翼》!! 手札を二枚捨てて発動し、場のハネクリボーを《ハネクリボー Lv.10》に進化させる!!」

 

 

 神々しい光が、天から刺してくる。その光を受けるのは、小さき天使、ハネクリボー。しかし、その天使は光を受けてーーー翼を生やした。その小さな体躯の何倍も大きい翼を広げ、こちらを睨み据えている。

 

ハネクリボー Lv.10 星10 DEF200 天使族 光属性

 

「ステータスは……変わっていないわ……」

 

 舞は進化したハネクリボーを見るが、翼が生えた以外に変化が見られない。ということは、なにか特殊能力があるということか。だがそれは一体なんだ?

 だが、それを考える猶予はなかった。進化を遂げたとたん、十代は……その特殊効果を発動した。

 

 

 

 

「ま、まずい……!!」

 

 万丈目は観客席から声を出していた。

 レベル10にしては守備力や攻撃力があまりにも低すぎるモンスターで、万丈目ならば雑魚カードと切り捨てている一枚であろう。

 だが、このカードは例外だ。万丈目はこのカードで止めを刺されたのだから。

 切り札のVWXYZを召喚し、十代を追い詰めたと思っていたら、このカードが出現し、ゲームエンドになってしまったのだ。

 その特殊効果は、何も知らないものにとっては驚異だ。ハネクリボーなど、十代くらいしか使わないだろうし、きっと誰も知らない。

 いけない、十代が勝ってしまったら、万丈目の心は満たされない。

 だが、どう見てもこの攻撃は防げそうには、なかった。

 

 

 

 舞が攻撃しようとした瞬間、突然ハネクリボーの体が光り始める。ハーピィたちは爪を構えて突撃しようとするが、踏みとどまる。だが、発光は止まることはない。

 

「一体……何が始まるんだ……?」

 

 城之内は呟いた。ハネクリボーは遊戯が元々持っていたカードだが、あんな効果を持つハネクリボーは知らない。そもそも大きな翼を生やしたハネクリボーは見たことがない。

 ハネクリボーの翼は、本体を守るように包み込む。パワーが溜め込まれ、翼にも光が宿り始めた。まさか……このクリボーのやろうとしていることは……!!

 

「ハネクリボーLv.10の特殊効果発動!! 相手バトルフェイズ中に、このカードを破壊して、相手モンスターを全て破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!!」

 

 ーーー何っ!?

 

 城之内と舞は小さき体躯の天使を見つめる。この攻撃を食らったライフは0になる。残りライフは1300、一体でも破壊されれば0になってしまう。つまりバトルフェイズを行った時点で、やばかったということか。

 これが、翔と十代の結束の結晶か……なるほど、相当強力だ。城之内は、満足していた。これほどまでの力を、もうこの時点で持っているとは……。

 

「本気で、遊戯も越えられちゃうかもな……」

 

 城之内のその言葉は、ハネクリボーの爆発によって、掻き消された。

 

 

 

 

 

「やったぁっ!!」

 

 翔はガッツポーズを決めた。十代がハネクリボーを進化させて、その特殊効果で城之内たちを破ったのだ。これでライフは0になり、翔たちの退学は免れる。

 翔は十代を見て笑った。嬉笑いを心から浮かべて駆け寄ろうとしたが……十代は笑っていなかった。

 

「あ、アニキ……どうしたんすか? 勝ったんじゃないんですか……?」

 

 翔の笑顔が疑惑へと変わる。十代はこっちを見て首を振った。

 

「勝ってない。ライフが0になっちゃいないからな」

 

「ええっ!?」

 

 翔は慌ててスタジアムにつけられているライフカウンターを見る。すると確かに、城之内&舞のライフは1300と変わっていなかった。だが、どうやって……!?

 先程のハネクリボーの爆発の煙が薄れていき、二人の姿が映る。モンスターこそ、全て破壊されているが、二人を新たに包むものがあった。

 神秘的な光を放つ膜が、煙を遠ざけている。まさかあれが、二人のライフを守ったものだというのか……?

 バリアが霞むと、城之内は静かに笑いながらこの現象を解説した。

 

「ハネクリボーの特殊効果が発動したとき、チェーンして《ホーリーライフバリア》を発動させていたのさ。手札を一枚捨てて、全てのダメージを0にできるんだ。モンスターの破壊こそは守れなかったがな」

 

 つまりハネクリボーは、モンスターだけしか倒せなかったということだ。十代は歯噛みしながらも、勇敢に叫ぶ。

 

「くそっ……だが、ハネクリボーの想い、無駄にはしないぜ!!」

 

「なら、それをあたしたちにぶつけることね。あたしはモンスターをセットして、ターンエンド」

 

 舞は、がら空きになったフィールドに一枚のモンスターをセットして、ターンエンドを宣言した。たった一枚の防御手段。あとは、翔のドロー次第で変わってくる。

 十代はハネクリボーの力を解放させ、フィールドのカードの枚数を減らした。今城之内と舞のフィールドには、僅かに一枚のセットカードがあるだけだ。翔と十代のフィールドにはバブルマンが存在している。どうやって、対処するのだろうか。

 舞は城之内を見た。全力は出した、あとはあんたの好きにしろと伝えた。城之内は微笑みながらうなずいた。ただそのセットカードは、少し本気を出しすぎだと、城之内は思ったが。

 

 

 

 

「頼んだぜ、翔。あとは、お前が決めてくれ」

 

 十代はにかっと笑いながら、翔に言った。十代が全てをかけた必死の攻撃のお陰で、状況が一変した。ここで、勝負を決めれば……翔たちの勝ちだ。

 翔は、ちらっと手札を見る。さっきのターンでドローした、《パワー・ボンド》である。機械族専用の融合カードで、攻撃力を二倍にして融合召喚できる代わりに、攻撃力をあげた分だけダメージを受けてしまうという制約がある。諸刃の剣とも言える、強力なカード故に、兄の亮に封印されていた。そして、十代とタッグを組んで思い悩んでいたとき……相手を思いやるリスペクトデュエルが出来なければ、そのカードを使う資格はないと兄から学んだ。

 だから、翔は相手を無視したデュエルをせずに立ち向かった。最初は怯えてしまったが、今はいつのまにか十代と共に歩めている気がする。二人で築き上げたコンビネーションが炸裂することもあった。今も十代がここまで繋いでくれたから、自分のターンが来ている。

 だったら……今こそこのカードを使うべきだ。翔が握りしめた、この強力なカードを使うときが来たのだ。

 だが、たった一枚ではどうしようもない。可能性をかけて……ドローをするだけだ。

 

「僕のターン……ドロー!!」

 

 勢いよく引かれたそのカードは……二枚目の《貪欲な壺》だった。

 翔は笑った。これなら……勝てる。これでカードを引いて、望む手札が来れば、勝てる。

 

「僕は、手札から二枚目の《貪欲な壺》を発動する!! 墓地のカードを5枚デッキに戻し、新たに二枚ドローする!! 僕が戻すのは、《ハネクリボー》、《ハネクリボー Lv.10》、《バーストレディ》、《フレイム・ウィングマン》、《エッジマン》だ。全部アニキのデッキに戻して、新たに二枚ドローする!!」

 

 全て十代のデッキに戻し、新たに二枚手札に加えた。それは、まさに翔の望むカードだった。

 

「よしっ!! 僕は《スチームロイド》を召喚する!!」

 

スチームロイド 星4 ATK1800 機械族 地属性

 

 エクスプレスロイドと同じような、蒸気機関車を模したようなモンスターが現れる。蒸気をたくさん出している辺り、カンカンなようだ。

 続いて翔は、手札から新たにカードを取り出した。それは……翔の切り札だ。これで勝負を決める!!

 

「そして僕は、魔法カード《パワー・ボンド》を発動する!! 場のバブルマンと、手札の《ユーフォロイド》を融合し、フィールドに特殊召喚する!! 限界を越えた力を発揮せよ、《ユーフォロイド・ファイター》!!」

 

 手札のユーフォロイドとバブルマンが結合し、スパークを散らす。ただの融合ではなく、結合というかたちの融合だ。まさに、機械族モンスターの融合にふさわしい。

 スパークはやがて激しくなり、爆発を起こす。城之内と舞は腕でかばう。その煙が薄れると、そこにはユーフォロイドに乗ったバブルマンがいた。だが、ユーフォロイドは常にスパークを散らしており、前に見たユーフォロイド・ファイターとは様子が違う。

 それも当然だ。これはただの融合ではないのだから。

 

「ユーフォロイド・ファイターの攻守は、融合素材にしたモンスターのそれらを合計した数値になる。しかも、パワー・ボンドの効果で、攻撃力は二倍になる!! よって……攻撃力は、800と1200を足して2000の二倍、4000だ!!」

 

ユーフォロイド・ファイター ATK?→2000→4000 DEF?→2400

 

 

 

 

 

 

「4000だと……ったく、すげえ攻撃力だな」

 

 城之内は目を丸くして、ユーフォロイド・ファイターを見つめる。ハネクリボーLv.10が友情の最終形態だと思っていたが、まさかこれが真の姿だったとは……。

 

(すげぇよ……お前たち。今の時点でここまでやっちまうなんて……。本当に、今のガキたちは凄い。俺の時よりも、可能性に溢れている)

 

 城之内はいつのまにか笑っていた。二人の友情の結束は、十分すぎる。もう、城之内が教えることがないよと言わせてくれるほどのものだ。デュエル以上に大切なものの価値を、理解しているからこそ、互いを信じるデュエルができる。軸がぶれない生き方を、見つけられる。彼らはきっと、自分の二の舞にはならないだろう。

 だが、まだ彼らも完璧じゃない。デュエル以上に大切なものを理解したら気づくはずだ。デュエルというものの、デュエルモンスターズという本質を。城之内が、苦汁を嘗めて嘗めて嘗め尽くしてようやく理解したことを、解ることが出来るはずだ。だがそんなことは、デュエルアカデミアの生徒にはまだ解ってもらえない。

 だから今はまだ……外には出させない。例え、このデュエルに勝ってでも。

 

 

 

 

「よしっバトルだ!! いくらなんでも、セットモンスターでは、その攻撃力には耐えられない!! セットモンスターで、攻撃っ!! フォーチュン・バブルマン!!」

 

 リバース効果が発動する可能性があることは、すでに把握済みだ。しかし、舞のデッキはハーピィデッキ。ハーピィデッキには、リバースモンスターは入らない。恐らく舞は、ハーピィを表側守備表示で召喚して、ハーピィの狩場を破壊してしまうのを恐れたのだろう。破壊効果は強制効果であり、現在伏せカードは一枚も無いので、ハーピィの狩場そのものを破壊してしまう。破壊しなければ、ダメージステップに表になり、守備力が200上昇する。しかしそれは……4000という威力に粉砕されるだけだが。

 4000という攻撃力の前には、誰も勝てない。あの青眼の白龍でさえも粉砕できるので、それよりも恐らくステータスの低いセットモンスターでは、防げるわけがない。そして粉砕したあとで、攻撃力1800のスチームロイドでダイレクトアタックをすれば、勝ちだ。

 嘗てのように、相手を無視したデュエルをしたりはもうしない。翔が培ったデュエルの経験をすべて活かし、相手の実力を認めた上でのパワー・ボンド。これならば、兄だって認めてくれる。デュエルだって勝つことが出来る。

 

 

 バブルマンを乗せたユーフォロイドはまっすぐセットモンスターに突撃する。裏側のカードに直撃し、カードがリバースされる。そこに現れたのはーーー。

 

 

 

 

「あっ……!?」

 

 十代の、息を漏らすような声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 ーーーマシュマロンだった。

 

 つぶらな瞳に、マシュマロのような見た目。あのデュエルキングも愛用している、()()()()モンスターが見えた。

 

マシュマロン 星3 DEF500 天使族 光属性

 

 

 

 モンスターをセットした舞は震える翔に、静かに語る。

 

「マシュマロンが裏側守備で攻撃されたとき、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える。さらに、戦闘では破壊されないわ」

 

 

 

 

 

 

 翔は悟った。自らがおかしたミスを。最も攻撃してはいけないモンスターに、攻撃してしまったことを、悔やむ暇もなくーーー。

 カードから、マシュマロのようなモンスターが出てくる。その愛らしい見た目が、突然クリオネのように牙を向き始め、翔へと噛みついた。その小さな体からは想像もつかない威力に、翔は倒れる。

 この現象の全てを、察した人間はほぼ全員だった。翔は倒れながら、後悔をしていた。何故、攻撃してしまったんだろう。でなければ……負けなかった。

 ドサッと地面に膝をつく翔に、十代が叫んで駆け寄った。

 

「翔ッ!?」

 

 十代の叫びを聞いて、翔は見る。翔は、泣いていた。ボロボロと涙を流していた。そして一言、十代にいった。

 

 

「ごめんアニキ……本当に、ごめんなさい……!!」

 

 

 

十代&翔:LP800→0

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「くそったれ……」

 

 ドンッ。

 城之内の拳がデュエルアカデミアの壁に思い切りぶつけられる。じんと痛むが、それよりも無情感が城之内を包み込む。

 

 十代たちは、城之内たちに負けた。勝てたら学園に残留、負けたら退学という約束になっていたので、二人は退学を余儀なくされることになった。

 翔は十代に謝り続けた。けれど十代は仕方ないさと優しい笑顔で励ましてくれた。お互い何の慰めにも、ならないのはわかっていて。

 十代に負かされた万丈目準は高笑いを木霊し、クロノスは黒い笑いを堪えきれていなかった。三沢は残念そうな表情を浮かべ、明日香は落胆してその場を去ってしまった。ただ、カイザー亮は翔に歩みより、デュエルを称賛していたが、翔にはその言葉を聴く気力なんてなかった。

 

 

 やはり勝ってはいけなかったんだ。自分だけお咎め無しだなんて辛すぎる。例え勝っても退学は防いで見せると意気混んでいたけれどクロノス先生を説得できず、査問委員会に突き出すと言われてしまった。

 

 こんなことになるなら、マシュマロンなんて伏せさせるんじゃなかった。マシュマロンなんて入れさせなきゃよかった。デッキ調整のために、マシュマロンを入れてしまったのは間違いだった。

 全ては自分のせいだ。いくら二人の結束の力が強くとも、負けてしまえばおしまいなんだ。退学してもなお、友情を大切にできればそれはそれでよかった。だが、そんなことだと切り捨てて、他の道を模索するのに精一杯な状態になってしまうのは必然だ。それでは、過去の自分と同じになってしまう。

 それだけはダメだ。そうはさせてはいけないんだ。何のためにデュエルアカデミアに就職したんだ。路頭に迷わせるためじゃない、道を見つけるのに大切なものを見つけさせるためだ。

 

(考えろ、考えるんだ城之内……!! お前ならきっとなにかが思い付くはずだ!!)

 

 

 頭を捻り、考えを絞り混む。デュエル以上に考えて、考え込む。

 

 ふと、閃光のごとくなにかが頭を横切った。もしかして……?

 城之内はそれを紐解いていく。実行できるか? それでうまくいくか……?

 

 問題、ないな。

 あるとすれば……面倒な奴に頭を下げなくちゃあいけないことだ。

 だが、そのくらいやってやる。自分はもとから泥臭くやって来たんだ。

 城之内は、携帯を取り出して耳に当てた。

 

 

 

 

「ではこれより、査問委員会による審議を行う」

 

 デュエルに敗北した翔と十代は、査問委員会に呼び出され、死刑宣告を待っていた。審議とは名ばかりで最早彼らの退学は決まったものだ。査問委員会のメンバーの顔はモニターに映し出され、そのなかには鮫島校長やクロノスがいた。そこには、城之内先生はいない。

 

「遊城十代、丸藤翔以下二名は、幽霊寮への侵入を図り、制裁デュエルに敗北した。よって、二人を退学処分とする」

 

 鮫島校長先生が厳しい表情で宣告する。十代と翔は、顔を俯かせて黙り混む。

 

「これに異存があるものは?」

 

 査問委員会の人間は手をあげず、じっと十代たちを見る。クロノスに至っては笑っている。嬉しくて仕方がないのだろう。だけど、悔しいけど言い返せない。

 誰も意見するものはない。鮫島校長は確認して、改めて言い直す。

 

「では、十代君、翔君は次の船の便でこの島から出ていってもらう。速やかに帰って荷造りをするように。では、かいさーーー」

 

 鮫島校長が解散と言い終えるその直前だった。

 

 

 

「貴様ら、この俺を抜きに話をするとはいい度胸だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか……あいつは今出られないか……分かったよ」

 

 電話を切った城之内は、一息をつき、デュエルアカデミアのスタジアムの観客席に座る。今はもう、生徒の姿はなく授業をしている。今日は城之内の授業はなく、こうして一人で佇んでいる。

 

「城之内、ここにいたのね」

 

「舞か」

 

 横から急に声がかけられた。城之内は手をあげるが、舞はなにも返さなかった。舞は、辛そうに眉を曲げていた。

 

「生徒たちは……どうなったの?」

 

「退学さ」

 

 城之内は淡々と答えた。落胆と言う表情を通り過ぎて、すべてが抜けきったような感じだった。舞の心は苦しくなる。自らが抱いていた罪意識が強くなる。

 

「……城之内、ごめん」

 

「どうしたんだよ、急に」

 

 城之内は、優しく声をかける。笑顔ではないけれど、心配してくれている。それが余計、申し訳なくなる。

 

「あたしが、マシュマロンを伏せなければこんなことには、ならなかった。あんたの生徒を退学に追いやった」

 

「気にすることじゃない。俺がやめさせれよかった話だし、舞が本気でやりたいという想いは仕方ないと思うぜ」

 

「でも……あんたは今、悲しんでる。あたしには、それが耐えられない。あたしは後悔している。本気でやろうとして、勝ってしまったの」

 

「舞は悪くねえ。デュエルは本気でやるもんだ、だから仕方ないんだよ。勝っちまったことを悔やむのは、十代や翔にも失礼だ」

 

 舞は俯く。城之内は手を組んでじっとデュエルフィールドを見つめている。足をとんとんと踏み鳴らしたり、貧乏ゆすりをしたりと落ち着きがない。だけど、横顔だけはとても綺麗で、思わず見惚れてしまうくらいだった。舞には、その資格はないと思いこんでいるけれど。

 

 しばらく、二人は黙り込んでいた。痛いほどの静寂が二人を包み、ストレスが募る。何かを話したいけれど思い浮かばない。舞が撒いたことなのだ、耐えなくてはならない。

 どのくらいそれが続いただろうか。舞も疲れたので座り始めた。城之内は視線を一切変えず、ずっとデュエルフィールドを見ている。貧乏揺すりも激しくなる。きっとイライラしているのだろう。それもそうだ、彼の生徒が、舞のせいで退学になったのだ。

 もう一度謝っておこうか。でないと辛い沈黙が続くだけだ。そう思って立ち上がろうとした。

 

 だが、それよりも城之内が先に立ち上がって……席を立って、背を向けた。もしかして、このまま行ってしまうの?

 舞は、恐る恐る聞いてみる。

 

「どこに行く気?」

 

「便所さ。小便がしたくてよ」

 

「そう……」

 

 下品な言葉と共に返事が来た。城之内はそのままトイレへと向かうのだろう。ただ、こんな気分で一人にされたら、凄く困る。辛いところもある。でも、一緒にトイレに行けるわけもないしこのまま待つ以外に選択肢はない。

 舞は立ち上がろうとした体を座らせる。この後悔は何時まで抱えるべきだろうか。舞は城之内の足音を聞きながら、途方にくれかけた。

 だがーーーふと、足音がやんだ。

 どうしたのだろうと気になって、舞は城之内を見上げる。城之内は、背を向けたまま、立ち止まっている。

 じっとその背中を見つめていると……城之内は、言った。

 

「舞、もう自分を責めるな。お前は何も、悪くない」

 

 城之内が再三繰り返して言ってきた、舞に対する慰めの言葉をまたも言った。鬱陶しくなんかない上に、その声を聞くと安心する。でも……城之内は、きっと怒っている。そう思えてしまうから怖いんだ。

 それを伝えたいけれど、言葉にできない。口に出せない。これほど悔しいことは、ない。

 

「私は、あんたの生徒を退学に追いやった。それでも悪くないと言える?」

 

「お前が退学させたいという思いでやったんならな。でも、そうじゃねえよ。お前はデュエルに勝つためにやったんだ」

 

「それは同じことよ……デュエルに勝ったから、彼らは退学になったのよ」

 

 何言っているんだ、あたしは。また自分を追い込んでいる。城之内を困らせている。慰めてほしいのか? 構ってほしいのか? よく、わからない。

 城之内はくるっとこっちを向いた。そして、歩み寄る。その表情は、いつになく真剣だった。声も低く、目付きはとても鋭い。堅い意思を持っている証拠だ。

 城之内は、ガキの頃に比べたら落ち着いてきていると思う。お調子になるところはなくなり、けれどその面影は残っている。騒ぐときは本当に騒ぐのは、変わらない。

 でも、いざというときには真剣になるところは全く変わっていない。真っ直ぐなところも変わっていない。何でもかんでもぶつかっていくその強さも変わっていない。

 だから舞は、城之内のその瞳から目をそらせなかった。その目がとっても好きだから。でも自分にはもう、城之内を好きになる資格なんてない。彼を傷つけたのだから。

 

 だけど城之内はそれに構わず、舞のすぐ近くに来た。城之内の汗臭い匂いがする。でも不快だとは思わない。城之内はその表情のままで、片手を舞の右肩においた。

 

「……!」

 

 舞は目を見開く。城之内はその表情を変えることなく、舞を見つめる。そして……口を開いた。

 

 

 

「舞、お前のせいじゃない。だけど……納得いかねえならーーー俺が、何とかする。何とかして、あの二人の退学を止めさせてやるよ」

 

 

 

 

 城之内はそれだけいうと、手を離してその場を後にした。舞はポカンと城之内の背中を見つめる。一瞬の胸のドキドキを、返してほしいと文句を言いそうになる。

 昔の城之内ならば、自信たっぷりに言っていたけれど、今のはそういう感じじゃなかった。必ずやってやるという強い意思で言っていた。だからーーーますますドキドキが止まらなくなる。舞は、城之内を傷つけた。でも、彼はそれを受け止めて、生徒二人を守るべく奮闘しようとしているのだ。

 

 城之内は、舞のその思いを受け止めて、外に出た。あの馬鹿野郎を、呼び出すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、誰かの声が聞こえた。そしてモニターが新たに増え、その人物が映し出される。茶髪に切れのある顎、そして冷徹な目付きが特徴のこの人物は、まさか……。

 

「あ、あなたは……オーナーの海馬瀬人ではないですか? 何故このような場所に?」

 

 鮫島校長が尋ねると、他の査問委員会のメンバーも驚きを隠せなかった。

 

「えっ!?」

 

「ま、まさか伝説のデュエリスト、海馬瀬人!?」

 

 翔や十代も驚く。何故なら、モニター越しとはいえ、海馬瀬人という、大企業の経営者兼デュエルキング最大のライバルデュエリストがすぐそばにいるからだ。

 海馬はその叫びを気にする風はなく、鮫島の質問に答えた。

 

「そうだ。久しぶりだな鮫島。少し言いたいことがあってな。しばらく見ぬうちに、人、いや、デュエルを見る目もなくなったか」

 

「……それは、どういう意味ですかな?」

 

 いきなりの挑発的な発言に一同が顔をしかめる。しかし海馬社長はまるで怯むことなく威厳たっぷりな口調で答えた。

 

「貴様には、あのタッグデュエルの真の意味が理解できなくなっているほど落ちぶれているという意味だ。その点では貴様も同じだ、イタリア被れのクロノス・デ・メディチ」

 

「イタリア被れというのは余計なノーネ!! 私は正真正銘イタリア出身ナノーネ!!」

 

「誰が貴様の下らんプロフィールを話せといった? 俺が話したいのはそんなことではない、単刀直入にーーー」

 

「お待ちください、海馬さん」

 

 女性の査問委員が海馬社長に物を申すようだ。海馬社長はじろりと彼女を見つめて聞いた。

 

「何だ?」

 

「この場の話は我ら査問委員が決めることです。オーナーのあなたに参加権限はないはずですが」

 

 査問委員会とはデュエルアカデミアの問題を解決するための組織、確かにオーナーには直接は関係しない上、海馬には参加権限がない。

 だが、そんな理屈は、海馬の前では通用しないことは彼女はわかっていなかった。

 

「参加権限だと? そんなもの、この俺の管轄外だ。俺には社長権限というのがある。この査問委員会を存続させているのは、この俺によってだ。介入する余地はある。文句があるものはこの俺とデュエルしろ。で、どうするのだ井上」

 

 井上と呼ばれた女性は詰まるような声をだし、申し訳ありませんといった。海馬にデュエルで勝てる人間など、武藤遊戯くらいしかいないことを皆理解しているからだ。言っていることは滅茶苦茶だが、決まり事のほとんどはデュエルと海馬の命令によってであるので逆らうことはできない。逆らった瞬間に、滅びのバーストストリームがソリッドビジョンの中でも、現実でも放たれてしまう。

 

「では、俺も忙しい身なので単刀直入に言うぞ。遊城十代と丸藤翔の以下二名の復学を、認めるものとする」

 

 海馬は淡々とそれを言いあげた。約束を、協定を覆すような無茶苦茶な言動に、一同は目を丸くした。解放されそうな十代や翔ですらポカンとしている。

 

「お、お待ちくださいノーネ! そのものたちは規則を破って、それの審議ということでタッグデュエルをやらせたノーネ!! 負けたら退学という条件を無効にするのはどうかと思うノーネ」

 

「確かに、貴様たちの言うことは理解できる。下らんデュエリストならば、こんなことは俺は言うつもりはない。だがな……俺はあのデュエルを見て思ったのだ。面白い奴だ、とな」

 

「お、面白いですか……?」

 

 鮫島校長は言葉を繰り返す。

 

「そうだ。はっきりいってやろう。プロのデュエリスト相手にここまで戦う生徒など、他にはいない。恐らく貴様らでも無理だ。凡骨はともかく孔雀舞は世界的に有名なデュエリスト、それと接戦を繰り広げるのは並みのデュエリストでは不可能だ。だが貴様らのやろうとしていることは、そんな奴を潰すことだ。もしかすると、未来のデュエルキングになるかもしれない男たちを、な」

 

「未来の……デュエルキングに……」

 

 十代は、海馬を見つめながら呟く。伝説のデュエリストから、そんなことを言われるとは思っていなかった。気分は最悪だったはずなのに、今はどこかいい。

 

「腕そのものは武藤遊戯やこの俺にはまだまだ及ばんが……俺には分かる。こいつらには、人を認めさせる力があることを。だからもう一度言うぞ。今回は退学を罷免とする。社長命令である以上、覆すことは許さん。どうしても不満があるのならば、デュエルで相手しよう。では、失礼する」

 

「お、お待ちください海馬さん!!」

 

 井上やその他の査問委員が呼び止めるが、モニターは切れてしまい、海馬が応答することはなかった。

 海馬がいなくなったことで、しんと場が静まり、誰も口を開かなかった。皆、海馬の無茶苦茶な言動に辟易しているのだろう。救われた翔や十代ですら、唖然とするしかない。

 

「それで……どうするんでスーノ校長先生……?」

 

 クロノスがおずおずと尋ねる。鮫島校長先生は目をつむりながら唸る。

  その時だった。

 

「先生、お願いしますっ!! 俺たちを、復学させてください!!」

 

 十代が突然、頭を下げたのだ。いつもは大人に対しても敬語を使わないような、お調子者の十代だが、ここできちんと敬語で頭を下げた。

 

「俺、もっとデュエルしたいんです。一番になりたいんです。未来の……デュエルキングになりたいんです!! だから……お願いします!! 俺を、ここから追い出さないでください!!!!」

 

 どこから声を出しているのかわからない程の声量で十代は頼み込む。翔も、それにならってお願いしますと頭を下げた。

 クロノスは顔をしかめた。クロノスにとって十代たちの退学は障害を取り除くためのものであるからだ。だがそれは、海馬の乱入によって食い止められ、今こうして生徒が頭を下げている。クロノスは一人の教師、一生懸命やっている生徒を無下にはできない。

 校長もクロノスの表情を眺めていた。そして、二人のデュエルを思い返していた。あの二人は、普段からは想像もできないほどのパワーを見せて、城之内先生や孔雀舞を苦しめた。それだけでも、本来ならば尊敬に値するほどなのだ。

 海馬の言う通りだ。目は腐っていた。あのデュエルの真の意味を、理解できていなかったのだ。強くて逞しいデュエリストを育てるのが、このデュエルアカデミアの教育方針だ。実力者を無慈悲に放棄するなど、有り得ないのだ。

 

「ーーー分かりました。二人の退学を罷免とします」

 

 鮫島校長は、笑顔を浮かべて二人に告げた。その直後ーーー十代と翔は抱き合って、喜んでいた。再び友と学び、遊び、戦える。それ以上の喜びを、二人は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

 城之内は、舞の元へと戻ってきた。顔は、笑っていた。微かにだけれども。

 舞は城之内を見るや、立ち上がっていた。どのくらい待たせていたのだろうか。

 

「随分遅いトイレね」

 

「ちょいと立て込んでてよ。待たせちまったな」

 

 シニカルに笑う城之内に、舞は苦笑する。そして舞は、おずおずと聞いた。城之内の成果を。

 

「で、どうだったの?」

 

 城之内は、舞の質問に口では答えなかった。来いよとそれだけ告げて、城之内のあとに続く。

 城之内が歩いていったのは、デュエルスタジアムの外の廊下だ。そこにはーーー二人の男子がいた。

 

「おっ、来た来た」

 

「こんにちは!」

 

 茶髪の活発そうな少年と、眼鏡をかけた小さな少年の二人だった。先程、激闘を繰り広げた、友情のデュエリストだ。でも、彼らは退学になったのでは……?

 

「あんたたち……どうしてこんなところに?」

 

 舞が驚きながら聞くと、茶髪の少年は、キョトンとした顔で答えた。

 

「へっ? どうしてって……俺はここの生徒だからだよ」

 

「でも退学処分になったんじゃあ……?」

 

 十代はようやく舞の言いたいことがわかったことで、ああと唸る。そして、頭をかきながら笑って答えた。

 

 

「それがよ……なんだか知らないんだけど助かったんだ。いきなり海馬瀬人が現れてさ、査問委員会に俺たちを残留させろって言ってさ……。まあ助かったよ。俺はまだここで止まりたくないしな。なあ、翔?」

 

 

 茶髪の少年は、眼鏡をかけた少年・翔に話を振る。翔は、笑顔を浮かべて頷く。

 

「うんアニキ!! 僕も、アニキと一緒にデュエルしていきたいっす!!」

 

 舞は、すべてを察した。城之内が手を回したんだ。海馬瀬人を呼べる人間なんて、本当にごくわずかだ。城之内と海馬はいがみ合っているが、それ故に関係も深いのだろう。

 城之内は、そんな二人をみて、にっこり微笑んだ。そして、口を開いた。

 

「そうか……それならよかったよ。頑張れよ」

 

「はい!!」

 

 城之内の言葉に、二人同時に揃えて答えた。城之内は嬉しそうに笑いながら舞の肩に触れた。舞は、とても気分がよかった。退学にならなくてよかったというのもそうだが、何より城之内がきちんと教師をやれていることだった。生徒から全幅の信頼を寄せられるなんてそうそうできることじゃない。でも城之内はやってのけた。もしかしたら、彼は天才かもしれない。それは、二人の生徒の笑顔を見れば分かることだ。

 

「じゃあ先生、俺たちはもう寮に戻りますね」 

 

 十代は城之内たちにいった。おうと城之内は答えると、十代は翔を連れて行ってしまった。若い男とだけあって足は速い。きっと飯時ゆえに、腹が減っているのだろう。

 城之内は苦笑しながらも、二人の後ろ姿を見守って……叫んでいた。

 

「今日のデュエルは、楽しかったぞーー!! いつかまた、もう一度やろうなぁーーー!!」

 

 城之内の、子供らしい発言に、遠くから十代の、またやろうぜぇーと叫ぶ声が返ってくる。舞も笑顔で見送った。マシュマロン止めをさしてしまったことなんて、いつのまにかどうでもよくなっていた。この二人が、無事ならばそれでいい。

 

 

「さあて……明日はゆっくりと羽を伸ばすぞ……」

 

 二人が去ると、城之内は伸びをしながら、十代たちとは反対の方向へと歩き出した。舞もそのあとをついていった。

 

「ところで、舞は今日どうするんだ?」

 

「船が来るまでここでゆっくりしようかしら。あんたといっしょに」

 

「そっか……じゃあ飯でも食いに行くか」

 

 こうして、退学を決めるタッグデュエルは、幕を下ろしたのだった。




貪欲な壺は当時は二枚も積みはしなかったと思いますが、貴重なドローソースには変わりはないので、なしではないはず。制限になるのは2006年ですし、きっとこの頃は無制限のはず。

次回は少しお休み回として、遊戯と城之内をメインにした奴を書きます。その次は、遊戯のデッキ盗難事件ですね。それが終わったら、セブンスターズまで行こうかなと考えています。

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