城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

26 / 26
少し遅くなりました。
今回は原作の大晦日の話です。
それではどうぞ!


第25話

今日は年の変わり目大晦日である。

 

選挙のことが伝えられてからもう一年が経とうとしているわけだが。

 

『それでは、全国民回答の世論調査の結果を発表します』

 

我が家ではちょっとした緊張状態になっていた。

 

これは仮選挙みたいなものなので、現状誰が一番王様にふさわしいかが判断されると言っても過言ではない。

 

葵姉さんは料理を作ってるので見ていないがそれ以外の兄弟は全員テレビに注目していた。

 

「実質、本番の国王選挙みたいなものだよね」

 

「あくまで現段階での順位よ。これで王様が決まるみたいに捉えない方が……」

 

「ああ!順位どうなんだろう!目立ちたくないけど王様になりたいし……どうすれば!」

 

「うん、茜ちょっと黙っててくれ」

 

岬の言葉に真面目に奏が反応してるのに茜は相変わらずである。

 

「茜ちゃん、中途半端だね、案外ビリだったりして~」

 

光が冗談めいた感じで笑いながら言うが、茜は急に真面目な顔になり――

 

「いや、ビリは修ちゃんで確定だからそれはない」

 

「おい、言われてるぞ修。言い返せ」

 

「返す言葉もないが俺も傷つくんだぞ……」

 

父さん、うちの長男あまりも情けなさすぎるんですけどこれでいいんですか……

 

そんな話をしていると……

 

『第10位 第三王女茜様です!』

 

「え!?うそ……喜んだらいいのかな?」

 

「いや、お前王様になりたいんだよな?悔しがれよ!」

 

もう、茜の思考が読めない、最近選挙活動頑張って逆にモチベーションが下がったのか?

 

しかし、当の本人はどっちかというえば嬉しそうで……

 

「お前、俺がわざわざ運搬役やってるのにそれは――」

 

『第9位 第一王子修様です』

 

「修ちゃんは相変わらずだねぇ」

 

「今回は茜より上だからな。国民からの人気も最下位じゃない」

 

岬の言葉に修はわざと茜に視線を合わせないように答えていた。

 

「票数そんなに変わらないでしょ!」

 

「何を言ってる!9万票の差はでかいだろ!」

 

「全国民に比べたらそんなの雀の涙だよ!」

 

「やだわぁ、底辺のみにくい争いって」

 

「全くだ……」

 

急にしょうもない事で喧嘩を始めた2人に俺はため息をつき、奏は栞の耳をふさいでいた。

 

うん、こんな話栞に聞かせたくないからな……

 

「しかし、今までと違って順位の入れ替わりが激しいな」

 

「この様子だと次は光かもね」

 

「私が栞や輝より下なわけないじゃ――」

 

『第8位 第五王女光様!』

 

俺と奏が余計なことを言ったら現実になりました。光、大転落だな……

 

光を見るがもうだめだな、魂が飛んじゃってる……

 

『第7位 第四王子輝様!』

 

「妹の栞より下なんて……兄としての威厳が!」

 

輝はあんまり変わらない順位で悔しそうである。まぁ、男の子だしな妹には負けたくないか。

 

「案ずるな輝、お前はこの兄を超えたんだ誇りを持て……」

 

「あ、兄上!」

 

「逆に今まで最下位だった兄が何を言ってるのやら」

 

「修ちゃんの威厳はどうなってるの?」

 

俺と岬の言葉に修は一瞬沈黙するが、開き直った顔をして

 

「茜より上だから威厳は保たれる」

 

「しつこいよ!」

 

再び2人が喧嘩に入ったが面倒なので無視、というか兄の威厳しょぼすぎだろ……

 

『第6位 第六王女栞様!』

 

「栞強いな」

 

「確かに、最年少なのに頑張ってるな」

 

遥の言うとおりである。普通なら最年少なのは選挙には不利に働くものだがこれはすごいというか、逆に負けてるやつらが情けないのか?

 

「どうだ栞。6位だぞ」

 

「た、たまたまなの」

 

俺の言葉に栞は恥ずかしがりながらも喜んでいた。うん、何となく栞が人気なのはわかるかもしれん。

 

「だそうですが、光選手」

 

「……」

 

バカ兄の追撃により、魂の抜けていた光は今度はコタツに突っ伏してしまう。

 

「で、でも私より上だしね?」

 

「最下位の人に慰められても~!」

 

「……」

 

泣きだしたが光に魂が戻って喜んだのもつかの間、今度は茜が突っ伏していた。

 

『第5位 第二王子式様!』

 

「「「えっ!?」」」

 

「おっ、やっと下がった」

 

俺の順位が発表され、家族がなぜか今回一番の驚きを見せる。いや、俺の順位が下がったけどそれほどのこと?

 

「式、なんか細工でもしたの?」

 

「いや、何疑ってるんですか?するわけないでしょ」

 

奏が真面目に聞いてきたので敬語で答えてしまったが、大体これまでがおかしかったのだ。なぜ俺が3位に居続けられたのか今だに理解できないし。

 

「まぁ、式くんはたまに選挙に積極的じゃないとかインタビューで答えてたからそれが影響したんじゃないかしら」

 

 

葵姉さんが年越しそばを置きながら言ったことにみんなは渋々納得した様子で……

 

『第4位 第四王女岬様!』

 

「わー!遥に負けた~!」

 

「茜姉さんや式兄さんがいなくなったせいで、僕がトップ3……」

 

「自慢かー!」

 

「それにしても、俺はまだしも茜は何でこんな順位下がったんだろうな」

 

正直、一応選挙活動もやってるはずなので急激に票がなくなるのはおかしい気が……

 

「国民が茜姉さん目立つの苦手なのを汲んで、今は別な人に投票してくれたんじゃない?」

 

「確かに、あくまでもこれは調査だしな」

 

そこまで国民が優秀なのかに疑問があるが遥の言うことに一理あるので今は納得する。

 

「遥と式は誰かさんと違って優しいね~!」

 

「べ、別に普通だよ!」

 

そういいながら茜は遥に抱きつく、それにともない遥は軽くパニック状態である。

 

「別に文句はないけど、俺には何もないのか?」

 

「だって式に抱きつくのは恥ずかしいんだもん」

 

「「え~~……」」

 

あまりにもよくわからない回答に俺と遥は声がシンクロする。

 

そして、隣に座っていた岬はものすごく機嫌が悪くなっていた。まぁ、そうなるわな。

 

遥はどうも茜には甘い節があるからな、いや、俺もかもしれないが。

 

『第3位 第三王子遥様!』

 

「おめでとー!遥ベスト3だね!」

 

「むー!」

 

「い、いや僕もあんまり上位は嬉しくないんだけどね……」

 

結果的に遥はなぜか茜と岬の2人にサンドイッチされて抱きしめられていた。何だよこの光景、クラスの連中見たら発狂しそうな光景だな。

 

「ははは!貴様はどうせ葵姉様と奏には敵わないんだよ!お前は!」

 

「そうだな、そのセリフ。もっと順位の上のやつが言えば映えたかもな」

 

「さすがにかっこ悪い」

 

「9位のくせに」

 

俺、岬、茜の三連コンボで修を撃退すると……

 

『第2位は第二王女奏様!』

 

「ということは葵姉ちゃんが一番か~」

 

「奏では永遠の2番手って感じだよな」

 

復活した修はまた自分の事を棚に上げて、余計なことを言う。まぁ、否定はできないんだけど。

 

「順位が低かろうと彼女さんの1票が入ってれば本望よね!」

 

さすがに腹が立ったのか奏が反撃するが……あれ?そのこと知ってるのって俺と茜だけじゃ?

 

「な、佐藤はまだ彼女じゃなくて……つか、何で知って――お前か茜!」

 

修に睨まれるが、茜は口笛を吹いて聞かないふりをしているが……

 

「お前の口軽すぎだろ。悪いな修」

 

「いや、お前には感謝してるんだけどな。佐藤からも色々聞いてるし……って」

 

「なになに?修ちゃん彼女できたの?」

 

「えっ いや違うんだ!」

 

今更誤魔化してももう遅いだろ、せっかくだから佐藤先輩にメールで知らせとこ。

 

『今日、家族全員に先輩と修の関係がばれちゃいました。原因は茜です。色々とすいません』っと。

 

「ややこしくなるから、岬は黙ってろ」

 

「はぁ!?何その言い方!」

 

「どうせ、クリスマスもデートしたかったんでしょ?」

 

「ばっ、それは毎年家族で決めてるだろ……」

 

「なんで遥は私に冷たいんだよ!」

 

「はぁ?お前が噛みついてくるからだ!」

 

茜が修をいじり、なぜか岬と遥は姉弟喧嘩に発展しているが、俺は無視してメールの返信を待ってると……

 

すぐに返事が来たのだがメールの内容が……

 

『qあwせdrftgyふじこlp』

 

佐藤先輩、携帯で返してるはずなのにどうしてこの文面が返ってくるのか……もはや超常現象並みにの謎である。

 

『第1位 第一王女葵様!』

 

「ふぇ~なんでよもう!」

 

「な、なんで泣くんだよ!」

 

もう家族の大半がテレビを見ていなかった。見てるのは奏と栞ぐらいだろうか……

 

そんななかで、ひと際落ち込んでいたのが光である。茜程ではないけど結構落ちたしなショックなのだろう。

 

そこにバカ兄が近寄っていき、肩に手を置くと

 

「光、お前は弟たちに負けたがかもしれないが、茜より上なんだぞ。元気を出せ、下を向いて生きよう!」

 

「うん、ありがと、修ちゃん!」

 

ほんとに余計な事を言った、小学生の女の子になんてこと教えてやがる。後で根性叩き直してやろうか……

 

「そろそろ怒りますよ!」

 

そんなことする必要もなく、茜のチョップ(能力付加)が決まり修は崩れ去る。

 

悪は滅びた!と思ったら奏が票数の表示を見て首を傾げていた。

 

「おかしいわね。みんなの票数足しても数が全然合わない。無効票にしては多すぎる気が……」

 

『す、すいません!茜様の票数のケタを一つ間違っていたようで、一位は茜様ということになります!おめでとうございます!』

 

「――――!???!?!?」

 

「いや、驚くんじゃなくて喜べ。一位だぞ」

 

声にならない驚き方をしている茜に声をかけたのだが、返事がない。こいつ、立ったまま気絶してやがる……

 

「……修ちゃんより上だからいっかー」

 

「……」

 

こうして、いつもの年よりもちょっと騒がしい大晦日が終わり、新年を迎えるのであった。

 




この順位、式を5位にねじこんだだけで他の人は原作通りの順位なのですが、栞の順位ほんとに高いですよね。まだ幼稚園のはずなのにここまでの票を集めるなんて……
ガチで選挙活動したら上位になれそうですよね笑

それではお気に入りなどよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。