城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

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報告も兼ねてちょっと急いで書きました。なのでかなり雑です笑
ついにアニメも終わってしまいましたね、すごく面白かったですがあれでは2期なんて絶対にないのであとは原作に期待するとします。
その原作も次はいつになるのかな~……
報告はあとがきの方に長々と書くつもりですが長文なので許して下さい。
今回はクリスマスイブ回となります。それではどうぞ!


第24話

季節は過ぎ、雪が降るような季節になり、そして今日はクリスマスイブである。

 

我が家にとってのクリスマスイブは普通の家とは扱いが違う、なぜなら今日は。

 

「今日は葵姉ちゃんの誕生日!今年もサプライズパーティーの準備頑張ろう」

 

葵姉さんの誕生日だから、そして毎年、クリスマスパーティーの準備という建前で、サプライズパーティーを企画するのだが、ノリノリなのは茜、岬、光、輝、栞だけである。

 

もちろん、残りの面子が決して葵姉さんの誕生日を祝うのが乗り気じゃないというわけではない。

 

みんなそれぞれパーティーのために準備してるのだが、このことはすでに葵姉さんにばれてるのである。つまりサプライズになっていないのだ。毎年同じことをやってるのでそうなるのは当然なのだが、平和なことにノリノリな兄弟たちはこのことに気付いていない……

 

やる気を出してる兄弟たちを見て、少しため息を吐きそうになるが。

 

「ほら、サボってないで働け、というかお前にサボられたら終わらん」

 

「わかってる。やること山積みだしな」

 

修に言われて、俺は手を動かすことに専念する。

 

「おはよう、みんな大変そうだね」

 

「葵姉さんおはよう。人手足りてるから、別にゆっくりしてていいよ」

 

起きてきた葵姉さんに俺は料理の下ごしらえをしながら、応える。

 

人では正直言ってものすごく足りてないのだが、パーティーの主役に手伝わせるわけにはいかない。

 

葵姉さんは俺の言葉に苦笑いを浮かべながら、椅子に座る。

 

さすがに周りがこんだけ慌ただしいと、落ちつけないよな……

 

「大変そうだね、手伝おうか?」

 

「いいの!間にあってるから、ボルシチ見張ってて!」

 

葵姉さんは光に声をかけるが、光は誘いを突っぱねて忙しくツリーの飾り付けにいってしまう。

 

このまま葵姉さんを家に置いとくわけにはいかないので、岬がそろそろ連れ出すはずなのだが、

 

「あー!どうしよう!交換用のプレゼント買い忘れてた!でも、この寒空の下一人で行くのはな~……」

 

急に叫び出した岬はそのまま葵姉さん見せつけるように考え込むようなポーズをとる。

 

岬、いくらなんでもそれで連れ出すのは難しいんじゃ……

 

「一緒に行こうか?」

 

葵姉さんが察してくれたよ、よくわかったな葵姉さん。というか、葵姉さんに気を使わせてる時点でもう……

 

「ほんと?ありがとうお姉ちゃん!」

 

すでにサプライズじゃないことを知ってる兄弟たちはあまりの演技力のなさに顔を伏せてしまう。

 

確か岬はさらにみんなで出し合ったお金で葵姉さんのプレゼントを買う役目もあったか……

 

不安だ、不安すぎる……変なもの買ってきそうで。

 

「下処理終わり。作れる料理は昨日作ったし、俺もプレゼント買いに行くかな」

 

「えっ?式終わったならこっち手伝っ――」

 

「そうね。行ってきていいわよ。人手は足りてるし」

 

自分の役割が終わったので俺もついていくことにする。茜が余計なことを言いかけたが、奏のカバーのおかげで俺はスムーズに事を進められた。おそらく、奏も岬のことを不安に思ってるのだろう。

 

さっさと準備をすませ、俺たちは家を出た。しかし、さすが冬なだけあって――

 

「寒っ……もうちょっと厚着してくればよかった」

 

隣を歩いている岬は寒さで震えていた。できればなにかかしてやりたいのだが生憎俺もコートを羽織ってきただけで、手袋やマフラーなどは持ち合わせていない。

 

「式兄は寒くないの?」

 

「寒くないと言えば嘘になるが、そこまでじゃないな」

 

「岬、マフラー貸そうか?」

 

「いい、お姉ちゃんも寒いでしょ」

 

岬は寒いのに葵姉さんからの提案を断る、こうなると頑固だからな岬は、どうしたものか。

 

「じゃあ交代交代でつかう?」

 

「もう、私の方が若いんだから平気だよ!」

 

「そこまで年とってません!」

 

「何してるんだよ……」

 

結局、岬が意地を張り続け、そのまま店に着く。

 

さて、葵姉さんへのプレゼントだけど、交換用のプレゼントを買いにきている手前、買えるものは制限されそうだけど……

 

「うーん、これは地味かな?」

 

なぜか岬は葵姉さんに持ってる服を合わせるようにして、考えていた。

 

「ねぇ、岬これ交換用のプレゼント買いに来たんだよね?」

 

「そ、そうだけど?」

 

「栞とかがこれもらっても……」

 

「あっ……」

 

「でも、意外に難しいよな。誰にいくかわからないし、家族だけど好きなものとかも全然違うし。葵姉さんならどんなのがいい?」

 

察しのいい葵姉さんならこれだけでこっちの意図を汲み取ってくれるだろう。

 

「うーん、そうね。あっ、これとかボルシチに似て可愛いかも。抱き枕とかあったら落ちついて寝れそうだし、一つぐらい欲しいかも」

 

そういいながら、葵姉さんは岬の方を見ながら置いてあった抱き枕を抱きしめる。

 

横目から値段をみると、ちょうど予算といい具合のものである。

 

さすが葵姉さんといったところか、これで岬のやつも気づいて――

 

「手袋にしました!」

 

なんでだよ!?露骨だったろ!気付けよ……

 

あまりに露骨だったので、俺も油断してしまい、岬から目を離してしまったのもいけなかったでも金は岬が持ってたしな……

 

しょうがない、あとで俺が買うとしよう。

 

「式はプレゼント買えたの?」

 

「ああ、一応ね」

 

俺は交換用のプレゼントはすでに買ってあったので、栞にぬいぐるみでもと思い買ったのだが、あの抱き枕も買わなければ……

 

「あー!買い忘れがあったぁ!」

 

なるほど、葵姉さんに隠すつもりだったのか。それならもう少し静かにして欲しいんだけど……

 

「すぐに戻ってくるから2人は下で待ってて!」

 

「うん、わかった」

 

「はやくしろよ」

 

岬はそのままさっきの抱き枕がある店に戻ってしまう。

 

隣にいる葵姉さんはその姿を目で追いつつ、嬉しそうだ。

 

「あっ、そうだ。式、私も買いたいものあるんだけど付き合ってくれる?」

 

「もちろん、でも何買うの?」

 

「岬。寒そうだったから、マフラーでもって」

 

葵姉さん、優しすぎるよ。ほんと、逆に気を使わせてる感じがして……

 

そんなこんなで、一階にある店に入って葵姉さんが特に迷うことなくマフラーを購入したところで、

 

「きゃああああ!」

 

「お前ら出口は抑えた!全員動くな!」

 

店全体に響き渡った悲鳴とともに、店の中に武装した男たちの集団が現れる。

 

「隠れて!」

 

俺はすぐにレジの近くにいた葵姉さんと店員さんの頭を押さえて、レジの内側に隠れさせる。

 

そして、顔を覗かせると、強盗と思われる武装したやつは目につく限り5人……

 

武装はアサルトライフルやハンドガンとまちまちだが、すでに周りにいた人を制圧しているようだった。

 

「式、どうするの?」

 

隣にいる葵姉さんが少し不安げな表情を浮かべる。くそ、せっかくの日になんて事してくれやがる。

 

「制圧はできなくもないけど、武器の数も目で見ただけで判断するのはまずいし、もし他に仲間がいて人質でも取

 

られたら動けなくなる。葵姉さんだけを守るならわけないけどそんなわけにもいかないし……」

 

しかも俺の能力で押さえつける時に間違って発砲でもされたら誰かに当たるかもしれない、迂闊には動けない。

 

「でも、すぐに助けも来ると思うし、むしろ俺たちは王族だからばれたら面倒になる、このまま隠れてた方が――

 

 

「おい、上の階も見てこい」

 

一人の男がそう言った瞬間体が動きそうになったが、なんとか抑える。しかし、まずい。上の階には岬がいる。

 

「ねぇ、式くん。ここら辺の私を映してる監視カメラ全部壊せる?」

 

「……店員さん。カメラってどれくらいあるかわかる?」

 

「正確な数は……でも、そこまで小型のカメラは置いてないので普通に見えると思います」

 

そう言って、辺りをみると、三台のカメラが目につく、葵姉さんがこんなことを聞いてきたということはおそらく能力を使うつもりなのだろう。しかし、カメラに証拠が残るのはまずいから俺の出番というわけだが。

 

あんまり音を立てても強盗達を刺激するだけだ、カメラを支えている支柱部分だけを――折る!

 

パキッと小気味のいい音を立てて、三台のカメラの機能を完全に停止させる。

 

「なんだ!」

 

しかし、さすがに気付かれないというわけにはいかず、強盗達が叫ぶ、

 

「待て!」

 

すぐに銃を構え警戒するが発砲されたらたまらない、俺は大きな声を出し強盗の視線を俺にだけに向けさせる。

 

一方向からの弾幕ならまだ防ぐすべがある。俺は手をあげながら強盗達の前にでる。

 

「……王家次男、櫻田式か。厄介な能力を持ってるがこんだけ人がいればリスクを考えて使えんか」

 

「そうだよ、国民を傷つけるわけにもいかないしな。でも、お前らも撃ったりするなよ。そうなればいくら国民といえど腕の一本や二本は覚悟してもらう」

 

「対した自信だな」

 

俺と強盗が睨みあい一触即発の雰囲気であったが、

 

「私もいます」

 

俺の後ろから葵姉さんも出てくることで空気がかわる。

 

「あなたもいたのか、こんな日についてない。おとなしくしてもらえば危害は加えない」

 

「お前ら、こんだけ派手にやって逃げ切れると思ってるのか?いくらなんでも警察舐めすぎだろ」

 

「我々は本気だ!王家の人間だろうと殺す覚悟は――」

 

「『少し黙っててもらえますか』」

 

葵姉さんが口を開くと、鬼気迫る勢いで喋っていた男の口が動かなくなる。

 

「『そのまま、武装を解除してください』」

 

すると、男たちは持っていた銃を全部手放してしまう。すごいな、この能力。

 

「『あなた達、他に仲間はいますか?』」

 

「はい、逃走のために裏口のところにリーダーと他二名がいます」

 

ちっ、やっぱり仲間がいたか。となると異変を感じる前に叩きのめさないと逃げられるな。

 

「葵姉さん、その残りは俺が何とかするよ。裏口なら人もいないだろうし、俺一人なら大丈夫」

 

「でも……」

 

さすがに武装した相手に挑むとなると葵姉さんも心配のようだけど、

 

「大丈夫、俺を信じて」

 

「わかった。『あなた達、今日あったことは忘れて、帰宅しなさい。今後このようなことは二度としないように』」

 

「「「わかりました」」」

 

そのまま強盗達は入口の方へ歩いて行ってしまう。そして、周りは何事かと騒ぎ始める。

 

「警察に連絡お願いします」

 

「は、はい!」

 

「式くん、ここは私がどうにかしておくから、怪我しないでね」

 

「大丈夫、そんなにやわじゃないよ」

 

俺はすぐに走り出して、デパートの裏口に出る。

 

外に出ると冷たい冷気が肌を刺す。しかし、寒いなど感じている暇はない。

 

出口を出てすぐに俺は明らかに怪しい集団を発見した。

 

「くそ!あいつら応答しないぞ。どうなってる?」

 

「リーダー、やばいじゃないですか逃げましょうよ……」

 

あいつらの言った通り、武装したやつが三人うち一人が偉そうにしてるということは、あいつがリーダーか。

 

しかし、周りに人はいないので俺は何事もなかったかのように連中の前に出る。

 

「よう、ずいぶんと物騒なもの持ってるな」

 

「な、王家の次男!どうしてここが!?」

 

リーダーの男が声を荒げるが、俺はそんなのを無視して目につく全ての銃を折った。

 

隠しもっていようとこの状況なら俺の方がはやく動ける。

 

「ひっ!?」 「なっ!銃が」

 

「そんなことどうでもいいだろ、そんなことよりもさ。俺今すごく機嫌が悪いんだ。どれくらいかっていうと今年一番、もう今年も終わるからおそらくこれ以上記録は更新されないだろうな」

 

「何ふざけたことを!」

 

リーダーの男が腰からナイフを抜き出し俺に切りかかってくるが、その動きは素人も同然である。

 

そんな動きに当たるわけもなく、俺はナイフをかわし、そのまま男の腹に拳を叩き込む、そしてそのまま能力を使いその体を壁に叩きつけた。

 

「ぐふっ……」

 

「せっかくの葵姉さんの誕生日だっていうのに余計なことしてくれやがって。おい、お前たちは抵抗するなよ。やりすぎて怒られるのも癪だ。もうじき警察が来るそれまで動くなよ」

 

「「は、はい!」」

 

下っ端二人は完全に俺に恐れをなしたようで、動く気配はない。

 

さて、ほんとうならリーダーのやつを気がすむまで殴りたい気分だけど……やめよう、葵姉さんの誕生日にそんなことしても後悔するだけだ。

 

俺は自分の怒りを抑えて警察が来るのを待つことにした。

 

そして、待つこと数分後警察が来て強盗グループは全員捕まるのであった。

 

 

 

そして、店の方に戻ると、葵姉さんが駆けてくる。

 

「式くん!大丈夫だった!?」

 

「大丈夫だって、怪我ひとつしてないよ。それよりも岬は?」

 

「まだ見てないよ。二階ではこんなことあったことすらわからなかっただろうし、もうすぐ来るんじゃないかな?」

 

「やっほー!お待たせ!何これどうしたの?」

 

暢気な調子で岬がやってくる。全くこっちの気も知らないで。

 

「イベントでもあるんじゃないかしら?」

 

「そうなの?」

 

「別にいいだろ。そんなことよりも買い物終わったのか?」

 

俺の言葉に岬は持っている袋を後ろに隠す、別に俺に対して隠す必要はないのでは……

 

「いいでしょ!それよりも帰ろう!」

 

岬は勢いに任せたまま外に出たが。

 

「さ、寒い……」

 

気温は下がる一方なので寒いのは当たり前である。そんな岬に葵姉さんが買っていたマフラーをかける。

 

「はいこれ、私から岬への特別プレゼント」

 

「え?お姉ちゃんこれ……」

 

「みんなには内緒ね、式くんにもこれ」

 

そういいながら、葵姉さんは俺に手袋を渡してくる。

 

いつの間に買ってたんだ?岬のマフラーを買う時はなかったはず、いやどうでもいかそんなこと。

 

「ありがと、葵姉さん」

 

「暖かい、ありがとうお姉ちゃん!」

 

葵姉さんに礼をいってから、家にメールを送り、俺たちはそのまま帰宅した。

 

 

 

 

「お姉ちゃんはちょっと待ってて!」

 

岬よ、もう少し理由とか考えないのか。怪しすぎるだろ……

 

まぁ、ばれてるからフォローもしないけど。

 

俺は葵姉さんに苦笑いを向けた後、葵姉さんを置いて居間に入ると、すでに準備は万端、父さんもすでに帰宅済みのようだ。

 

ただ、茜が持っているのがおそらく奏が生成したと思われる超大型のクラッカーなのだが、大丈夫なのだろうか色々と……輝が紐を持ってる時点で一般に扱えた品じゃないな。

 

「準備できてるようだな」

 

「もちろん!みんなで頑張ったもん」

 

あとは、葵姉さんを待つだけか、

 

「お姉ちゃん来ていいよ~!」

 

岬が声をあげて、葵姉さんがドアを開けた瞬間、輝がクラッカーの紐を引っ張り――

 

「「「葵お姉ちゃん、誕生日おめでとう!」」」

 

今年も無事、みんなで葵姉さんの誕生日を祝うのでした。

 

 

 




これからの方針ですが、今回クリスマスイブ回(一年目)をやったので、このままあと数話で一年目を終わらせて、その後はアニメ基本だったのを途中から原作に寄せる形にします。
しかし、一年目に話をアニメ基準で書いて消化しすぎたのでオリジナルも多く書こうと思ってます。(方針ブレブレですいません……)
その他の設定も原作に寄せるつもりですがここは変える可能性もあります。
オリジナルについては作者も色々考えていますが、もしこのキャラとこのキャラの絡みがみたいなどの意見があれば感想などに書いてもらっていいです。(あんまり無茶なことは言わないでね)
可能な限りは採用して面白い話をかけたらなと思っています。
他にも普通に疑問や意見があったら感想などにお願いします。
始めたころは30話近くで終わるかなと思っていましたがこの調子だとまだ続きそうですがこれからもこの作品をよろしくお願いします。

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